厄神明王と同じく、インドの仏教経典に典拠を持たない、日本独自の神仏。
解説
伝承によると金峯山で修行中の役小角が苦しむ人々を救うため顕現させたという。
世の人々を救いたいという彼の前にまず釈迦如来が現われたが、今の世の荒々しい人々を教化できないない、と小角は感じた。
次に千手観音、さらに弥勒菩薩が現われるも、慈悲深い仏菩薩のことを乱れた世の人々を受け入れないと嘆いた。
次に現われたのは、明王の如き憤怒の相を持つ蔵王権現であった。小角はこの荒ぶる仏神こそ乱世にふさわしい本尊として選んだ。
鬼神の如き容貌のこの仏神は、実は先に小角の前に現われた三人の仏菩薩を本地仏(本体)とする権現(化身)である。
ただ、伝承は存在するが史実の役小角と蔵王権現に結びつきがあったのかどうかは、歴史学的には是非の断言はできない。
姿
仏像造形において、顔はひとつで、腕は二本、肌の色は青黒くされることが多い。
右足を上げ左足だけで立ち、右手は三鈷杵(金剛杵)を握りしめ大きく振り上げている。
腰にあてた左手の指は、無明と煩悩を断つ仏法の理剣を象った「刀印」の形になっている。
髪は怒髪天を突き、顔は恐ろしい形相である。
足台は岩石であり、炎の形をした後光が造形されることも多い。
修験道総本山の金峯山寺では、三人の本地仏を象徴する三つの蔵王権現像が同じ場所に安置されている。
その他
また、神仏習合で、広国押武金日皇命(ひろくにおしたけかなひのみこと)
いわゆる安閑天皇と同一と説かれ更に様々な神(オオクニヌシ、スクナヒコナ、日本武尊など)と習合していった。
まさに神仏一体となった神格といわれている。