概要
「電車でD」第一巻において主人公の藤原拓海が繰り出した技。軌道を速く走行する為に使用するテクニック(という設定)である。
列車がコーナー(カーブ)を通過する際、通常のグリップ(ドリフトを行わない)走行では通過する速度を引き上げることが出来ず、如何に路線を速く走破するかという観点からは好ましくない。そこで車体を複線に跨がせ、台車を走行している線路の隣の線路に乗せることで、本来よりも高速でコーナーを通過させる……という理屈で行われる。
ドリフトを冠しているが劇中での扱いは元ネタにおける溝落としに近い。
習得するにはそれなりの技量が必要となるようで、作中では失敗して複線を塞いで横転してしまった運転士が登場している。
派生系にコーナーからの立ち上がりを重視した後輪複線ドリフト、コーナーでイン側のフロント荷重をなくし、アウト側の車輪に荷重をかけることで前台車のイン側片輪を浮かせた状態でドリフトする片輪ドリフトが存在する。
派生系の二つは技の難易度が特に高いとされ、後者では作中でも実践した運転士が事故を起こしている。
泣き別れ
勿論実際の車両でできるものではなく、実現しようとすれば脱線事故になるか、脱線しなかったとしても台車や床下機器が破損してしまう。
しかし現実においても分岐器が開通しないまま進入、慌てて退行した結果車両が複線を跨いでしまったなどの事例が存在する。その見た目からしばしば複線ドリフトと称されるが、正式にはこのようなケースは泣き別れと呼ばれる。
実例としては2018年11月の札幌市電、2022年5月の南海電鉄、11月の京成電鉄における事故などが挙げられる。また、JR東日本の安全教育VTRでも重大事故の一例として挙げられている。
インターネット上での扱い
ドリフトというカーレースの基本テクニックを電車に置き換えた結果こうなるというインパクト、一目でわかる荒唐無稽さからか有名となり、本来の同人誌よりも知名度が先走っている。
しばしばYouTubeなどで、鉄道模型を使って複線ドリフトの再現を試みる者もいる。
海外にもミームとして輸出され、Multi-track driftingの名でネタにされている。
なお、同人ゲーム版の第1作「LightningStage」のオープニングテーマもこれにちなんだ「M-T-D(Multi-track drifting)」というタイトルだった。
トロッコ問題がTwitterなどのSNS上でネタにされるにあたり、『ドリフトで両方の作業員を轢き殺す』という回答が定番ネタの一つになっている。
創作作品において
『ハヤテのごとく!』で小ネタに使われたことがある。
他社漫画のパロディ同人をネタにする無法ぶりにツッコみたくなるがそんなこと言ってたらキリがない。
『ブルーアーカイブ』対策委員会編第3章にて、シュポガキこと橘ノゾミ・ヒカリによって「並走する列車の前に向かって自分の列車を脱線させて接触させる」という場面が3Dバトルシーンで描かれた。
他車両の進路妨害という本来とは目的が異なる行為だが、この前後でヒカリが「うぉー、複線ドリフト決めちゃうよー。」と明確に発言しているため、恐らく本人達的には複線ドリフトで間違いない。
「本来コーナリング用である複線ドリフトのテクニックを進路妨害に応用した」と言うべきか。
なお対策委員会編第3章でこの行為が登場したのはPart1、複線ドリフト発言はPart3で配信時期に約2ヶ月の間が空いたのだが、Part1の配信直後からユーザー間でネタにされていた。
『電車でD』の作者であるきよ○氏と同人ゲームシリーズの地主凱旋氏も当該発言シーンのスクリーンショットを引用している。