「…蜘蛛の巣でもがく昆虫のように罠にはまって狼狽する相手を見るのは最高さ…!一途に努力してきた奴ほどその表情が楽しめる…一度それを味わってしまうと、他の殺し方なんてバカらしくなってしまうんだよ。そんな相手にスウッととどめを刺してやる時、はじめて心の底から思えるんだよねェ…」
「ボクは死神なんだってね…!!」
概要
「キルバーン」は「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の登場人物。
大魔王バーン直属の部下であり、バーンの意に沿わない邪魔者や軍団内部で不始末をしでかした者を排除する暗殺者である。
使い魔である一つ目ピエロのピロロを従え、大魔宮バーンパレスに仕掛けられたキルトラップでダイ達を追い詰める死神。
「キルバーン」という名前は「バーンを殺せ」という意味のコードネームであり、本来の名前ではない。彼はバーンと長年覇を競っていたライバルである冥竜王ヴェルザーによって派遣された協力者であり、ヴェルザーの命令次第でバーンの抹殺を敢行する刺客なのである。
飄々としてはいるが非常に残酷な性格をしており、弱者を卑劣な手段で嬲り殺すことが大好きなサディストである。
ザボエラ等と違って高い実力がありながら、好き好んで卑劣な戦いをするあたり、”死神”を自称するに相応しい食えない存在である。
強敵そうな雰囲気と大がかりな仕掛けを使うが、劇中では誰も殺せていない。
これは彼の腕前が未熟なのではなく、むしろそれ以外で彼の姿を見た標的はすべて始末されているからである。
実際、魔王軍の中でもそれまで彼の姿を見た者がいなかった。
そもそも、物語全体を通してまともに死んだ名前ありの味方キャラは、バランとハドラーくらいのものである。作風と対象年齢ゆえに成果がだせなかったというべきであろう。
洞察力も特筆すべきものがあり、ポップの可能性を見抜いて真っ先に始末しようとする、竜騎将バランから黒の核晶を隠す等の活躍を見せる。
ダイに対しても「これ以上彼に戦闘を経験させるべきではない」とバーンに対し忠告するなど、敵側視点においてもっともダイ一行の戦力を正確に評価していた点は特筆に価する。
同じ大魔王バーンの側近であるミストバーンとは親友同士。
両者は性格や嗜好などが正反対であり、本来このような性格はミストバーンが嫌うタイプの人物像のはずではあるが、彼はバーンに対して臆さばかりか堂々と「キルバーン(=バーンを殺せ)」と名乗る度胸があったため、互いに実力を認め合う仲になっている。
またバーンに対してもその器の大きさから好意を持っており、義理ではあるが一応の忠誠心のような態度は持っている。
バーンパレスでアバンと決闘を繰り広げ、首を跳ね飛ばされて戦死した。
『死神といえど首がちぎれて無事な生物なんていない・・・』
アニメ版のcvは田中秀幸であり、ダイの師であるアバンと同じ声優。そのため、物語の最後までアニメ化されていたならば同じ声優同士のキャラによる戦いを見ることができたはずだった。
戦闘スタイル
死神の笛を使い相手の五感を奪う特殊能力を持ち、その体には魔界のマグマと同じ成分の血液が流れ、数多くの罠などを仕掛けるため、いずれも確実に相手を始末するための手段になる。
また、ある理由のため刃物で突き刺されたり胴切りにされたとしても平気で立ち上がれる。
むろん、死んだフリなどをして相手を騙す手法としても最適。
以下は彼の武器について解説。
- 死神の笛
- 鎌の形をした武器。
- 見た目どおりの使い方の他にも、振るうたびに高周波音を出して五感を奪い、最後には指一本動かせなくなる力を持っている、まさに悪魔の「笛」。キルバーン曰く「暗殺には最適の武器」。
- 欠点は、職人芸のような精微な作りによって高周波を出していることであり、したがってヒビが入るだけでも笛として使いものにならない。だが、ヒビすら入れられないデリケートな武器を持つこと自体、彼の高い戦闘力を証明するものでもある。
- 血液
- 魔界のマグマと同じ成分で、超高熱と強酸を含んでいる。武器にでも付着しようものなら、腐食は免れない。それはドラゴンキラー(店で買える武器の中でも最高クラスのもの)を使い物にならなくし、自己修復能力を持つだけでなくオリハルコン製の真魔剛竜剣の切れ味をも鈍らせた。もちろんその高熱自体も十分武器として機能し、体が破損しても平気という特性を活かし自ら片腕を切り落とすことで、肉体分の血液を一気に炎上させて相手に放つ「バーニングクリメイション」に仕立て上げることができる。
- 剣
- 通常は死神として暗殺の仕事をする彼が、相手と真っ向勝負をする際に使用する、タネも仕掛けもないオーソドックスな剣。しかし死神の笛を使いこなす戦闘力を持っている彼がデリケートではない普通の武器を使えば、当然だが無類の強さを発揮する。アバンとのタイマンでは先制攻撃で痛手を負わせ、その後も互角に渡り合う腕前を持つ。
- このように通常の鍛え方をしていればまともに戦っても無敵の強さになれる素質があるが、彼のモットーは「相手を罠にかけて倒すことこそが死神としての最高の瞬間」というものであり、「弱さゆえに卑怯だったザボエラ」とは一味違う「十分強いにもかかわらず卑怯を好む」というスキのない人物像を証明する武器とも言えよう。
- ジャッジ
- 魔界での決闘を行う際に使われてきた、由緒ある審判マシーン。正確かつ公平な審判が可能で、手には大鎌を持っており、最終的に敗者とみなした側の首を即座にはねるようプログラムされている。判定はリアルタイムでボイス付きにて行われ、攻撃時のダメージ量などが通知される。これはゲームにおける「数値によるダメージ表示という命のやりとりのデジタル管理」をストーリーに取り込んだ場面とも言える。
- 問題は、キルバーンの性格である。これまでの挿話を読んでいただければわかるように、彼は正々堂々の勝負を仕掛け罠にはめる人物である。このマシーンを使ったのはデザインが気に入った(死神である自分のスタイルに酷似する)からだが、密かに改造を施しており、いざという時には審判の仕事を放棄し、相手を巻き込みメガンテを唱えるようプログラムをセットされている。
- ファントム・レイザー
- 上記の剣を使った真っ向勝負の最中に仕掛けた狡猾な罠。あたかも真剣勝負をするように見せかけておき、実際それができるほどの腕前を持つ故に、この罠は、完成するまで相手に悟られることすらなかったのである。
- その効果は「自分にしか場所がわからない1本の刃を空中に設置する」というものだが、彼が所有するのは13本。巧妙に、相手を取り囲むように少しずつ設置すれば、やがて相手は取り囲む見えない刃にズタズタに切り裂かれてしまう。並の剣なら真っ二つに折ってしまう硬度を持ち破壊も困難。使用後もピロロが新たに全補給してくれるなど、リソース管理も抜かりない。
- ただしこれにも欠点はある。それは「透明ゆえ設置者にしか位置がわからない」ことである。一見欠点に見えないようだが、「設置者=キルバーン」とは限らない点に注目。つまり、この刃を相手に奪われて設置しなおされてしまうと、当然その刃が仕掛けられていることに気づかず、逆に自分が罠にはまるリスクとなる。
その他
- 笑いの仮面:初登場から身に付けていた仮面。不気味な笑みを浮かべた顔をモチーフにしており、バーンパレスでアバンに割られてしまい憤慨した。ピロロ曰く『お気に入りの仮面』だったらしい。
- 怒りの仮面:アバンとの再戦時に身に付けた仮面。 曰く『今の心境にぴったりのものが見つかった』とのこと。この仮面を身に付けてからというもの彼に正々堂々の勝負(という新たな罠)を仕掛けるようになる。
関連イラスト
関連タグ
※これより先、物語の結末に触れる内容のため注意されたし
『【首がちぎれて無事な生物なんていない】か・・・君の台詞だったねぇ』
『確かにそうかもしれない。 【生物】 だったら・・・ね』
『ボクの身体が 【生物】 でないとしたらどうかね? 【機械仕掛けの人形】か何かで、それを外で操っている奴が他にいるとしたら・・・』
正体
その正体は、彼が従えていたはずの使い魔ピロロである。
実際にキルバーンと思われていた死神を動かしていたのは全て彼であり、わかりやすく説明すると「腹話術師の逆バージョン」である。
ピロロは周囲からただの弱い使い魔と思われていた故にダイたちの標的になる事なく、それ故に彼が本体だとは誰も気が付かなかったのである。
正体を明かすときのシーンは、一見すると最後の最後で取ってつけたかのようなものだったが、正体を知った上で読み返してみるとそれらしい伏線がちらほらとあったりする。この伏線の張り方だが、異なる解釈ができる余地を残しているため、伏線と断定できないのが巧妙。
登場人物はもとより、読者にすら正体をさとられないあたりは相当な演技派である。
あるいは、人工的な人格によって擬似的に自我をある程度持たせていたのかもしれない。
もちろん魔王軍のメンバーたちにも一切正体は気づかれておらず、とくに親友となっていたミストバーンを完全に騙していたことを考えると、死神としての活動などほんの序の口と言えるほどの策略家である。
当然、死神ボディは人形なので損傷してもまったく平気なのは当たり前であり、壊れても修復すれば何度でも使える上、戦闘力も高いザボエラの超魔ゾンビも真っ青の「傷ついても痛くもかゆくもない」兵器である。
アバンが「対等の相手と戦ったときに必殺の気迫が感じられない」と思うのも生物じゃないのだから当前と言える。
しかしこの死神ボディもまた、これまで挙げた戦闘・暗殺能力以外に、本当の恐ろしい能力を隠し持っていた。それが···ハドラーにも埋め込まれていた、ピラァ・オブ・バーンにも仕掛けられていた、魔力で作動する核爆弾「黒の核晶」である。
もしもの時はこれを使って大魔王バーンを始末するつもりであり、その名前はジョークでも脅しでもなかったわけである。
あのバーンをして「さしもの余も残酷さだけはお前には及ばん」と言わしめた彼のさらなる本性であった。
しかも通常の「黒の核晶」とは異なり体内に流れるマグマが冷気をはじく為、凍結させて停止させることが不可能。
余談だが、このマグマが血液というのも生物じゃないのだから真っ赤な嘘なのだが、動力源であることは事実でありマシンである死神ボディにとっては実質的な血液に相当しているとは言える。
こうした活動をするためにやってきたそもそもの理由は、彼を雇っていた「冥竜王ヴェルザー」の本心によるものだった。
大魔王が「地上を消滅させて魔界に太陽の光を照らす」のを目的としていたのに対し、ヴェルザーは「魔界も地上も欲していた」。
キルバーン曰く「ドラゴンらしくない、まるで人間のような性格」とのことで、バーンが地上を壊滅させることを知ったことでそれを阻止して地上をも手に入れようと動き出した。
結果的に封印されたが、それでも諦めることなく、地上入手の敵であるバーンを監視するために刺客を送りこんだ···それが、キルバーンなのである。
だが、そんな「真・キルバーン」とも言うべきピロロにも、完全に騙しきることができなかった相手がいる。そう、ダイたちである。
なぜか。簡単だ。すでに書かれている通り、自ら正体を明かしてしまったためである。
それは、暗殺が任務のキルバーンにとって、最もやってはならないことであり、相手にとどめを刺していないのに勝利を確信してしまうというわかりやすい死亡フラグを自分で立ててしまったことを意味する。
しかも「地上だけを綺麗に破壊してヴェルザーに捧げるつもりだ」という真相を洗いざらい話してしまったことで、今度こそ自身がターゲットになってしまう。
そして、その結果は···あまりにもあっけない瞬殺であった。「使い魔ピロロとしての戦闘力の弱さ」だけは、演技ではなかったのである。
ただ自身の弱点を晒しただけの無意味な行動に見えるこのネタ晴らしだが、その一方でこの暴露が少なからずダイたちに絶望感を与えたことは事実である。
彼がその気であれば、ただ「黒の核晶」を作動させてダイたちを殺すことは容易だった。
それをあえてしなかったのは、勇者たちを絶望させることを望んでいたからだろう。そう、彼は人間が絶望する瞬間が何よりも好きなのだ。
「相手を罠にはめる死神」としての嗜虐心が、皮肉にも「相手に自分の存在を悟らせず暗殺する死神」としての立場を裏切ってしまったわけである。
また、「キルバーン」はあくまで暗号名であるため、ピロロはそのまま彼の本名である可能性が高い(残酷さと知略からヴェルザーに刺客として見込まれたとはいえ、肉体そのものは脆弱な一つ目ピエロが偽名を必要とする程注目されているとは思えないため)。