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五十嵐一郎

いがらしいちろう

『五十嵐一郎』とは彼岸島に登場する大日本帝国陸軍の軍人である。偶然とはいえ、彼の実験が雅を生み出してしまうこととなる。
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プロフィール

身長167cm
体重55.7kg
特技医学
好きなことお国のために命を懸けること
嫌いなもの米国
作中での主な呼称「中佐」「五十嵐」「中佐殿」「人間」
山本龍二(映画)、鶴見辰吾(テレビドラマ)
声優山寺宏一(ショートアニメ版/彼岸島X)、千葉繁(限定版単行本30巻付属ドラマCD)


『次の空襲が来る前に、早くこの概要を読むんだっ!』

五十嵐一郎とは、1943年に『彼岸島ニオケル吸血病ノ報告』を執筆した大日本帝国陸軍中佐、軍医の五十嵐一郎軍医その人のこと。

帝国陸軍の軍事研究のために彼が吸血鬼一族の住む彼岸島を訪れ、その一族の一人である雅様と邂逅したことで彼岸島の物語が始まることとなった。



また、彼岸島のラスボスである雅様をびっくりするくらい強くした張本人であると同時に、同時に彼の不死能力を無力化できる唯一の手段である『五〇一ワクチン』を作成した人物でもある。



『雅は私の研究の唯一の成果なんだ』

太平洋戦争がじわじわと日本の敗戦に傾きつつあった大戦末期の昭和十七年十月三日、大日本帝国陸軍中佐の五十嵐一郎の耳に彼岸島の吸血鬼一族の情報が入ったことをきっかけに、来たる本土決戦への対抗手段として彼らの持つ不老不死の力を軍事利用すべく彼の実験がスタートした。


彼らの持つ遺伝性の吸血病に秘められた軍事的な価値を見出した五十嵐は数百人前後の部隊を率い、彼岸島の神社に住む吸血鬼の一族を連行。

兵士全員が吸血鬼で構成された不死身の軍隊を作成するべく島内の炭鉱を作り変えた研究所で苛烈な生物実験を開始することとなる。

(また連行の際に島の吸血鬼の一族はほぼ全員が抵抗する姿勢を貫いていたものの、「雅」と名乗る白髪の若い男だけは喜んで実験への協力を申し出ていた。)


あらゆる人体実験を繰り返すうちに判明したのは、吸血鬼は他の吸血鬼の血液を体内に入れることで免疫反応が暴走し、異なる吸血鬼同士の血液を掛け合わせることで『混血種』と呼ばれる種へと突然変異を起こす…ということ。



そして当初こそモルモットを用いて実験を行なっていた五十嵐だったが混血実験のあまりの再現性の低さから実験用動物を使い果たし、遂に吸血鬼たちを用いた凄惨極まりない人体実験がスタートした。

大多数の吸血鬼がその凄絶な拒絶反応で死亡していく中、実験体番号『四号』と呼ばれる実験体のみが耐え、その四号こそ自らを雅であると称した白髪の男だった。


しかし、一見して物腰柔らかく協力的な雅からどことなく漂う人間への敵意とその隠された狡猾さに危険を感じた五十嵐はもしもの場合を案じ、吸血鬼の血液を強制的に分離し不死の力を一時的に奪う特殊な血液分離剤『五〇一ワクチン』を作成した。



実験を進めるにつれ最終的に五十嵐の悪い予感は的中し、吸血病のウィルスは雅の体内で驚くべき突然変異を起こして、彼は遂に完全な不老不死能力を掌中に収めてしまう。

そして一回目の注射が終了したため手筈通り五〇一ワクチンを彼に投与し、実験を中止するかどうか五十嵐が決断しようとしたまさにその時、運悪く施設がアメリカ軍の空襲を受けてしまったのだった。


突如実験室内の電気が停止し、施設全体が揺れたことにより五〇一ワクチンがどこかへと転がってしまったものの、五十嵐『空爆で実験施設が破壊される前の今しかこの実験をするチャンスはない』と判断。

経過を待つことなく実験を強行し、診察台の上に拘束された雅の肉体へ続く2体分、3体分の同族の血を連続して注射した...




雅は注射終了後に勢いよく吐血し、付近に五十嵐の部下達に血飛沫が付着した。

そして彼の血液に触れた部下達全員が一瞬で即死するというただならぬ事態に驚きを隠せない五十嵐だったが、死んだ部下達が次々に吸血鬼と化して起き上がり、静止を聞かず周りにいた隊員を襲い始めたいることで最悪の事態が起きつつあることを理解していた。

そして感染した部下が部下同士を襲う地獄絵図の中、遂に雅本人が起き上がってしまう。


五十嵐はなんとか雅を説得しようと試みるが、人間への凄まじい憎悪を蚊ほども隠さなくなった彼には五十嵐の言葉は最早届くことはなく、機関銃で殺害を試みるも徹甲弾を体内で吸収した上で全て撃ち返されてしまい、部下が全滅した五十嵐は雅に慈悲と称し見逃される形で実験室を脱出した。


その後、五十嵐は雅と同じく島の吸血鬼の一族の生き残りでありながら人間に協力的な青年青山龍ノ介の協力もあり、ダミーの注射針を駆使し遂に五〇一ワクチンを雅の体に注射することに成功。

なんとか不死身の彼を一時的に無力化し、昏睡状態へと追いこむことに成功した。


しかし、これが雅を完全に始末できる最後のチャンスであると力説する龍ノ介に対して五十嵐中佐は日本が戦争に勝つために雅の力は絶対に必要であると必死に彼を説得した。

彼の身体を山中にある陸軍用の極低温の冷凍庫に封印した。

(またその際、もしこの先で雅が封印を破った場合のために龍ノ介に大型獣用連続注射器を託している)


そして五十嵐本人はその後長らく生死不明となってしまい、第二次世界大戦の終戦から半世紀近い年月が流れた彼岸島本編では既に故人であると思われていたが___



戦争終結から60年後...




『ホントねホントね!

やくそくよやくそくよ!だんなさん!』


そしてその後戦後六十年余りが経ち、雅を倒す鍵となる五〇一ワクチンを求めて炭鉱内部へと侵入した宮本明たち一行の前に、なんと吸血鬼と化した五十嵐中佐が現れたのだった。



戦前の彼は軍人としての矜持と誇りに満ち溢れていたものの、雅の封印に成功したものの五十嵐は崩れ落ちる炭鉱の中に閉じ込められてしまい、その上先ほどの戦闘で感染した部下達に襲われて吸血鬼ウィルスに感染してしまう。


そして以後の五十嵐は渡り光の刺さない炭鉱に閉じ込められ、六十年に渡り百目の邪鬼たちやお姫様に追われながら孤独に生きてきたために人格が一転し、そのプライドに満ちた性格もまるで別人のように変わってしまった。

しかし彼はそれでも「お国の為、日本国民の為」という信念は捨てておらず、百目邪鬼の爪に引っ掻かれ重傷を負ったユキの血液との交換条件で治療することとなる。


明の怪我を治療した後は、炭鉱を抜けた先の湖にてユキと冷の裸を覗いていた時に明たちと再会。

一本背負いで冷に投げ飛ばされ、彼女に危うく殺されかけるも明が静止し、九死に一生を得た。



そして五十嵐は現在は五〇一ワクチンが邪鬼が巣食う研究所内にあること、五十嵐一人ではまずそこまでたどり着けないことから道中の道案内を買って出る代わり、安全にそこに辿り着くために明達の力を借りたいと提案を行う。


封印を破り復活し、五〇一ワクチンを破壊せんとする雅様の部下宮本篤より先に件のワクチンを手にいれるべく、五十嵐&宮本明達一行は一時的に手を組んで炭鉱の最上階層にあるという研究所を目指すこととなる。



しかし、明達が研究所内に足を踏み入れた時には既に遅く、洞窟の入り口には大量の吸血鬼の死骸が散乱しており篤が明達の遥か先へと到達してしまっていることは明らかだった。

...が、が向かったと思われる道をちらりと見た五十嵐はニヤリと笑い、明に向かってこう告げた。



『だんなさんにも勝ち目あるよ』


五十嵐がすぐ傍にあった床の大岩をどかすと...

そこには隠し通路への扉が巧妙に隠されていたのだった。


『全然早く着く 秘密のルートがあるね

かなり危険だけど、だんなさん望むなら私案内するよ』


明達は彼のその提案を飲み、危険だが篤の通るルートより圧倒的に早く着くという秘密の抜け道を通り先回りを試みることにした。

しかし『ただ、もしこの先に進むなら...』と前置きした五十嵐は明達にあることを忠告する。


『この先に棲む炭鉱の姫には、絶対に目を合わせないこと。いいね?』


炭鉱のお姫様



五十嵐が案内した先にあったのは、巨大な縦穴だった。

老朽化した螺旋階段がついた縦穴のすぐ上層に、そのワクチンの置かれた研究所があるという。


そして急いで階段を上がる達の存在に気付き、縦穴の下から巨大な轟音と共に迫りくる規格外のサイズの邪鬼炭鉱の姫がその姿を現した。


数百メートルの巨大なムカデのような巨大な化け物が、達が階段で上へ上へと登ぼるそのすぐ横をゆっくり通過していき、濃硫酸の体液を身体中から噴き上げながら上へ上へと登る彼女の様子に怯えつつも目を塞ぐことで明達はなんとか姫をやり過ごすことに成功する。


しかし、明が壁を破り侵入した百目型の邪鬼に掴まれたことでなんと上方にいた姫と目が合ってしまう。

なんとか間一髪のタイミングで頂上へと駆け込み、そして頑丈な閂を叩き斬って鋼鉄の扉の奥に逃げ込んだ明達は怒り狂う姫の追跡から逃げおおせた。


五十嵐一郎の最期


姫の追跡からなんとか逃げた明達の目に留まったのは『地下五』と書かれた看板だった。

ようやく五十嵐の元研究所へとたどり着いて安堵した明たちは、篤に先を越されていないかどうか心配の念を抱きつつも五〇一ワクチンが保管されているという地下2階へと歩き続けていた


しかし、その道中にて『もし、ワクチンが手に入ったら...少しだけ飲ませてほしい』と若干噛み合わない会話を繰り返す五十嵐に戸惑う明たち。

それもそのはず、五十嵐本人が60年前に作成した調査報告書によれば五〇一ワクチンは雅が暴走した場合に能力を封じるための薬に過ぎず、既に吸血鬼化した人間を元に戻す効果など存在しないのだ。


彼ら炭鉱の吸血鬼達に外部からの助けはなく、暗い洞窟の中である日突然邪鬼化する身となっても五十嵐だけは『あの五〇一ワクチンさえ飲めばきっと人間に戻れる』という希望を抱くことで、極限の状況下であっても正気を保てていたのだろう。


目の前で嬉し涙を流す老吸血鬼に、明達は次第に同情に似た感情を寄せ始めていた。



『よかった…

ずっとずっと、人間に戻れる日を待ってたね』


『それだけのために私、生きてきたね…』


そして入り組んだ構造や瓦礫に四苦八苦しながらも遂に明達は目的の部屋へと到達し、五〇一ワクチンが保存されている部屋へと進む。

しかしその瞬間、闇の中から姿を現したフードの男宮本篤日本刀による一撃で五十嵐中佐の首が宙を舞った。

斬り飛ばした五十嵐の首を一瞥した篤は淡々と言い放った。



『何もこの場所に詳しいのはその男だけではない』


篤は六十年前にこの研究所に居た雅からこの五十嵐研究所内の構造を事前に伝えられており、最短距離を吸血鬼の脚力で走ることで明達さえも追いつけない速度で目的の部屋へと到着していたのだった。


そして篤の手には五〇一ワクチンが既に握られており、宮本明はそれを巡って彼と戦闘となるものの吸血鬼の身体能力で超強化された篤に明は手も足も出ず、冷の命と引き換えに助かった明はその場を後にした。

また、篤からの提案により一週間後にワクチンを巡っての一対一の決闘を行う事となった明は更なる戦いへとその身を投じることとなる...



『なに言ってるね!余談はとっても大事よ』

なお、映画版の彼は雅を封印するも即座に自身の感染を悟り、完全に吸血鬼化する前に切腹

自決を果たした五十嵐一郎の死体はミイラのようになり、吸血鬼として蘇ることはなかった。


先生ェが剽軽なタイプのおじいちゃん吸血鬼を割と気に入っていたのかは定かではないものの、この炭鉱編のずっと後の五重塔での決戦の際には隊長と呼ばれる雅様の親衛隊の老吸血鬼が明と行動を共にし、以後は最後の47日間においても超重要な相棒ポジションとしてたびたび登場する事となった。



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