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さまよえる宇宙船

さまよえるうちゅうせん

ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第4弾。著者はスティーブ・ジャクソン(英)。
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「さまよえる宇宙船」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第4弾「STARSHIP TRAVELLER 」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。


作品解説

 宇宙船トラベラー号は、推進装置の誤作動が発生し、ブラックホールとして知られる「セルツィア空間」を突き抜け、ワープしてしまった。

 激しい衝撃に乗組員全員が気を失い、意識を回復すると、そこは未知の宇宙空間。どうやら、ブラックホールを通り抜け、自分たちの次元から別の次元へとワープ、並行宇宙へ来てしまったらしい。

 トラベラー号の船長である主人公=君は、この未知の宇宙を旅し、自分たちの宇宙へと戻る手がかりを探す、探索行を開始する。


「ファイティングファンタジー」シリーズの、初のタイタン以外が舞台の作品。ジャンルもSFで、内容は「スタートレック」よろしく「宇宙船とそのクルーたちが、探索の旅を続ける」という体裁になっている。

 そのため、最初に船長である主人公=君のみならず、士官たち(科学官、医務官、技官、保安官、警備員二名)の数値も決めたうえでプレイする必要がある。

 また、作風から、個人および団体の戦闘が二種に加え、対艦戦の、計三種の戦闘ルールが追加されている。

 格闘戦は、今までの作品と同じだが、フェーザー(光線銃)戦は、光線銃の撃ち合いになる。フェーザーは一撃で勝敗が決まるので、更にシビアと言える。

 対艦戦も、今までの作品における戦闘と基本は同じ。乗り物に乗っての戦闘であるため、技術および体力に相当する、武器力と防衛力の二種の数値を設定せねばならない。


 本作は、SFという新ジャンルの開拓に加え、団体行動や団体戦闘、および新ルールの実装としての実験作という側面も存在する。そのため、作中での描写やイベントがやや駆け足で、若干の物足りなさも少なからず感じられる。さらに、パラグラフ数も今までの400に対し、340と少ない(正確には343だが、三つは新ルールの説明になるため、物語には関係ない)。

 しかし、剣と魔法のヒロイックファンタジーには無い、SFならではの魅力やギミックを描いた一作であり、「ファイティングファンタジー」シリーズの更なる進化を予期させる一作でもある。


用語

フェーザー

 光線銃。

 ショックと致死のどちらかにセットして用いる。ショックは気絶させるにとどまるが、致死は殺傷力があり、一撃で相手を殺害する事が可能。対人戦のみならず、対生物戦(惑星上の猛獣など)にも用いる。

 宇宙船には対艦装備として、大型のフェーザーが装備され、攻撃時にはそれを用いる。

防衛膜

 宇宙船を包みこみ、防御するバリア。これがゼロになると宇宙船は破壊されたものとみなされる。

ビーム着陸

 惑星軌道上に乗った宇宙船から、惑星の地表に座標を設定。そのままビームを放ち、宇宙船から惑星上へと乗組員を転送させる装置。これを用いることで、着陸船を用いる手間が省ける。

 人間だけでなく、鉱石や動物の死体など、ある程度の大きさの物体を転送させる事も可能。

ディブリウム鉱石

 トラベラー号のエネルギー源である結晶鉱石。これを用いて原子炉を稼働させ、宇宙船の各種装備を動かす。小惑星や各惑星の地脈などから採取する。

スキャナー

 トラベラー号に搭載。個人が携帯するものもある。

 これを用い、遠くの宙域に存在する恒星系や惑星を感知したり、惑星上の建造物などから文明・文化レベルを推測したり、地形の把握や動植物の存在などを感知する事が可能。


主な登場人物

トラベラー号船長

 主人公=君。


ラフ

 テリアル人の高官。この惑星の習性上、年端もいかない子供。

 トラベラー号の帰還のために協力してくれるが、その代わりに武器装備や防衛装置についての技術的説明を求める。


イ・アベイル

 ジョルセン第三惑星一等技官。率いる技術陣は、並行宇宙の間を開く、時空間入り口の開発研究を行っている。惑星に来た主人公らの窮状に、主人公(君)一人のみを惑星に招待し、飲食物を勧めてくれる。しかし……


ドム

 惑星ダー・ヴィルの宇宙艦隊司令官。

 ダー・ヴィルの軌道に乗ったトラベラー号に接触し、惑星上にビーム着陸を呼びかけるが……。


クテイト

 惑星マリニの、マリニ鉱山出張所所長。トラベラー号に、惑星上で開催している競技会に誘うが……。


ムク・マル

 ガンジグ帝国連邦司令官。

 トラベラー号に対し、D級宇宙巡洋艦に相当する宇宙船で接近し、帝国領域内の侵犯を警告した。その姿は爬虫類を思わせるもので、見た目もかなり頑強そうな体格をしている。


ブラン・セル

 惑星クリバにて「雨神」と呼ばれ、気象をコントロールしている男。クリバの一地方にある城砦に、ミサイル棒で武装した衛兵に守られている。

 小柄な男で、城の住居には気象制御コンピューターが設置されている。

 彼自身は、元は星間貿易商。以前にこの銀河のグリーナ第三惑星に、注文された最新型の惑星制御コンピューターを輸送していたが、途中で宇宙船のワープ推進器が故障してしまった。先方へ事情を連絡するも、相手は聞き入れずに注文をキャンセル。さらに自分の星に戻れば破産は免れないために、この星に腰を据えることに。商品だったコンピューターを設置し、天候を制御。住民に神と見なされた。

 しかしもとより湿気が多い惑星のため、好天を提供し続けた結果、反動で大量の雨雲が発生。制御不能状態に陥ってしまっている。


ド・アウス―E

 ロール・ジャミル宇宙港の責任者である異星人。

 旧式の砂時計を思わせる大きな頭部と胴体を有し、瞑想する事でテレパシーを使い、各部門の部下と連絡して情報提供をしてくれる。


ディレーン

 惑星マコモンの、星外通信担当女性士官。音楽的な心地良い声を有する。

 主人公らの連絡を受け、マコモンに招待。戻る手がかりを与える事を申し出るが……。



主な惑星・ステーション

テリアル

 灰緑色の惑星。

 住民のテリアル人は、細く色白、骨ばった長い顔を持つ。

 惑星は、子供によって支配され切り回されている。テリアル人は異常なまでの知性と能力を有して誕生し、誕生直後に高い地位に付けられる。

 成長するに従い、大変な速さでもうろくし、仕事ができない役立たずに。そうなるともっと小さな子供に取ってかわられる。


ジョルセン第三惑星

 青色の惑星。住民の異星人は高度な知的生命体。地球を遥かに上回る科学技術を有している。

 制服を着て、全体として人間に似ているが、身体は細く、球根を思わせる大きな顔と、骨ばった指を持つ。

 惑星の地表はかなり開発が勧められ、組織化された社会が存在する。


マグナス星系第一惑星

 鈍い青色の惑星。様々な異星人により入植されている。文明および科学技術はそれなりに発達しており、惑星に赴いた異星人たちのモットーは「自由と平等」。

 そのため、責任者や支配者という存在がなく、行動を縛る法律そのものが存在しない。意味もなく他者を襲撃したければ許され、殺害したければそれも許される。

 また、何かを始めるにあたり、それに関する議題を話し合う際。徹底的に話し合いを重ねるのだが、話題がどんどん逸れていき、なおかつ参加者全員(飛び入りも含まれる)が同じ結論に至るまで行動に移せない。そのため、「新たな薬局を建てる場所」程度の簡単な議題でも、実行に移るまで数日から数か月、数年かかるのは珍しくない。


ダー・ヴィル

 大きな赤い惑星。

 ダー・ヴィル人は宇宙艦隊を所有しており、その姿は人間に似てはいるが、人間の基準からすればややグロテスク。身長2m以上で、ごつごつした顔つきからかなり強引な種族という印象を与える。

 軍事惑星であるようで、ダー・ヴィル人も兵士が多い様子。ただし、科学技術は発達しており、あるトラブルを技官の知識と技術によって事なきを得る。


マリニ

 大きな灰色の惑星。

 マリナイトというレアメタルの鉱業惑星で、様々な惑星から鉱石の採掘に出張にきている。

 マリニ人は、おちょぼ口と平たい鼻を持つ灰色の異星人。

 鉱夫たちの娯楽として、競技会が行われている。競技会は技術と持久力をあらゆる角度から試す様々な競技の取り合わせで、「クォーク・テスト(半知性体の害獣クォークを30~40匹、フェーザーで撃ち落とせるかの競技。勝者は自由と相当量のマリナイトが与えられる)」などがある。主人公(君)たちが参加したのは、「鎧と武器をもたされ、殺人ロボットと格闘する」、というもの。


ガンジグ帝国

 ある宙域を支配している軍事国家。

 ガンジグ人は爬虫類を思わせる大柄な体格をしており、好戦的かつ、他惑星の異星人に対しては威圧的な態度を取る。相手の武装や情報を得て、なおかつ攻撃できないようにするまでは、高圧的で警戒を緩めない。ただし、帝国にとって脅威でないと判断したら、それなりに友好的にはなる。

 その文化では、地球の鷲に似た存在が神聖視されており、畏怖の対象。そのため、傷つけたりなどしたら重罪に罰せられる。


トラックス

 赤い惑星。

 かなり進んだ文明を有していたが、現在はほぼ無人。ほとんどの住民は他の惑星に移住してしまっている。

 かつて惑星上で大論争が起こり、惑星上の住民たちは、物質文明と科学を発展させる進歩派と、機械による非人間性を嫌い素朴な生活の回帰を求める後退派の、二つの派閥に分かれ、冷戦に発展する。

 やがて進歩派が幻覚剤を作り、後退派に用いようとするも、この事が露見。大気圏外に廃棄される事になったが、事故で大気圏上層に振りまかれ、全住民がひどい幻覚を見るようになってしまった。


キュールマター

 紫色の恒星の、第二惑星。

 街路と高い建物が並ぶ、非常に高度な科学文明を有した惑星。惑星人は、昆虫めいた人間大の生物。

 着陸した時には戒厳令時のため、人影はなかった。

 この惑星には自然死自体が存在せず、人口増加に対して意図的に人を減らし、余裕を作る必要性が生じる。そのため、PC(人口抑制係)には割当の範囲内で理由なしに殺人の権利が与えられる。戒厳令の時間内に外出中の者は、全員が殺害の対象となる。

 PCは戒厳令時に殺害の対象となる住民を発見したら、車両に乗り込ませ、人口抑制プログラムの実行施設に運ぶ。その建物内部の抹殺室にて、住民たちは苦痛の無い死を与えられる。

 PC自体はアンドロイドで、被っているヘルメットは高度な科学装置である。


クリバ

 中くらいの大きさの、青緑色の惑星。湿気の多い気候の惑星で、主人公らが着陸した時には雷雨が猛威を振るっていた。

 原住の惑星人は長い首と切株のような足を持った、ずんぐりした姿をしている。クリバ人たちは極めて原始的な、中世程度の文明レベルを有しているが、「雨神」と名乗る存在により、天候を支配されていると述べる。


ロール・ジャミル宇宙港

 ゆっくりと回転している、巨大な車輪状の宇宙ステーション。

 様々な宇宙船の入港を歓迎しており、望めば宇宙船の修理なども行ってくれるが、そのためには通貨、または通貨代わりの品物が必要。それもなければ、技術を有する乗組員を提供しなければならない。

 宇宙港内部には、宇宙船の整備・修理施設の他、娯楽施設としてセンサラマ(感覚を刺激する娯楽らしい)、ビジュアル室(詳細は不明)、遊戯室にバーなどがある。案内役は、浮遊する小型のロボットが受け持つ。


マコモン

 二重太陽系第三惑星。

 マコモン人は、無毛で茶色の皮膚を有している。攻撃的な種族ではないが、危急存亡のおりには策を弄する事も辞さず、暴力的な手段を用いずにだますような手段で目的を遂げようとする。

 ほぼ全人口が保護ドーム内で生活。しかし、ドーム外の荒れ果てた都市には、略奪と暴力に明け暮れる「腐肉食い」が住み着いている。

 惑星自体は荒廃しており、二重太陽の引力に引き裂かれ、一年足らずで惑星そのものが破壊されてしまう運命にある。その前に他惑星に移住すべく、一隻でも多くの宇宙船を建造している最中。しかし、間に合いそうにないため、宇宙船、およびその建造技術や技官・科学官を欲している。

 他にも、短時間でクローンを作る科学技術も有している。



関連項目

スタートレック:モチーフ元。フェーザーやビーム着陸などのギミック、様々な惑星を探索する内容など、かなり影響を受けている事が見受けられる。

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