概要
折り紙で作った折り鶴千羽を糸で通して纏めて飾りとしたものであり、鶴が長寿の象徴であるため主に入院患者の回復を願い贈られる。
弊害と注意点
千羽鶴は時代を重ねるごとに用途が拡大解釈され、現在では単に祈りを形にするために作られることが多い。
大規模な自然災害の際に学校や福祉施設主導で被災地に千羽鶴を送る行為が多発しているが、逆に被災地側ではこれらの扱いに四苦八苦している実情がある。
折り紙は燃えにくい上、硬いために広げたり圧縮するのが困難で、保管や処分に手間を要するのが理由。物流を圧迫することで支援物資が行き届くのを遅らせる危険性もあり、被災者を励ますつもりがかえって苦しめる羽目になりかねないのである。
元に広島や沖縄などの慰霊祭で毎年千羽鶴が届くが、この処分に数十億円の税金がかかっている。
ちなみに、届いた物資が全くもって不要なもので、仕分けのために無駄な労働力を費やした事例は千羽鶴以外でも多発し(寄せ書き、横断幕、いらなくなった服やおもちゃなど)「被災地にゴミを送っている」などと揶揄された。→ありがた迷惑
このような負の実態は2011年の東日本大震災を機に広く知られるようになり、以降は一方的に千羽鶴を送ることは禁忌となっている。2016年の熊本地震では「支援物資以外の物を贈らないでほしい」との声明が発表され、2022年のウクライナ侵攻では、ウクライナ大使館に千羽鶴を送ろうとした福祉施設が批判に晒された。
前提として、千羽鶴は支援物資ではない。どうしても送りたいのであれば、支援物資の中にメッセージとともに一羽だけでも入れておけばその気持ちは相手に十分伝わる。数が少ない方が相手側も記念に保管しやすいだろう。また、海外では千羽鶴という文化自体が無く、あらぬ誤解や顰蹙を買う可能性もあるので、千羽鶴を送ること自体絶対に避けるべきである。
ちなみに、「お札で千羽鶴を折ればいいのでは?」という提案が度々挙がるが、これも破かず広げるのが難しい上に、折れ目だらけなため銀行や自動販売機に使えないなど用途が限られ、そもそも見た目も美しくないためNGとされる。言ってしまえば、素直に募金した方が手っ取り早いのである。
原爆と折り鶴
病人の回復を願う千羽鶴と、広島の平和への祈りが何故結びついたのかは知らない人も多いだろうが、実はきちんとした由来がある。広島市で原爆により白血病を発症した佐々木禎子という少女が、入院中に周囲の患者らと病状の回復を信じて沢山の折り鶴を作っていた。
しかし、禎子自身は12歳という若さで亡くなってしまい、その想いは禎子の同級生へと受け継がれた。そして、同級生らの募金活動により禎子が頭上に大きな折り鶴を掲げた像が完成した。以来、平和を願って折られた千羽鶴が日本国内に限らず、世界中から広島市の「原爆の子の像」へ届くようになった。それらは像の元にある収容台に吊るされ保管されている。(これは市の主催によるもので、むしろ推奨されている)
また、古くなった折り鶴はリサイクルされ、再生紙として様々な用途に使われているので「平和記念式典に折り鶴を送るのも無駄!」というのは間違いであることを覚えておこう。
外部リンク:広島市Webページ 折り鶴と「原爆の子の像」について