概要
言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、写真、漫画、コンピュータプログラムなどの表現形式によって自らの思想・感情を創作的に表現した者に認められる、それらの創作物の利用を支配することを目的とする権利をいう。
著作権は特許権や商標権にならぶ知的財産権の一つとして位置づけられている。
特許や商標と違い、役所などの公的機関に届けて認めてもらう権利ではない。例えば、音楽などではJASRACなどが著作権管理団体として知られるが、これは著作権法に基づいて設立された音楽業界の社団法人であり、国などの公的機関ではない。
また歌や曲の場合、必ずJASRACに登録しなければ著作権が認められないということはなく、別の著作権管理団体に登録しても良いし、また、著作権管理団体に登録を行わなくとも「自身が作ったこと」を証明出来れば、例えば自分が曲を作った後に他の人間がそれを勝手に著作権管理団体等に登録して著作権を主張したとしても、裁判などで覆すことは可能である。
このことは文章や絵画においても同様のことが言える。しかし逆に言えば「作品を自分が最初に作った」と証明することが出来なければ、他者にその権利を奪われる可能性もあることは留意されたい。個人の場合、裁判を起こすにしても費用や時間などの問題により、訴訟自体が割に合わなくなり断念した例や、他人に著作権登録されたことを気づかないままに年月経過により時効が成立して訴訟が起こせなかった例もある。
なお、「思想・感情を創作的に表現」していないものには著作権が認められないことも忘れてはいけない。例えば計算式や料理のレシピなどには著作権が発生しない。
判断の難しい事例
意匠権
日本の無体財産権に関する法律では、工業製品における意匠権は工業所有権に属する。工業所有権は先述した特許権や商標権が属する分野で、権利は自然発生しないことになっている。
しかし、工業製品といえどもそのデザインに関しては芸術的価値も認められることから、著作権の一部として保護される可能性がある。この事から、他者の意匠をまるまると真似て工業製品をデザインすることは著作権の侵害にあたる可能性があるため、通常行われない。
有名なところでは初代iMac発売直後、意匠権の侵害としてAppleが類似する一体型PCの発売元を次々訴えたことがある。このうちいくつかで勝訴したが、日本で起こしたSOTECのe-oneに対する訴訟は最終的に敗訴している。画像を参照していただければわかるとおり、シースルーデザインを使ったというだけでボディデザインそのものは全然別物であり、芸術的な盗用は認められなかったのである。
他に工業所有権には、実用新案が属する。
人格権の放棄
著作権には製作者の意思を尊重するという人格権が存在する。つまりたとえ財産的譲渡もしくは貸与があったとしても、生産者の意図に反する用法・改変は行ってはならないとするものだ。
日本ではこれに対する認識が薄く、著者と出版社、原作者と漫画作画者の間で度々軋轢が起こり、訴訟沙汰に発展した例も少なくない。
問題はコンピュータプログラムが著作権に属したことである。コンピューターソフトウェアは有償のシェアウェアソフト(一般的なパソコンソフトやコンピューターゲームソフトもこれに属する)、無償だが人格権は放棄しないフリーウェアソフト、そして人格権をも放棄し自由な改変・リバースエンジニアリングを認めるパブリックシェアソフト(PDS)に分かれる。ところが、日本の著作権法では人格権の放棄を認めていないため、PDSは厳密には成立しないという問題がある。
これはLinuxやBSDですでに問題となっていたが、1990年代後半以降、Webによってこれら無償配布ソフトが国境を越えて入手できるようになったことでより顕在化した。
現在のところ、製作者がPDSを主張しているソフトウェアに関しては、厳密には人格権の放棄は出来ないが、それを行使しないことは認めるという人格権の不行使という法解釈で取り扱われている。
著作権の保護が及ばない範囲
前述の通り「思想・感情を創作的に表現」していないものには著作権が認められない。また、絵画や漫画などの場合も創作的でない部分には著作権保護は発生しない。例えば仁王立ちの人を描いた絵があったとすると、仁王立ちというポーズは創作的ではないと考えられるため、他に仁王立ちの絵を描いてもその点は著作権侵害には当たらない。しかし独創的なポージングなどは創作的な表現にあたる。
著作物の「題名」にも著作権の保護がない。
また一般に言われる「パクリ」「盗作」の概念とは異なり、「アイデアそのもの」は著作権保護の範疇ではない。例えば「薬によって子供の体になってしまった高校生探偵が様々な事件を解決する物語」を描いても『名探偵コナン』の著作権侵害には当たらない(当然、盗作にはあたる)。あくまで著作権が保護するのは「作品」である。よって「盗作」と「著作権侵害」は違うので注意が必要(そもそもそれを言い出したら『コナン』自身、高校生探偵という時点で先行の『金田一少年の事件簿』に抵触してしまう)。また「作品を作ったら、知らない作品にたまたま似てしまった」という場合は著作権侵害にならない。
ソフトの利益の問題
日本ではソフトによる売上の利益率が非常に悪いことが、著作権保護に対する意識の低さにつながっている。
自身もソフトウェアベンダーでもあるNECは、かつてはパソコンソフトがコピーされるのはある程度しょうがないと許容、というかむしろ助長する有様だった。これはソフトの利益率が悪いため、ハード屋のNECとしてはパソコン本体が売れてくれれば、結果としてソフトは違法コピーされてもそちらの方が儲かったからである。
実はPC-9800のディスク認識パターンは同種のFDD2基以上を搭載することを前提としている。これはPC-8001からPC-8801を経て98にも受け継がれた(PC/AT互換機は基本1デバイス1ドライブで、1台に同種のFDDは搭載できなかった。98への対抗上発売された3.5インチFDD2基モデルは、1台をソフト的に5インチFDDと誤魔化して認識させていたのである)。
そしてPC-9800用のMS-DOSには、「DISKCOPY」という独自のコマンドが搭載されていた。これはNEC製のディスク複製ソフトであった。ちなみに、EPSONも同じことをやっていたし(EPSONの98互換機には本体搭載FDDが3基というのもあった)、富士通も似たようなもんだった。
しかし一方で日本のソフト、特にビデオ関係と音楽関係は高い。しかし、利益率はパソコンソフトより悪い。これは、価格の大部分がJASRACの管理料(つまりピンハネ)だからだ。
このため「著作権を最も侵害しているのはJASRAC」と言われることも多い。
日本で早いうちから著作権に厳格だったのは任天堂である。ただし、任天堂の方針として、ソフト開発には相応の報酬をという考え方があり、これを踏まえた上でのものである。
関連タグ
外部リンク:著作権管理団体
著作権管理団体には以下のものがある(すべてではないことに留意していただきたい)。
映像等