「────その時、Ziに風が吹く」
概要
2004年10月から2005年4月までテレビ東京系列(全6局)にて放映されたアニメ作品で、全26話放送。海外では日本に先んじて2003年10月4日から2003年12月27日まで公開されていたが、アメリカでは第13話で早々に打ち切られてしまっている。
アニメの制作は「東京キッズ」が担当しており、『ゾイド-ZOIDS-』から『機獣創世記ゾイドジェネシス』までのアニメ四部作のなかでは、唯一XEBECが関与していない作品でもある。
前作『ゾイド新世紀/ゼロ』と同様に各チーム間で行われるゾイドバトルを主軸としたストーリーであるが、あちらと異なり「チーム同士の抗争」「ゾイドを利用して起きる事件」の方が多く描かれており、正式なゾイドバトルを行った回は意外と少ない。「何でも屋をする主人公チームがゾイドバトルを含めたさまざまな依頼や騒動に立ち向かう」と言った方が近い。
一方、ブロックスゾイドとの合体(ユニゾン)という新たな要素を取り入れた意欲作でもある。
- しかし、「小型ゾイドとの合体」というコンセプトは旧シリーズから存在しており、(凱龍輝とのコンセプト上の類似点も少なくない)ゴッドカイザー、バトルクーガー、ブロックスゾイドの先輩に該当するTFゾイドの他、ブロックスの直近で有名なものではディロフォースやグランチャー(と合体できるバーサークフューラー)などが著名な事例として知られる。
前作までの設定や世界観は引き継がれておらず、国外では「/0」のヒットを受け北米圏向けに製作された(玩具もハズブロ社が発売していた)。日本国内での放送時の世界観はそれまで誌面と玩具のみで展開していた『ゾイドバトルストーリー』との繋がりが雑誌類で言及され、歴代で初めて舞台となった「東方大陸」は同作の設定から輸入している。キットの紀年法もバトルストーリーと同じ「ZAC」が使われる。そのため、同じゾイドバトルでも『/0』とはルールなどが大きく異なるものになっている(参加者の名称が「Ziファイター」、スタジアム内で行う、ジャッジマンが存在しない、など)。
また、「三体の古代虎」と世界観を共有していると判明している。ゲーム作品「ZOIDS VS 3」では、二作品のゾイドが並行して登場している。尚、古代虎編はゾイドバトルストーリーの「第二次大陸間戦争」(ZAC2109年の、元閃光師団レイ・グレックのゼロファルコンVSネオゼネバス皇帝ヴォルフ・ムーロアのエナジーライガーの最終決戦)の後の話であるが、フューザーズの劇中ではセイスモサウルスの主砲(ゼネバス砲)で呼称されたに留まる。
バトルストーリーとの繋がりはほとんど裏設定のようなものであり、本編でそれを示唆する描写はほんの僅かだが、放映当時の雑誌やメディアミックスではこれを反映した設定も公開されていた。
また、本作の音楽監督ならびに主題歌の作詞・作曲を小室哲哉が手掛け、オープニングテーマ『Enemy of Life』を宮迫博之(クレジットは「2am」名義)が歌った事でも有名である。
しかしながら、放送局をTBS系列(ホスト局は毎日放送。ただしテレビ山口は放送せず)からテレビ東京系列に移籍し、放送局を絞った結果、以前のアニメ作品シリーズと比較して幾分かマイナーになってしまった感がある。
評価
- 元々海外向けに制作され、日本国内での放映予定はなかったという事情もあり、放送当時は、キャラクターデザインやCG技術などの差異、特徴的なオープニング曲から拒否反応を示すファンが多く、かなり過小評価されてきたという不遇の作品であり、実際にRDが歴代の主人公で唯一商品展開から外されるという悲しい出来事もあった。
- しかし、前作までのCG技術は人事の問題などによって実質的に再現不可能であり、作画や表現なども制作会社が異なるなどの事情があって法的にも前作を踏襲することが難しい事情もあった。
- 『ゾイドジェネシス』も大幅に作画や作風やゾイドの挙動を変更しているなどのことや、細かい部分も含めれば過去作へのオマージュが散見される事もあり、「よく見ると悪くない」という評価をするファンも少なくない。そのため、この度の配信を固定概念を捨てて視聴する事をお薦めする。
- 他のシリーズと比較して光沢のあるCGが使われており、放送時のキットもメタリック風や光沢仕上げのものが多い特徴を持つ。
ストーリー
ZAC2230年。
惑星Ziの東方に位置する大陸にあるブルーシティで、少年RDは伝説のゾイド『Alpha Zoid』を発見することを夢見ながらゾイドバトルチーム「マッハストーム」に所属し、チームメイト達と“何でも屋”を営むかたわらゾイドバトルの出場を目指す日々を過ごしていた。
そんなある日、あるゾイドバトルのエキシビションマッチでゾイド同士が合体することで強大なパワーを発揮する「Ziユニゾン」と呼ばれる現象が公表され、その性能は惑星Zi中に知れ渡ることになる。それ以降、ゾイドバトルファイター「Ziファイター」達は、自分のゾイドとZiユニゾンが可能なゾイドを求め、惑星Ziを探索し始める。
そしてRDの相棒で父親の形見であるライガーゼロもまた、苦難の末に野良ブロックスゾイドのファイヤーフェニックスとのZiユニゾンに成功し、ライガーゼロフェニックスへと合体を果たす。
マッハストームはゾイドバトルに出場し勝ち進むべく強豪たちと渡り合い、ブルーシティを拠点に躍進していくが、それはやがて惑星Ziの未来を賭けたある野望との戦いへと繋がっていく……
ゾイドの表現
- 本作では登場ゾイドのうち一部が、従来の改造機がデフォルトの機体として扱われている。他の登場ゾイドを含め、ガトリングやバルカンを装備する機体の登場頻度が高い。
- 各種媒体における設定では、RDのライガーゼロは(バトルストーリーに準拠しており)「100年以上前の大戦でコアに大きな負担がかかるB-CASを用いたゾイドが投入されたが、それらは大戦後に殆ど死滅した一方で、このゼロは生き延びることができたほどに極めて強力なコアを有した長寿な個体」とされ、ライガーゼロという種類自体が絶滅しかかっているとまでされる。そのため、RD達が知名度を上げるまではライガーゼロという種類を知らなかった一般市民もいた。
- 「ホロテック」仕様のゾイドも登場する。
- 本作では、(法的な問題からか)これまでのビームやレーザーなどのエネルギー弾の配色が変更されており、とくに荷電粒子砲は、ジェノザウラーのものとセイスモサウルスの「ゼネバス砲」以外は「バトルストーリー」準拠の黄色に変更された。
- 通常はEシールドを装備していないゾイドにもEシールドが装備されている場合があり、各Eシールドの描写がこれまでになく多様化している。これらの描写は『ゾイドバーサス』などのゲーム作品にも一部が導入された。
- バーサークフューラーのバスタークローの描写(荷電粒子砲の発射能力の有無、Eシールド使用時のバスタークローの展開方式)も描写が前作から変更されている。
- マスクマンがコマンドウルフのストライククローをストライクレーザークローにアップグレードしていたり、ガミーがゴジュラスギガの舌のモールドをビームガン兼ネットランチャーにしていたり、ブレードの凱龍輝がエレクトロンバイトファングを使用していたり、ロジャーのジェノザウラーやギルバートのレッドホーンがハイパーキラークローやクラッシャーホーンにエネルギーを纏わせているなど、キットにおける武装やモールドを拡張している場合が見られる。
- グラビティーゾイドのワープ(次元移動)能力、エナジーライガーの各種能力、凱龍輝の各種能力、キラードームの各種能力、ブラキオレックスの火炎放射器、マトリクスドラゴンの光の翼や火炎放射器やチェーンソーからの衝撃波など、アニメ版独自のゾイドの能力も多数見られる。
- 本作の世界観では、通常のゾイドとブロックスゾイドの生命としての境界は曖昧な様であり、ブロックスも野生で棲息しているケースが少なくない。また、ファイヤーフェニックスの死亡後に昇天する様子があり、その後にフェニスという意味深な少女が現れたり、巨大なフェニックスのオーラが浮かび上がりレジスタンス側のゾイド達がパワーアップするなど、これまでのゾイドの範疇を超えた描写がされている。
- 「ゾイドや人間の霊魂」や「ゾイドとゾイド人の生物的な繋がり」は過去のシリーズでも描写されてきたが、「ゾイドから人間への転生」や「ゾイドの霊魂が物理的に超能力やエネルギーを発生させて存命のゾイドに力を与える」というのは過去には見られなかった。
- また、ジェットファルコンが遺跡で石化していたことからも、この世界観(=バトルストーリーの世界)ではブロックスも古代から存在していたことがうかがえる。
- Ziファイターが身に着ける手甲型アイテム「Ziコンガントレット」が登場。前作のゾイドギアに相当するアイテムであり、現代で言うスマートキーのような起動キーの役割を果たす他、遠方からゾイドを呼び出したり、ユニゾンする際にも使用する。
Ziユニゾン
かつての大戦(バトルストーリー)で用いられた「B-CAS」は相性を無視してゾイド同士の合体ができる一方、ゾイドコアへの負担が尋常ではなく、大戦終結後はほぼ全てのB-CAS搭載ゾイドが死滅してしまった。
それでもなお、フューザーズの時代まで生き抜けるほどの強力で希少なコアを有する個体の1つが、主人公・RDや彼の父が乗ったライガーゼロであった。
大戦終結から時は流れ、ブルーシティがゾイドバトルのメッカとなった後、相性のいいゾイド同士に限り「制限時間」という条件(ゾイド自身が自分達の身を守るための言わば自己防衛本能)の下で再び合体現象を起こすようになった。これがピアーズ博士により「Ziユニゾン」と呼ばれるようになる。
また、ユニゾンゾイドの殆どは火力の増強の他、Eシールドを用いることができるようになる模様。その一方で、パーツの接続部は負担がかかりやすく、集中攻撃に弱いという特徴も併せ持つ。
そのような事情もあって、ユニゾンゾイドの強さは必ずしも絶対的なものではなく、ユニゾンせずとも特殊な装備や能力を持つゾイドには、あえなく敗れてしまう事もあった。
キャラクター
チーム・マッハストーム
主人公が所属するチーム。「なんでも屋」で生業を立てつつゾイドバトルも行っている。
かつてはチャンピオンチームであったのほどの強豪チームだったが…
チーム・サベージハンマー
ライバルが所属するチーム。オーナーのサンドラが裏社会に通じる人間のため、チームも裏社会と接点がある。
しかしサベージハンマーには裏社会との繋がりを持たせた協力者と内通者がおり…
ブルーシティ治安局
チーフのガミーが搭乗するブルーシティの守護神たるゴジュラスギガを筆頭に、街の治安を守る警察組織。
チーム・ブラックインパクト
チャンピオンの座に就く王者チーム。ラスターニがリーダーとオーナーを務める。
しかし、ユニゾンゾイドであるキラースパイナーに敗北した一戦以降は不穏な動きが…
チーム・ドラールス
ユニゾンゾイド・キラースパイナーでゾイドバトルをするためブルーシティへ来訪してきた。
バートンによりマッハストームとのマッチが図られ…
クラッシャーズ
最強の4体ユニゾンゾイドを完成させるべく、適応可能なレオブレイズを探し求めている。
サベージハンマーが打倒マッハストームのため彼らを雇う。クラッシャーズには、バスターフューラーやゼロフェニックスをも上回る最強ゾイドを誕生させる策があるようだが…
サクイの民
ゾイド以外の機械とは殆ど縁のない国「サクイ」から訪れたものたち。
リヒタースケールに雇われ、RDとブレードに闘いをしかけてくる。
リヒタースケール
莫大な資産を持つ組織。登場するのは中盤以降からだが、実は様々な形で序盤からRDやブレードに接触している。
真の目的は「究極のゾイド」を完成させ、その力で人やゾイドなど惑星Zi全土を支配・統率する「オペレーション・ジェネシス」。
その他
- ハルド(グスタフ)
- ボーン(ブラキオレックス)
- サマンサ(ミサイルトータス)
- ジーン・ホリデー(アロザウラー)
- キッド(セイバータイガーホロテック)
- マービス(シャドーフォックス・スティルアーマー・ザバット・ガンスナイパー)
- ロジャー(ジェノザウラー)
- サラ(レイノス)
- ギルバート(レッドホーン)
- ドク(ヘルキャット)
- ピアーズ(エナジーライガー・レイコング)
- フェニス(???)
関連作品
本作と前後して発売された各種ゲーム作品(『ゾイドサーガ』『ゾイドバーサス』など)は本作の影響を受けており、新キャラクターのデザインが本作準拠に変更されたり、ライオン型ゾイドの声や一部のゾイドの挙動などが変更されている。
余談
- メカボニカがトランスフォーマー同様に、国内よりも米国で人気を博して地位を築き「ゾイド」という名前を得て日本に凱旋した事を考えれば、アメリカ発のメディアというのはハズブロ同様に、ある意味では「かの地に凱旋した」とも言えるのかもしれない。
- 本作にも『ゾイド新世紀/ゼロ』にもライガーゼロイクスは登場していない。本作では他の3種の「CAS」については言及されたが、イクスは描写されなかった。RDのライガーゼロが、若干の違いこそあれど共和国のカラーリングに近いためなのかもしれない(一応は、共和国仕様のイクスユニットも存在する)。
- CM前後のアイキャッチはゾイド+人間のセットで毎話描きおろし。使い回しは一切なく、CMの前と後で1枚ずつ、全26話分で計52枚存在するという力の入れよう。その話限りの登場人物は必ずアイキャッチに描かれており、例えば盗賊団とブラキオトータス、犯罪者とダブルソーダ、レナートと試作型キメラユニットなどもある。
- ゾイド同士の合体である「Ziユニゾン」を主体に置いているため、ゾイドの合体バンクは勿論のこと、変形機能を持つゾイド(ディスペロウ、レオゲーターなど)の変形バンクも豊富に挿入されている。ゾイドシリーズのアニメの中で、合体・変形バンクは最も多く演出も凝っており、1話限りしか登場しないゾイド(ブラキオトータスやダブルソーダなど)の専用バンクさえも存在している。
- 本作でのユニゾン機は、作中で初めて登場したユニゾン機であるキラースパイナー以外はすべてブロックスゾイドを用いている。また、Ziユニゾンを行うゾイドの多くが飛行能力を持つブロックスとの合体であった。
- バトルストーリーと世界観を共有しているため、バトルストーリーで軍が戦場に投入していた「B-CAS(ブロックス・チェンジング・アーマー・システム)」がこの世界にも存在していた一方で、本作ではそれとは似て非なるものとして「Ziユニゾン」が登場している。
- アニメ放送当時の書籍によれば、「B-CAS」は通常ゾイドとブロックスゾイドのそれぞれのコアを共振させて圧倒的出力を叩き出す仕組みとなっているが、それはゾイドへの負担があまりにも大きすぎ、大戦後ではその負担故にB-CAS搭載ゾイドは殆ど生き残ることはなかった。「Ziユニゾン」は、B-CASと違ってゾイド自らが自身達のコアへの負担を抑えるために、「相性の良いゾイド同士でしか合体できない」「ユニゾンには制限時間が設けられる」といった条件の下で、まるでゾイドの自己防衛本能を伴うかのように発現するようになったとされている。また、B-CAS時では合体しても使えるようにはならなかった「Eシールド」がZiユニゾン体ではほぼ共通で使えるようになるというのも、違いの一つだろう。
- とある場面で、なんとデッドボーダーがモブとして登場している。
- リノン・トロス仕様のガンスナイパーもモブとして登場している。
- シールドライガーやゴジュラスなどは登場しない。
関連動画
(他の作品同様、光量を調整しているために一部の場面が暗くなっている)