路線データ
路線名 | 根室本線 |
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路線記号 |
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区間カラー |
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路線区間 |
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路線愛称 | 花咲線:釧路〜根室 |
路線距離 |
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軌間 | 1,067mm |
駅数 | 53駅 |
信号場数 | 10箇所 |
最高速度 |
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非電化区間 | 全線 |
単線区間 | 全線 |
閉塞方式 |
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保安装置 | ATS-DN |
第一種鉄道事業者 | 北海道旅客鉄道(JR北海道):全線 |
第二種鉄道事業者 | 日本貨物鉄道(JR貨物):滝川〜富良野/新得〜釧路※ |
※:釧路貨物〜釧路間は事業認可のみ
概要
北海道旅客鉄道(JR北海道)を第一種鉄道事業者とする鉄道路線で、幹線。全線が北海道内を走行する。
元は滝川駅(滝川市)と根室駅(根室市)を結ぶ443.8kmの路線だったが、2024年(令和6年)4月1日に一部区間が廃止された為、現在は滝川駅〜富良野駅(富良野市)間と新得駅(上川郡新得町)〜根室駅間に分断されている。
新幹線の開業に伴う路線分断は信越本線・東北本線・鹿児島本線、経路変更による分断は筑肥線の事例があるが、それらを一切伴わない廃止による路線分断はJRでは根室本線が初である。
釧路駅(釧路市)〜根室駅間については「花咲線」の愛称が付与されている。この区間はエゾシカとの遭遇率が他の道内路線と比べて極めて高く、度々輸送障害が起きているのが問題となっている。
またかつては複数の貨物支線が存在したが、国鉄民営化直後までに全て廃止されている。
現在は滝川駅〜富良野駅間及び新得駅〜釧路貨物駅間で日本貨物鉄道(JR貨物)が第二種鉄道事業者として貨物列車を運行している。
鉄道路線としては国内最東端の区間を走行する。その為根室本線の駅は幾つかの「日本最東端」の記録を持つ。
沿革
開通〜国鉄分割民営化直後まで
1900年(明治33年)12月2日に官制鉄道十勝線の下富良野駅〜鹿越駅間として開業したのが始まり。その後路線延伸を繰り返すと共に釧路線→釧路本線と改称され、1921年(大正10年)8月5日に全線開通。同時に根室本線に改称された。
以後全線が札幌駅と十勝地方・道東を結ぶ重要な幹線として機能していたが、最初の転機が訪れたのは1966年(昭和41年)9月30日。落合駅〜新得駅間のトンネル経由の新線が完成し、スピードアップと運休の減少が図られた。なお旧線は廃止後も「狩勝実験線」として鉄道技術に関する実験が行われ、後年の瀬戸大橋建設にも影響を与えた。
次の転機は1981年(昭和56年)10月1日。石勝線が開通した事で札幌駅と十勝・道東へのアクセスが大幅に速達化され、急行「狩勝」を除く全優等列車が石勝線経由に変更された。またこの時に上落合信号場〜新得駅間は根室本線と石勝線の重複区間となった。
1987年(昭和62年)4月1日の国鉄分割民営化に伴い、滝川駅〜根室駅間の本線をJR北海道が、釧路駅〜浜釧路駅間の貨物支線をJR貨物が第一種鉄道事業者として継承。また滝川駅〜富良野駅間及び東鹿越駅〜東釧路駅間はJR貨物が第二種鉄道事業者となった。
1989年(平成元年)8月1日に最後の貨物支線が廃止され、JR貨物の第一種鉄道事業者区間が消滅。その後残った貨物運行区間も縮小を続け、現在では前述の区間で運行されている。
部分廃止
かつてのメインルートだった狩勝峠区間は衰退著しく、幾寅駅が高倉健主演の映画『鉄道員』の舞台となった事で一時は賑わったものの赤字に歯止めが効かず、また2016年(平成28年)8月31日の台風10号(ライオンロック)では富良野駅〜音別駅間が甚大な被害を受けた。富良野駅〜東鹿越駅間及び上落合信号場〜音別駅間は同年中に復旧したものの東鹿越駅〜上落合信号場〜新得駅間は復旧の目処が立たず、代行バスによる運行を開始した。
また富良野駅~新得駅間は輸送密度が200人未満となっており、JR北海道は「単独では路線の維持が困難」であるとして同年中に当該区間の廃止検討を発表。地元自治体との協議の結果、2022年(令和4年)1月28日に各自治体が当該区間のバス転換方針を容認。2023年(令和5年)3月31日にJR北海道が国土交通省北海道運輸局に同区間の廃止届を提出。
結局当該区間は復旧する事なく2024年4月1日付で廃止され、前述の通り整備新幹線の並行在来線及び路線付け替えによる分断以外では初めての分断路線となった。
また石勝線との重複区間だった上落合信号場~新得駅間は、石勝線の単独区間に変更された。
現在の運行形態
かつては全線にわたり札幌駅方面との急行が運行されていたが、石勝線開通後は広域輸送を特急、地域輸送を普通(花咲線区間は快速も含む)が担っている。
特急
石勝線経由で札幌駅〜帯広駅・釧路駅間に「とかち」「おおぞら」が運行されている。道東自動車道が花咲線区間を除きほぼ全線に渡り並走している為、高速バスと競合している。
過去に道内夜行列車が運行されていた頃は急行→特急「まりも」が札幌駅〜釧路駅間で1往復運行されていた。
この他に夏季には札幌駅〜富良野駅間に臨時特急「フラノラベンダーエクスプレス」が運行される。
地域輸送
廃止区間の運休前は滝川発釧路行の長距離普通列車や、滝川駅・富良野線旭川駅〜帯広駅・池田駅間に快速「狩勝」が運行されていたが、基本的には滝川駅〜富良野駅・新得駅・帯広駅間、新得駅・帯広駅〜釧路駅間、釧路駅〜根室駅間の3区間に大別されていた。部分廃止後も基本的には変わっていない。
なお東鹿越駅〜新得駅間の運休後は同区間は代行バス、滝川駅〜富良野駅・東鹿越駅間は普通列車が運行されていた。
過去には北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線との直通運転も行なっていた。
滝川駅〜富良野駅
定期列車は普通列車のみ運行。おおむね1〜2時間に1本程度の運行頻度だが、最長で4時間近く列車間隔が開く時間帯が存在する。
全列車がこの区間を往復しているが、部分廃止区間の運休前は帯広駅方面へ直通する列車も存在し、運休後も一部は東鹿越駅発着で運行されていた。但し廃止直前のダイヤ改正では廃止後を見据えて富良野駅で運行系統が分断された。
現在定期の優等列車は運行されていないが、臨時列車として前述の札幌駅からの直通特急が夏季に運行される。
新得駅〜釧路駅
帯広駅と釧路駅を中心としたダイヤが組まれており、通しの列車の他に芽室駅・池田駅・浦幌駅・音別駅・白糠駅・大楽毛駅発着の区間便が存在する。
概ね1〜2時間に1本程度設定されているが、浦幌駅〜音別駅間の普通列車は1日6往復と非常に少ない。
釧路駅〜根室駅(花咲線)
釧路駅を跨ぐ列車は設定されていない。
通しの運行は6往復で、快速「はなさき」が1往復・「ノサップ」が下り1本、普通列車が4.5往復。また釧路駅〜厚岸駅間の区間列車が2往復運行される。
この他に釧路駅〜東釧路駅間は釧網本線の列車が乗り入れている。
基本的に特急「おおぞら」との接続が考慮されているが、下り始発の「はなさき」のみ接続しない。但しかつては特急「まりも」と接続していた。
貨物
滝川駅〜富良野駅
通常時は列車ではなくトラックによって札幌貨物ターミナル駅との間で輸送が行われるが、秋や冬の農作物収穫期には大量輸送を行う為コンテナ車による臨時高速貨物列車「ふらのベジタ号」が設定される。
新得駅〜釧路貨物駅
主に札幌貨物ターミナル駅から石勝線経由でコンテナ車による高速貨物列車が運行されている。根室本線内では帯広貨物駅・釧路貨物駅発着で、そのうち下り1本は室蘭本線苫小牧駅を経由する。
駅・信号場一覧
現存区間
※信号場の駅番号は旅客駅時代のもの
滝川駅~富良野駅
●:停車 レ:通過
新得駅~釧路駅
●:停車
○:「とかち」全列車と一部「おおぞら」が停車
▲:一部「おおぞら」通過
△:一部「おおぞら」停車
レ:通過
駅番号 | 駅名 | 特急 | 乗換路線 | 備考 |
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K23 | 新得 | ● | 石勝線 | |
K24 | 十勝清水 | ○ | ||
平野川信号場 | レ | |||
K26 | 御影 | レ | ||
上芽室信号場 | レ | |||
K27 | 芽室 | ○ | 当駅発着あり | |
K28 | 大成 | レ | ||
K29 | 西帯広 | レ | ||
帯広貨物 | ||||
K30 | 柏林台 | レ | ||
K31 | 帯広 | ● | 当駅発着あり | |
K32 | 札内 | レ | ||
K34 | 幕別 | レ | ||
K35 | 利別 | レ | ||
K36 | 池田 | ● | 当駅発着あり | |
昭栄信号場 | レ | |||
K37 | 十弗 | レ | ||
K38 | 豊頃 | レ | ||
K39 | 新吉野 | レ | ||
K40 | 浦幌 | △ | 当駅発着あり | |
常豊信号場 | レ | |||
(K41) | 上厚内信号場 | レ | ||
K42 | 厚内 | レ | ||
(K43) | 直別信号場 | レ | ||
(K44) | 尺別信号場 | レ | ||
K45 | 音別 | レ | 当駅発着あり | |
(K46) | 古瀬信号場 | レ | ||
K47 | 白糠 | ▲ | 当駅発着あり | |
K48 | 西庶路 | レ | ||
K49 | 庶路 | レ | ||
東庶路信号場 | レ | |||
K50 | 大楽毛 | レ | ||
K51 | 新大楽毛 | レ | ||
K52 | 新富士 | レ | ||
釧路貨物 | ||||
K53 | 釧路駅 | ● |
釧路駅〜根室駅(花咲線)
●:停車 ▼:下りのみ停車
○:「はなさき」のみ停車 ▽:「ノサップ」のみ停車
レ:通過
駅番号 | 駅名 | 快速 | 乗換路線 | 備考 |
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K53 | 釧路 | ● | 新得方面 | |
B54 | 東釧路 | ▼ | 釧網本線 | |
武左 | ▽ | |||
別保 | ▽ | |||
上尾幌 | ▽ | |||
尾幌 | レ | |||
門静 | レ | |||
厚岸 | ● | 当駅発着あり | ||
茶内 | ● | |||
浜中 | ● | |||
姉別 | レ | |||
厚床 | ● | |||
別当賀 | ○ | 一部普通列車通過駅 | ||
落石 | ● | |||
昆布盛 | ○ | 一部普通列車通過駅 | ||
西和田 | ○ | 一部普通列車通過駅 | ||
東根室 | ○ | 日本最東端の駅 | ||
根室 | ● |
廃止区間
1966年10月1日廃止区間
2024年4月1日廃止区間
駅番号 | 駅名 | 乗換路線 | 備考 |
---|---|---|---|
T30 | 富良野 | 富良野線 | 現存区間 |
T31 | 布部 | ||
T32 | 山部 | ||
T33 | 下金山 | ||
T34 | 金山 | ||
鹿越仮乗降場 | ※1 | ||
T35 | 東鹿越 | 廃止時の終点 | |
↓2016年8月31日以降休止区間 | |||
T36 | 幾寅 | ||
T37 | 落合 | ||
上落合信号場 | 石勝線分岐点※2 | ||
新狩勝信号場 | ※2 | ||
広内信号場 | ※2 | ||
西新得信号場 | ※2 | ||
K23 | 新得駅 | 石勝線 | 現存区間 |
※2:所属を石勝線に変更の上で存続
貨物支線(1989年8月1日廃止)
現存区間の廃止駅・信号場
- 一ノ坂信号場(滝川駅〜東滝川駅間):1982年(昭和57年)10月26日廃止
- 幌岡信号場(東滝川駅〜赤平駅間):1982年10月26日廃止
- 高根信号場(平岸駅〜芦別駅間):1982年10月26日廃止
- 滝里駅(野花南駅〜島ノ下駅間):1991年(平成3年)10月22日廃止
- 島ノ下駅(T29)(野花南駅〜富良野駅間):2017年(平成29年)3月4日信号場化
- 羽帯駅(K25)(十勝清水駅〜御影駅間):2018年(平成30年)3月17日廃止
- 稲士別駅(K33)(札内駅〜幕別駅間):2017年3月4日廃止
- 上厚内駅(K41)(常豊信号場〜厚内駅間):2017年3月4日信号場化
- 直別駅(K43)(厚内駅〜尺別駅間):2019年(平成31年)3月16日信号場化
- 尺別駅(K44)(直別駅〜音別駅間):2019年3月16日信号場化
- 波若信号場(音別駅〜古瀬駅間):1938年(昭和13年)廃止
- 古瀬駅(K46)(音別駅〜白糠駅間):2020年(令和2年)3月14日信号場化
- 糸魚沢駅(厚岸駅〜茶内駅間):2022年3月12日廃止
- 初田牛駅(厚床駅〜別当賀駅間):2019年3月16日廃止
- 花咲駅(西和田駅〜東根室駅間):2016年3月26日廃止
使用車両
釧網本線専用の車両は省略
現在の使用車両
JR北海道所属
- キハ261系1000・5000番台
1000番台は札幌運転所・釧路運輸車両所所属の特急形気動車。
札幌車は「おおぞら」「とかち」で、釧路車は「おおぞら」で運用される。いずれも「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」時代から運用されている。
5000番台は苗穂運転所所属のジョイフルトレイン。「ラベンダー編成」は北海道高速鉄道開発が所有しJR北海道に無償貸与されている。根室本線では臨時特急「フラノラベンダーエクスプレス」で運用される。
- キハ40形1700番台
旭川運転所所属の気動車。滝川駅〜富良野駅間の普通列車で運用。廃止区間の休止前は帯広駅方面に向かう列車でも使用されていた。
稀にキハ54形の代走で花咲線運用に就く事もある。
かつては釧路運輸車両所所属車が新得駅以東の普通列車(花咲線含む)や快速「狩勝」で運用されていた。
- キハ54形500番台
釧路運輸車両所所属の気動車。花咲線の全列車で定期運用されている他、2024年3月15日まで釧網本線でも運用されていた。
釧路運輸車両所所属の気動車。82・83編成は北海道高速鉄道開発が所有。
新得駅〜釧路駅間で運用され、2022年3月12日以降はキハ40形を置き換え同区間の全列車で運用されている。また釧路駅〜東釧路駅間では釧網本線の列車として運用中。
JR貨物所属
- DF200形0・50・100・200番台
五稜郭機関区所属のディーゼル機関車。全貨物列車牽引機。
過去の使用車両
JR北海道所属
- キハ183系900・0(画像)・500・1500・550・1550番台
札幌運転所・釧路運輸車両所所属の特急形気動車。
札幌車は「スーパーとかち」→「とかち」、釧路車は「おおぞら」「まりも」で運用された。なお「おおぞら13・14号」→「まりも」運用時は中間に寝台車として14系客車を連結していた。
定期運用離脱後も代走で「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」の運用に就く事があった。
札幌運転所・釧路運輸車両所所属の特急形気動車。
特急「スーパーおおぞら」→「おおぞら」・「スーパーとかち」→「とかち」として運用されていたが、キハ261系に使用車両が統一された為撤退した。
- キハ80系「トマムサホロエクスプレス」(画像)・「フラノエクスプレス」
苗穂運転所所属のジョイフルトレイン。同名の臨時列車等で運用された。
- キハ183系5000番台「ニセコエクスプレス」・5100番台「クリスタルエクスプレス トマム&サホロ・5200番台「ノースレインボーエクスプレス」(画像)
苗穂運転所所属のジョイフルトレイン。臨時特急「フラノラベンダーエクスプレス」や「おおぞら」の臨時便等で入線した。
- キハ40形700番台
釧路運輸車両所所属の気動車。1700番台同様に運用されていた。
- キハ53形500番台
釧路運転所(現・釧路運輸車両所)所属の急行形気動車。
急行「ノサップ」や普通列車で運用された。
苗穂運転所所属の急行形気動車。
急行「狩勝」「そらち」で使用された。
- キハ150形0番台
旭川運転所所属の気動車。
部分廃止区間の運休前に富良野線旭川駅発着の快速「狩勝」として使用された。
釧路運輸車両所所属のディーゼル機関車。
根室本線ではイベント列車の牽引で運用された。
- DD51形500番台
釧路運転所所属のディーゼル機関車。急行「まりも」牽引機。
- 14系
札幌運転所所属の客車。
急行「まりも」では座席車と寝台車が使用され、特急格上げ後は寝台車が「おおぞら13・14号」→「まりも」としてキハ183系と連結して運用された。
札幌運転所所属の客車(寝台車)。
2001年(平成13年)と2002年(平成14年)に寝台特急「北斗星」の客車を使用した臨時特急「北斗星まりも」として運用された。
JR貨物所属
- DD51形500番台
旧・鷲別機関区所属のディーゼル機関車。DF200形に置き換えられ根室本線から撤退した。
北海道ちほく高原鉄道所属
ふるさと銀河線で運用されていた気動車。
快速「銀河」として帯広駅〜池田駅間で根室本線に乗り入れていたが、ふるさと銀河線の廃止と共に運用を終了した。