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概要

1912年長野県出身。本名は藤原寛人(ふじわら・ひろと)。

無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台(現気象庁)に就職。富士山測候所や満州気象台勤務などを経験。無線ロボット雨量計の共同研究や、1964年に設置され1999年まで運用された富士山山頂レーダーの建設責任者を務めたなどの業績がある。


その傍ら小説家としても活動し、1956年に『剛力伝』で直木賞を受賞。1966年に気象庁を退職するまで「昼は役人、夜は作家」の二面生活を続けた。

主な作品に『八甲田山死の彷徨』『孤高の人』『劒岳 点の記』『聖職の碑』『富士山頂』『武田信玄』などがある。映画、TVドラマ化された作品も数多い。


1980年に心筋梗塞で死去、享年67。

藤原てい夫人も作家。次男はベストセラー書『国家の品格』で知られる文筆家・数学者の藤原正彦。


作風

上記主要作のラインナップを見てもわかるように「山岳作家」のイメージが強いが、本人はそのレッテルを貼られることを嫌っていた。事実歴史小説の大作もあり、またジュニア小説やSF、メロドラマ風の作品などを手がけたこともある。

同じ山岳テーマを扱う作家でも、例えば『日本百名山』の深田久弥が山やそれを愛する人々を基本的に全面肯定・賛美する方向性なのに対し、新田は自然の荘厳さや非情さを真っ向からリアルに表現し、かつそれらに安易安直に向き合おうとする人間の弱さや愚かさ等を徹底的に抉り出し曝け出すという、かなり容赦の無いドライな筆運びで知られる。特に『八甲田山~』の山田少佐や『栄光の岩壁』の津沼春雄などの極めつけの愚人や悪人を書かせたら、右に出る者がないと言っていい。


その一方で『孤高の人』の加藤文太郎や『八甲田山~』など、実在の人物や事件事故をモデルにした作品で過剰な脚色を行ったことには賛否両論がある(この作家の独自歴史観に対する今日の感情的批判、と似ているかも知れない。あくまでも小説=フィクションである、ということを忘れてはならない)。


人物

筆名の由来は「出身地新田(しんでん)村の次男坊」。


作家を志した動機は「当時の公務員俸給だけでは生活が苦しく、筆でアルバイトでもしないとやっていけなかった」というある意味身も蓋もなさすぎるもの(今では信じ難い話だが終戦後混乱期の中央気象台は予算が少なく、職員待遇も悪かったらしい)。てい夫人が一足先に満州引き揚げ体験を元にした作品『流れる星は生きている』でベストセラーを記録し、それに刺激されたとも。最初は学校教科書の原稿下請けなどから始めており、「文学とか小説とかいうものとはなんのかかわりもない出発」だった。

小説家として評価されてからも筆一本で食っていける自信がなかなか持てず、結局気象庁を退職し専業作家になったのは54歳の年だった。


小説を書こうと思っても典型的な理系人間で、それまで文学に接した経験もあまりなかったため、当時の某大物作家の作品を原稿用紙に丸写しにすることで文章の書き方を学んだという。本人曰く「既成作家はそれほど恐るべき競争相手ではない。これくらいの文章なら私にも書ける気がした」。

ただ役人兼業作家だからといって〆切を疎かにすることは逆になく、新聞連載小説でも前もって計画的にまとめ書きし、初回掲載日の一ヶ月前には余裕をもって渡すなどしていた。当時の担当記者曰く「新田先生の時は楽だったが、その次に受け持った(文筆専業の)先生には(なかなか書いてもらえず)泣かされた」。また役所内でも「あいつは兼業作家だから」という周囲の悪評を恐れて、公務には必要以上に手を抜かなかったという。それでも「よぉ文豪などと皮肉る言葉は無くならなかったらしい。


司馬遼太郎は新聞記者時代、連載小説の依頼目的で新田に一度だけ会っている。が‥‥


新:「一年365日だとして、そこから役人としての勤務時間と睡眠時間を引いた残りが作家としての活動時間だ。現在予定されている仕事に要する時間を考えると、とても余裕がない」

司:「端数が少し余りませんか?」

新:「私は年平均4~5回は風邪をひくので、その分を仕事のできない予備時間に充てなければならない」


といかにも理系らしく理路整然と(?)説明され、あっさり依頼を断られたという。


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