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クトゥルフ神話

くとぅるふしんわ

クトゥルフ神話とは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの描いた小説世界をもとに、ラヴクラフトの友人である作家オーガスト・ダーレスらの間で設定の共有を図り、作り上げられた架空の神話体系。
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概要

 ハワード・フィリップス・ラヴクラフトがホラー小説に登場させた異形の怪物にまつわる背景事情を、複数人の作家らによってまとめたことでできあがった架空神話。
 外宇宙より古来の地球に飛来した旧支配者と、旧神の戦いやそれらが後世に与えた影響などが匂わされる。
 後には「神話」の時代そのものを描いたより神話らしい作品も描かれるようになり、それらも含めて「クトゥルフ神話作品」と認識されるようになった。
 クトゥルフ(Cthulhu)は人間には発音できない音であり、便宜上『クトゥルフ』『クトゥルー』などと表記される。日本では『クトゥルフ』と発音されることが多い。
 この神話を真実の出来事だとして調査するファンもいる。

もう少し踏み込んだ世界観

※ ここに挙げるのはダーレスにより整理されたものを基本としたもので、作者によってはこれと異なる設定をする者もいる。また、そもそも旧支配者が何故生まれ、地球にやってくる事になったかなど、因果関係が極めて不明瞭な部分が多い。
 特に旧神の設定を中心にして、善悪二元論や四大元素属性など世界観を大きく隔てるほどの違いが現れるので、理解しようとする際その話題はどのような世界観に基づいたものであるのか注意されたい。

 はるか昔、「宇宙の善の意思」を体現する「旧神」と呼ばれる神々が居た。
 後に彼らから「宇宙の悪の意思」を体現する神々が生み出された(クトゥルフ神話の神々)。
 宇宙の悪の意思たる神々は旧神の元を離れると、外宇宙から飛来して古代の地球を支配した(旧支配者の名はここから来ている)。
 旧支配者同士も仲違いが多かった(今日においても続いている)が、ある時結束して旧神に反逆を試みた。
 結果として敗れた旧支配者はあるものは地球の奥深くへ、一部は遠い宇宙へと封印されたが、その封印も完璧なものではなく、完全な復活と支配権の確立を望む彼らは現代にあっても時折姿を現し、闇の世界には彼らを信仰する者たちが依然として残っている。

 宇宙の悪の意思たる旧支配者は、基本的に人間にとって善となる存在ではなく、協力的態度を示したとしても駒として利用するためだと解釈したほうが良い。しかし、「人智を超える」利益が得られることに望みを賭け、手の内に入ろうとするものは現代的な思想を持つもの(科学者や医師)でも後を絶たない。
 また数柱の神々には召喚法が知られているが、旧支配者との接触は極めて危険で、状況によほど望まれぬ限り、まず死亡(文字通り「取って食われる」)・変死するか、肉体的・精神的に破滅的な症状を呈するか、完全に乗っ取られて利用されるかのいずれかである。さらに、出現時には感受性の強い人間が集団で悪夢にうなされるようになるなどの被害が報告されている。

出自

 クトゥルフ暗黒神話体系の世界観は、ダーレスによって作られた部分が大きいが、邪神たちの多くは、ラヴクラフトが世界各国の神話、伝承、天文学の知識、そして彼自身の独創によって生みだしたものである。

 元々はラヴクラフトの作品に共通して、背景設定的に匂わされているものであった。複数の作品で同じワードが使われ、未知の恐怖の中に明らかに「神話」が用いられている事が読者に伝わり作品世界内にリアリティを出す手法として存在していた。怖ろしいながらも神秘的に(それはつまり多く語らないということでもある)それらを描いており、詩文や幻想小説を好み、それを書きたいと希望していたラヴクラフトらしい手法だったと言える。

 ただし、ラヴクラフト自身はそれで作品同士の世界を繋げるつもりは毛頭なかったことが証言で分かっている。
 リン・カーター曰く、ラヴクラフトの作品が書店に並ぶ頃には、自身の手によってかなりの下地ができあがっていた。
 ラヴクラフトはこの「神話」を友人達に自身の作品で使って欲しいと促していた。クラーク・アシュトン・スミスがツァトゥグァを作り、ラヴクラフトも(リン・カーター曰く)すぐさま大喜びで自分の作品にツァトゥグァを使った。これを機に友人作家らでこの「お遊び」が広がった。
 余談になるが、友人のクトゥルフ神話作品を読んだあとのラヴクラフトは、手紙の中で「!」を大量に使い、いくつもの単語を用いて賞賛を送るなど、かなりテンションが高い。
 ラヴクラフト自身も先人の作品からワードを借りることが多かったので、背景フレーバー的なものはよりよい創作のためには共有されるべきという考えだったのかもしれない。

 クトゥルフ神話の邪神たちは、消えた幻の古代文明の神々とされるものが多い。例えばナイアルラトホテップは古代エジプトの神、クトゥルフはペルーのインカ文明とイースター島など南太平洋の島々や、ムー大陸の神とされる。これらは、ラヴクラフトが超古代史の謎の部分を、最新の科学的解釈を交え、その卓越した想像力で補完することによって生まれたのである。

 このようにクトゥルフ神話は小説家や同神話の信奉者による想像力、好奇心、はたまたお遊びなどによって形成されたものであり、今日もまだ広がり続けている。

ある作家は、古い伝承を換骨奪胎して取り込み、今尚その世界の裾野を広げるクトゥルフ神話体系の事を「神話なきアメリカの新たなる神話」と呼称した。

 作家によって独自の世界観を構築していることも特徴であり、互いに設定を強制するものではない。神々の力関係や、対立関係、血筋、婚姻関係まで作家によって様々である。
 それはあたかも、既存の神話がエンターテイメント作品に自由な設定で取り込まれるのと同じように見える。
 互いの設定の辻褄を合わせようと苦心した作家もいるが、それらをまるで意に介さなかった作家もいれば、断片的だったり曖昧だったりする記述から、勘違いしたまま書いてしまう作家もいた。
 ちなみに、創始者のラヴクラフトはどちらかと言えば「意に介さなかった」方の作家と思われる。

コズミックホラー(宇宙的恐怖)

ラヴクラフトが自身が持つ宇宙観の前提としていたものであり、作品にアイデアとして盛り込んでいた考え方。必ずではないが、クトゥルフ神話作品は基本的にこの要素を扱っている。

以下はにこの概念を説明する際に用いられることがある文章である。

人間をアリに置き換え、人間社会をアリの巣の中で完結しているような社会と考えればよい。アリには「大気」や「人間の足」という認識はなく、人間が大気を掻き分けてアリを踏みつぶし殺害したという事象はアリからでは理解できず、そこにはアリでも認識できる程度の結果、つまり潰れた同胞の死体が残るのみである。

アリに比する人間、つまり人間に比しての「宇宙的存在」が成す"事象"は、アリのように矮小な人間には理解できず、ただ意志疎通も理解も拒まれる絶対的他者への「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」のみがそこにある--というような思想が少なからぬラヴクラフト作品の根底にある。

奇妙な言語

 声に似て声でない、発音不可能な言葉と書かれる言語がたびたび登場する。ラヴクラフトは言及しなかったが、後の作家によってルルイエ語と解釈された。人間とは全く異なる発声器官を持つ存在によって使われている。
 人間の咽喉では正しく発音をすることは不可能で本来の発音を実際に耳にした人間だけが、奇妙なやり方で喉を使うことによってそれらしく模倣できる。
 ラヴクラフト自身が作品中で人間には発音不可能だと言及したのは「クトゥルフ」「ルルイエ」のみだが、正しく発音すると命の危険があるとされる神性の名前もあるのでそれらも本来発音不可能なのかもしれない。
 ラヴクラフトの「銀の鍵の門を越えて」ではナアカル文字ともロンゴロンゴとも全く似ていない、ルルイエ語を記述するための象形文字が羊皮紙に書かれていた。
 他の作家も同じ言語に見えるように意図したそれっぽい呪文を登場させ、邪神達の共通言語のように扱われている。
 クトゥルフ神話ではルルイエ語以外の架空の言語も複数ある。
・センザール語
・ナアカル語
・アクロ語
・ツァス=ヨ語
 また、グール語など登場するそれぞれの文明を持つ種族は独自の言語を持つと考えられる。ミ=ゴなど、コミュニケーションに言語を使うこと自体を「遅れている」と表現する種族もいる。

  • ルルイエ語の例
 いあ! いあ!

 ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがなぐる ふたぐん

 作中に登場する祈祷文や呪文に使われる奇妙な響きの文言も、何らかの特殊な言語であると考えられる。現代のカルトはこれらの言語で祈りを捧げ儀式を行っている。

「冒涜的」

 同作品群(特にラヴクラフト)において、「冒涜する」「冒涜的な」と書けば、普通「神を」という意味で使われている。
 キリスト教においては、世界とは崇高なる唯一神が創造したものとされている。その神を冒涜するとは、「神が作るはずのないものが存在している」という意味であり、つまり「神の存在そのものを否定するに等しいおぞましいもの」ということである。さらに転じて、「我々が信じていた世界観を否定するもの」、「正気を失いかねない真実」ということになる。

クトゥルフ神話作家

広義にクトゥルフ神話の作家とされる者は多数に上るが、いくつかの世代に分ける事が理解の助けとなる。

ラヴクラフトの先達

 ラヴクラフトに影響を与えた先達のホラー作家たち。ラヴクラフト自身これらの作家の作品から積極的に固有名詞を借用するなどしてクトゥルフ神話世界構築の助けとした。

エドガー・アラン・ポー
アンブローズ・ビアス
ロバート・W・チェンバース
アルジャーノン・ブラックウッド
アーサー・マッケン

ラヴクラフト世代

 ラヴクラフトと同時期にパルプ・マガジンで活躍していた同世代の作家たち。これらの作家たちとの固有名詞やアイデアの交換、相互の借用によりクトゥルフ世界が成り立っていく。

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
クラーク・アシュトン・スミス
フランク・ベルナップ・ロング
リチャード・F・シーライト (Richard F. Searight)
ロバート・E・ハワード
オーガスト・ダーレス
ヒュー・B・ケイヴ (Hugh B. Cave)
ヘンリー・カットナー
ロバート・ブロック

アーカムハウス世代

ダーレスによるアーカム・ハウスの設立、およびクトゥルフ神話の再編が進んでからの作家たち。アーカム・ハウスから作品を刊行した者を含む。

コリン・ウィルソン
ブライアン・ラムレイ
ラムジー・キャンベル
リン・カーター
ゲーリー・メイヤーズ
ディヴィッド・ドレイク (David Drake)
ジョン・グラスビイ (John Glasby)
ウォルター・C・デビルJr (Walter C DeBill Jr.)

ダーレス死後の世代

ロバート・M・プライス
スティーヴン・キング
フランクリン・シーライト (Franklyn Searight) - 上記リチャード・F・シーライトの息子
ジェームズ・アンビュール (James Ambuehl)
トレイシー・アンビュール (Tracy Ambuehl)
トマス・リゴッティ (Thomas Ligotti)
スコット・ディヴィッド・アニロウスキイ (Scott David Aniolowski)
リチャード・A・ルポフ (Richard A. Lupoff)
カール・エドワード・ワグナー (Karl Edward Wagner)
ジェフリー・トーマス (Jeffrey Thomas)
W・H・パグマイア (W. H. Pugmire)
スタンリー・C・サージャント (Stanley C. Sargent)

日本のクトゥルフ神話作家

小説家

朝松健
風見潤
神野オキナ
菊地秀行
くしまちみなと
栗本薫
小中千昭
小林泰三
殊能将之
高木彬光
田中芳樹
伏見健二
山田正紀
山本弘

漫画家

後籐寿庵
槻城ゆう子
魔夜峰央
諸星大二郎
八房龍之助
矢野健太郎

評論家

荒俣宏
大瀧啓裕
紀田順一郎
東雅夫


関連タグ

(登場する神などは旧支配者のページへ)
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外部リンク

クトゥルフ神話 - Wikipedia
クトゥルフ神話とは (クトゥルフシンワとは) - ニコニコ大百科
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