概要
この路線は三重県松阪市の松阪駅と津市の伊勢奥津駅までを結ぶJR東海の非電化ローカル線であり、現在は盲腸線(片方のみがほかの路線と連絡する路線)である。
この路線名の由来は名張と松阪を結ぶ路線として建設を計画されたため。ところが途中でいろいろと不測の事態が起こり、名張まで結ばれることはなく伊勢奥津駅が終点となった。
運行形態
現在は全ての列車がワンマン運転を行っており、1日8往復の列車が設定される。このうち6往復が松阪~伊勢奥津間全線を走行する。基本的にキハ11を使用した単行であるが、検査などで車両が足りない場合にはキハ25が代走することもある。
かつては紀勢本線多気駅や参宮線に連絡する列車が存在したが、全線運行再開後は基本的に名松線内のみで運行は完結する。
車両逸走事故
なおこの路線では家城駅で2度も車両が勝手に走り出す逸走事故をやらかしており、chakuwikiにおいてネタにされている。もちろん決してこれとは関係がない。
1回目は2006年8月、夜間に最終列車として到着した車両に運転士がハンドスコッチ(車輪止め)を装着し忘れたため、松阪方面に無人の列車が8.5kmにわたり暴走、伊勢大井から井関の間まで逸走した。この事故の後この路線で使われる車両は「エンジンを切ると自動的に直通予備ブレーキが作動する」ように改修が行われた。
2回目は平成21年4月、家城駅で列車入換作業中に運転士が5分ほど車両を離れた所無人で走り出し、前回と同様の箇所へ逸走した。原因は前回と同じ「ハンドスコッチの装着し忘れ」で中部運輸局によりJR東海へ行政指導を行われることとなった。
この結果JR東海はそれまで行われていた家城駅での車両入換作業を廃止し、終点である伊勢奥津から家城まで回送していた列車は松阪駅まで回送するように改めた。またこれにより家城駅で夜間滞泊を行うのは1両だけになった。
歴史
この路線は鉄道敷設法(大正11年4月に明治25年6月に定められた同法律を置き換える形で決定された法律、鉄道は全て国営で営業されるべきであるとの理念から作られ、ローカル線敷設の根拠となった)により、桜松線(桜井~名張~松阪間)の一部として昭和4年からされることとなった。
そしてこの路線が全通した暁には大正11年に伊賀上野-名張間に敷設した伊賀鉄道(伊賀軌道、伊賀線を作った会社であり大正15年に伊賀電気鉄道と改名するが、昭和4年大阪電気軌道に合併させられる。現在の伊賀鉄道とは同路線を所有するだけで直接関係はない)を国有化、その路線を延長する形で桜井、さらには吉野まで延長する、という考えであったと思われる。
ところがこの路線を作り始めた昭和5年、参宮急行電鉄が桜井駅~名張駅~参急中川駅~松阪駅~山田駅というルートを先に開通させてしまった(しかも国鉄と異なり標準軌)。
結果重複する名張と松阪を結ぶ路線は旅客営業としては不要となり、結局昭和10年までに伊勢奥津駅まで敷設するにとどまった。
その後貨物輸送などの需要がある(近鉄大阪線は標準軌であるため国鉄の路線との連絡は不可能)として特に第二次世界大戦中には延伸の動きはあったものの、その後のモータリゼーションの流れなどからそれも潰え、1964年には連絡するはずであった伊賀線の伊賀神戸駅から西名張駅間も廃線となり、完全にこの路線はローカル線となった。
これにより廃線が検討され、国鉄末期の民営化に向けて廃止を前提に指定される特定地方交通線の1つとされてしまう。しかし、代替道路が狭くバスが運行困難ということで廃線できないというとんでもない事態(同様の理由により廃線にならなかった路線は岩泉線が存在したが、こちらは結局2014年に廃止)になっていた(現在では道路も解消され廃線に支障はない模様)。
現存する特定地方交通線(当初からの除外51線区を除く。この中には名松線の存続理由と同様の理由で当初より指定されなかった三江線他6線区もある)のうち、唯一JRのまま存続する路線である。
不通区間
またこの路線はこれまで台風により4度ほど不通(全線不通および一部不通)となっているが、そのたび修復されている。なお、家城から伊勢奥津の区間は2009年より不通となっていたものの、三重県と津市(平成の大合併により不通地域のある地域は美杉村から津市となったため)が治山・治水工事を行うことを条件に2016年3月26日ダイヤ改正で全線復旧した。
赤字ローカル線をそこまで引っ張る必要があるのか…と思う読者もいるだろうが、どうもある程度の赤字を抱えとかないと税金で持っていかれるだけだったりするため、それが嫌なのとある程度余剰の社員を抱えておく必要があるがその社員を吸収するために赤字路線を抱えているのではないかと思われる節がある。あるいは中央新幹線の建設が絡んでいるという意見もあるが…。
この不通区間は鹿の多発地帯でもあり、線路上に度々出没する鹿によって運行を阻害されることもままある。
接続路線
松阪からは紀勢本線やそれを通じて関西本線・参宮線に通じる他、近鉄との乗換も出来る。途中の一志駅でも200mほど離れた場所に近鉄大阪線川合高岡駅があり、乗換が可能。
最低1度の乗り換えを必要とするものの、終点の伊勢奥津駅から近鉄大阪線名張駅までは、かつての路線計画の穴埋めのように三重交通の路線バスが走っている。名張方からは敷津まで、伊勢奥津方からは美杉町飯垣内までで、後者は津市美杉コミュニティバスの1路線。また、名張方は毎日運行する一方、伊勢奥津方は平日のみ運行する。
2路線とも国道368号線を走行し、大半は三重県内を走行するが、道路の都合上、途中で奈良県宇陀郡御杖村敷津地区に立ち寄る。
かつては名張駅と伊勢奥津駅とを直通する便が4~6往復ほどがあったが、末期は伊勢奥津を発着するのは朝の伊勢奥津発名張行き・夕方の名張発伊勢奥津行きの計1往復のみで、伊勢奥津駅発は名松線の初便が同駅に到着するより前に出発してしまっていた。基本的に沿線から名張を経由して近鉄に乗車し通勤・通学地へ行くことを想定したダイヤである由。
このほか、家城駅からは三重交通による津市白山コミュニティバスが、近鉄大阪線の榊原温泉口駅とを結んでおり、津市白山地区の中心部が完全に家城駅寄りにあるにも拘らず、鉄道の本数は圧倒的に近鉄が勝るためか、こちらのバスは土休日も含め、比較的本数が多い。
駅一覧
萌えキャラ
JR東海とは全く関係が無いが、名松線の活性化に取り組む沿線の団体「名松線を元気にする会」によって奥津ハルカというキャラクターがつくられている。