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逃げ馬

にげうま

逃げ馬とは、競馬の華である。メイン画像は逃げ馬として有名な競走馬の一頭・サイレンススズカ。
目次 [非表示]

概要

競馬レースにおいて、序盤から先頭を走ってリードを取り、ときには後続のを大きく突き放して、そのまま最後まで逃げ切る戦法を得意とする競走馬


最初から最後まで一度も先頭を譲らないという、もっともシンプルな戦法であるがゆえに、逃げでレースに勝つことは競馬におけるロマンのひとつである。


しかし、実際のレースで逃げを打とうとすると、必然的に馬にとって過度なハイペースにならざるを得ない。さらに空気抵抗を大きく受けるため、スタミナを他馬よりも消耗しやすい。それ故に最後までもたないことが多く、最後の直線で他馬が殺到するなか、一頭だけズルズルと後退する展開になることも稀ではない。また、長距離になるほど、必然的に必要なスタミナの量が大きくなるため、逃げ切り勝ちというのは中々見られない。

また、「逃げ馬」タイプの馬が複数いるとまず間違いなく先行争いが生じるので、その分思い通りの展開にならない場合が多い。


近年ではスタミナ系の血統が衰退しており、最後の直線でだけ鋭い足を使うタイプの馬が多くなっているため、90年代のような逃げ馬の派手な活躍はあまり見られなくなっている。

日本ダービー(2400m)を逃げで勝った馬は1997年のサニーブライアン以降現れていない。


しかし、2021年の菊花賞3000m、長距離)ではタイトルホルダーが、1998年のセイウンスカイ以来23年ぶりとなる逃げ切り勝ちを収めた。

その勝利をきっかけに、翌2022年にはジャックドールパンサラッサなどの強い逃げ馬が目立ち始めている。

日高逃げ馬三銃士


代表的な逃げ馬

逃げ馬として有名な日本の競走馬を、以下に列挙する。


永遠の風 サイレンススズカ

94年生まれ。スタートからすぐに突っ走ろうとする馬で、抑えようとする騎手とは折り合いが合わず、当初はその才能を発揮できなかった。しかし、3歳の冬から鞍上を務めた武豊の「馬の気持ちに任せて抑えずに走らせる」という騎乗スタイルによって、4歳時に覚醒。特に、2000m前後の距離・左回りでは、1000mを57〜58秒で逃げて、更に直線で再加速する常識外の走りで無類の強さを見せた。

98年の金鯱賞では、1.8秒の着差をつける大差の逃げ切りで勝利。次いで宝塚記念でG1初勝利を上げた後、毎日王冠でも逃げをうち、日本競馬史上最強馬の一角とされるエルコンドルパサーに2馬身半の差をつける完勝。これで重賞5連勝を記録した。

続く天皇賞(秋)でも圧倒的な1番人気に支持され、それに応えるかのような空前の大逃げを打った。このレースは自身の最高傑作になると思われたが、大けやきの向こう側で悲劇に見舞われ、府中ではなく、天国にあるゴール板を駆け抜けていってしまった。


サイボーグ ミホノブルボン

89年生まれ。スパルタ教育で知られた戸山為夫調教師が最後に遺した最高傑作である。

2歳時には追込や先行で中途半端な競馬をしていた(それでもGI朝日杯に勝っていた)が、逃げに転換すると驚異的な強さを発揮。最初から最後までほぼ同じペースで走り続ける逃げ方から、「精密機械」「サイボーグ」と称された。

もともと本質的には短距離馬でありクラシックは難しいとみられていたが、過酷な坂路トレーニングでスタミナを強化し、距離の壁を克服。皐月賞ダービーを完勝し、菊花賞で無敗の三冠馬達成に挑んだが、最強のステイヤーライスシャワーに差し切られて偉業はならなかった。同じく「逃げ馬」タイプのキョウエイボーガンが出走していたため楽逃げができなかったという事情もある。

最終成績はGI3勝を含む8戦7勝、先着されたのは生涯でライスシャワーだけであった。


トリックスター セイウンスカイ

95年生まれで、強豪ひしめく98世代。血統が絶望的に悪い馬であったが、変幻自在の逃げを武器にしてスペシャルウィークキングヘイローといったエリートホースと戦い、人気を博した。

気分が良いと疲れ知らずのように逃げ続ける馬であり、序盤を超ハイペースで飛ばし、中盤はスローに落として息を入れ、終盤で再加速するというテクニカルな逃げ方で他馬を翻弄することを得意とした。京都大賞典では、2番手を20馬身も離す大逃げのあと減速し、後続馬に追いつかせてから再度引き離すという驚きの勝ち方を見せた。

菊花賞でも、大逃げをしたにもかかわらず最後の直線で加速。スペシャルウィークの末脚でさえまったく届かない完璧な逃げ切りで、当時の3000mの世界レコードを出し、二冠を達成した。


嵐を呼ぶ逃げ馬 メジロパーマー

87年生まれ。デビューから2年半はパッとしない成績で、障害レースに転向しても飛越が下手で危険と見なされ平地に戻されるなど迷走していた。

しかし障害レースでスタミナは鍛えられ、さらに山田泰誠騎手との出会いで逃げ馬として覚醒し、GI戦線に参入する。

9番人気の伏兵として出走した92年の宝塚記念では、暴走レベルのハイペースで逃げを打ったところ、後続馬もみなバテてしまい、直線では全馬が歩いているかのような泥沼レースを制し勝利。

しかし、続く京都大賞典と天皇賞(秋)を連続で惨敗したことで再び評価が下がり、有馬記念では15番人気の低評価となる。そこで再び大逃げしたところ、パーマーを舐めていた後続馬たちの追い出しが遅れ、見事に逃げ残ってまさかの春秋グランプリ制覇を達成した。

惨敗の多い極端な成績ゆえ、まぐれで勝った馬と思われがちだが、翌年の天皇賞(春)においてライスシャワーメジロマックイーンという歴史的ステイヤー2頭と最後まで競り合った事実は、彼が底知れないスタミナの持ち主であったことを証明している。


その他の逃げ馬

他の有名な逃げ馬には、カブラヤオーニッポーテイオーカツラギエースプリテイキャストアイネスフウジンキョウエイボーガンキョウエイマーチツインターボサニーブライアンタップダンスシチースマートファルコンクィーンスプマンテシルポートエイシンヒカリレジェンドテイオータイトルホルダーパンサラッサジャックドールなどがいる。


逃げ馬かどうか微妙な馬

その他に、ダイワスカーレットキタサンブラックも逃げ馬に分類されることがある。

ただし、これらの馬は先頭を走ることにこだわらず、先頭に立っても後ろの馬を離してリードを取る走り方をしなかったので、逃げる馬がいなければ先頭に立つ先行脚質と解釈され、先行馬に分類されることが多い。


マルゼンスキーは、いつもスタートから先頭に立ち、そのままぶっち切るレースをしていた。

しかし、海外からの持込馬でクラシック戦線に出れなかったこともあり、他馬と能力が違いすぎて結果的に先頭を走っていただけで、本質的には逃げ馬ではないという意見が多い。実際、主戦の中野渡清一騎手も「この馬は逃げ馬じゃないんだ」と述べている。


また、マヤノトップガンイクイノックスも逃げ馬に分類されることがあるが、逃げ以外にも先行や追込など異なる戦法を使い分けて勝っていた稀有な馬であり、自在あるいは万能脚質とみなされることが多い。


スマイルトゥモローは激しすぎる気性が災いし、本来は追い込み馬であったが競走生活後半は抑えが全く効かなくなってしまい大暴走するレースが続いてしまった。


珍しい例だと、2022年の京都記念(GII)ではアフリカンゴールドTwitterで戦法アンケートを取り、『逃げ』への投票が最多だったという理由で逃げ戦法を取り、しかも12番人気から勝った。


この他、昭和時代にはただテレビに長く映るために玉砕覚悟で大逃げを打つ馬がおり、「テレビ馬」と呼ばれた。

これは実力不足の馬や距離適性の合わない馬が、馬主や陣営の意向で無理をして大きなレース(日本ダービーなど)に出走することがあったためで、勝てないまでも目立って名前を覚えてもらうことを目的としていた。

1980年からは日本ダービーの出走頭数が28頭から18頭に減り、成績不振な馬は出走できなくなった。

また90年代に入ると徐々に短距離路線も確立されていったため、現在ではテレビ馬はほぼいない。

ツインターボキョウエイボーガンなども大逃げして玉砕していたが、それらの馬は気性やその他の要素を考慮した上で、あくまでも勝利のため、もしくは少しでも良い結果を出すために逃げを打っていた。


海外競馬における逃げ馬

また海外では「ラビット」と呼ばれる逃げ馬も存在する。

これは同じオーナーの馬に有利な展開を作るため、先頭に立ってペースを作る馬で、ドッグレースで犬に追わせるウサギからこの名がついた。

欧州などでは戦術の一環として認められている(同オーナーの馬を同一の馬券とするレースもある)が、日本の規則では自分が勝つ意思が無ければ出走してはいけないことになっている。


要するに勝つ馬を勝たせる為の「犠牲」がラビットなのだが、世界各国のレースを渡り歩く騎手が多くなった現在では、日本式の勝つ為の「逃げ」が海外に伝わり、実際に行われた例もある。

2020年ダービーステークスではサーペンタインが道中約12馬身を開く大逃げを敢行。本来はラビットとしての役回りだったが、思った以上に気持ちよく逃げる事ができたため、騎手の判断で逃げ戦法に切り替えて、後続を置き去りに5馬身差を開く圧勝となった。


また、ダート中心のアメリカ競馬では、ハナから猛スピードで飛ばす超ハイペースな展開が殆どで、逆に追い込みや差しはあまりもの速さに届かない事が多い。


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