概要
「A-10サンダーボルトⅡ」は、フェアチャイルド・リパブリック社の開発したアメリカ空軍初の近接航空支援専用攻撃機。
戦車などの地上目標への攻撃と若干の航空阻止により地上軍を支援する任務を担う。
開発経緯は、ベトナム戦争において空軍には適切な近接支援攻撃機がなく、音速機のF-100を使うか、海軍からA-1やA-7を借りてようやく間に合わせていたため(その頃のアメリカ空軍のドクトリンは、核兵器による攻撃もしくは報復が前提だった)。
開発の際にはベトナム戦争に参加したA-1のパイロットや、戦車撃破王ルーデル閣下を顧問として招き、助言を受けた。(ちなみにA-Xプロジェクト参加者の必読書はルーデル閣下の著書「急降下爆撃」)
コンセプトは「敵の陣地と殴り合って勝てる対地攻撃機」。
A-XプロジェクトはノースロップのYA-9とフェアチャイルドのYA-10の二機が採択され、操縦特性は劣るものの高い生存性と試作品からの改良箇所が少なくて済む点が評価され、A-10として正式採用となった。
採用後もあまりにも対地攻撃に特化した機体としてその存在を疑問視していた議会からの圧力を受けたが、A-7との比較テストで良好な評価を得てその存在価値を認めさせることに成功している。
チタンのバスタブ
やたらと頑丈で片翼の三分の二が吹っ飛ばされても帰って来れるとまで言われる。
もっと言うと――
- 対空砲で撃たれて胴体や主翼に400発近い穴が開けられた状態から数日で復帰。
- 携行型地対空ミサイルSA16ギムレット(9K310イグラ-1)で撃たれ、片方の垂直尾翼と尾部が吹き飛ばされて帰還、修理されて復帰。
- 地対空ミサイルで片方のエンジンカウルが吹き飛ばされて片肺になるも帰還、修理されて復帰。
- 胴体着陸で両垂直尾翼下端が地面に削り取られるが修理されて復帰。
と言ったような逸話が一杯ある。
他にも(当時は)暗視装置がないので夜間飛行が出来ないから、と搭載したAGM-65 マーベリックの画像赤外線シーカー(カメラ)を暗視装置代わりに飛行すると言う無茶もしていた(パイロット曰く、「壁の穴から覗いて操縦するようなもの」らしい。視界が狭いのだ)。
A-10にまつわるコピペ
「お早うクソッタレ共!ところでジョナスン訓練生、貴様は昨夜ケンカ騒ぎを起こしたそうだな?言い訳を聞こうか?」
「ハッ!報告致します!磯臭いF-18乗り共がアヴェンジャーを指して『バルカン砲』と抜かしやがったため
7砲身パンチを叩きこんだ次第であります!!」
「よろしい。貴様の度胸は褒めておこう。いいか、低空で殴りあうには1にも2にもクソ度胸だ。
曳航弾をクラッカー程度に感じなければ一人前とは言えん。今回のジョナスン訓練生の件は不問に処そう。
だがアヴェンジャーを知らないオカマの海軍機乗りでも士官は士官だ。訓練生の貴様はそこを忘れないように。
ではA-10訓、詠唱始めッ!!!!」
何のために生まれた!?
――A-10に乗るためだ!!
何のためにA-10に乗るんだ!?
――ゴミを吹っ飛ばすためだ!!
A-10は何故飛ぶんだ!?
――アヴェンジャーを運ぶためだ!!
お前が敵にすべき事は何だ!?
――機首と同軸アヴェンジャー!!!
アヴェンジャーは何故30㍉なんだ!?
――F-16のオカマ野郎が20㍉だからだ!!
アヴェンジャーとは何だ!?
――撃つまで撃たれ、撃った後は撃たれない!!
A-10とは何だ!?
――アパッチより強く!F-16より強く!F-111より強く!どれよりも安い!!
A-10乗りが食うものは!?
――ステーキとウィスキー!!
ロブスターとワインを食うのは誰だ!?
――前線早漏F-16!!ミサイル終わればおケツをまくるッ!!
お前の親父は誰だ!?
――ベトコン殺しのスカイレイダー!!音速機とは気合いが違うッ!!
我等空軍攻撃機!機銃上等!ミサイル上等!被弾が怖くて空が飛べるか!!(×3回)
運用
対戦車や対陣地だけでなく歩兵の援護にも使われ、低速かつ低空で長く上空に居座ることが出来ることから、四軍の枠を超えて歩兵にとっては神に近い。
攻撃ヘリは高地では活用できない上に支援要請を受けて駆けつけるまでは時間がかかりすぎ、AC-130は保有機数が少なすぎるために特殊作戦でもない任務にまわされる事が少ない上に準備に時間がかかりすぎる、F-16やAV-8B、B-1等は滞空時間や積載量の関係から数分程度しか居ることが出来ず、天候によっては離陸すらできない、しかしA-10は悪条件下でも大量の爆装を施しての離陸が可能で1時間以上居座る事が出来る。
実際にアフガニスタンで歩兵からの近接航空支援要請を受けて飛来した2機のA-10は、2時間にわたり支援を継続している。
・・・しかし、F-16等の戦闘機が居ないと航空優勢が確保できず、出撃もままならないのはナイショである。
実際の所、運用には航空優勢確保が絶対条件なので、圧倒的物量をもって航空優勢を確保するアメリカ以外では実質運用不可能。
さらに言えば対地攻撃でも武装搭載量は劣るものの汎用性の高いF-15ファミリーに出番を持って行かれ気味。
近接航空支援(CAS)や前線航空管制(FAC)が主任務となっている。
そのCASも8割がA-10以外の航空機で行われているが、残る2割は通常の爆撃では撃破出来ない目標等、A-10でなくてはならない状況が含まれているとも言われている。
しかしタフでパワフルなスペックは実家の人たちのハートをガッチリ掴んで放さないらしく、「スカイアクション」を除くハリウッド映画全般で目覚しい活躍を見せるのは大抵このA-10である。
ちなみに、冷戦終結で仮想敵が消滅しお役御免となるはずだったが、湾岸戦争では高い対地攻撃能力を持つAH-64が砂漠特有の環境によるトラブルで稼働率低下に悩まされていたのを尻目に大活躍し、A-10をF-16の近接航空支援仕様機で置き換えようと考えていた空軍の考えを改めさせることに成功している。
(その後も退役の話しが出るたびに不思議と必要とする状況が生まれている)
これによりロッキード・マーティン社により電子機器のアップグレードや夜間戦闘能力の追加、精密誘導兵器の搭載能力強化などといった改修が行われ、ボーイング社により老朽化している前期生産型の主翼の交換などが行われ、2028年頃まで運用期間が延長されることとなった。
なお、将来的にはF-16と共にF-35で置き換えることを予定している。
余談ながら、空軍は地上部隊の支援は自分たちの仕事ではないと、事ある度に近接航空支援任務を辞めようとしている前科があり、陸軍の一部の過激なグループからは「Chair ForceからCASを奪え」と陸軍がA-10を保有すべきという意見が出ている。
過去に陸軍や海兵隊はCASの不足により被害を被っており、空軍の言う高高度からの精密爆撃では不足であるとしている。
また、低空で機銃掃射を行う事は敵味方双方への心理効果が高い事も挙げられている。
更にtask force hawkというヘリコプター部隊を組織したものの、攻撃ヘリは攻撃機以上に対空兵器に脆弱である、攻撃ヘリ単体で運用するには膨大なコストがかかる、航続距離の関係から攻撃を受けるような場所に展開をせざるを得ないといった様々な欠点がわかり、A-10以上に運用が制限される事が明らかとなった。
空軍側はF-15EやAH-64、B-1など複数種の航空機による連携によってCASを成功させている、高高度からの精密爆撃で十分に目標は達成できる上に安全、などの理由からA-10でなくとも十分にCASを出来るとしている。
バリエーション
- YA-10A:試作機
- A-10A:量産型
- YA-10B N/AW:夜間全天候攻撃型の複座実験機
- A-10C:A-10Aをグラスコックピット化、C4Iの強化、HOTASの対応等を行った改修型
特徴的な機体は何のため?
【機体から大きく突き出たエンジン】
サイドワインダーやスティンガーなどの赤外線(熱線)追尾式ミサイルがエンジンに命中しても、機体の損傷を最小限に抑えるため。
地上においては吸気口から異物吸入による破損を防ぎ、作動中の地上要員の安全を確保している。
【主翼】
大きな直線翼を持ち、低高度低速度域で良好な運動性を発揮する。
高い短距離離着陸性能で悪条件下であろうとも大量の武装を搭載した作戦行動を可能にしている。
限定的ながらも対空火器に対する盾ともなっている。
【双垂直尾翼】
赤外線追尾式ミサイルから、エンジンの排熱を隠すため。
【格納してもタイヤが半分出ている脚】
不運にも被弾して、不時着や胴体着陸する時のため。
また上にもあるが、滑走路に胴体着陸しても胴体は無傷で垂直尾翼の下端が削られた程度の損傷で済んでいる。
前方に引き上げる為、油圧喪失であっても脚を下ろせれさえすれば風圧でロック位置に進めることが出来る。
【GAU-8 Avenger】
主兵装である30mmガトリング砲。戦車を地面ごと耕してしまう凶悪兵器。
これを機体中心に積むために前脚を右に寄せて配置している。
ニつの電気モーターと油圧駆動システムが積まれており(低速用と高速用)、被弾の際にどちらか片方が生き残ってさえいれば作動可能となっている。
ちなみに、これがないと機体の安定が取れなくなるらしく、外して飛ぶ時はコンクリブロックなどを死重にして飛ぶんだとか。
【高い抗堪性】
操縦系統は油圧系が二重となっており、さらに予備の機械系が備えられている。
搭乗員はケブラー積層材の内張りが施されたチタン装甲(通称「チタンのバスタブ」)と前面からであれば最大20mmの砲弾に耐えるキャノピーで保護されており、GAU-8も弾薬の誘爆を防ぐ為に弾倉を空間装甲で保護している。
泡消火器付き自動防漏を備えた燃料タンクも空間装甲として利用する構造となっている。
【修理の容易さ】
翼やエンジン、主脚等多くの部品を左右共通にすることで設備が限られた場所でも修理を容易にしている。
外板を構造部材にせず、現地調達した資材で修理できるようになっている。