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ミッドサマー

みっどさまー

2020年2月21日に日本公開されたアメリカ・スウェーデン合作映画。 原題は「Midsommar(ミッドソマー/ミッドソンマル)」。
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祝祭 はじまる

ミッドサマーファンアート


概要

2019年7月に公開されたアメリカ・スウェーデン合作映画(日本では2020年2月21日公開)。監督は「ヘレディタリー/継承」のアリ・アスター

配給元はホラー映画と打ち出しているが、監督が言うように恋愛映画的要素も含まれる。


ホラー映画といえば暗闇や見えない恐怖。しかし本作の舞台は一日中太陽が沈まない白夜のスウェーデンであるため、明るいが故に全てが見えてしまう恐ろしさを体感できる。


あまりに攻めすぎた内容から本国アメリカでは17歳未満視聴禁止、後に保護者同伴で視聴可能となる。日本では一部シーンに修正を加えてR-15指定に。

後に20分ほどの未公開シーンが追加されたR-18指定のディレクターズカット版が2019年8月17日(日本は2020年3月13日)に公開。


あらすじ



以下、本作のネタバレを含みます。



主人公は女子大生のダニー・アーダー。彼女の妹が両親を道連れに無理心中したことで天涯孤独の身となり、自身も精神を病んでしまう。

ダニーの恋人クリスチャンは、元々依存気味だった彼女をどこか疎ましく感じつつ、ダニーの家族の件もあって別れられずにいた。

事件の半年後、クリスチャンは同じく卒業を控えたペレ、ジョシュ、マークと共に男友達だけで行く予定だったスウェーデン旅行に(嫌々ながら)療養も兼ねてダニーを誘う。企画立案者のペレだけはダニーを歓迎し、自分の故郷「ホルガ」キリスト教伝来以前から伝わる土着宗教の祭礼「ミッドサマー(夏至祭)」があると伝えた。


涼しい風、花咲く野道、命あふれる季節。午後九時になってもまだ明るく美しいスウェーデンで、草原で寝そべりながらハッパを燻らせる。まるで天国のような風景で過ごす彼らだが、心身共に癒えることのない傷を負ったダニーはふとしたことから強迫観念に囚われ自身を見失ってしまう。

遠い北欧の楽園でも、彼女の心に染みついた地獄は払拭できなかった。


ホルガに着いた一同は、村人に暖かく迎え入れられる。見知らぬ果実に見知らぬ料理、美しい村の娘たち。男達は浴びるように酒を飲み、女達は花を摘み布を敷き料理に精を出し、娘と子供は手を取り合って踊り狂う。

歌は歌詞も意味も分からず、テレビも電波もない不便な地ではあるが、どこまでも続く朗らかで牧歌的で美しい祝祭に、ダニー一行も魅了されていった。


ペレ「ホルガでは命を季節に例える。産まれてから18歳までは芽吹く、18歳から36歳までは伸びる、36歳から54歳までは肥え栄える、そして54歳から72歳は皆の師となる

ダニー「72歳からはどうなるの?」

ペレ「………」

彼が沈黙したのは、後述の儀式のことが関係しており…。


そして、昼夜の境も見えぬまま翌朝を迎えた一同は朝食の席に招かれるが、そこで奇妙な光景に出くわす。村の中心に築かれた黄色い教会(神殿)から、青く継ぎ接ぎだらけの服に身を包んだ老人と老女が現れ、長老でも主催でもない彼らが最上席を占めた。

不可解に思いながら行く末を見送るダニーだったが、やがて老いた男女は神輿のようなものに担ぎ上げられ、崖の上に連れて行かれる。


すると、聴衆の目の前で自ら崖を飛び降りた


老女は顔面が潰れて即死したが、老人は脚から落ちたため両脚が潰れただけで済むものの、今度はを持った村の娘がその場で老人を撲殺し、顔面を粉砕した。

信じられない光景を目の当たりにしたダニーたちや他の旅人は激しく動揺。

ある者は騒ぎ、ある者は目を背け…ある者は精神が限界まで追い詰められた。我慢ならなくなった一人が主催者の一人に怒りをぶつけると、その者は


「彼らはもう充分に生きてきた、その名前と魂は村の新しい命になって蘇る。死をあるがまま任せてただ待つだけの生は心と魂を腐らせてしまうが、ホルガでは不滅である。この魂の再生こそがホルガなのだ」


魂の復活と再生を謳うホルガは、ダニーたちの常識が全く通用しない土地だった。


ようこそ、明るい地獄へ!

祝祭が始まる


解説

全編に渡って「恋愛ロマンス」「サイコスリラー」「田舎パニック」等の要素が複雑に絡み合い、主人公のダニーたちを徹底的に追い詰める演出に目が行きがちな本作。

だが、文化人類学・民俗学などで確固として裏打ちされた祝祭の真意、徹底して作り込まれた脚本や演出から、この夏至祭(ミッドサマー)の真意が再生にあり、劇中のありとあらゆる台詞や演出が復活や転生を示唆していることが分かる。

これらの見地は、ジェームズ・フレーザーの著作「金枝篇」やJ・バッハオーフェンの「母権制論」などの影響が見られ、監督の深い知識を感じさせる。また、この映画に登場する夏至祭で行われている行事のほとんどはキリスト教伝来以前、実際に古くからヨーロッパ各地で行われてきた風習であり、クリスマスやハロウィンを通じて今も息づいている文化の源流でもある


監督はこれらの古流ペイガニズムを、前作「ヘレディタリー」のように「淫祠邪教」として描くのでもなければ、ネオ・ペイガニズムのように神聖化する訳でもなく、かといって牧歌的で治めることなく歪さや異質さを極限まで引き延ばして描いており、視聴者の恐怖感を余すこと無く刺激してくる。


エンタメとして見るのもよし、ファンタジー等の創作に興味のある方は「異なる宗教、死生観、世界観を持つ者同士が共に存在する状況とは、どういうものか=異世界とは何か」という観点から視聴するとより楽しめるだろう。


登場人物


あらすじ同様にネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。



メイクイーン

演:フローレンス・ピュー

声:井上麻里奈

本作の主人公。詳しくは個別記事へ。


  • クリスチャン・ヒューズ

演:ジャック・レイナー

声:前野智昭

ダニーの恋人。イケメンだが優柔不断な性格。何事にも熱中できず、卒業を控えているのに論文のテーマさえ決められていない。

表向きはダニーに寄り添うが、実際は情緒不安定な彼女と別れたがっているようで…。


終盤ではある形でダニーを裏切り、彼女からの報復を受けることに。だがそれらはホルガ村の人々が手引きをしていたため、加害者にして被害者でもある。


  • ペレ

演:ヴィルヘルム・ブロングレン

声:落合福嗣

ホルガ出身の青年。穏やかな性格で自分の故郷を心から愛している。

絵が得意なようで、ダニーに誕生日プレゼントとして似顔絵を渡していた。

彼女を異性として意識しているような描写もあり、ダニーがホルガの習俗を恐れてパニックを起こすと、真摯な態度でホルガを擁護して帰らないようにダニー(と視聴者)を説得する。

今回の旅行の企画者であり、ある意味諸悪の根源とも言える。


  • ジョシュ

演:ウィリアム・ジャクソン・ハーパー

声:濱野大輝

クリスチャンの友人。専攻は文化人類学で卒業論文を制作中。

ホルガで見聞きした出来事を実地研究として論文にまとめるつもりであり、旅の企画が立ち上がるきっかけとなった。

専攻分野には明るく、劇中では数少ない「外部の人間」にして「事情通」として説明役を担う。だが物語の中盤で聖書「ルビ・ラダー」の存在を知ると…。


  • マーク

演:ウィル・ポールター

声:沢城千春

クリスチャンの友人。良くも悪くもごく普通の大学生で、スウェーデンの白夜に文句を言うなど、ことあるごとにホルガの地雷を踏んでいく。

あるシーンではホルガの朽ちた霊樹で用を足してしまう。

ちなみにこの霊樹は遺灰を治めるための大切な存在で、村の人々の怒りを買ってしまい…。


  • サイモン

演:アーチー・マデクウィ

声:三瓶雄樹

イギリス出身の青年。婚約者のコニーと共にイングマールに連れられホルガ村を訪れた。ダニーとクリスチャンとは対照的に、コニーとの仲は良好。

ホルガ村の異常な風習に声を上げて批判するなど、来訪者でもまともな感性の持ち主。


  • コニー

演:エローラ・トルキア

声:丸山ナオミ

サイモンの婚約者。イングマールとデートしたこともあったが、彼女にとってはそのつもりはなかったとのこと。

サイモンと同様に儀式で恐怖を感じ、そのまま二人で帰ろうとするが…。


  • イングマール

演:ハンプス・ハルベリ

声:峰晃弘

ホルガ出身の青年で、ペレとは親友の間柄である。最近までイギリスに留学しており、そこで出会ったサイモンとコニーを今回の夏至祭に招待した。

ペレと共に人が良さそうな好青年だが…。


  • マヤ

🥀

演:イサベル・グリル

声:なし

ホルガ村の女性でペレの「妹」。どこかミステリアスな雰囲気を纏った赤毛の美女。

予告では目立つ存在だったが、劇中では台詞が数えるほどしかない。

過去にペレからクリスチャンの写真を見て彼に一目惚れしており、アプローチする場面も多々ある。しかしその方法は…。


  • シヴ

演:グンネル・フレド

声:今泉葉子

ホルガ村の老女。長老の中の一人で、おそらく彼女が実質的な村の長だと思われる。

今回の夏至祭では進行役を務めており、穏やかで落ち着いた性格。しかしその言葉の端々から、シヴ自身も村の狂気に染まりきっていることが窺える。


  • ルビン

演:レベンテ・プツコ・スミス

声:なし

ホルガ村の少年。あることが原因で障害を抱えている。村の中でただ一人、村の聖典である「ルビ・ラダー」を書くことを任される存在。


  • インガ

演:ジュリア・ラグナーソン

声:高宮彩織

ホルガ村の女性。女好きのマークに一目惚れされ、彼女の方も満更でもないのか食事の最中にマークを「見せたいものがある」と言って連れ出す。


  • ウルフ

演:ヘンリク・ノーレン

声:真木駿一

ホルガ村の男性で、村の霊樹を管理する役目を任されている。感情的になりやすい性格なのか、マークの件で激怒した時には大声で泣き崩れていた。その後の食事中にも彼を常に睨みつけており…。


  • アルネ

演:アンダース・ベックマン

声:栗田圭

村の長老の一人。シヴと同じく夏至祭の進行役を務めることもあり、「ルビ・ラダー」の解読と管理をしている。

取材を重ねるジョシュに「ルビ・ラダー」についての丁寧な解説をするが、その写真を撮らせてほしいという申し出に対しては「絶対にいかん」と強く釘を刺していた。


  • カリン

演:アンナ・アストロム

声:前田玲奈

ホルガ村の女性。同世代のダニーに対して友好的で、メイポール・ダンスでお互いの健闘を祈るなど親しい関係になっていく。


  • ダン

演:ビョルン・アンドレセン

声:なし

72歳を迎えたホルガ村の老人。予告PVにも登場。同じく72歳の老女イルヴァと共に、ある儀式の主役を務める。

演者は「ベニスに死す」で稀代の美少年タジオを演じたビョルン・アンドレセン


用語

  • ホルガ村

ミッドサマー観てきた記念

スウェーデン・ヘルシングランド地方の山奥にある村。

ストックホルムの空港に着いて車で4時間、舗装道路のない曲がりくねった山道を徒歩で行くとようやく到着する。公共の電波が届かない場所にあり、電話などの通信手段は使えない。電力は水力発電でまかなう。

数百年の歴史があるコミュニティらしく、主な産業は木材や麻製品の栽培、酪農をしている描写も見られる。

村人全員が古来より伝わる独特の信仰を恐ろしいほど忠実に守り、一般社会とはかけ離れたルールや死生観の中で生活している。しかし劇中ではアメリカ映画の上映会を行うなど、ある程度一般的な娯楽も存在している模様。


  • 夏至祭

夏至祭

スウェーデンをはじめ、ヨーロッパ諸国では多くの地域で夏至祭が行われている。だが本作におけるホルガの夏至祭は90年に一度にしかない特別なものらしい。

しかしながら劇中では様々な行事や儀式が行われるものの、どれが90年に一度の催しなのかは明確になっていない。


  • 命のサイクル

ホルガ村では人生は四季に例えられている。

0歳から18歳は子供の春、18歳から36歳まではペレやイングマールのように村の外で巡礼(留学)をする夏、36歳から54歳までは労働をする秋、54歳から72歳までは長老たちのように人々の師となる冬とされている。村人はそれぞれの季節ごとに別々の建物で就寝している。

ペレはダニーから「72歳からはどうなるの?」と聞かれるも言葉を濁し…。


  • タペストリー

村の建造物の壁は主に儀式の様子が描かれた絵画で埋め尽くされているのが特徴。他にはラブストーリーの漫画らしきものもあるが、よく見ると通常の感覚ではドン引きしかしないような内容である。


  • ルビ・ラダー

ホルガ村における聖典。具体的な内容は不明だが、長老は「感情の楽譜のようなもの」と語る。

村では障害を持って生まれた者は「ルビン」と名付けられ、賢者として唯一ルビ・ラダーを書くことを任される存在に。

常に代々のルビンの手によって書き続けられており、それを長老たちが解読している。実際に書かれている場面があるものの、ただ毒々しい色の絵の具を手で塗りたくっているだけのようにしか見えない。

ジョシュは「もしルビンが死んだら、次のルビンが生まれるまで待つのだろうか?」という疑問を持つが…。


  • メイポール・ダンス

ミッドサマー

ある御伽話になぞらえた儀式のひとつで、劇中ではダニーも参加することになる。

村の広場にあるメイポールというオブジェを若い女性だけで囲み、音楽に合わせて踊り続けるという内容。途中で疲れたりぶつかって転倒したりすると脱落扱いとなり、その場から離れなければならない。

最後まで脱落せずに踊っていた一人が優勝者となり、その年のメイクイーンとしての地位を得られる。

少なくとも去年も行われているようで、ダニーたちが就寝していた家の中では歴代のメイクイーンの写真が飾られている。


関連イラスト

ミッドサマー無題ミッドサマー

関連タグ

ホラー映画 アリ・アスター Midsommar(表記揺れ)


夏至 

田舎 地方 多神教 カルト ケルト

死生観 復活 再生 豊穣


金枝篇


ウィッカーマン…元祖・奇祭映画。

食堂かたつむり…明るい狂気・田舎ファンタジー・自然の幻覚的光景など様々な共通点がある邦画。こちらの場合は意図した狂気的表現ではない分、本作よりもタチが悪い。


外部リンク

日本版公式サイト

英語版公式サイト

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