概要
一般的には頭文字を取ったAC(Adult Children)という略称で呼ばれることが多い。
もともとはアルコール依存症の親から精神的・肉体的な虐待を受けたことが原因で、何らかのトラウマをかかえたまま成人した結果、情緒不安定・うつ状態・拒食・過食などに陥りやすい性格が形成されている大人のことを表す言葉。しかし現在ではアルコール依存症の親に限らず、機能不全家族で育った影響から心に深い傷を負い、大人になってもそのトラウマ(心的外傷)に悩まされる人々を指すようになった。
自分に自信が持てない・他人に懐疑的になる・他人の意見にノーと言えない・他人に自分を知られることを恐れるなどの傾向を示す。
また、親と同様に自分の子供との関係をうまく保てず、不安定な家庭を持つ傾向があり、自分自身も子供に対してかつての親と同様の態度をとったりすることもある。もちろんアダルトチルドレンの中には自覚症状を持つものもいるため、周りを傷つけたくない一心で結婚に否定的な者が多い。
逆にそれに無自覚であればあるほど後に残虐な事件を起こすシリアルキラーやサイコキラーになってしまう。
一方アダルトチルドレンの中には絶対的な自信家であるケースも見られるが、これは「自分に自信が持てない自分」を否定したい行為の裏返しであり、まさに紙一重とも取れる傾向である。
アメリカではクリントン大統領が、自分がアルコール依存症の養父に虐待されて育ったアダルトチルドレンであることを告白し、話題となった。日本でも1995年に同名の本が出版されるなどして、自らをアダルト・チルドレンと認識する大人が増えた。
元来、アダルトチルドレンという言葉はアダルト・チルドレン・オブ・アルコホリックス(アルコール依存症の親のもとで育ち大人になった人たち)から由来しているが、現在では言葉の意味がアダルト・チルドレン・オブ・ディスファンクショナル・ファミリー(機能不全家族において成長した人たち)に広がりを見せている。
アダルトチルドレンの原因
- 親の愛情が足りなかった
両親が子供に無関心な場合や、両親の不在などがあると、家庭内の愛情が希薄になります。
また、両親は愛情を注いでいるつもりでも、子供がそれを受け止められていないケースも考えられます。
一般的な愛情であっても、他の家庭と比べて愛情が足りないと、「子供が感じた」場合も、このケースに当てはまる可能性があります。愛情が足りない家庭環境で育った場合、他者からの愛情を極端に求めたり、心の隙間を埋めるために何かの依存症になるケースが多くあります。
または、「物やお金=愛情」というような屈折した価値観を持ってしまう事もあります。
- 親から否定されて育った
「あんたなんか生まなければよかった」「そんな子に育てた覚えはない」などの子供自体を否定する環境のケースです。否定をされて育った場合、自分の存在価値を見出す事が出来ず、自尊心が屈折したものになる場合があります。「自分は存在をしてはいけない」などのネガティブな考えが根付いてしまったり、自分の存在が何なのか分からないなどの苦悩を抱く事があります。
この場合、大人になって辛い事があった場合等で、自分を否定する対処方法を取ってしまう傾向があります。
- 外面だけよく見せようとする家族だった
他人の目ばかり気にして、家庭内の事がおろそかになっていたり、学歴や地位に極度にこだわりを持っていた家族のケースです。
価値観が正常に育たないので、自分の価値が「他者から見た評価」だけで形成されるので自分を見失う事が多くあります。出来ない事でも出来ると言ってみたり、反射的に自分をよく見せようと嘘をつく傾向があり、身近な人間にすら同じことをするので、信用されにくい性格になります。
- 親の代わりをしていた
子供が親の代わりに、兄弟の面倒を見たり、仕事や家事を行う事が多かった家庭のケースです。
子供らしい時間を過ごす事が少なかった場合、責任感が強すぎる性格になったり、子供らしい感受性が正常に育たないことがあります。頼られることが自分の存在意義だと思い、共依存的な行動をとる傾向にあります。
親に対して、尊敬する気持ちが薄れますので、大人に対して寛容さが乏しくなります。
「大人のクセに」などと子供の頃から考える傾向が生まれます。親がやっている事が出来るようになってくると、同年代の子供が幼稚に見え、子供らしい人間関係を形成しにくい性格になります。
- 過保護に育てられた
甘やかされていたり、身の回りの世話を全て親任せだったケースです。
親の引いたレールに乗ることも多いので、大人になっても自分の判断で行動できない事があります。
また、何かをしてくれる事が愛情だと感じるので、自分を見てくれないと不安になる傾向もあります。
何か失敗をすると立ち直るまでに時間がかかり、自分を見失う事もあります。責任感が育ちにくいので、自発的に何かを達成しようという意欲も少なくなります。
過保護の延長線上で過干渉になることもあります。親が子離れできない状態でいると、子供の親に対する価値観が正常に発達しなくなり、親以外の大人に対しての接し方にも問題が起こることがあります。
また、子供が親や家族に対しての暴力や虐待を働くケースもあります。
優しさが育たず、「自分をこの性格にした親が憎い」と思い、憎しみを持ってしまうのです。
- 暴力・虐待がある家庭だった
愛情とは逆の行為、又は屈折した愛情を受けたケースで、しつけのために叩いたり、自分以外の家族に暴力や虐待が向けられ、それを見て不安や恐怖を感じる場合はこのケースに当てはまります。
虐待には、「身体的」「精神的」「性的」があり、子供にとって、恐怖や不安に感じる場合と、それを愛情だと勘違いする場合があります。
恐怖や不安を感じて育った場合は、大人になっても争いごとなどを極度に避け、他人が喧嘩をしているところをみるだけでも、感情が乱れることがあり、時にはパニックを起こす事もあります。
逆に、不安や恐怖を外で発散するために、他人に対して暴力的になるケースもあります。
また、暴力や虐待を愛情と勘違いして育った場合、DVや性依存に発展する場合があります。
注意
アダルトチルドレンは精神医学的に認められた病気ではなく、定められた診断基準もない。治療法として集団セラピーが行われることもある。米国では治療の結果、父親からの性的虐待の記憶が回復し、娘が父を告訴するというケースも見られる。
アダルトチルドレンと見られる人物
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