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虎狼死家左々右エ門

ころしやさざえもん

虎狼死家左々右々エ門とは、ゲーム『逆転裁判2』及び『逆転検事2』の登場人物である。
目次 [非表示]

「‥‥人は見かけによらない、

 と申しますよ。」


声:横島亘(TVアニメ版)

演:ムーディ勝山(舞台『逆転のパラレルワールド』)


概要

逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』で初登場。『逆転検事2』で再登場し、複数エピソードに跨がって暗躍する。年齢不詳。身長184cm。


依頼者の目的や人間性を問わず、依頼されれば如何なる人物であろうと、情け容赦なく確実に殺害する凄腕の殺し屋。殺し屋は約100年以上前の先祖より代々伝わる家業であり、彼は3代目に当たる。『特別捜査課』が何年にも渡って、追跡している凶悪殺人鬼だが、その足取りは一向に掴めずにいる。『逆転裁判ファンブック』では「謎が謎呼ぶ謎の殺し屋」と紹介された通り、未だに多くの謎に包まれている人物の1人として描かれている。


恐るべき職業に反して、虎狼死家の外見や態度や言動はいずれも「柔和温順」を彷彿とさせるものである。細目で温和な表情を浮かべる顔の中心部には、額から顎にかけて縦一文字の縫い目が走っている。左目には銀のチェーン付きのモノクルを掛けている。ショートヘアの前髪の中心部には白髪が混じり、真っ白な口髭を生やしている。老人らしからぬ、長身痩躯で引き締まった体の持ち主で「歴代の依頼の数々を経て、屈強な肉体へと転じて行った事」が窺える。


常に穏やかで紳士的な態度を保ち、礼儀正しさや丁寧な言葉遣いを心がけている。いつ如何なる時でも、相手が誰であろうとも必ず敬語で話す。物の名前を短縮して呼ぶのを嫌い、どんなに長くとも正式名称で呼ぶ事を好んでいる。例えば「パソコン」なら「パーソナルコンピューター」と言い換えている。一定の怪しさが漂うものの、外見だけなら落ち着いた好々爺にしか見えないが「殺し屋に相応しい冷酷さ、狡猾さ、卑劣さ」を兼ね備え、それを作中の関係者やプレイヤーに、まざまざと見せつける。


虎狼死家本人は「依頼者との信頼関係、義理人情を重んじる」と強調して語るが、あくまで「彼にとって都合の良い、自分なりの流儀」に過ぎず、真っ当な人間の考えるものとは乖離している。作中では、御剣怜侍から「虎狼死家は義理人情を何よりも重んじる」と説明された成歩堂龍一「殺し屋に義理も人情もあるかよ‥‥」と胸中でツッコミを入れていたのに頷いたプレイヤーも多いだろう。


何が起きようと、虎狼死家自身は四六時中ポーカーフェイスを保っているが、その心境は彼の私物が代弁している。『裁判2』では無線機が、『検事2』ではアイスクリームが、持ち主の心境を感情豊かに表現している。どちらも「虎狼死家本人の顔を彷彿とさせるデザイン」である。無線機ごしの会話中では「声だけで姿が見られない分、大した恥をかく事は無い」と見ているのか、矛盾を暴かれたり、図星を突かれたりすると、普段の寡黙で冷徹な姿からは想像も出来ない、老人らしい素っ頓狂な悲鳴を上げる時もある。他のプロの犯罪者である証人達にも言える事だが、流石に法廷で証人となる状況には慣れていないからか、時として証言中に失言する場面も見られる。


服装

主にターゲットの周辺を探る目的で各地に潜伏しており、多種多様な職業の人物に変装を用いて成り済ましている。偽名は常に「田中太郎」を使用する。個性的な外見の持ち主なのに「何故か時と場所と場合を問わず、周囲に溶け込める擬態能力」を有する。その上、不思議と出会った人々には「妙に印象の薄い人物」として記憶される傾向にある。プレイヤーの視点からは「どう見ても怪しい」としか思えないのだが。


『裁判2』ではホテルのボーイと黒いスーツの執事を装い、表舞台に姿を現した。第1期アニメ版の終盤の逃走劇では、執事を演じた時と同じ黒スーツ姿だったので、これが普段着と見られる。


『検事2』では「サザエのマーク付きのピンクの法被」を羽織った、アイスクリーム売りを装っている。法被の下にはメイン画像の通り、白いシャツを着て黒いネクタイを締めている。この法被の「サザエのマーク」は彼のシンボルでもあり、後述のカードにも描かれている。ターゲットのSPの反撃で負傷した為、左腕に三角巾を着用している。職業柄、満足な治療が出来ていないのか、腕からは時々血が滲み出る。焦ると傷が開く傾向にある様だ。


戦闘力

自他共に認める凄腕の殺し屋で、単独の戦闘力は作中でもトップクラスに入る。『逆転』シリーズ全作を通じて「互角に戦えると断言出来る人物」も僅か3人しかいない。


1人目はかつての同業者ライバルで、現在は牢獄で隠居生活を送る鳳院坊了賢。2人目はターゲットとなった『西鳳民国』の大統領・王帝君のボディーガードを務める外城涯。『検事2』での怪我は彼に負わされたもので、外城は「虎狼死家を返り討ちにして、負傷させた上で撤退に追い込み、大統領を無傷のまま守り抜く」という大金星を上げている。虎狼死家自身、外城に関しては「この名前は生涯、忘れない」と実力を非常に高く評価していた。そして3人目は『西鳳民国』出身の国際捜査官・狼士龍である。彼だけは作中における戦闘描写は無いものの、スタッフからは「虎狼死家に並ぶ『逆転』シリーズ最強候補」と称されている。


どんな武器も自由自在に使いこなすが、中でも射撃の腕は突出している。狩魔冥を標的とした狙撃に使用したのは拳銃(形状からしてルガーP08)であり、遠距離から彼女の右肩を一発で撃ち抜くという「殺し屋としての高い技量」を見せつけた。冥の父・狩魔豪は過去の事件で、右肩に一発の弾丸を撃ち込まれて怪我を負い、休職する羽目になった事がある。冥を父親と同じ目に遭わせてトラウマを植え付ける事で、担当検事としての事件への関与を妨害するという「虎狼死家の冷酷さ、狡猾さ、卑劣さが如実に表れた犯行の1つ」と言える。この犯行を彼本人は非情にも「あなたを勝訴させる為の私からのプレゼント」と成歩堂に語っている。


正式にターゲットとされた藤見野イサオの殺害でも、彼の人間離れした殺し屋としての力量が発揮されている。何とこの事件では事前に用意していた武器は用いず、俳優であるターゲットが「舞台衣裳として身に着けていたマフラー」をロープの代用品にして絞殺している。藤見野は老け顔なので解り難いが21歳と若く、身長は179cmと大柄で鍛え上げた肉体を持ち、職業もアクション俳優なので身体能力は一般人よりも遥かに高い。そんな彼に一切の抵抗もさせずに、出会ってから数分で息の根を止めている。更に「現場に残した証拠品」は前述の「被害者のマフラー」、後述の「サザエのカード」の2点のみである。


この事件では依頼者である真犯人が逮捕されるが、虎狼死家には逮捕に関しての瑕疵は無い。何故なら真犯人を恨んでいた人物が相手を殺人犯としての逮捕に導く為、数多くの現場工作を施し、大量の証拠品の偽造まで行ったからこそ「依頼者がターゲットを直接、殺害した真犯人として逮捕されるという不測の事態」が発生したのだ。こういった危機的状況が引き起こされたのは、恐らく「数十年にも渡る彼の殺し屋人生」において、初めての事だったと思われる。


殺し屋稼業

殺害現場には「サザエモン」という名前に因んで「ピンクのサザエのマークが描かれたカード」を必ず置いて立ち去る。このカードは「殺人は殺し屋である自身の犯行」と明かす事で、依頼者に嫌疑が掛かるのを阻止する目的で置いている。カードの右下には「自分の苗字が書かれた判子」が押されている。証拠隠滅に関しても抜け目が無く、基本的に現場に残された証拠品は「サザエのカード」1点に限られる。それ故に依頼者からは「自分の殺人容疑を防いでくれる」と絶大な信頼を寄せられ、警察からは「手掛かりの1つも残してくれない厄介な強敵」として警戒されている。


今までは3代にも渡って「一子相伝」で殺し屋家業を継承して来たが、現在は後継者捜しに難航しており、素質があれば血縁者でなくとも後継ぎに迎え入れようと思案している。


『裁判2』の法廷では無線機を通じて証言を行う途中、何故か矢鱈と成歩堂に自分に依頼する様に勧めて来るが、大慌てで断固拒否された。裁判の話題を逸らす事で依頼者の容疑を薄めようとして、成歩堂に「職業柄もしくは立場上、恨みを持つ相手がいるのでしょう?」と誘惑し、揺さぶりを掛けようと一計を案じたのだろうか。この一連の話を真に受けた裁判長が「成歩堂は私の命を狙っているのか」と疑念に駆られるという、ちょっとした騒ぎが起きた。


基本的には、信頼に足る人物のみ依頼を請け負う為「一度は直接対面して、ある程度の話し合いを経てから依頼遂行に向かう方針」を取っている。だが最近は仕事数が減少傾向にある為、インターネットを経由しての依頼も引き受けたり、一般人への擬態も兼ねて「アイスクリーム屋等の副業」もこなす事で収入を得ている。前述の成歩堂への誘惑も、仕事の少なさを補う目的も兼ねての事だったのかもしれない。法廷の中心部で殺し屋に依頼する愚か者は、流石に存在しないであろうが。


信頼関係

「依頼者との信頼関係・義理人情を何よりも重んじる」「裏切り者を何よりも憎む」この2つを主な信条として掲げ、己の悪の美学としても扱う。これらは悪く言えば「自分本位な悪の美学を美化・正当化する為の美辞麗句」に過ぎず、善良な人間からすれば褒めるに値しない代物である。虎狼死家自身は「自己流の信念、仁義を貫いている」と意識していて、自分の生き方を誇りにも思っている。


しかし『さらば、逆転』での自分の依頼者が正真正銘の極悪人だと知りながら「出来る事なら何でもしてあげたい」と言わんばかりに、徹底的な奉仕と擁護の対象ともしていた。一方「依頼者の邪魔者となる相手達」には情け容赦なく攻撃したり、卑怯にも無関係の人間をも誘拐や脅迫によって巻き込んで、依頼者の庇護目的で利用する等の蛮行に走っている。この2点だけでも「虎狼死家の義理人情は、自分に利益をもたらす人間のみが対象とされ、それ以外の人間に対しては、完全に冷酷非情である実態」が明確化されている。自己流の思考や方法で、依頼者に誠心誠意を込めて尽くす、自分に酔っている節も見受けられる。


凄腕の殺し屋に依頼可能な人物は「莫大な依頼料を支払える者」に限られるので、殺し屋という生業に多額の報酬を与えてくれる依頼者に対しては「必要以上の奉仕精神」を見せている。標的の殺害以外でも依頼者から頼まれれば、状況に合わせて自分の可能範囲内で、どんな望みでも叶えてやろうと様々な行動に出る。虎狼死家の思想や職業上、独断行動に出る場合も多く、その際は非道で暴力的な手段を選びがちな傾向にある。彼はこうした自分なりの奉仕活動を「大切なお客様へのサービス」と述べていて、実際その「過剰とすら言える程のサービス活動」が幸いして「他の殺し屋とは一線を画す、特別な職業上の魅力・利点」を生み、評判の上昇や多くの依頼を集める現状に結び付いている。『さらば、逆転』での真犯人も「虎狼死家は依頼人との義理人情を大義名分として、標的の殺害以外の自分の望みも、自発的に実行した上で全て叶えてくれる」と見越した上で依頼している。実際に真犯人の期待通り、彼は行動して成果を上げている。


反面、後述の「問題点」にもある様に、虎狼死家本人としては慎重な思考と行動を心懸けている割には「自分と依頼者を危険に晒しかねない行為」「自分、依頼者、他人のいずれかが、何らかの二次被害を受ける事態を招き寄せる」等といった失態も犯している。しかも後述の通り「問題行動の数も種類も膨大なので、一覧表が作成出来てしまう位」である。それでも良かれと思ってやっているからか、彼の行動方針が変わる気配は一向に無い。


理念

冷酷な策士ではあるが「必要以上の殺傷に走るのは、自分にとっても依頼人にとっても保身に悪影響となる」と熟知しているので、無闇な殺人は犯さない様にしている。「やろうと思えば、その場の人間を皆殺しにして、証拠隠滅する戦闘能力」を持ちながらも、基本的には「殺害対象はターゲット、自分の信条に反する者」に限られる。ターゲットや攻撃対象の人選からも、仕事に対する徹底ぶりは尋常ではない。自分を追跡していた警官隊を撃退すべく発泡し、その中の数人に怪我を負わせた時には「彼らには申し訳ない事をした」と語っていて、どれ程の誠意が込められているかは定かではないが、不本意な行動であったと認識自体はしているのが窺える。


虎狼死家としては「殺し屋という職業は依頼人との信頼関係が重要であり、それを侵害する裏切り者は断固として許さない」という価値観を持っている。裏切り者に対する憎悪は異常とも言える程で、作中では「裏切り者を最も憎む。裏切り者は自身の名にかけて、命に代えても仕留めてみせる」と力説する。この信念は「世に蔓延る裏切り行為全般を許さない義侠心」という御大層なものではない。「自分の信頼を裏切った者、自分の邪魔をする者は誰であろうと許さない、凶悪殺人鬼らしい残酷さと身勝手さが表出した信念」である。彼の許さない裏切りは「あくまで自分に対してのもの」であり、卑怯な事に普段での自分の言葉や信念を棚に上げて、味方側とされる他人を裏切る場面すら見られた。


また自己防衛、守秘義務も兼ねての行動でもあるが、多額の報酬を支払ってくれた恩人とも言える、自分の依頼者が何らかの裏切り行為を見せた場合は、速攻で自ら契約を打ち切り、依頼者を次なるターゲットとして狙いを定める。おまけに裏切り者への報復を最優先事項とし、始末が終わるまでは他の仕事は引き受けようとはしない。この狂気すら垣間見える執念深さからして、過去に何者かの裏切りが原因で、痛手を受けた経験でもあるのだろうか。


問題点

そんな彼だが、幾つか問題点もある。身も蓋も無い事を言えば「アニメや漫画の悪役は登場人物のみの力で倒せるが、ゲームの悪役はプレイヤーが操作キャラを通じて、自らの力で倒さなくてはならないので、ある程度の隙を見せて貰わないと倒せない事情あっての事」なので仕方ない面もある。


  • 依頼人のアリバイの無い時間に犯行を行う(しかも依頼人が昼寝をしていた為に細工され、余計な疑いが掛かる結末になってしまっている)

  • 事故か自殺に見せかければ、警察の犯人逮捕を目的とした捜査すら起きないというのに、殺人バレバレのやり方で警察の捜査を促し、依頼人が逮捕されない様に対処していない。プロとしては「依頼人と自分の安全」を最大限、配慮していないという点で失格と言える行為である(例え、依頼人が殺人のやり方に対して口出しをして来たとしても、自殺にしない理由は無いので、虎狼死家の方が止めさせるべき。ターゲットの藤見野には「グランプリを逃す」という自殺の理由として使える事情もあった)

  • 依頼殺人であれば、普通は警察は実行犯のみを探す筈なのに、カードを残して依頼殺人である事を明らかにして、依頼人に疑いが向く様にしている。これが無ければ、御剣が虎狼死家の存在を認識する事すら出来なかった(虎狼死家の全ての殺人にカードを置く必要はない)

  • 人を殺せば遺族から恨みを買う。それが大スターなら尚更、ファンからの反感は途轍もなく大きくなる上に、自身の知名度も上がってしまう。段々、自身が活動し難くなってしまう。

  • 担当検事を狙撃(普通なら裁判は延期になり、被告人に余計な疑いが掛かる。殺すなら証人の霧緒の方である)

  • 誘拐した女性を依頼人の家で監禁する(バレたら依頼人は有罪になる危険性のある、最悪の行為でもある)

  • 金の受け渡しを犯行現場で直接行い、他人に目撃される(この点は成歩堂にすら呆れられていた)

  • 重要な証拠品である『クマのアクセサリー』を依頼人の家に残しておく。

  • 依頼人の許可なしに真宵誘拐、冥狙撃等の数々の犯罪行為を犯す(もしも依頼人だけ逮捕されて、その罪が依頼人に及んだら、どう対処するつもりなのか?また真宵はパーティの参加者でもあるので、依頼人の友人である可能性すらあった)

  • 誘拐するとしても、最終的な判決を下すのは裁判長なので、成歩堂より裁判長の身内を拐った方が効果的(事実『検事2』では、裁判長の息子を誘拐した事により、無罪判決を取る寸前まで行った悪人がいた。実際は人違いだったが)

  • 逮捕されてしまった、依頼人との連絡手段を確保しておかない(成歩堂に頼めば、殺人を隠した上での伝言位は出来る筈)







※以下、ネタバレ注意。※








殺し屋の暗躍の軌跡

逆転裁判2』第4話『さらば、逆転

依頼者・王都楼真悟から「自分を失脚させようと企む藤見野イサオの口封じ、彼が失脚を招く為に保管していた物を回収して欲しい」と依頼される。依頼人こと大切なお客様の仰せのままに、藤見野を彼の巻いていたマフラーで絞殺し、その後は「目当ての品」を自身の楽屋にいた王都楼に手渡した。ところが、かねてより王都楼に私怨を抱いていた、彼のマネージャー・華宮霧緒が「王都楼が誰かに藤見野殺害を代行させた真相」を悟った上で、彼が殺人犯として逮捕される様に現場工作を仕組んだせいで予想外の事態へと発展する。霧緒の計画通り、王都楼は藤見野殺害容疑で逮捕されてしまい、彼女の偽造した証拠品の数々により、窮地へと追いやられてしまう。この非常事態への対応を迫られた虎狼死家は、ここからは依頼者を守る為だけに、ありとあらゆる卑劣な犯行に及んだ。


まず初めに綾里真宵を誘拐して、彼女のパートナーである成歩堂龍一を「今回の担当弁護士となって、王都楼の無罪判決を獲得しなければ、真宵を殺害する」と脅迫した。同時に他人を仲介して、彼に専用のトランシーバーを送り「成歩堂に対する連絡・監視・命令・脅迫の4つの手段を取る道具」として頻繁に有効活用し、その行動は事件が解決するまで続いた。翌日は天才と名高い、本来の担当検事・狩魔冥を狙撃して出廷不可能にし、弁護側が有利になる様に裁判を進行させようとした。ただし虎狼死家の思惑とは裏腹に、冥を越える実力者・御剣怜侍が代理として検事を担当した為、かえって不利な状況を招く一因ともなった。しかも真宵の救出を目的に、成歩堂が普段は敵対している御剣や冥、糸鋸圭介を始め警察庁の人々と協力関係を結び、一致団結した彼らに追われる身になってしまった。


それでも「犯罪者としては歴戦の強者」である虎狼死家は、この状況を物ともせず、終始一貫して冷静かつ狡猾な立ち回りを見せた。当初は無許可で王都楼の自宅をアジトとして利用し、ワイン倉庫に真宵を監禁していた。中盤では手掛かりを求めて王都楼邸を訪問して来た、成歩堂と協力者達と鉢合わせするも「この家の執事・田中太郎」と騙り、余計な発言や行動は一切見せず、穏便に彼らを帰路に着かせた。その後は再び成歩堂に連絡を取るが、トランシーバーから王都楼のペットの猫・シュウの鳴き声を聞かれてしまい、ついに彼らに「潜伏先は王都楼の屋敷」と気付かれてしまう。この時から「虎狼死家による、人質の真宵を連れ回しての逃走劇」と同時に「警察による、人質救出を優先事項とした犯人追走劇」が開幕し、派遣された警官隊とは熾烈なカーチェイスや銃撃戦を繰り広げる事となった。


虎狼死家の妨害工作によって、警官隊は真宵救出に2回も失敗してしまい、彼は焦る事なく悠々と逃走を続行する。法廷では成歩堂と御剣が「真宵を救出して、虎狼死家の弁護依頼を打ち切る」「王都楼の犯行を立証する、決定的な証拠品の到着」この2つのどちらかが実現するまで只管、時間稼ぎに徹していた。2人はその一環として不本意ながら「藤見野にも私怨を持っていた、霧緒が殺人を依頼した真犯人」との主張まで展開した。進退窮まった状況下で御剣は奇策を講じる。無線機ごしに虎狼死家を証人として出廷させて「自分の依頼者は誰なのか」を証言させたのだ。誰もが驚天動地の状態に陥る中、彼は悠然と御剣の要請にも応じ、検察側の証人として出廷し「泰然自若」の姿勢で裁判に挑む。


しかし虎狼死家は御剣を裏切り、打ち合わせに反して「私の依頼者は華宮霧緒」と言い出し、それを主旨とした上で強調する証言に終始した。状況を打破する目的で呼び寄せた人物が、更なる事態の混迷を招く現状に、弁護側も検察側も困惑を深める一方であった。「真宵を救出する」「霧緒の殺人容疑を撤回する」「王都楼を有罪にする」この3つの目的から究極の取捨選択をしなくてはならない、極限状態に成歩堂は絶望感すら覚えて激しく苦悩する。未だに人質の真宵も含めた、成歩堂と仲間達の誰も彼もが疲弊する中で、いよいよ裁判は最終局面へと突入する。その時、奇跡が起きた。病院での治療を終えた冥が警官隊を通じて入手した、王都楼の邸宅に残されていた「虎狼死家の遺留品3点」を携えて出廷したのだ。彼女が提出した遺留品は全て正式な証拠品として受理されて、弁護側と検察側の双方が利用可能とされた。その中には「王都楼が虎狼死家の弱味を握る為、彼が藤見野を殺害する様子を盗撮して記録したディスク」が存在した。


このディスクを見た成歩堂は昨晩の留置所で、問い詰めた王都楼が明かした「虎狼死家の逆鱗に触れる事実を彼に暴露する事」で状況を打開しようと思い付く。成歩堂は無線機を通じて「王都楼は虎狼死家を全く信用しておらず、それ所か“後々に自身が依頼を口実に脅迫された時の保険”として、自分が先回りして弱味を握るべく、藤見野の殺害経緯を盗撮していた」と暴露した。これを知った虎狼死家は、冷静な態度と言動は維持しつつも「私は最初から裏切られていた」と激しい怒りに震え出す。この時の怒りの凄まじさからして、彼にとって「史上最悪の裏切り行為をした依頼人は王都楼」であったに違いない。そして今まで徹底的な庇護対象として来た、王都楼との契約を即座に解除すると「次は裏切り者をターゲットとする」と元依頼者となった彼への復讐殺人を宣言する。続けて「もう不必要となった、王都楼への奉仕活動も終了したので、用済みとなった人質は解放する」と成歩堂に告げると、虎狼死家は逃走ルートの途中で真宵を置き去りにして、自分は余裕綽々で逃げ延びて行った。その後、やっと駆け付けた警官隊によって真宵は保護された。


「最強にして最高の味方」が「最強にして最悪の敵」に逆転してしまった現状を前に、王都楼は究極の恐怖感と絶望感を味わった事で発狂。苦渋の決断から妥協案として「有罪判決と重度の刑罰を受け入れて、刑務所に匿って貰う目的」から、自身に対する有罪求刑を絶叫しながら「俳優の命である顔」を無茶苦茶に引っ掻き回した。そして引っ掻き傷まみれの顔になった彼にはお望み通り、有罪判決が下されるに至った。冥の法廷到着の直前、成歩堂は助手を担った綾里千尋から「状況の打開策は2つある。虎狼死家が王都楼との契約を打ち切る事。王都楼が心から有罪判決を望む事」と助言を受けていた。この発言時点では、成歩堂は「両方無理」だと思っていたが、最終的には両方が同時に実現される結果となった。


エンディングの『登場人物達の後日談』では、無線機ごしに彼も登場。普段の穏和な態度と口調で「いつでも新たな依頼をお待ちしています」と宣伝を言い残し、最後の役目を終えた無線機は完全に自壊した。法廷での論争中に焦る度に故障を繰り返していた、無線機はついに寿命を迎えたのだった。不要となったら時と場所を選ばずに自壊させられる様、事前にプログラムされていたのかもしれないが。基本的にはエンディングでの登場人物は「主人公である成歩堂とは、敵対関係にある犯罪者は除外される傾向」なので、この人選は異例である。


逆転検事2』第1話~第5話

『裁判2』から1年後。新たなる依頼者・猿代草太から「復讐殺人と自己保身」を目的として『西鳳民国』の大統領・王帝君暗殺の依頼を受ける。有名な国家の大統領の暗殺なだけに、恐らく虎狼死家にとっては「史上最大の大仕事」であったと思われる。じっくりと時間を掛けて用意周到に準備を完了させると、来日目的でプライベートジェットに搭乗していた大統領のSPに扮して潜入し、機内にて隙を見計らって彼の射殺を図る。しかし大統領のSPの1人にして規格外の戦闘力を誇る、外城涯に返り討ちにされて任務に失敗。彼に左腕を折られて負傷し、ターゲットは無傷のまま撤退を余儀なくされる。


それでも虎狼死家は大統領の暗殺を諦めず、今度は演説会場の『ひょうたん湖公園』にてアイスクリーム売りの田中太郎を装い、執念深く暗殺の機会を窺う作戦を遂行する。暗殺失敗から2日後。大統領のSP間による内部抗争の末、内藤馬乃介が外城を殺害する事件が起きる。この事件の捜査を目的として『ひょうたん湖公園』を訪れた御剣と偶然にも再会。昨年の事件で対決した因縁の相手ではあるが、御剣は無線機ごしに会話しただけなので、虎狼死家の姿までは知らなかった為、当初は「単なる事件の目撃者にして証人の1人」として扱われる事となる。御剣とは彼による尋問を通じて、高度の心理戦を展開するが奮戦空しく、犯行と正体を暴かれてしまう。これ以上、現場に留まる事は不可能とされた虎狼死家は最後の抵抗として、一時的に内藤を人質に取って作り出した隙を突いて、大統領の暗殺を決行すると同時に逃走を図る。


事件の捜査中「暗殺対象とされた大統領は影武者で、本物の大統領・王帝君は十数年前から行方不明となっている衝撃の事実」が判明したが、この時まで虎狼死家も大統領が影武者だったとは知らず驚愕していた。「正体が誰であろうと、依頼者から暗殺を依頼されたターゲットには変わりない」として、大統領暗殺は続行し逃亡の間際に仕留めようとするが、この場に居合わせた多くの人々から妨害を受けてしまい、負傷が原因で本領発揮も、影武者に一撃を加える事も叶わず、無念の撤退へと追い込まれる。


『ひょうたん湖公園』での事件の結果から、虎狼死家は「完全に大統領暗殺から手を引く決断」を下すが、これは任務遂行が不可能となった事だけが理由ではない。もう1つの理由は「大統領が影武者という偽物である事を知りながら、その事を自分に伝えずに暗殺依頼した、草太を裏切り者と見なして次なるターゲットに選んだから」である。著名人だった王都楼とは正反対に、日陰の身である「草太の正体や居場所」を突き止める事は容易ではなかったが、復讐心に基づく執念から虎狼死家は独自に草太の追跡を開始し、彼に纏わる真相に迫って行く展開となる。その過程で影に身を潜めながら、御剣を始めとした各事件の関係者を利用する狡猾さを見せた。自身の目的達成が動機ではあるものの、御剣には必要とされる情報を提供する事を主体とした、ある意味、捜査協力とも言える発言や行動も定期的に見せた。


第1話『逆転の標的』以後は表舞台から姿を消し、御剣に携帯電話を通じて情報提供したり、刑務所にいる知人にして昔の商売敵・鳳院坊了賢といった「関係者の話」から断片的に動向が窺える状況に留まっていたが、第5話にして最終話となる『大いなる逆転』に満を持して再登場。一連の事件の調査を経て、とうとう虎狼死家も草太の正体と居場所を探り当て、彼が団員となって潜伏先としていた『タチミ・サーカス』へと潜入し、草太の殺害を実行しようとする。最終決戦の舞台となったサーカスのテント内では、御剣と彼に黒幕であった事を暴かれて本性を現した、草太の熾烈な頭脳戦が繰り広げられていた。激闘の末に勝利を掴んだ御剣に、引導を渡された草太は警察に連行される様に促されるが、敗北のショックで疲労していた彼を射殺しようと虎狼死家が襲い掛かる。「裏切り者は必ず殺す信条」に執着する虎狼死家だったが、草太の悲惨な境遇に同情し、影ながら彼を支援して来た了賢に「草太には刑務所生活で贖罪をさせるのが最適な罰となる」と諭される。かつての宿敵の意見に感化された虎狼死家は、草太への復讐殺人を断念して、テントから脱走し行方を眩ました。


それ以降の彼の動向は杳として知れない。だが『裁判2』及び『検事2』の時点で初老だった上、人間離れした身体能力からして、諸事情により表舞台に姿を見せる事が無くなっただけで、シリーズ後期に当たる時代でも「凄腕の殺し屋としての暗躍」は続いている可能性は高い。虎狼死家一族にとって家業は生業でもあるので、どんな風に時代が推移しようと辞める訳には行かないだろう。案外、後継者捜しに奔走しているのかもしれない。


ちなみに『検事2』で虎狼死家が見せた動向から「彼に王都楼は始末されてしまった事」が示唆されている。本作での虎狼死家は、刑務所や大統領のプライベートジェット等の難所にも易々と侵入しており、裏切り者として激しく憎んでいた、王都楼を気にする素振りは一片も見せず、新しい仕事に取り組む新生活を自由気ままに送っている。「裏切り者は必ず殺す。その任務を達成するまで依頼は引き受けない」という『裁判2』での言葉を有言実行しているならば、王都楼は『裁判2』での結末から『検事2』の本編が開始されるまでの約1年の間に仕留められたと思われる。「王都楼と草太に向けた、尋常ではない憤怒と憎悪と復讐への執念」からも、復讐のターゲットとして狙う相手の殺害を諦念する可能性は0に近い。運良く草太は了賢の手引きで、特例となれただけである。


関連タグ

逆転裁判2 逆転検事2

さらば、逆転 逆転の標的

殺し屋


リモート:「無線機を通じて証言」という行為は、ある意味これに該当する。

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