概要
エーレンフェストの下町に暮らす、兵士の娘。物語開始時点で5歳。身食いゆえの魔力暴走で死にかけたことを契機に、前世である、本須麗乃の記憶を覚醒させる。
前世では「三度のご飯より愛してる」というほどの本好きであり、本を読むためにはいかなる努力も惜しまない。
転生した世界では地球とは違い、本が貧しい平民には手が出せないほどに高価であることを知り、一度は絶望しかけるが、「本がなければ、自分で作ればいい」と決意する。
本を心置きなく読むための環境を作るために、異常なほどの行動力と現代日本由来の発想で多くの人を巻き込み、その過程でタイトル通りの下剋上を果たしてゆく。
人物像
本にわずかに香るインクの匂いを嗅ぐと安心するというある意味変人であり、持っている知識も母から教わったおかんアートや強制的に習わされた音楽系を除けば、本関係だけという極めて偏った知識になっている。本や活字に対する異常な情熱と極めて偏った知識を武器に、とにかく本を読みたい一心で邁進する。
本が絡むとすぐ暴走するため、毎回保護者軍団に叱られているが、それでも自重はしない。
外見は紺色の髪と金色の瞳を持つ美幼女。発育不全で、一見3歳から4歳に見える。(第1部時点)
感情の昂ぶりなどにより、普段は意識的に抑えている(後述)体内魔力が解放され、体内の魔力濃度が飛躍的に上がると、瞳が虹色に変わる。
全属性の魔力を持っている。風の属性か光の属性が一番強い、とマインは推測している。
魔力量は、第四部時点でエーレンフェスト領内第2位。フェルディナンドに劣るものの、マインが現在最も魔力量の伸びしろが高い年代であることを考えると、最終的には作中最高峰の魔力量の持ち主になると思われる。
身食いという謎の不治の病に身を冒されている極めつけの虚弱児で、少し歩いては熱を出して寝込み、興奮しては失神して寝込み、引きずり回されただけで死にかけて寝込んでいる。
後に、身食いとは体内に貴族並の魔力を持つ平民であることが発覚する。つまり「身食い」は病名でなく、魔力過多の平民自身を指す。(一般的な平民も体内に魔力自体は保有しているが、非常に微々たるもの)
最終的な身食いの末路は、成長とともに増えすぎた魔力(熱)が自分の器の許容範囲を超え、制御不可な魔力により心が食われ、身体機能も停止し、死を迎えることとなる。ただし、貴族しかまともに手に入れることができない魔術具を手に入れ、魔力を体外に出すことができればこの限りではない。
本須麗乃が憑依した後のマインは、普段その魔力(熱)を、独自で編み出した方法により圧縮し、自力での抑え込みに成功している(貴族は増えすぎる魔力を吸収する魔術具があるため、ある一定の年齢となるまで自力圧縮せずともよい)。その特殊な圧縮技術はローゼマイン式圧縮方法と名付け、広まっていくことになる。
精神面は元々本須麗乃が人との交流をあまりしなかった面もあるのだが、基本的にマインの年齢面に引きずられている。そのため、無鉄砲に動いたり、情緒不安定だったり、腹を隠して遠回りに読み取ったりする貴族との会話にも一苦労したり、誰かを追い詰めると考えただけで体調悪化があったりする等、色々な面での本作の制限にもなっている。
また、天性のトラブルメーカーと人運を持つ。
経歴
第一部
死にかけて前世の記憶を思い出したマイン。しかし平民として生まれたが故に、本を手に入れることができないどころか、文字を読める者すら周囲にほとんどいない。それでも本を諦めきれないマインは、虚弱体質な身を押して、まず文字の勉強と紙作りから始めることにした。
異世界の常識、文字、食材や材料を学び、商人になる夢を持つルッツを知識面でサポートしつつ、元旅商人で現在は町の兵士であるオットー、商人のベンノ、マルクの協力を得て、植物紙を作ることに成功する。
そして迎えた洗礼式、マインは神殿で念願の図書室を発見し、図書室に出入りするため神殿の巫女になることを神殿長に直談判するのだった。
第二部
領地全体で不足している魔力を奉納することと引き換えに、平民の身でありながら、貴族の子しかなれない青色巫女見習いとしてマインは神殿入りをはたす。
神殿付属の孤児院に、側仕えのギルの案内で訪れたマインは、孤児を世話する者がおらず、小さい子供から餓死している現状を目の当たりにする。本を安心して読む環境を作るために、マインは孤児院長となり、改革に乗り出す。
専属となる、鍛冶師ヨハンや、絵を描くことが得意な灰色巫女ヴィルマの助けもあり、遂に異世界初の植物紙の本が完成する。
第三部
第二部で他領の貴族から狙われたマインは、家族を守るために、出自を上級貴族の娘ローゼマインに変え、領主の養女となった。
神殿の仕事、工房の監督、貴族社会の勉強、魔力の訓練、金策、領地への魔力供給、体調回復薬の素材収集、領主の家族問題……。
やること山積みの超多忙生活の中、ローゼマインはついに本の量産体制を整えることに成功。特製の絵本とカルタで貴族社会に殴り込みをかける。
ローゼマインとなったマインは、前の家族と話せない、貴族にも慣れない環境の中、本を作ること、読むこと諦めずに励むことになる。特に第三部で手に入れた騎獣、レッサーバスは大きさを自在に変えられ、盾にも檻にもなり、傍仕えや荷物を運んだり、移動手段(歩く体力のないマインにとっては特に)になったりする等、八面六臂の活躍である。
第四部
ユレーヴェによる眠りは2年間に及んだ。10歳になり(ユレーヴェは成長を止めるので、外見は8歳のまま)、いよいよ貴族院へ向かうことになったローゼマイン。目当てはもちろん国内第二位の規模を誇る図書館! しかし「全講義合格&一学年全員座学合格まで図書館禁止」の無慈悲な命令がローゼマインの前に立ち塞がる。
自重を忘れたローゼマインは一刻も早く図書館へ向かうため全力を発揮。やがてその暴走は大領地の領主候補生や王族の目に留まり……。
第三部に作ったユレーヴェで虚弱体質が完治する筈だったのだが、第三部のラストで受けた毒薬のせいで、完治はできてはいない(だいぶマシにはなった)。現在は、2年間のユレーヴェによる薬漬けで、身体補助の魔術具なしではまともに動かない体のリハビリ状態である。(ただし監視がいないのでサボリ気味)
魔術
マイン(ローゼマイン)は平民からの転生者のため、魔術具も、それにまつわる知識も持っていなかった。その後、自らが放つ威圧や、フェルディナンドの祝福、儀式による魔力供給によって、自らが魔術にまつわる知識、魔力の引き出し方、イメージを得ていく。さらに、貴族の養女、もしくは貴族から魔術具を得る立場になった方が良いと考えたフェルディナンドの教育+図書室の聖典などによって、神への言葉の唱え方を覚えた。そして、それらが結合した貴族の常識を知らないマインが使うのが彼女の魔術である。
当初、マインは魔力を放出する魔術具がないため、使うことはできず、儀式や戦闘の際にだけ祝福を出せる指輪(洗礼式で貴族が貰うものと同じ)を貸与されることで使えるようになった。その時のマインは、自分が唱えた言葉が魔術になるとは思っていなかった。ただ、周りを慮り、助けになる言葉を組み合わせたら魔術になっていたのだ。その後、彼女は覚えた言葉を組み合わせることで、その時に合わせた魔術を使うようになる(本来、シュタープを持たないマインがそんな状況に巻き込まれる事自体があり得ないのだが)。「神に祈れば魔法になるんですよね」とはマインの弁。
その後、貴族となったローゼマインは指輪を得ることで、いつでも魔力が引き出せるようになり、第二部での複数の神の祈りのせいか、神へ深く祈る言葉、音楽などでも、祝福が起きるようになっていく(特に貴族院でシュタープを得てからはさらに顕著)。さらには本人のローゼマイン式圧縮方法の影響もあってか、神の意志(シュタープを得るためのもの)は最奥にあり、おそらくは王族、もしくは初代の王が神の意志を得たところで手に入れたのではないかと色々推察されている。
先ほど言ったシュタープやさらには騎獣も常識が違うせいか、他の貴族とは異なり、内部騎乗+大小自在なレッサーバスや、シュタープの武具化では、神具であるシュツェーリアの盾、ライデンシャフトの槍、闇の神のマント、フリュートレーネの杖、さらにはミズデッポウにまで変化することになる。ローゼマインのイメージによって強化されたミズデッポウは片手で使えて便利だが、魔力が大量に必要な攻撃で、一定以上の魔力量がある者以外には取り扱いが難しい武器らしい。