概要
「地震」とは地下で起きる岩盤の「ずれ」により起こる自然災害であるが、ここにいう「人工地震」とは人の手により人工的に起こされる大地の震動である。地下構造の把握をするためなどに、この手法が使われることがある。
自然地震と人工地震の違い・デマ
結論からいえば爆発物などを使って人工的な地震を作り出すことは可能ではあるが、ある程度以上の規模の地震を作り出すことは不可能に近い。また、自然地震と人工地震は専門家が見ればすぐに見極めることができる。
しかし、ネット上などでは大地震などが起きるたびに「あれは人工地震だ!」というデマ情報が多く流れており、その多くの根拠が一方的でこじつけである。
- 「人工的な地震」は「地下に大型の爆発物を埋設」したうえで爆発させねばならない。ある程度の範囲で体感できる程度の揺れを起こせる爆発物と言えば、核爆弾以外には考えにくい。
- 人工地震として仮に地中奥深く掘って核爆弾を埋設しようとしても、掘削には多額な費用(予算数百億円)を要する
- 掘削機で堀れたとして、人工的にキロ単位で穴を掘るのは非常に困難である
- 世界最深でも12kmが限界であり、それ以上の深い穴を掘った記録はない上、一生懸命掘ったとしても10km程度未満が限界であることが殆どである
- 誰にも気づかれずにキロ単位で深い穴を掘ることは不可能である
- 仮に深さ10kmの深い穴を掘ろうとしても、ある程度の深さにまで到達したら、掘削機が耐えられなくなって壊れてしまうことが殆どである
- 自然地震は深さ10km~700km程度までの深さで発生していることが多く、『東北地方太平洋沖地震』での震源の深さは24km・2022年福島県沖地震の震源の深さは57km、世界最深でも700kmを超える地震も発生したことがあるなど、人工的に掘った深い場所とは殆ど比較にならない程の深さで発生している
- 「震源の深さは切りのいい数字が多い(例えば、深さ10kmで起きていることが多い)」という主張もあるが、気象庁などの速報は10km単位で発表しているだけで、本当に深さ10kmピッタリに発生しているわけではない(気象庁はより正確な値は後に暫定値として発表している)
- 「震源の深さが嘘だから人工地震」という主張もあるが、世界中の様々な機関が地震の観測を行っており、地震波は地球の反対側にまで到達するため、一部の機関が隠蔽してもすぐに気づかれるのがオチである。
- 自然に起きる「地震」は本震の直前から小さな揺れが観測され、本震直後も少しずつ揺れが収まる傾向にある。これに対し「人工的な地震」は爆発直後に巨大な揺れが起き、少しずつ収まっていく傾向がある。これらの波動は地震学者が見れば、即座にわかる
- ネット上で流される「P波がないから人工地震」という主張は、素人が判断したもので、時間の目盛りが全く一致していない状態で比較しているなど、地震波形の見方が根本から間違っているため、絶対に信用してはならない。
- 大規模な地震の余震は微小なものを含むと数千回以上に及ぶが(『平成28年熊本地震』は2018年4月13日時点で4481回、2019年現在も発生地震のすべてではないが『平成28年熊本地震』の余震と断定されているものもある)、「人工的な地震」は基本的に爆破1回で終わる。
- 自然に起きる「地震」の予知は困難である
- 気象庁などによる地震予測も「今後マグニチュード〇以上の大地震が起こる確率が〇%」程度のざっくりしたものでしかない
- 「人工的な地震」は人の手によって起こされるため予知をしようと思えば、その人の意志で地震が起こる場所と発生時刻などを正確に予知することも可能なはずである
- 『東北地方太平洋沖地震』や『平成28年熊本地震』などの巨大地震を正確に予知できた者は誰1人存在していない
- 「HAARP(高周波活性オーロラ調査プログラム)」という気象兵器で強い電磁波をピンポイントで放射することによって地震が発生するとオカルトサイトを中心に流されているが、科学的根拠がない
- 地中深くまで到達でき、地震を発生させるためには、高圧送電線や電子レンジなどの電磁波などのパワーを遥かに超える必要がある
- 落雷ですら遥かにエネルギーが不足しているため、地震を発生させることはできない
- 潜水艦が航行している情報も判明する為、隠蔽出来ない筈であり、もっともその方法を使ったとしても潜水艦が無事で済む筈も無いので、出鱈目極まりない
- 地震速報において「M不明」などと稀に情報が出され、それを根拠に「人工地震」と主張する者がいるが、それは以下のいずれかが原因であるに過ぎない
- 観測点が非常に少ない場所で地震が起きたために、求めることができなかった
- 地震以外の現象だった(大規模噴火・海底地滑り・マグマ活動関連等)
- 仮に人工地震であれば、気象庁や様々な機関もはっきりと「今回の地震が自然地震ではない可能性」などと発表することになっている(「2017年の北朝鮮の核実験(M6.1)」など)
以上のことから、SNSやYouTubeなどの動画サイトで流される「人工地震」は根拠のない風説であり、これらの情報を不用意に流すのは有害といわざるをえない。
また、中には正しい情報を流しても「自然地震に似せた人工地震だ!」などとひねくれた考えを持つ者もおり、あまりにも酷い場合は相手にしないで無視していた方が良い。
また、2019年に太平洋を北上して関東南部から東北地方にかけて多大な被害を与えた台風にも日本政府が熱帯低気圧に電磁波をあてて台風15号・台風19号にしたとの「人工台風論」が一部ネット上に流布している。アメリカ合衆国や中華人民共和国ではドライアイスやヨウ化銀を使った人工降雨を実用化しているが、小雨を降らせる程度の効果しかなく、台風の発生には程遠いものである。
人為的な揺れの一例
- 地震波トモグラフィー
地震が発生した際に、その揺れの分布や波形をもとに、地下でどのように地震波が屈折したり反射したりしたかを推定し、それによって地下構造を把握するというもの。人間でいえば超音波検査のようなものである。前述の通り、爆薬やエアガン、重りの落下などで人為的に起こした人工地震は自然地震に比べて明らかに単純な波形をしており、このような調査においては人工地震は非常に有効な手段となりうる……というより、そもそも人工地震を発生させる理由は大抵これを行うためである。もちろん、人工地震のエネルギーは高が知れているため、この手の地震で被害が出るような事はまずない。
- 地下核実験
北朝鮮が行った地下核実験の影響と思われる揺れが実験場近辺で確認されている。
- 化石燃料の採掘
米国オクラホマ州では、水圧破砕法のリスクとして人為的な地震が発生し、訴訟問題にまで発展している。
1997年12月25日、東京ドームで行われたXJAPANのライブ「THE LAST LIVE」にて、数万人の観客が一斉にXジャンプをしたところ、文京区の会場周辺にマグニチュード1.1、震度3の地震が発生。これ以外の会場でもXジャンプにより度々揺れが観測されている。
- その他
ダム建設が要因となって地震が発生した例もある。
架空の人工地震
- 愛の戦士レインボーマン - 死ね死ね団による地底戦車モグラートによって引き起こす人工地震。現実的に考えると地底戦車も危険な目に遭うのだが・・・
- 暴走特急 - 物語に登場する軍事衛星「グレイザー1」が持つ粒子レーザー砲が攻撃目標に人工地震を引き起こす機能を持つ。原理は不明だが航空機を撃墜できる為、レーザーの到達で起きる衝撃だと推測される。
- 冥王計画ゼオライマー - 同作に登場する八卦ロボの一体地のディノディロスが同機の巨大なクローアームを地面に差し込んで特殊なバイブレーションを打ち込み、人工的に地震を起こすシステムを搭載している。
- トランスフォーマー - シリーズ第一作に登場するデストロン兵士フレンジーが両腕をピストンハンマーにモーフィング変形させて地面を叩きまくって地震を起こす能力を持つ。
- ルパンVS複製人間 - マモーがルパン三世に自らね力を誇示するため地震を起こすがしばらくしてルパンが近くの原発を破壊して人為的に地震を発生させたものだとさとる。
- ONEPIECE - グラグラの実の能力で振動を起こして、地震を引き起こすことができる。