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認知症

にんちしょう

正常に発達していた知能が、脳の器質的変容により低下し、物忘れなどが起こるようになること。
目次 [非表示]

概要

認知症とは、いったん正常に発達した知能・知性が、後天的な脳の器質的変容などで低下して戻らず、日常生活に支障が出てしまうことを指す。

かつては「ぼけ」や「痴呆」(老人性痴呆症)と言われていたが、2007年ごろまでに言い換えられるようになった。


症状としては、場所が分からなくなる、日時が分からなくなるといった見当識(認識能力)の障害、計算ができなくなる、言葉が出にくくなるなどの認知機能の障害、見聞きしたことを覚えられない、昔覚えたことを思い出せなくなるという記憶能力の障害といったものがある。これらは認知症の中核症状と呼ばれるものである。


「ボケ老人」のイメージでよく言われる「わしは飯を食ったかいのぅ?」「さっき食べたじゃないですか」というやりとりは、記憶障害の一種であるとも考えられる。

ただし、物忘れ自体は認知症とは関係なく老化で起こりうる自然な現象の一つであるため、認知症と診断されるにはこれ以外にも複数の症状が発生していることが前提となる。


やっかいなのは中核症状から起きる周辺症状(BPSD)と呼ばれるものである。これは、患者によって発現やその程度に差があるもので、全ての患者に当てはまるわけではないが、認知症の典型的な症状として多くの人に認識されているといえる。


例えば幻覚妄想を抱えている患者は多く、「物を失くしてしまった(実際には失くしていない、もしくはずっと前に手放しているはずのもののこともある)」というとき、「あいつに私の物を盗まれた」といった被害妄想(通称:物盗られ妄想)に陥ってしまうケースがある。ほかにも徘徊などが多く見られる。精神的な不安や抑うつが大きくなり、混乱や負の感情をコントロールできず、介助・介護を行う家族や福祉施設の職員といった身近な人に対しても暴言・暴力を振るってしまう、それによりトラブルにつながってしまう患者も少なからずいる。


中核症状が認知症そのものの進行に合わせて(段階を踏んで)悪化していくのに対し、周辺症状は初期段階からでもその傾向が見られ、さらに急激に悪化する場合がある。


認知症の進行が進んでいない内は活発に動くことができるが、それがかえって徘徊、事故、暴力などのトラブルに繋がりやすいともいえる。

しかし、徐々に周囲の刺激に対する反応や意識が低下していき、最後は寝たきりになって死を迎えることとなる。


発症の要因はさまざまあるが、一番はやはり加齢によるものである。また、加齢による好ましくない生活習慣の積み重ねや病気で脳血管にダメージを負うリスクが増えるともいえる。

いわゆる生活習慣病に分類される高血圧、高血糖(糖尿病)、高脂血症脂質異常症)などは認知症のリスクを高める。飲酒・喫煙の習慣、特に喫煙は動脈硬化を誘発するため注意が必要となる。

さらに、遺伝や外傷性など普段の生活習慣の改善だけでは予防が難しい要素も関係している。詳しい原因については後述する。


地域と症状次第だが、障害者手帳の交付を申請することが可能である。ただし、認知症による影響がどこまであるかによって内容が変わってくる。


治療

現在に至るまで、アルツハイマー型認知症などの一般的に認知症とされる疾患について、根本的に原因を治療して健康体に戻る治療法は確立されていない。(※認知症に似た症状が出ている別の疾患の場合は治療可能であり、またこれらを認知症と捉えることもあるため「認知症は完治しない」というわけではない)

このため、基本的には症状を緩和し、進行を遅らせる形で治療が行われる。中核症状については薬物を用いた治療が行われ、周辺症状についてはケア(心のケア)や環境調整(バリアフリー化など)、リハビリなどの支援が中心に行われ、精神的な症状が重い場合は一部薬物での治療がなされることもある。


認知症の治療は早期発見・早期対応が重要である。早い段階で認知症の傾向を発見し、治療で病気の進行を遅らせながら、少しでも長くその人らしい生活を送れるよう支援していくことが求められる。


また、認知症は「予防」という概念が重視されており、生活習慣の改善・トレーニングにより発症のリスクを減らしていく、という対策がとられている。具体的には日常生活で刺激が少ないと認知機能が低下する危険性があるため、会話や趣味の活動などで「頭を使う」機会を増やしていくこと、血流を増やして運動機能を低下させないように日頃から適度に体を動かすことなどが挙げられる。

アメリカ・コロンビア大学の研究で、高齢者を対象に健康診断と認知症の検査を行ったところ、移民など識字能力の無い(文字の読めない)人は、能力がある人に比べて認知症の発症リスクが3倍にも及ぶことが明かされている。もちろんペーパーテストを用いる検査の都合上、文字の読めない人の方が不利であるといえるが、この研究では識字能力が読解力・言語力などだけでなく、思考力や記憶力などにも影響を及ぼしていることが発覚している。→参考


 

症状が出た場合、基本的に一人で満足に日常生活を送ることが難しくなるため、介護保険制度に基づき、医療機関の受診と各自治体による要支援・要介護認定を受けた上で、福祉施設などによる介護サービス(要支援級の場合は介護予防サービス)を利用することになる。在宅で家族が介護を行う場合も、ホームヘルパーによる訪問介護や各施設のショートステイの利用などが併用されることとなる。


たいていのサービス利用者=介護を受ける側と、施設・介護従事者との関係は健全で対等である。しかし、暴言・暴力を躊躇なく振るい、止む無くそれに対応した職員が虐待を加えたと一方的に訴えられて……というケースは、悲しいことによくある話とされ、利用者の中には「年功序列(認知症患者は多くの場合介護者よりも高齢である)」「自分は客なのだから丁重に扱われるべき」という考えが強かったり、同じく家族がサービスに対し厳しい視点を向けていたりという場合もある。逆に、体が弱っている利用者を疎ましく思い、意図的に暴力を振るう介護者も存在する。

他にも、徘徊などが原因で施設から脱走を図り、飢餓や事故といった原因により道端で死亡してしまう等の問題も後を絶たず、施設に入ったからと言って根本的な問題解決に至る訳ではない。


介護全般における問題ではあるが、在宅介護による家族の負担も大きい。近年では長年にわたる介護を苦にしての自殺心中(もしくは、それを計画したが死にきれなかったことにより一方が殺人犯・自殺幇助犯になってしまう)事件が複数報じられているほか、若者が介護によって自分の意思や行動を制限されてしまうヤングケアラーの問題も取り上げられるようになっている。


原因と分類

認知症の原因は、脳梗塞脳出血など脳血管障害が原因の脳血管性認知症と、脳変性性認知症の大きく分けて二種類がある。ほかに、プリオン病の一種であるクロイツフェルト・ヤコブ病など、感染症による脳症が原因となるものもある。

さらに、うつ病のような脳機能の低下を及ぼす精神疾患や、甲状腺機能障害、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などの、脳血管や脳には大きな原因がないにもかかわらず認知症に似た症状が出る疾患もある。


脳変性性の代表的ものの一つにアルツハイマー型認知症がある。アミロイドタンパクが脳に蓄積することで起こるという説が有力であり、治療に向けて研究が進められている。一説には認知症患者の半数以上がこのアルツハイマー型であると考えられている。

次に多いのが、レビー小体型認知症(アルファ-シヌクレインという特殊なたんぱく質で出来たレビー小体が脳細胞に生じる)で、運動障害などパーキンソン病に似た症状を発症する。無論、パーキンソン病の症状の一つとして認知症を発症するケースも存在する。

このほか、前頭側頭型認知症(ピック病)は、脳の一部にたんぱく質が蓄積し組織が萎縮してしまうことなどが原因で、行動を抑制する部分が傷ついて発症する。他の認知症に比べて、性格や言動の変化が目立つとされる。

脳血管性とこれら三つの代表的な脳変性性認知症を併せて「四大認知症」と称する場合がある。


複数の原因が関係している場合も見られ、たとえばアルツハイマー型と脳梗塞を併発しているケースが存在する。


65歳未満で発症するものは若年性認知症と呼ばれる。


厳密には認知症ではないが、パソコンスマートフォンなどIT機器の過剰利用による脳の過労状態や、睡眠不足が原因で認知機能の一時的な低下が起こる「スマホ認知症」が、一部の医師によって提唱されている。スマホ依存、ゲーム依存などと絡めて論じられている。→参考


認知症を公表した著名人

※50音順。百科事典内に記事のある人物に限る。


外部サイト

知っておきたい認知症の基本(政府広報オンライン)

こころの病気を知る - 認知症(NCNP)


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