概要
原油から分留されて生成されるLPG(液化石油ガス)の主成分で、ボンベやタンクで供給される。
ボンベ供給のプロパンガスは主成分のプロパンの他、容積あたりで熱量が近似値のブタンやその亜種化合物が含まれている。
公共配管敷設を要する都市ガスに比べ、事業者の設備負担が少なく済み、人口密度の低い地方部で普及している。
都市ガスと対比される存在だが、プロパンガスは厳密にはインフラ事業ではなく、灯油などと同じ小売品とされている。このため一般的に使用料金は高く(ガス業者の従業員の家庭など、“身内料金”としてべらぼうに安い価格で供給されていることもある)、しかも都市ガスと違って公共料金ではないので価格体系が不透明である。
この点をついてくる悪質業者が多いので(ほとんどはブローカー系で自身が供給事業者ではない)、目の前の金額に飛びついてガス業者を変えることは考えものである。逆に地場産業として地元に根を張った事業を展開している業者が多いので、安全対応など考えると安易にショッピング感覚で事業者を選ぶことは避けた方が良い。
また、2017年4月に都市ガスも自由化されたため、プロパンガス固有の問題ではなくなった。
一方で、プロパンガスは都市ガスに比べて安全性が高く災害に強いとされている。
最大のものが無毒である点で、かつて都市ガスの大半に微量(致死量としては充分)の一酸化炭素が含まれていた時代は、プロパンガスは無毒であることをセールスポイントとしていた。また、有毒都市ガスによる自殺(大阪青酸コーラ事件の被害者など)や殺人(雅樹ちゃん誘拐殺人事件など)が発生し、またこれを題材にした創作物も多くあったため、プロパンガスでガス自殺しようとして中毒では死ねず、最終的に引火爆発して周囲もろとも吹っ飛んだバカもいる。
かつては都市ガスより極端に高い単位量あたりの熱量から“危険な爆発物”扱いされがちだったが、個別供給であるためガス爆発などの一次災害やそれが大規模になる危険性はむしろ低く、仮に屋外においてあるボンベが損傷したとしても殆どの場合はすぐに爆発の危険が少ないレベルにまで拡散してしまう。もちろん皆無ではなく、つま恋ガス爆発のような例もある。
火災や地震などを原因とする二次災害による爆発事故は一定数ある。
また小売品であるため事業者は「自社の製品で事故を出すことは恥」とする風潮があり、かつて日本のインフラ事業に多く見られた「個別のインシデントへの対応のために大規模な供給停止を起こすことのほうが恥」という風潮のあった都市ガスとは対象的な対応が取られることが多かった(現在は都市ガスも「安全第一」が鉄則)。この為天六ガス爆発や北見市ガス漏れ事故のような、異常時の漫然とした供給継続による人災的災害拡大はほとんどない。
ヒューズコックへの取替も積極的に呼びかけ、特に上記のつま恋の事故の後は「とにかくヒューズコック・マイコンメーターに替えさせてくれ」という事業者が多かった。
なお、上記したとおり厳密にはインフラ事業ではないが、プロパンガス供給事業者のガスパトロールカーは都市ガスや電力会社同様緊急自動車であることが認められている。義務でもある。
個別対応が可能なため災害時には復旧の立ち上がりが早く、また簡便な設備でも扱えるため甚大被災地区で電気も途絶える中炊き出しなどに重用される。また家屋倒壊などの自体でなければ、マイコンメーターの自己診断機能の応答を待って順次消費者個口ごとに復旧できるため、東日本大震災時の茨城県南部など、建物の損壊が比較的少なかった地域でも、都市ガスが1ヶ月以上の供給停止となったのに対し、プロパンガスは1週間以内に8割以上が復旧している。
また貯蔵時(液体時)の容積あたりの熱量がガソリン並なのでエンジン発電機など比較的大きな動力機械も動かせる。
この為、非常時を考えて都市ガス地域でもプロパンガスを備蓄している施設(病院など)もある。
また、都市ガスは集中導管のため、飯時など消費量が上がると個口の供給圧が低下することがあるため、それを嫌ってプロパンガスを使用するケースも有る(飲食店に多い)。
また全国統一されたとは言っても13Aはあくまで日本のローカル規格でしかないが、プロパンガスはほぼグローバルスタンダードであるため、海外製の調理機器などを使う場合にプロパンガスとする場合もある。
当然ながら「小売品」であるため、日本では都市ガス地域ではプロパンガスを設備規模で使ってはならないという決まりは存在しない。
なお、都市ガス地域でも、プロパンガスにメタンもしくはエタンを加えて燃焼速度を上げた上で、熱量を13A相当に下げたL13Aという代替ガスが供給されていることがある。