ピクシブ百科事典は2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

クリシュナ

くりしゅな

クリシュナ(Krishna)とは、インド神話の登場人物。その名は“黒”を意味する。
目次 [非表示]
  1. 維持神ヴィシュヌの第八の化身である。ヒンドゥー教のあらゆる宗派で重視される聖典『バガヴァッド・ギーター』を説いた存在であり、この聖典を含む叙事詩『マハーバーラタ』でも全編にわたって大活躍する。本項で解説。
  2. 真・女神転生シリーズ』に登場する悪魔。本項で解説。
  3. 聖闘士星矢に登場する海闘士の七将軍、クリュサオルのクリシュナ。→クリシュナ

概要

クリシュナはヴィシュヌの第八番目の化身とされる存在であり、インド神話の神々の中で最も民衆に親しまれている神格の一柱である。

その性格は数多ある叙事詩や詩歌の役割上、怪力と武勇に優れた英雄、奥深い知識を持つ宗教指導者、あらゆる女性を惹きつける魅力的な牧童、そしてヴィシュヴァ・ルーパとして全宇宙を内包する神など幅が広い。

図像では横笛を持つ姿が最も多くみられ、横笛を構えて左足で地を踏み右足を折り曲げた“ヴェーヌゴーパラ”という立像以外にも、戦いの場面や女性と戯れる絵画にも横笛を手にしたクリシュナ像が描かれている。

クリシュナの妻は数多く、「バーガヴァタ・プラーナ」のルクミニーや「ギータ・ゴーヴィンダ」のラーダーを初めとして、他に悪魔と戦って得た七人の女性や天界に攻め入ったナラカを討った時に彼の王宮にいた一万六千人のアプサラスなどが挙げられる。特に「ギータ・ゴーヴィンダ」のクリシュナとラーダーの恋物語は男性の本質と女性の本質を描くという哲学的な意味以上に、インドにおける理想の恋愛像として人気を博していて多くの細密画が存在する。

クリシュナは優れた戦士・英雄としての描写も枚挙にいとまがなく、無数の悪魔退治や神との力比べが神話伝承中で語られている。また、武器としてアグニから授かった正確に的に当たるチャクラム“ヴァジュラナーバ”と、何人も抵抗できない力を持つ棍棒“カウモーダキー”を所有する。なお、チャクラムは叙事詩中でもクリシュナの使う武器としてしばしば登場する(シシュパーラ殺害時、マハーバーラタの戦争第9日目等)。


クリシュナの物語

現在のインドで広く語られるクリシュナの伝説は「バーガヴァタ・プラーナ」に記されている。

マトゥラーを支配していたウグラセーナの息子カンサは、ヴィシュヌ崇拝を禁じて暴虐を振っていた。これに対して大地の女神はブラフマー達神々に助けを求め、ヴィシュヌがカンサを討つために、ヴァスデーヴァとデーヴァキーの八番目の息子として生まれることを定めた。

ヴァスデーヴァ夫妻の八番目の子に殺されるという予言を聞いたカンサは生まれてくる彼らの子供たちを次々と殺したが、第七子バララーマと第八子クリシュナは神の助けによって牧人ナンダの下へ逃げ出すことに成功する。夜中に真っ黒な皮膚をして生まれた第八子はクリシュナと名付けられて、ゴークラで成長する。

幼年のクリシュナは怪力の持ち主で、ある時罰として大きな木臼に縄で縛られるもそれを引いて平然と歩き、臼が引っ掛かった二本の樹木を抜き取ってしまったといわれる。彼を殺そうと襲いかかった悪魔たちも怪力の前に敗れ去っており、例を挙げると羅刹女プタナは胸に毒をつけて乳をやろうとしたが逆に生命を全て吸い出されてしまい、空飛ぶ悪魔サクトアスラは手押車ごとクリシュナを潰そうとしたが彼の蹴り飛ばした卓で圧死し、嵐の悪魔トリナヴァルタはクリシュナをさらったが逆に己が岩に投げつけられて絶命している。

兄バララーマと共に幾多の悪魔を殺したクリシュナは成年になると神的性格を示すようになり、ナンダや牛飼いたちに対して悪魔に抗しえないインドラへの供犠をやめさせてゴーヴァルダナ山を崇拝させ、その霊としてクリシュナ自身の姿を現している。怒ったインドラが放った大雨に対して山を持ちあげて対抗するという業を見せつけてインドラに敗北を認めさせている。また、ヤムナー川に住み着いてその川面を猛毒で湧き立たせ、毒風で多くの生物を殺傷したナーガのカーリヤ退治も有名なエピソードである。カーリヤは川に飛び込んできたクリシュナに胴を巻きつけて絞め殺そうとしたがクリシュナの身体がどんどん大きくなって緊縛を破られ、逆に宇宙を体内に蔵するクリシュナに踏みつけられて気絶してしまう。カーリヤの妻が許しを乞うたのでクリシュナはカーリヤを釈放し、その後カーリヤ夫婦はヤムナー川を離れてラマナカ島へ移住していった。

一方、カンサはクリシュナの出生の秘密を知ったことで、弓供養にかこつけて彼をマトゥラーに呼び出し暗殺することを画策する。しかしマトゥラーに着いたクリシュナは弓供養の場でシヴァの弓を引き折り、集まってきた悪魔たちを皆殺しにしてしまった。そして彼らはカンサが差し向けた巨象や悪魔を返り討ちにし、ヴァスデーヴァ夫妻を処刑しようとしたカンサをクリシュナが、カンサの兄弟八人をバララーマが殺した。

カンサとの戦いが終わった後もクリシュナの物語は続く。ある時はヴィダルバ国王ビーシュマカの娘であるルクミニーと結婚するために彼女の兄ルクミンを相手に大立ち回りを繰り広げ、ルクミニーとの間にシヴァによって殺されたカーマの生まれ変わりであるプラデュムナを授かるなど、多くの奇譚を残している。


王としてドヴァーラカーの国を統治するようになったクリシュナは、「マハーバーラタ」に描かれるパーンダヴァ(パンドゥ軍)とカウラヴァ(クル軍)の周辺国を巻き込んだクルクシェートラの戦争に関わることになる。両軍から援助の依頼を受けたクリシュナは、直接の戦いに参加しないクリシュナと配下の軍勢をそれぞれ選ぶように言い、結果、クリシュナがパンドゥ軍、クリシュナの軍勢がクル軍に加勢することになった。アルジュナの御者となったクリシュナは、武器を持たないというハンデを負いつつも各局面でアルジュナを助け、両軍合わせて14名の生き残りを除いて死亡する過酷な大戦争を戦い抜いた。そして、この戦いの直前に親しい人がクル軍の陣に居並ぶ様を見て戦意を失ったアルジュナをクリシュナが鼓舞・教導した一連の対話が「バガヴァッド・ギーター」である。


クルクシェートラの戦争から36年間、クリシュナはヤーダヴァ族を統治し善政を敷いていたが、一族の人々が女装した若者を聖仙の前に連れて行き『この娘は男と女どちらを生むか?』とふざけて質問したところ、『鉄の矛を生み、その矛によってヤーダヴァ族は滅ぶ』と呪いをかけられた。翌日、本当に若者が鉄の矛を産み落としたので人々はそれを粉々に砕いて海に捨てたが、海岸には鉄のように硬いイグサが生じ、破片の一つから鏃が作られた。数々の凶兆がヤーダヴァ族を襲う中、ある時、海岸に出た一族の人々はそこで酒を飲んで正気を失くし、イグサを手に取って互いに殺し合って全滅してしまう。これを見たバララーマは苦行に打ち込んで肉体からを流出させてこの世を去ってしまった。クリシュナも兄の後を追うために瞑想の姿勢を取ったところ、猟師が鹿と見間違えて矢を射かけてしまい、急所である足の裏を貫かれてしまう。死に瀕したクリシュナは、自分の治めたドヴァーラカーの地はまもなく海に呑みこまれることを予言して一帯に残る者を立ち去らせ、息を引き取る。

そして、クリシュナとバララーマの遺体は火葬にされ、兄弟の妻たちはその中に身を投げて命を絶ってしまった。


クリシュナの起源

ヴィシュヌの化身ながらも多くの民衆から神として崇められるクリシュナだが、一般に実在した人物と見られる。

クリシュナは前七世紀以前、マトゥラー地方の遊牧民ヴリシュニ族の生まれとされ、父親にヴァスデーヴァ、母親にデーヴァキーを持つ。長じてゴーラ・アンギラスという聖仙の弟子になって宗教的な自覚に達し、自身の属するヴリシュニ族の間に太陽神の崇拝を中心とする新興宗教を広めたという。クリシュナが掲げた神は“バガヴァッド”といい、クシャトリヤ(王族・武人階級)の為に説かれた実践的倫理を強調する通俗宗教で、この宗派はバーガヴァタ派と呼ばれていた。バガヴァッドとは『分け前(bhaga)を有するもの(vad)』、神から授けられる分け前(恵み)を持つ者を意味する。なお仏教経典の『世尊』という単語はこの“bhagavad”を訳したものであるという。

宗教指導者であるクリシュナは生前から半ば神として尊敬を受けており、父の名に因んでヴァースデーヴァとも呼ばれ、やがて彼の死後には自身が説いた神バガヴァッドと同一視されたという。クリシュナを神(バガヴァッド)とする信仰は実践的道徳と神への絶対的信仰(バクティ)の思想を深め、同時にインド国内の哲学・思想、特にサーンキヤ学派とヨーガ学派の思想を取り入れて教義を整備したことで次第に勢力を広げていった。

この勢いの盛んな新興宗教に対してバラモン教はクリシュナ(バガヴァッド)を太陽神の性格を持つヴィシュヌと同一視させることで吸収を図り、バーガヴァタ派も宗教としての正当性を確立するためにヴィシュヌを受け入れたことで、本来起源を異にする二柱の神は強固に結びついたとされる。紀元前4世紀頃にはクリシュナとヴィシュヌを同一視する内容の文献が登場し、2世紀頃に完成した「バガヴァッド・ギーター」ではクリシュナをヴィシュヌの化身とする文が書かれている。

以上の過程を経てクリシュナ信仰(バーガヴァタ派)はヒンドゥー教に取り入れられる。バーガヴァタ派の聖典として編まれた「バガヴァッド・ギーター」が後世の「マハーバーラタ」に編入、10世紀頃にはクリシュナの一連の物語をまとめた「バーガヴァタ・プラーナ」が完成を果たしている。


なお、クリシュナはヴィシュヌ以外の神とも合流した形跡が見られ、上記のヴァースデーヴァは西インドの同名の地方神がクリシュナと同一視されたことでクリシュナの名になったものとする説があり、クリシュナの牧童としての描写は遊牧民であるアービーラ族の牧童信仰を吸収したものとされる。


女神転生シリーズのクリシュナ

初出はFC「女神転生」で、種族は“魔神”。この頃のデザインは鎧と剣と盾で武装した姿。作中で仲魔にできる最高レベルの悪魔でHP・MP・全能力値がMAXであり、ボス悪魔を除けば名実ともに最強の存在である。また、神獣ウォンロン、魔神ガネーシャと共に連れ歩くとマグネタイトが減少しないという裏ワザが存在した。

続編の「女神転生Ⅱ」からはヴィシュヌが登場したために、「真・女神転生if...」のチャーリー専用ガーディアンとしての登場以外ではシリーズにほとんど登場していない。ただし「真・女神転生」のヴィシュヌは横笛を吹くクリシュナそのままのデザインである。


クリシュナ

真・女神転生ⅣFINAL」では主要登場悪魔の一体として登場。CV津田健次郎

デザインは深緑の帽子と上衣が特徴的な青年で、褐色の肌、両手に持った笛、帽子に飾られた孔雀の羽など随所に神話におけるクリシュナの象徴が見られ、ささやくような口調と穏やかな物腰で他者と接する。

クリシュナは多神教の神々で構成された多神連合を束ねる魔神であり、“人類の救済”という言葉を掲げてメルカバー率いる天使たち、ルシファー率いる悪魔たちと対立、YHVHが創った宇宙を廃して多神教の神が統治する新宇宙を生み出すという目的のためにあらゆる手段を尽くす。

クリシュナの言う“人類の救済”とは現在の宇宙で肉体という楔に縫い付けられた人間の魂を解放して新宇宙へ連れて行くことであり、すなわち全ての人間を殺し尽くすということに他ならない。そのために死と再生を無限に繰り返す大蛇シェーシャを呼び出して東京中の人間と悪魔を襲撃・喰い殺させて魂を回収し、なおも抵抗を試みる人間側の悪魔召喚プログラムを停止させるために“徳川曼荼羅”の結界を敷く等、不退転の意志で新宇宙創成に突き進む。

そしてシェーシャを<宇宙卵>へと変異させるとその中でイナンナトキを依代にして復活させ、ミトラ菩薩を始めとした強力な神々を生み出させ行く手を阻んだ。

そして、宇宙卵最奥にてフリンと融合しヴィシュヌフリンとなって新宇宙創成の障害となるダグザ主人公に襲い掛かる。

しかし死闘の末に敗れ、再び神田の社の奥にある<アーク>に封印された。

その後、アークに訪れると合体が解禁され仲魔にすることが可能。


黒天

「真・女神転生ⅣFINAL公式設定資料集+神話世界への旅」のショートストーリー『魔訶黒天断章』において、クリシュナがかつて黒天という悪魔だったことが語られる。

七世紀、仏教等が盛んに流入した天平文化の頃から黒天は日本に存在した。黒天は黒い肌に赤い眼の憤怒相を現す密教大黒天のような破壊神で、敵対する神や人を容赦せずに殺し尽くす存在だった(密教の大黒天はトリムールティを吸収、ヴィシュヌフリンもその三神を併せた存在と設定されている)。

文禄4年、蒲生氏郷を死に至らしめた黒天は氏郷の小姓だった青年に仇として追われることになる。青年との戦いの中で黒天は人間の求める“救い”に興味を抱いて医師の曲直瀬玄朔に憑き、人を観察し始めた。その中で黒天はダグザと出会い、自身を歪めるYHVHの存在を教えられたことで共闘関係になり、貶められた悪魔たちを集めて多神連合を形成する。

その後、南光坊天海が江戸を魔界と切り離す為に発動した徳川曼荼羅の施術と江戸に残る悪魔の駆逐作戦において黒天は青年と再戦する。三日三晩に及ぶ死闘の果てに、青年が己の死と共に発動した“切札”によって黒天はクリシュナの姿に貶められ、神田の地に封じられた。


なお、神田明神にクリシュナが封じられていた理由は、クリシュナをオオクニヌシとして祭った上で同社の祭神とされるスクナヒコナマサカド公の力で合祀の形で封じたとされている。




関連タグ

インド神話 ヴィシュヌ


真・女神転生ⅣFINAL 多神連合

関連記事

親記事

ヴィシュヌ ゔぃしゅぬ

子記事

兄弟記事

pixivに投稿されたイラスト pixivでイラストを見る

pixivに投稿された小説 pixivで小説を見る

このタグがついたpixivの作品閲覧データ 総閲覧数: 729287

コメント

問題を報告

0/3000

編集可能な部分に問題がある場合について 記事本文などに問題がある場合、ご自身での調整をお願いいたします。
問題のある行動が繰り返される場合、対象ユーザーのプロフィールページ内の「問題を報告」からご連絡ください。

報告を送信しました