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迷宮探検競技

めいきゅうたんけんきょうぎ

ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第21弾。著者はイアン・リビングストン。
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「迷宮探検競技」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第21弾「TRIAL OF CHAMPIONS」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。


作品解説

 主人公=君は、ポート・ブラックサンドから小舟に乗ってオイスター・ベイに向かっていたが、奴隷船にぶつかり、捕まってしまった。

 奴隷船の船長・バーテラにより、君は奴隷の一人に加えられ、ガレー船のオールを漕がされ続けて数日。

 ブラックサンドからかなり南下した場所にある、小さな島に辿り着いた。円形闘技場のあるその島に船をつけたバーテラ船長は、奴隷たちを島の主……カーナス卿に売り飛ばす。


 カーナス卿の家来は君たちに言う。いまやお前たち奴隷どもは、カーナス卿のものだ。ここ、ブラック・アイランドの死の闘技場で、これから卿のお楽しみのために殺し合い、たった一人だけが生き残る事になると。

 生き残った一人は、今年にファングで開催される『迷宮探検競技』に、カーナス卿の名代として参加させられる。昨年に迷宮を突破され、サカムビット公は名誉を失墜した。が、今年は迷宮を作り直し、今度の賞金は金貨二万枚。

 もしも迷宮を突破出来たら、賞金はカーナス卿のものとなるが、命だけは助けてもらえる。

 カーナス卿の望みは、この奴隷たちの一人が、迷宮を突破して、自分の兄弟……サカムビット公の鼻を明かす事。なぜならカーナスは、サカムビットの名声を、なにより実の兄弟であるサカムビットの事を、ひどく憎んでいたからだ。


 君たちは島の丘を登り、そこにある城、その地下牢に閉じ込められた。

 地下牢は多くの房があり、数人ずつのグループに分けられ、入れられている。種族はバラバラで、君の房には君以外に四人……ドワーフ、マンオーク、東洋人、禿げ頭の男。

 この島に売り飛ばされたのは、君を含めて42人。生き残るのはたった1人。

 そして、生き残った者への褒美は、あの死のワナの地下迷宮に参加する事なのだ。


 シリーズ21弾。

 初期のシリーズ人気作「死のワナの地下迷宮」の、続編とも呼ぶべき作品である。

 今回は、迷宮に足を踏み入れるところからのスタートではなく、もっと前……捕らわれ、奴隷戦士として殺し合い、生き残るための戦いを行う事から始まる。

 理不尽にも、捕らわれて奴隷にされ、そこから殺し合いをさせられ、参加するつもりもなかったファングの迷宮へと参加させられる……と、迷宮に脚を踏み入れるまでの事も、本編に組み込まれているのだ。

 そのため、すぐに迷宮探検を楽しめない事のわずらわしさも感じられ、ファングの迷宮そのものの印象も、前作に比べてやや薄くなってしまっている。

 しかし、本作はその分、ドラマチックになっている。カーナスという元凶が与えた、理不尽な仕打ちに対する怒りや恨み。それらを背景で語るだけでは、読者の共感が足りないと考えたのか、カーナスの与える過酷な闘技場でのサバイバルを、まずはじっくりと描いているのだ。

 最後の一人を選出する際には、君vs奴隷戦士での殺し合いもさせている。おそらくは、今回は「名声と金目当てでの参加」という、前作の主人公=君とは異なる動機にして、なおかつその動機の部分を、読者にも一緒に体験させたい、そうする事でストーリーそのものをより感じてもらいたいという、リビングストンの意図があったものと思われる。


 この「ストーリー指向」という点は、ジャクソン(英)のみならず、他の作家諸氏にも受け継がれ、今後のシリーズはゲーム性よりもストーリー性が重視されていくようになる。

 惜しむらくは、前作「死のワナの地下迷宮」の直接の続編でありながら、同作のキャラ、もしくはその関係者がサカムビット公以外出てこない事で、できれば「同じ舞台ゆえの、共通点」をもっと見せて欲しかったところである。


主な登場人物

主人公=君

 本作の主人公。ポート・ブラックサンドから小舟で川を下り、オイスターベイへと赴く最中に、バーテラ船長に捕まって奴隷にされた。

 序盤のトライアルを生き延びた後、カーナスに復讐する事を誓う。


カーナス・チャラヴァスク

 本作の原因を作った男。かのサカムビット公の弟(本作では「兄」と記載。しかし「タイタン」での記載では、「弟」となっているため、訳者の間違いであると思われる)。

 かつてはサカムビットと同じ家に生まれたが、一歳年上の兄が全ての財産と権力を手に入れ、自分には何も回ってこない事から、兄に対する憎悪を募らせていた。

 父が亡くなり、サカムビットが後を継いだ時。城下町のごろつきたち相手に、金と引き換えに兄を殺してくれと依頼。しかしそのごろつきは、サカムビットの密偵であったため、この事が周囲に知られて辱められ、逃走。以後、ブラッド・アイランドに腰を落ち着ける。

 奴隷の扱いが雑らしく、主人公が生き残り、ファングの迷宮突破に参加させる際に、剣は与えても鎧は与えなかった。


バーテラ船長

 顔に傷のある海賊。奴隷集めとその売買を生業にしているのか、あちこちの地で奴隷をかき集め(おそらく集まらなかったら適当に誘拐するなどして見繕い)、カーナスに売り飛ばした。


奴隷たち

 総勢42人の奴隷。地下牢の各房に五人程度のグループに分けて、毎日異なる試練を与え、脱落していった者からひとりずつ殺されていった。

  • 禿げ頭の男

 主人公と同じ房になっていたが、一日目で脱落。

  • マンオーク、ドワーフ

 同じく、同じ房になっていた二人。二日目で脱落したのか、二日目の夜にはいなくなっていた。

  • 東洋人

 主人公と同じ房で、二日目に戻って来た。しかし看守の「明日は二人のうち一人が出れば十分だ」という言葉を聞き、房内部で襲い掛かって来た。

 銅貨二枚のためでも人を殺しそうな、卑しい顔をしている。胸には入墨、ヘアバンドを締めており、そこに隠していた長いピンを手にして、主人公を刺そうとする。

  • 南方人

 四日目まで主人公とともに生き残った、最後の二人のうち一人。一対一で殺し合い、最後に主人公が勝った時、死ぬ間際に主人公の迷宮での幸運と、カーナスに対する復讐とを託す。


カオスチャンピオン

 今年の挑戦者の一人。生まれてから戦闘と略奪にのみ生きる集団「カオス・ウォリアー」に属し、その集団においての最強の一人。

 棘付きの鎧兜に、同じく棘付きのメイスを武器に持つ。

エルフの王子

 今年の挑戦者の一人。軽装で、短剣でとある怪物と戦っていた。また、その後の行動の予定も危険へと向かっていくものだったため、若干危険に対する認識が甘めだったと思われる。灰色のペースト状の傷薬と、青い染料の小瓶を持つ。

ドワーフの貴族

 今年の挑戦者の一人。ある罠にひっかかってしまい、主人公とは言葉を交わす機会が無かった。

東洋の武将

 今年の冒険者の一人。日本の鎧兜に身を包み、日本刀を有していた事から、八幡国のサムライの一人と推測される。

ビリーボップ

 迷宮内で巨大なクモに襲われていた、小柄なハーフリング(ヒューマノイドと自称していた)。自身の住む洞窟が、この迷宮とつながってしまったために迷惑を被っているらしい。

 ちなみにクモが襲撃するシーンは、これのあるシーンに酷似している。


ノイ

 迷宮内の、競技監督の一人。

 太った東洋人で、頭を剃り上げ長衣を着ている。盲目で、その目はうつろな灰色。

 主人公が出会った時には、竹の棒を手にして部屋の床に座り、頭上に色付きの木の立方体を浮遊させていた。力(穴居人との綱引き勝負)と知恵(櫃の合計数を推理し算出)と戦闘能力(ノイ自身と竹棒での模擬試合)で、挑戦者を試すように指示されている。

レクサス

 迷宮内の、競技監督の一人。サカムビット公に要請され、今年の監督を務めている。

 終盤に登場。主人公が集めた黄金の指輪の合計数と、それを順番に乗せる数字を手に入れたかの確認、そして引き連れているファイア・インプとの戦闘に、落ちてくる天井を潜り抜けていかに脱出するかを見極める役割を有す。


迷宮など

ブラッド・アイランド

 カーナスが落ちのびた、ファングからはるか南に下った場所にある、海岸に近い位置にある孤島。

 城と円形闘技場があり、城の地下には多くの牢がある。

 円形闘技場では、カーナスが集めた42人の奴隷から戦士を選抜するため、過酷な試練を与えた。

  • 一日目

 体力のテスト。数名のグループで、重荷を背負わせてトラックを走らせる。トラックの一角には燃える石炭が撒かれ、飛び越えねばならない。そのまま走らせ、一人が力尽きるか、一週の差が付いた時点で終了。力尽きた者、一週の差を付けられた者は、すぐにその場で殺され処分される。

  • 二日目

 戦闘能力のテスト。剣と盾か、トライデントとネットか、そのどちらかを選ばせ、闘技場内でモンスターと戦わせる。武器の選択と予想という事も判断材料。

 房に戻っても、安心はできない。

  • 三日目

 反射神経と感覚の鋭さ、運の強さのテスト。まずは刃が付いた回転する柱の前に立たされ、それをよけ続けねばならない。刃は頭部とくるぶしの高さについており、避けそこなったら死ぬか致命傷を受ける。

 これにクリアしたら、利き腕にモーニングスターを、もう片腕には小さな盾を括り付けられ、完全に視界を塞ぐマスクを付けられる。

 そのまま、砂地の闘技場に数名のグループで放たれる。足音は聞こえず、視覚以外の感覚と勘とで相手を感知し、モーニングスターを振り回し、盾でパンチしたりして、最後の一人になるまで戦わねばならない(この様子は、表紙イラストに描かれている)。

  • 四日目

 最後に生き残った二人に対し、片腕に棘付き手袋を、もう片手に短剣を握らせ、一対一で戦わせる。生き残った一人が、カーナスの名代として迷宮に送られる。


今回の迷宮

 前回、サカムビット公は迷宮を突破された事から、全面的に作り直している。

 その罠の効果も強化。前回同様に、今回も迷宮監督および迷宮内で生活する者たちが描かれている。

 前回は突破に宝石が必要だったが、今回は各所で手に入る「黄金の指輪」が必要。しかし手に入れたとしても、各所では「通行料」として指輪を支払わせようとする罠も仕掛けられており、油断がならない。

 配置されるモンスターも、強力なものは多くいるものの、前回と比較すると若干目劣りしてしまう。

 間取りなどは、前回の迷宮との共通点は見受けられないため、新造したのか、あるいは前回出てこなかった通路を利用し拡張したものと思われるが、詳細は不明。


登場モンスター

  • ボーンクラッシャー(骨砕き)

逞しい両腕を持つモンスター。視覚は弱く、口元の短い触手状の髭で臭いを嗅ぎつつ相手を感知し、手で掴み粉砕する。一度でも掴まれたら、人間の手足など簡単に折ってしまうほどの剛力を持つ。ただし上半身が大きく重く、下半身はやや貧弱というアンバランスな体型のため、頭部を引っかけられ倒されたら起き上がれないという弱点を持つ。

  • コールドクロー

迷宮内に置かれたモンスター。冷たい洞窟に潜む。直立したヒキガエルのような姿で、頭部の口部分は細長く突き出ている。両手の指の一本からは長い爪が伸び、ナイフのように獲物を切り裂く。これで止めを刺した後、獲物の腹部を切り裂き、突き出た口を突っ込んで内臓を吸い取る事を好む。

迷宮内で潜んでいた部屋は、高い天井部分が落とし戸に通じているらしく、サカムビットは自身の命を狙う者をこの部屋に落とし、コールドクローに後始末をさせていたらしい。

  • ボーン・デビル(骨悪魔)

頭頂部を切り取り蓋とした頭蓋骨に封じられていた、人間の骸骨を依代とするモンスター。デビルと名が付くが、分類としてはアンデッド。

現世に漂う死者の魂が、骸骨を依代としたもので、冒険者など生者が自身の封印を解く(頭頂部の蓋を開く)と、突風とともに浮き上がり、周囲の骨を集めて大まかな骸骨の姿となる。

その姿を見た者は恐怖に捕らわれ、お守りなどの防御策が無い場合、麻痺してしまいその命を奪われる。

  • リビング・スタチュー

迷宮内に置かれた、六本腕の女神の偶像。手の一つにはランプを、残りの手にはシミターを持っている。これは嫉妬の女神タニットを模しているらしく、魔法でなければダメージを与えられない(呪文や魔力のこもった武器なら倒せる)。貴重なアイテムなどを盗賊に盗まれないように、その近くに置かれるのが普通。

  • リッチ・クイーン(死霊の女王)

迷宮内で待ち受ける、女性のアンデッド。拷問器具(付けたら苦痛を味合わされるガントレット「苦悶の籠手」など)を付けるような荒行に挑むよう誘惑し、失敗したら骨のダガーを抜いて襲い掛かる。ただし成功したら、その褒美としてアイテムをくれる。

  • ブラッドワーム(血虫)

大型のミミズのような長虫。8mはある身体を下水道などに隠し、いきなり襲いかかる。口の周りにはかぎ状の突起があり、獲物の肌に引っかけて血を吸い続ける。

  • スケルトン・キング(骸骨王)

アンデッドモンスターで、スケルトンの上位種。素体とした骨は、王侯貴族や騎士などの死体で、通常のスケルトンおよびスケルトン・ウォリアーより、強力な武器や武装を身にまとい、時にはスケルトンホース(骸骨馬)に乗っている事もある。

  • サイキタリス(サジタリス)

「財宝蛇」の別名を持つ大蛇。金銀財宝の完全な幻影を映し出す能力を持ち、見破る事もほぼ不可能。幻影に騙され接近し、財宝を手にしようとした者にいきなり襲いかかり、とぐろで締め上げ噛みつく事を得意とする。


関連項目

死のワナの地下迷宮

 前作。本作とは本文中の挿絵師が異なるため、両者の印象は大きく異なる。

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