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ファンタジーの編集履歴

2014-12-09 13:05:12 バージョン

ファンタジー

ふぁんたじー

超自然的・幻想的な世界観を前提とした創作作品ジャンル。

ファンタジーとは

“ファンタジー(Fantasy)”とは欧米由来の語で、最も広い意味では、幻想的な虚構(フィクション)を指す(カーター 1973)。カーターは、SFホラーおとぎ話をここから除くことで「魔法が実際に働く大人向けの作品」をファンタジーと呼ぶ。しかし、当然実質もっと狭い用法が通用している。ル・グウィンによると、欧米で一般的に「ファンタジー」と言った場合には概ね、(1)白人を登場人物とする、(2)ヨーロッパの中世的な時代背景で、(3)善と悪の戦いを扱っている物語を指す(ル・グウィン 2009)。そしてル・グウィンはこれらの先入観にとらわれない作品が発展することへの期待を述べている。とはいえル・グウィンもファンタジーは「もう一つの世界」で「はるかな過去の」欧州という舞台を想定する。カーターはファンタジーの中心的伝統は、中世的でしかも作者が創作した舞台である「空想世界」で展開されるとする。このように現代の欧米では一般に、ファンタジーの舞台は中世欧州風の異世界であると前提されることに注意が必要である。


日本における長尾の整理についても挙げておこう。長尾によると、超自然現象を扱う作品一般をファンタジーとすると、大きく分けて日常世界で起こる超自然現象を扱うエブリデイ・マジックと超自然現象が当たり前に存在する異世界を扱うエピック・ファンタジーからなる(長尾剛 1994)。先述の通り、欧米のファンタジーは後者、すなわちエピック・ファンタジーでしかも欧州的世界を舞台としたものを指す。この記事でもファンタジーと言ってもエピック・ファンタジー、特に主に欧州異世界を舞台とした狭義のファンタジーを扱う。


以下に長尾の整理を元にしたpixivのサブジャンルに対応するファンタジーの分類例を掲載しておこう。本記事は欧州エピック・ファンタジーを扱うのでその他のファンタジーの詳細については分類中の各記事を参照のこと。もちろん、この分類が唯一正しいというわけではなく、各ファンタジーの意味内容も一通りではない。各記事にてその詳細は確認して欲しい。




エピック・ファンタジーとは

次にこの記事で扱うエピック・ファンタジーの特徴をまとめておこう。まず、エピックとは何か。エピックとはすなわち叙事詩のことで、つまりは出来事を叙する詩ということになる。しかし長尾によれば、主に民族歴史的戦いや英雄人生について語るものが歴史上叙事詩として残されている。それは古くは『ギルガメッシュ叙事詩』や『イーリアス』といった神話、そして『聖書』の物語である。かくしてそれら古典の流れを汲むエピック・ファンタジーの多くは、その主人公が英雄であり、英雄の冒険や人生を語るファンタジー(ヒロイックファンタジー)となってくる(長尾 1994)。


では、何故異世界を舞台とする「異世界」ファンタジーなのだろうか。ル・グウィンによるなら、それは現代の人類が締め出されている親密なコミュニティを読者に思い出させるという含意がある。野や森、村、ライバルで仲間であった動物たち、それらは人間が自ら拒否し自分自身から奪ったものである。これこそが産業革命以前の世界が設定される理由だという。それは単なるノスタルジィに留まらない。過去の世界には人知を超えた他者がいた。村の外のよそ者、そしてドラゴンや幽霊といった非人間的存在もそうである。人知が限られた過去の時代、また非人間的存在を物語上で復活させることは、現代の生活様式と異なる生活の可能性を提示し、リアリティが拡張可能であるという希望を示すことだ。ル・グウィンによれば、これは単なる中世欧州の再現ではない。社会正義はどうなっているのか、経済の仕組みはどうなっているのか、作家自身の想像力によって説明がなされ、必要ならば中世欧州と異なる設定が補完されていなければならないのだ(ル・グウィン 2009)。


歴史

前節で述べたように、遠い過去におけるファンタジーの源流を探せば、ギリシアや北欧等の神話にさかのぼることになる。中世に入ると『アーサー王物語』などを源流とする騎士たちを主人公とした叙事詩が吟遊詩人たちによって歌われ、あるいは小説として物語の形を成していった。一方で民衆の中には神話やキリスト教の影響は受けつつも独自の民話や伝説が語り継がれ蓄えられていった。


J・R・R・トールキンはこれらの伝統を背景としてはじめて体系化されたエピックファンタジーの物語を創作したと評価されている。1950年代の後半に小説の『指輪物語』が発表されると、その人気と共に「魔法的な種族や異形のモンスターが登場し魔法が日常に使われる世界」という意味でのファンタジーという概念が成立していった。


その後、1974年に世界最初のTRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons & Dragons)』が発表されると、欧米では前述の『指輪物語』に描かれる様な世界観と「ファンタジー(Fantasy)」と言う言葉を関連付けて語るようになった。これら2つの作品がいわゆる“ファンタジー物”と言う言葉の持つイメージを決定付けたと言って良い。また近年では、小説『ハリー・ポッター』の発表により再び西欧社会でファンタジーブームが再燃し、新たに「ネオ・ファンタジー」と呼ばれるジャンルを生み出している。


日本のファンタジー

日本におけるファンタジーは、『グイン・サーガ』のように1970年代から発表され、ベストセラーとなっていたものもある。また、『指輪物語』の翻訳もやはり1970年代に公刊されていた。だが、世間的な知名度を上昇させたのは、1980年代のコンピュータRPG、特に『ドラゴンクエスト』の発売の効果が大きい。こうして世間的にファンタジーの知名度が急上昇する中、より本場のファンタジーを日本に紹介したいという意図を持たされて『ロードス島戦記』が世に出ることになった。TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のルールに従ったリプレイとして始まった『ロードス島戦記』は、それゆえTRPGの背景をなす指輪物語的ファンタジーの紹介という意義を有することになった。その後『スレイヤーズ』『魔術士オーフェン』のように指輪物語的なファンタジーとコンピュータRPGの世界をつなぐような作品が次々とヒットすることになる。


しかし逆に、それらは安易なライト・ファンタジーであってハイ・ファンタジーとは呼べないといった批判も呼ぶことになる。とはいえ例えば『スレイヤーズ』は魔法と魔族を中心とした大規模な設定体系を有しており、『ロードス島戦記』もアレクラストやクリスタニアも含めれば分厚い世界設定と神話や歴史、世界観の解説書を何冊も擁する情報量となっていることも書き添えておこう。必ずしも場当たり的な世界観で日本のファンタジーが発展してきたわけではないということである。


関連イラスト

天空最後の願い

世界聖域の守人


文献

Carter, Lin, Imaginary World: The Art of Fantasy, Ballantine Books, 1973,

 中村融訳『ファンタジーの歴史――空想世界』東京創元社,2004.

Le Guin, Ursula K., Cheek By Jowl, Aqueduct, 2009,谷垣暁美訳『いまファンタジーに

 できること』河出書房新社,2011.

長尾剛『ファンタジーRPGの宝物が100!』富士見書房,1994.


関連タグ


外部リンク

ファンタジー - Wikipedia

ファンタジーとは (ファンタジーとは) - ニコニコ大百科

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