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概要

その国の国籍を持つ男性を対象に、一定の年齢になると徴兵検査が行われ、病気の者など兵役に著しく適さない者などを弾いて、合格した者が一定期間入営するというシステムを取ることが多い。兵役を終えた者は予備役となり、有事に備え半日~数日程度の再訓練を受ける義務が課せられる。


現代では、女子も対象となる国もある。また、アメリカ合衆国コスタリカのように平時には行わないが有事の際には行えることを規定している国もある。


徴兵免除の基準は国により大きく異なる。多くの免除条件が設定され実際に兵役を務めるのは同世代の若者の1割にも満たないベトナムのように緩いところから、問答無用で徴兵され拒否者には罰則が設けられている国もある。後者の1つ韓国では、兵役拒否者には実刑が科せられ、多くの良心的兵役拒否者(宗教上・思想信条上の理由から兵役を拒否する人々)が刑務所に入れられている。


徴兵制の歴史

絶対王政時代の国家の多くは、貴族軍人や傭兵を主力とした。プロイセン王国は徴兵による大規模な軍隊を編成したが、強制徴募による徴兵は士気が低く質が悪かった。


国民に国防の義務が課せられる近代的な国民皆兵制度はフランス革命が始まりで、徴兵に応じることは祖国に対する忠誠義務であり名誉とみなされるようになった。


アメリカ合衆国では南北戦争に伴い初めて徴兵制が敷かれたものの、白人労働者らは黒人のために血を流すことに不満を抱き、ニューヨーク徴兵暴動を起こすなどの抵抗もあった。「史上初の総力戦」と言われた南北戦争においても、合衆国軍も連合国軍も兵士の大部分は志願兵だった。


日本では明治6年(1873年)徴兵令が施行されたが、農民らが「血税一揆」を起こし、その後も「徴兵、懲役、一字の違い」と言われ嫌われるなど、かなりの抵抗があったことが知られている。


イギリスでは第一次世界大戦中の1916年に徴兵制が導入された。


軍事的なメリットとデメリット

若い戦力(特に歩兵)を大量に確保できるのが軍事的なメリット。 特に第一次世界大戦独ソ戦のような総力戦は大量の人員を必要としたため、一定の年齢の徴兵経験者に動員をかけ、大量の兵士を調達する必要があった。また、特に権威主義国家では徴兵の人件費は安い(ロシア連邦軍に至っては徴兵は無給)ので、頭数を揃えたいなら徴兵制の方が安く上がる。


しかし現代では、兵器の高度な発達や戦術の変化により高度な専門知識が求められるようになってきており、2〜3年程度と任期が短い徴兵では十分に専門教育を施せないデメリットが目立つようになった。パートタイム軍人とも呼ばれるアメリカの州兵の一部は連邦軍同様にフルタイム勤務を行うのだが、そのフルタイム勤務の州兵でさえ装備や専門知識が陸軍等に劣るため、限定的な戦場でしか運用できない。


徴兵だからといって給与や待遇を悪くすると士気の低下につながる(韓国の尹錫悦政権が徴兵の月給20万ウォン=約20万円を掲げていることが一応の目安になるだろう)し、素人である徴兵を教育するには教官となる曹〜尉クラスの人手も取られてしまう。このため徴兵制ではなく志願制のみとし、士気の高い者を「プロの軍人」に育成する事に特化する方が効率的であるとの見方も大きい。


一方で、いったん廃止した徴兵制を復活させる動きも見られる。その理由は各国それぞれであるが、主に軍事大国ロシアの周辺諸国への脅威が高まっていることが背景にある。


各国の状況

アメリカ合衆国

ベトナム戦争以降、普段から連邦政府の指揮下にある連邦軍では徴兵制は廃止されたが、冷戦期の1980年代にSelective Service System( 選抜徴兵登録制度、通称SSS )を再開。現在も維持されており、SSSは旅行や留学などの短期間滞在者を除き市民や永住権保持者( 国外在住者や二重国籍取得者も含む )、不法滞在者の18歳から26歳の男子にはSSSへの登録義務が課せられている。大統領及び議会が国の緊急事態である、もしくは戦時に軍の拡大が必要であるとなった場合に登録リストから徴兵が可能で、未登録の場合は5年以下の禁固25万ドル以下の罰金のどちらかもしくは両方を科される可能性及び、かつ政府機関への就職が不可能となり、政府の奨学金を受けることが出来なくなるうえ、永住権や市民権を失う可能性もある。

州兵

州兵は州知事の指揮下にあり必要に応じ連邦軍に編入される。州兵は志願制となっており、勤務に関しては州や階級等の立場により異なり、フルタイム勤務もあればパートタイム勤務もあり、普段は一般企業で働いているという兵もいる。

ドイツ西ドイツ

第二次世界大戦の記憶から軍人を嫌う風潮が強く、当初は「兵士を確保するための手段」として徴兵が始まったのだが、「兵役」と「病院や福祉施設での奉仕活動」が選択可能となっていた結果、兵役は実質的に福祉施設が若者に奉仕活動をさせるための制度に変質し、徴兵制度が廃止できない状態になっていた(最後まで制度廃止に反対したのは医療福祉関係者だった)。しかしそれでも経済的負担が無視できないものになり、2011年に徴兵が停止された。今後の安全保障体制の変化によっては再開の可能性があるものの、事実上の廃止として扱われている。

台湾( 中華民国 )

2012年に徴兵を停止する方針を打ち出し、2014年には志願兵制に切り替えを完了する予定であったが、2018年の時点でその切り替えはうまくいっていないようである。

リトアニア

2008年に徴兵制を廃止したが、ウクライナ情勢の悪化などを受け、2015年に5年間限定で徴兵制を復活した。また徴兵制を廃止していた期間も有事の際には国民を民兵組織に編成してゲリラ戦術を行い侵略に対応する制度を取っていた。

スウェーデン

2010年に一般徴兵制を廃止していたが、それから数年を経るうちに下士官や予備役の不足が想定外に進んだこと、およびロシアの脅威の高まりから同国の社民党政権は徴兵制復活の議論を進め2018年1月から徴兵制を再開した。

フランス

国民の1割が移民という情勢に加え、更なる移民や難民の流入による治安維持機関の人手不足解消の為、徴兵制が検討されている。検討されている案の中には兵役を務めることが出来ないほどに短期間の案もあるが、これは国民の団結を強める為と思われる(マレーシアが一時期に同様の徴兵制を取っている。)

結局徴兵制復活は検討倒れに終わり、16歳以上の国民全員に3か月から1年間警察・消防・軍の何れかで奉仕活動を義務付ける「普遍的国民奉仕」の実施で固まったようである。

ウクライナ

2013年にいったん廃止した徴兵制を、翌年のクリミア侵攻を受けて復活。徴兵扱いではないものの国民の治安部隊'への動員も行なっている。そして2022年2月24日のロシア軍による全面侵攻を受け、ウクライナ政府は国内の18歳から60歳までの国内の全ウクライナ人男性に対して総動員を発令した。総動員は第二次世界大戦以来のことで、全面侵略戦争を受けた国における徴兵制の威力が発揮された形である。

ロシア

ロシアではソ連時代に引き続き徴兵制度を存続しているものの、任期1年と短い上、なんと無給である(戦前の日本軍ですら少ないとはいえ徴兵に給与を払っていたのに)。軍隊はとても不人気で都市部の裕福な層を中心に合法・違法な兵役逃れが横行しているといわれる。徴兵の対象となるのは働き口のない地方の貧困層や健康・素行に問題があるものが多く、非常に人材としての質が悪い。プーチン大統領は2017年に徴兵制を段階的に廃止し、給与を受け取りながら2~3年ほど軍で働く契約軍人制度に移行すると表明したものの、2022年のウクライナ侵攻時点では未だに実施に至っていない。


ソ連時代の独ソ戦の頃は、徴兵拒否をすれば村単位で粛清などが行われたという。これが「畑から取れる」とまで言われた多量の歩兵の確保の手段であった。ロシア帝国時代の日露戦争でもこうした農村部から殆どを引っ張ってきており、日本の捕虜となった兵士たちは自分の名前すら母語のロシア語で書けない文盲の者が殆どという悲惨な状況であった。見かねた日本軍側が語学士官を教員に、日本人がロシア語をロシア人に教えるということになった。彼らは頑健で銃の引き金さえ引ければ良いと引っ張られてきたのである。


徴兵逃れ

明治期の日本では醤油を一気飲みする、戸籍を北海道に移す(夏目漱石の例。明治初期には北海道には徴兵令が施行されていなかった)などの「徴兵逃れ」の逸話が多い。一方、後年に徴兵免除者が少数派になると、徴兵されることは名誉・徴兵されないことを不名誉として扱う向きもあり、津山事件の犯人都井睦雄持病により徴兵で不合格になって以降、塩対応を受けて犯行に走ったといわれている。


現在の韓国でも芸能人や有名人の子弟が徴兵逃れを行ったとしてバッシングを受けることも時折あり、K-POP男性グループのファンの間ではメンバーが兵役で一時離脱する事がよく話題になる。


現代の日本では……?

日本の自衛隊は、その当初から志願制であり、徴兵制度が設定されたことは無い。現在の陸上自衛隊では曹( 下士官 )および士( 兵士 )の高齢化が問題になっているが、「徴兵は違憲である」とする政府の公式見解( 兵役は日本国憲法第9条矛盾する、あるいは18条で禁止されている苦役に相当するという解釈 ) および上記のデメリットにより、徴兵制の導入によりこれを解消しようという意見はほとんど聞かれない。現在も保守系の議員の中には、(かつての日本や韓国の)徴兵制を礼賛する者もいるが、公式に徴兵制を主張する政党は第二次大戦後は皆無である。


労働組合においては、UAゼンセン同盟(日本労働組合総連合会連合〉に加盟する国内最大の産別、国民民主党の支援団体の1つ)が小泉政権時の2005年(当時の名称は『UIゼンセン同盟』)に徴兵制の実施を主張している参照。UAゼンセン同盟は第二次安倍政権においても改憲や集団的自衛権の行使の支持を表明していた。但し、日本国内の労組の多くは連合加盟も含め徴兵制反対派が多い。


徴兵制の意義を主張する者は「国防意識の醸成」という教育的意味をしばしば強調しているが、徴兵の時期が大学在学や就職の時期とかぶるために、高等教育への悪影響や若い時期の職務経験に空白ができる問題なども指摘される。一部の保守系論者の中には「若者根性を叩き直すため」等として徴兵制の意義を主張する者も見かけられるが、自衛隊は託児所や矯正施設ではありません


また必然的に高度な武器知識を教育せねば成り立たない。戦後の一時期治安が極端に悪かったのは、武器の扱いに長けた復員兵の一部がそれを悪用して荒稼ぎしていたからであった。

今の武器はさらに高性能化した上、体一つで戦う近接格闘も数段高度化しているため、状況次第では治安の悪化もありうる。90年代後半~2000年代初頭に武装スリが暗躍したが、彼らの出自は徴兵制のある国からの流入であった。


かつては軍事に詳しい向きからは「徴兵制は現代戦では合理性がないから、将来的にもありえない」と断言する声が多かったが、現在は各国で徴兵制の意義が見直されていること、徴兵制復活を検討している国(フランスなど)も、必ずしも軍事的合理性からではないことから「日本でも(政治的思惑による)徴兵制の施行もありうるのではないか」という意見も出てきている。


今のところ防衛省では平成28年版防衛白書のコラム


わが国において徴兵制を採用することは、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条、第18条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考えます。

このような憲法解釈を変更する余地は全くなく、いかなる安全保障環境の変化があろうとも、徴兵制が、本人の意思に反して兵役に服する義務を強制的に負わせるもの、という本質が変わることはありません。したがって、今後とも徴兵制が合憲になる余地はありません。

また、自衛隊は、ハイテク装備で固めたプロ集団であり、隊員育成には長い時間と相当な労力がかかります。短期間で隊員が入れ替わる徴兵制では、精強な自衛隊は作れません。したがって、安全保障政策上も、徴兵制は必要ありません。長く徴兵制をとってきたドイツやフランスも21世紀に入ってから、徴兵制を止めており、今やG7諸国はいずれも徴兵制をとっていません。


(※:G7=


と記載し検討こそされていないが、有事の際は船員運転手などとして勤務している予備自衛官を招集し、諸外国に比べ貧弱な予備自衛官の層を補おうという方向にあり、予備自衛官雇用企業給付金などにより予備自衛官の確保につとめている。


経済的徴兵制

一部の評論家などからは志願制であっても「経済的徴兵制」と呼ばれる状況が発生しているという意見がある。これはアメリカ軍において、恩典として教育の支援や技能の取得等があり、退役後にも奨学金の支給、市民権の取得、就職への支援等が行なわれることが多い為、貧困層が軍隊に志願せざるを得ない状況があるという指摘である。もっともこのように見える状況は「国がそう仕向けた」わけではなく、「国や企業などのシステム自体に問題がある」などの理由である、との反論がある。


アメリカにおいては大学への進学に関しては非常にお金がかかり、将校に昇進可能な同程度の学歴の大学であれば学費のみで年約600万円以上かかるため、一般的な中流家庭でも奨学金があっても通うのは金銭的に非常に難しい。アメリカでは教育支援で人を呼び込むのは軍隊に限らず民間企業でも珍しくはない。また、将校等の上を目指すには大学卒等の高学歴が必要という事もあって支援を行なっており、恩典ではあるものの人を集めるための餌を主としてのみ補助を行なっているわけではなく、一般企業における仕事に必要な資格取得支援に近いものとなっている。


日本に関する状況

士官に当たる幹部自衛官を養成する防衛大学校防衛医科大学校等は学費が免除されるが、実際は両校とも通常の大学よりも偏差値が高いため、幼い頃から塾に通える裕福な家庭の子中心の有名進学校出身者が多いといわれ、特に防衛医科大学校では一般私立大学医学部の学費および寄付金が高額であることから、自衛隊への勤務義務はあるにせよ安価に医師資格を獲得でき国公立大学とも併願可能、かつ受験料も不要であるため志望者も多い。合格者数の最も多い学校は中高一貫私立学校の巣鴨高校・久留米大附設とされ、公立高校出身の合格者は偏差値70以上クラスの地域トップ校からですら多くても1年に5人出れば良いほうである。


兵士に当たる任期制自衛官を養成する自衛官候補生でも、「二等陸・海・空士」として募集していた頃は「バカでも入隊可能」といわれる時代も確かに存在したものの、就職氷河期の頃は公務員指向の高まりと、採用枠も縮まったため狭き門であった。もっとも、最近は少子化と「若者の公務員離れ」の影響によりまた人材難に陥っている。


徴兵制を施行中の主な国家

現在も徴兵制を行っている国の多くは隣国や近隣国などと紛争の火種を抱えていることがほとんど。韓国をはじめ現在進行形で陸続きの隣国と紛争中の国もあり、そのために歩兵の確保というメリットを未だ取っている。


中には徴兵制の形はとっていても「除外される条件が多く実質的に徴兵と言えない国」や「志願制と併用しているが定員を満たさない分のみ徴兵」「将来志願制移行を検討している国」もある。一方、ロシアを中心とした情勢悪化を受け東欧諸国を中心に徴兵制の復活を検討する国が増えており、徴兵制の意義を見直す動きも出てきている情勢である。

男女とも


男子のみ


変則的な徴兵


非常時のみ


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軍事 軍隊 徴兵 兵役


外部サイト

wikipedia:徴兵制度

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