原子核分裂を短い時間に連続して起こす事により生ずる莫大なエネルギーを爆発に用いた爆弾。核兵器の一種。
原理
核分裂を起こす物質を臨界量を超える量に圧縮し、中性子線を照射すると核分裂反応が起こり、
核分裂の際に中性子が数個放出されるため、反応がネズミ算式に起こり、莫大なエネルギーを放出する。この条件を作り出すために通常爆薬で超臨界状態が成立する状態に圧縮する。
使用する核物質
ウランを使用したもの
ウラン235を90%以上に濃縮して使う。
薄いと爆発的な反応は起こらないので大量に濃縮する必要がある。70%でもかろうじて爆発する程度で
ある。(原子力発電所の燃料用のウランはウラン235が5~7%)
プルトニウムを使用したもの
原子炉の副産物であるプルトニウム239を用いるが、プルトニウム240も含まれており、これが
濃すぎると自発的に核分裂してしまうので、ウランとは逆にプルトニウム240を7%以下に薄めて使う。
原子炉の副産物では22~30%含まれている。
用途
兵器のみである。土木工事など平和利用も研究されたが、放射性降下物が生ずるため、放射能汚染の問題から実用化されなかった。
1950年代には、大気中核実験が盛んに行われ、地球規模で放射能汚染が発生した。
禁止へ…
1963年に調印された部分的核実験禁止条約(PTBT)によって、大気圏・宇宙空間・水中での 核実験は禁止されている。しかし、これ以降もPTBTで禁止されなかった地下核実験はたびたび行なわれた。なお、フランスと中華人民共和国はPTBTに加入せず、中華人民共和国は東トルキスタン(ウイグル)において大気中核実験を1980年まで行っていた。
1970年には、核拡散防止条約(NPT)によりアメリカ合衆国、ソビエト連邦(現ロシア)、イギリス、フランス、中華人民共和国の5か国以外の核兵器の保有が禁止された(インド、パキスタン、イスラエルは未加盟。北朝鮮は脱退)。
1996年には地下核実験禁止を含む包括的核実験禁止条約(CTBT)が国連で採択されたが、未批准国などに よって核実験が強行されるなどしており、現在も条約は発効していない。
NO MORE HIROSHIMA/NAGASAKI
言うまでの無いことだが、我が国は現在、世界で唯一実戦で原子爆弾を投下された国家である。上記のようにアルファベットやカタカナで「ヒロシマ」「ナガサキ」と言うと原爆投下のことを指すようになった。
投下されたのはたったの2発だが、その2発だけで数十万人に及ぶ人命を奪い去った。
まず炸裂直後。強烈な爆風と熱線により文字通りの意味で「瞬殺」された。苦しむ暇も与えられず、跡形も無く消滅した犠牲者や、一瞬で炭にされたため、生前の状態のまま亡くなった犠牲者も存在したほどである。
炸裂直後を生き延びても、熱線と爆風により肉体の大部分がやけどや破片により苦しみながらまた多数の人々が亡くなっていった。さらに爆弾によってまき散らされた放射能によって原爆症がもたらされることでよってより多くの人命が失われた。また生き延びた人々も長期間原爆症によって苦しむこととなった。
こうした原子爆弾への恐怖は、のちの冷戦時代においても大きな影響力となり、単なる戦略的兵器は「世界を滅ぼせる悪魔」という認識へと変わっていった。
それが国連常任理事国たる五大国以外に保有を許されなかった理由であり、前述した禁止への布石ともなるのだが、それ以前に起きた「キューバ危機」は、核戦争が現実になる寸前という悪夢でもあった。(事実、当時の大統領であったジョン・F・ケネディは核ミサイルの発射スイッチに触れている)
日本は国内に発達した原子力産業を持ち、かつ大型宇宙ロケットを開発・運用することが可能な潜在的核保有国であるが、それでもなお核兵器の開発や配備に全力を以って『NO』を突きつける権利を発することのできる国家であり、その事を改めて再認識していきたいものである。
時代の経過とともに記憶が風化しないように・・
原爆から生き延び、「生の記憶」を持っている人々も原爆症や加齢により減っているのもまた事実である(2015年には終戦の年に生まれた人であっても約70歳になる)。
我々も、記憶を風化させ単なる「過去の1イベント」で終わらせることのないよう、せめてこのようなことが起こった事実は記憶にとどめておきたいところである。
世界のどこかで「3度目」が起こることがないように・・・。