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猪八戒

ちょはっかい

『西遊記』に登場する豚の妖怪。または、それを元ネタにしたキャラクター。
目次 [非表示]
  1. 西遊記』に登場するの妖怪。本稿で解説。
  2. 最遊記』に登場する妖怪。→猪八戒(最遊記)
  3. ギャグマンガ日和』に登場した、西域に向かう途中で他の仲間達の食料になった豚。
  4. ゴゴゴ西遊記』の登場人物。→猪八戒(ゴゴゴ西遊記)
  5. グリムノーツ』の登場人物。→猪八戒(グリムノーツ)

概要

元は天界水軍を率いる高位の神将天蓬元帥(てんぽうげんすい)。中国語ではチュー・パーチエ(Zhu Bajie)、上古中国語ではタ・プレードクルーグス(ta preːdkrɯːɡs)と呼ぶ。

かつては人間であり、怠け者の遊び人だったが、ある日真人(高位の仙人)と出会い、数語のやりとりで悟りをひらき、修行者としての道を歩み、やがて天界に迎えられ玉皇から「天蓬元帥」の官位を賜った(第九十四回)。

しかし、ある時天界で行われた大規模な酒宴の席にて泥酔し月の宮で嫦娥(月の女神様)に襲い掛かると言う失態を仕出かし、天帝の怒りを買って下界に追放されてしまった(「嫦娥にやらしいことする!」と言えばそうなる)。その折、誤って(※1)(中国語では「猪」という漢字を「ブタ」の意味で使う)の胎内に宿ってしまった為に半人半豚の妖怪として転生してしまい、自暴自棄になって母豚を始め、多数の人畜を殺して貪り食い続けた。

然し、観世音菩薩に拠って教化され、後に三蔵法師の弟子となって取経の旅をサポートした。


三蔵法師の弟子になる前は大金持ちの烏斯蔵国(うしぞうこく、チベット)の高老荘にて入り婿になり、家業に精を出していた経験がある(大食らいだが、至って真面目に仕事をしていた。世間体の悪さから高太公が三蔵一行に退治を依頼してしまった)。また人食い妖怪として暴れていた頃にも財産家の女妖怪「卯二姐」と夫婦の契りを交わしており(八戒によればすでに死亡している)、三蔵一行では唯一の結婚経験者。ちなみにこの辺のエピソードは漫画『最遊記』でもネタにされており、原作とは180°異なるキャラとして描かれる八戒の数少ない原作に準ずるポイントである。

出家してからも女色と食欲には勝てず、時にはそれが原因でトラブルを招いても居るが、一方で兄弟子の孫悟空と共に、行く手に立ち塞がる百鬼妖魔を退治するのに大いにを顕した。


取経が成った暁、釈迦如来も八戒の食い気には特別な配慮を施し、仏事の供え物を清める仏である「浄壇使者」の称号を彼に与えている。


備考

原型

  • 「元本西遊記」では「朱八戒」の表記で登場する。時代は異なるが西域に仏典を求めて旅をした三国時代の僧、朱士行(しゅしぎょう)の号からとられているが、この時点で人間ではなく「黒猪精」(黒豚の妖怪)の設定となっている。
  • の次のの太祖朱元璋に連なる明皇帝の姓と重なる事を避ける為、明代のバリエーションでは「朱八戒」の姓は中国語で同音の「猪」に改められていった。
  • 物語における三蔵法師の弟子としてのルーツは、史実の玄奘の弟子である慈恩大師基とされる。『宋高僧伝』において色と欲を望む人物像が与えられ、「家妓・女僕・食饌」をのせた三つの車で移動したので「三車和尚」と呼ばれたと語られ、その人物像は後の猪八戒の絵のようにふくよかに描かれた。また、『宋高僧伝』の慈恩大師は滑稽な挙動をするキャラとして描写されてもいる。
  • 『西遊記』の物語の古い形態を伝える『楊東來先生批評西遊記』では猪、または猪にひかせた戦車(チャリオット)に乗る摩利支天菩薩の部下である「御者将軍」とされている。「世徳堂本」では元となった神が天蓬元帥に変更されたが、この版にも変更前の痕跡が残っている(第七回で悟空を五行山に封じて西方に帰ろうとする釈迦を「天蓬」が「天祐」と共に引き留めているが、時系列的には天蓬(=八戒)は第五回の蟠桃会のあとに地上に転生させられて不在のはずである)。
  • 天蓬元帥自身は猪(豚)の形象・特徴を持たない北天の星神だが、置き換え先が彼である事の要因として、北方に属する猪系の神(毘沙門天の部下とされた金剛面天など)の影響をみる説もある。
  • 八戒が三蔵一行に加わった場所はチベットを意味する烏斯蔵国である。元代の中国ではチベット仏教が隆盛しており、摩利支天が重要視されるほか、猪頭の尊格チャクラヴァラーヒーや彼女を明妃とするチャクラサンヴァラ(彼自身は猪頭ではない)が語られていた。

外見について

  • 観音菩薩に勧化されるシーンでは、鎧兜で武装している描写がある。そのとき観音が連れていた従者の恵岸行者木叉との対面・対戦時には鱗を剥いだ蠎(うわばみ)を鎧がわりにし、腰に半月状の弓を携えていた(第八回)。高老家では青とも藍ともつかぬ直裰を纏っていたが(第十八回)、悟空に捕らえられた際に引き千切られたため、三蔵らと合流した際に新しく青色の袈裟を与えられている(第十九回)。また、第五十五回、第六十七回などにおいて黒い直裰を着た記述もある。
  • 被り物については明言されていないが、絵や像では済公が被っているような帽子をつけている事も多い。その帽子には、正面に「佛」の字が入っていたり、緊箍児のように両端の先がカールした輪っかの意匠がついている事もある。

  • 一般に膾炙している「ブタ=ピンク色」のイメージに従った風貌で表されることが多い彼であるが、原典の記述(第八回、第八十五回など)を総合すると「短い毛の生えた黒い顔、金色に光る瞳、目が隠れるほどに大きくはためく蒲扇の様な耳、地面をほじくり返せる長い口、尖った白い牙、ごわごわの黒く太いたてがみ、分厚く黒っぽい色の皮膚」となり、イノシシじみた黒豚の顔であることが窺える。第九十回では尻尾の記述もある。
  • このことから、八戒のイメージのモデルとなった種を梅山豚に求める説もある。梅山豚は黒い毛色で、目が隠れるほどの長く垂れ下がった大きな耳を持つ品種である。
  • 高老荘に婿入りするために変身したとき(第十八回)も色黒の男性になっており、稀柿衕を清めた時(第六十七回)の姿もやはりゾウのように巨大な黒ブタであった。
  • 白~ピンクの体色が主流となったのは20世紀後半のことであり、清代や20世紀前半の段階ではひろく黒豚の姿で描かれていた(参考)。
  • 今や現地でも黒豚に描かれることは稀であり、中国の映画やアニメを見てもピンク豚がほぼ100%。黒い肌は原作のみの要素と化してしまった。

「八戒」の意味

  • 「猪八戒」は俗名・渾名のようなもので、本来の法名は猪悟能(ちょごのう)と言う。悟空・悟浄とお揃いで「悟」すなわち「さとり」を意味する字が入っているため、観音菩薩や三蔵法師が好んで呼ぶことがある。
  • 高老荘への婿入りの際は「悟能」の名は使っておらず、代わりに「剛鬣(ごうりょう)」と名乗っていた。この剛鬣、「太くて硬いたてがみ」から転じて豚を表す言葉であり、自身が豚であることを意識してこう名乗った模様。
  • 「八戒」の名は三蔵法師がつけたもので、彼が三蔵法師に弟子入りする直前まで仏教で忌み嫌われた八つの生臭物(五葷三厭・・・ごくんさんえん。“五葷”は強い香りと辛味のあるニンニクニラネギラッキョウ野蒜の五つの野菜、“三厭”は 天上の、地上の、水中のを示し、即ち獣肉・鳥肉・魚肉の事)を口にせず戒律を守った事を褒め称えての命名である。

神格としての猪八戒

  • 元々が天蓬元帥と言う神将だったのは有名であり、実際にそのように信仰もされている地域やコミュニティもあるが、道教全体の共通認識ではなく、否定する見解を表明する道教寺院もある()。
  • 長い鼻と広い耳を持つ歓喜天との類似性、黒豚で現されることから「黒面神」(張飛趙公明周倉など)との関連性など、中国の民俗信仰に根差したキャラとしても有名。
  • 華語文化圏では祀るところも存在し、マカオでは悟空を始めとした仲間達と仲良くお堂に鎮座する。台湾では豬哥神と言う名称で単独で祀られ、悟空や関羽、孔子にも匹敵する人気を誇る神様である。「」は「兄、兄ちゃん」を意味する漢字だが、「豬哥」だと繁殖用の豚を意味する語となり、転じて好色な男性を意味する用法もある。豬哥神としての彼の像は美女を抱いた姿でも造型され、セックスワーカー達からも信仰を集めている。

武器について

  • 猪八戒の武器のような打撃武器の一種『(ハ)』いうもの。日本では九歯のまぐわ、熊手と訳されることもある(実際、沙悟浄を始め何人かの妖魔から得物を畑道具扱いされるシーンがある。本人も高老荘の畑仕事をこれ一本で行っており、鍬や熊手の用途としては間違いでは無い)。
  • 彼の持つ「上宝沁金の鈀」(上宝:優れた宝、沁金:金メッキの意)は、彼の太上老君自らが"神氷鉄"と呼ばれる金属から鍛えた逸品で、八戒が天蓬元帥に昇進した際に天帝から下賜された珍宝。武器の来歴からすれば、悟空の如意棒(同じく太上老君作で、中国の治水神話の英雄が用いた神器)と同等のものと言える。また、天竺に属する玉華州に巣食う妖怪・黄獅が鈀を奪って家宝にしたエピソードもあり、その宝器ぶりは作中でも幾度か称えられている。
  • 劇中ではもっぱら打撃武器として使われるが、その真の性能は『振り上げれば火炎、打ち下ろせば竜巻吹雪を起こす』という宝貝顔負けの超兵器だったりする。
  • その他、「振り上げれば黒雲、振り回せば黒煙、薙ぎ払えば霞(朝焼けと夕焼け)の光」とも。

ただ、こんな超兵器も悟空の石頭には勝てなかった。老子ェ……。

  • 本人も下賜されてから手放したことはないと述べるほど頼りにしている兵器であるものの、『西遊記』中では幾度か放りだしていたり、また小便をかけた泥をこね回すのに使ったことがある。後世の二次創作『後西遊記』では人に貸したままほったらかしと、扱いが不憫……しかも、上記の兵器としての超能力も劇中で披露したことが殆ど無い。豚に真珠とは正にこのことである。


性格

  • 偵察中にサボってお昼寝をするなどコミカルな立ち位置にあるためか、「おバカ」「天然」「怠け者でドジ」とされていじられがちだが、意外に知勇兼備な一面もある。元が軍人なので、薬や兵法にも詳しい。
  • 文献にもよるが、悟空が気絶した時に気合いを入れて蘇生させたり、婿入りの時に詩経の一句を諳んじるなど知識も豊富。また、嘘も方便とばかりに魔王にハッタリをかまして相手をまんまと騙したり、出て行った悟空をワザと怒らせてメンバーに戻した事もある。
  • 善き家庭人と言う面もあり、パーティ解散を唱えては帰ろうとする。三蔵に悟空がこき使われるのに同情した部分もあるが、奥さんに会いたいからと言う切実な面もある。
  • 後世の人によって書かれた「後西遊記」では猪一戒と言う子供がいると言う話が出てくるものの、出家した手前会ったことは一度もなく、結果として息子はグレて人喰い妖怪になった。
  • 二次創作である中島敦小説悟浄歎異」では、沙悟浄から「この男ほど世界を愛している者はいない」と称され、「楽しむにも才能の要るものだなと俺は気がつき、爾来、この豚を軽蔑することを止めた」とある。
  • 底本によっては釈迦如来のもとで出された食事を食べたのち、貪欲な食欲を失っている(豚から人並みの大食いになった)描写があるため、「お供え物食べ放題」の特典がある原作のエンディングでの八戒は救われているのかと言う解釈も存在する。そのため、戯曲やドラマ、絵本などでは悟るシーンが削除(つまり食欲を保ち続けている)されたり、如来の有り難い御言葉に大喜びするハッピーエンドに改変された作品も多い。『後西遊記』では供物そのものではなく、漂う香煙をその代わりにするとされる。

能力

  • 鈍臭いキャラを誇張化されている(原文でも間抜け扱い)が、天罡星に因んだ三十六の変化(孫悟空が七十二の変化をするので、悟空の半分に該当する術者となる)を身に付けている。先述された鈀の腕前も相当なもので、玉華州の領主である老王子とその子供達に見込まれて次男に武芸を指南した。
  • また、その見た目通り力仕事の腕前は随一と言える実力者であり、彼の勤勉さに惚れた舅と嫁に頼まれて結婚したと言う説もある。茨の道を切り開いたり、腐ったで埋まった道を大猪に変身(※2)して元に戻すなどパワーを誇示する逸話は多い。
  • その腕っぷしは戦闘でもいかんなく発揮され、雑魚は難なく蹴散らし、の妖怪や魔王を一撃で仕留めるなど、戦功は悟空に次ぐ。水中での戦いは(いかにも水に強そうな沙悟浄を凌ぐ)作中最強クラスで、水除けの術や魚に化けないと自在に動けない悟空からも頼られる。ただし、蜘蛛が化身した魔女共を懲らしめんと意気込んだは良いが、女好きな癖が出て無理やり混浴しようとしたため、反撃されたことも。
  • 底本により、年頃の娘を持つ未亡人に求婚された際に「鏖戦之法(熬戦之法とも)」なるものを心得ていると述べるシーンがある。「長持ちの法」「長期戦」と訳されており……意味は推察願いたい。

(※1)江戸期の日本では「猪」をそのままイノシシに解釈していたが、弓館小鰐氏や南方熊楠氏は原作通り、豚として紹介した。

(※2)豚をトイレで飼って排泄物を始末させたり、生ごみを始末させたりする風習は中国に古くから存在したため、八戒は汚い描写が多いといわれる。


フィクションでの扱い

  • 三蔵一行では三番手として扱われる傾向にある(原作だと二番目に八戒が一行に加入)。
    • 堺正章版「西遊記」(以下堺正章版)では三番手として扱われており、日本ではこちらのイメージが根強いか。
  • 性格づけもメディアによって大幅に異なる。
  • 原作だとコミカルではあるものの、過去の経歴から強キャラとして扱われているが、なぜだか弱キャラとして扱われる事がしばしばある。
    • 特に香取慎吾版やそれをモデルとした『Go!空伝』版だとその傾向が強い。しかし、前者ではボス妖怪の手下であればそれなりに戦えるだけの戦闘力はある。


猪八戒をモデル・由来とした主なキャラクター


パロディにおける演者


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愛すべき馬鹿 愛妻家 大食い ドスケベ

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