概要
この地震は南海トラフ巨大地震などの海溝型地震は含まない西日本の直下で発生する地震のことを指す。最近の例としては阪神淡路大震災・鳥取県西部地震・福岡県西方沖地震・平成28年熊本地震などが挙がる。直下型の地震のため震源が近いと緊急地震速報が間に合わない。
海溝型地震(主に南海トラフ)との関係性
過去に日本の中部(中部地方、近畿地方周辺)で起こった地震は その地域での最大規模(マグニチュード8.0前後)の地震である東海地震・東南海地震・南海地震が発生する前後の数年間~数十年間、地震の多い時期(活動期)が見られることがわかっている。
メカニズム
主に「西南日本のプレート(ユーラシアプレート)」の下には、海側から「フィリピン海プレート」が斜めに沈み込んでいるが、プレート境界がつるつるでないためにスムーズに沈み込んでいるわけではない。そのため、固着が著しく陸側のプレートも一緒に動いてしまう。その沈み込みが内陸側にも影響を及ぼし、弱面である断層に力が集中し、限界を超えると岩盤がずれ動き地震が発生する。そのため、南海トラフ巨大地震の発生前後は西日本で内陸の地震が頻発しやすくなる。
阪神淡路大震災以降に活動期に入ったとされており、いつどこで発生してもおかしくないのが現状だ。
※プレート境界型地震である東日本大震災の前にも岩手宮城内陸地震(2008)・新潟県中越沖地震(2007)・新潟県中越地震(2004)などの直下型地震が発生していた。
過去の地震
大地震が多すぎてとても紹介しきれないので、ここでは最近の地震を挙げるが、死者も出ており、詳細不明の地震も存在する。地震年表では海溝型の地震も含まれている。南海トラフが震源域とされる巨大地震と大被害をもたらしたことが明らかな地震、震度7(近い震度も含む)かM7以上の地震のいずれかに当てはまるものは太字となっている。
慶長伊予地震(中央構造線状の連動型地震)
1596年9月1日(文禄5年閏7月9日亥刻)夜に愛媛県(伊予)で発生した地震である。慶長豊後地震・慶長伏見地震の一連の地震活動の一つとされる。城や寺などが破損し、豊後は津波に襲われたと推定される。
慶長豊後地震(中央構造線状の連動型地震)
1596年9月4日(文禄5年閏7月12日)に大分県(豊後)で発生した地震である。この地震で瓜生島及び久光島の2島が沈んだと伝えられる。慶長伊予地震・慶長伏見地震の一連の地震活動の一つとされる。周辺では津波による多く被害がでた。
慶長伏見地震(中央構造線状の連動型地震)
1596年9月5日(文禄5年閏7月12日)に京都府(山城)で発生した地震である。死者は1000人を超え、その約6割は圧死だったらしい。慶長伊予地震・慶長豊後地震の一連の地震活動の一つとされる。
※中央構造線状の連動型地震の約8年半後に慶長地震が発生した。しかし、この地震については震源域が不明でいくつかの説がある。
善光寺地震
逆断層型の地震であったため、乗り上げた側である断層線の西側の地域での被害が大きかった。死者は市中のみで2,486名に達し、全震災地を合わせて死者総数8,600人強を誇ったと推定。犀川右岸の岩倉山の崩壊は下流に洪水を引き起こし大被害をもたらし、浅川周辺では天然ガスが噴出した。
伊賀上野地震
- 発生日と時刻 1854年7月9日14時頃と推測
- 震央 三重県伊賀市北部(経度136度、緯度34.75度)
- 規模 M7.1~7.4と推測
安政伊賀地震とも呼ばれている。活断層による内陸地殻内地震とされ、安政の大地震の始まりが本地震である。地震の規模が阪神淡路大震災に匹敵するほどのエネルギーであったらしい。死者数は995名で、地滑りや火災も発生した。特に火災で約300名余りが命を落とした。この地震の約半年後に安政東海地震と安政南海地震が発生した。
浜田地震
- 発生日 1872年3月14日と推測
- 震央 島根県浜田市沖
- 規模 M7.1と推測
最大震度は不明ではあるが、震度7相当であると推測。死者は551人。山崩れや津波が発生した。この地震では多くの前兆現象が観測されている。
熊本地震(1889年)
- 発生日と時刻 1889年7月28日午後11時45分頃と推測
- 震央 熊本県熊本市付近(北緯32.8度、東経130.7度)
- 規模 M6.3と推測
平成28年熊本地震を区別するため、明治熊本地震とも呼ばれる。20人が死亡、数百棟が全半壊し、熊本城も大きな被害を受けた。最大震度は不明。
濃尾地震
- 発生日と時刻 1891年10月28日午前6時38分頃と推測
- 震央 岐阜県本巣市(北緯35度35分、東経136度20分)
- 規模 M8.0
- 最大震度 震度7:福井県今立郡鯖江町、愛知県葉栗郡大田島村・東春日井郡勝川村
日本の内陸地殻内地震の中で史上最大規模のM8.0を観測した地震。「根尾谷断層帯」が活動したものと考えられる。震源周辺では、家屋倒壊率100%の集落もあった。震災予防調査会の活動は、1923年の関東大震災を経て東京大学地震研究所に引き継がれた。岐阜県では10月28日が地震防災の日となっている。死者・行方不明者7,273人。
姉川地震
内陸直下地震で、滋賀県と岐阜県を中心に被害が及んび、東北地方南部から九州地方の一部にかけての広い範囲で有感地震を観測。琵琶湖では高さ1.8mの波が押し寄せた。
北但馬地震
円山川の河口付近において、海側から大砲のような音が断続的に聞こえ、地震発生時には、豊岡の町で地面が16秒間に4回も強く波打ったという。当時の建築物は木造が多かったため、地震で倒壊する建物が多かった。死者は428名。
北丹後地震
- 発生日と時刻 1927年3月7日午後6時27分頃
- 震央 京都府丹後半島北部(北緯35度37.9分、東経134度55.8分)
- 規模 Mj(気象庁マグニチュード)7.3,Mw(モーメントマグニチュード)7.0
- 最大震度 震度6:兵庫県豊岡町(現:豊岡市)、京都府宮津町(現:宮津市)・峰山町(現:京丹後市)
北近畿を中心に中国・四国地方まで被害が及び、なかでも被害が集中したのは、丹後半島のつけ根にあたる約15kmの範囲である。家屋倒壊率が70~90%に達し、火災も発生した。死者2,925人、負傷者7,806人だった。
河内大和地震
- 発生日と時刻 1936年2月21日午前10時7分頃
- 震央 奈良県北葛城郡當麻村(現葛城市)の二上山東麓(北緯34度31分3秒 東経135度41分6秒)
- 規模 M6.4
- 最大震度 震度5:大阪府中部、奈良県北西部
内陸型地震とほぼ断定されており、岡山や甲府でも揺れを観測した。法隆寺などの文化財にも被害がでた。死者は9人。
鳥取地震
4年連続で1,000名を超える死者を出した4大地震(東南海地震、三河地震、南海地震)の一つである。家屋の倒壊率は80%とされた。山陰本線や因美線といった鉄道もこの被害を受けたため、長期間にわたって鉄道が不通になった。この他にも電話をはじめとする通信や道路も大きな被害を受け、梨などの農産物への被害も甚大であった。死者 1,083人名。なお、この地震の約1年後に昭和東南海地震が発生した。
三河地震
4年連続で1,000名を超える死者を出した4大地震(鳥取地震、東南海地震、南海地震)の一つである。地震発生当初は昭和東南海地震(第一次地震)に対して第二次地震と称された。三河湾で小規模な津波の発生した。被害が甚大な地区では、どの家族にも死者が出るほどの高い死亡率だったらしい。なお、この地震の約2年後に昭和南海地震が発生した。
福井地震
- 発生日と時刻 1948年6月28日午後4時13分頃
- 震央 福井県坂井郡丸岡町(現坂井市丸岡町)付近(北緯36度10分18秒、東経136度17分24秒)
- 規模 M7.1
- 最大震度 震度6:福井県福井市(震度7相当の可能性)
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、大正関東地震、兵庫県南部地震などと並ぶ、日本の災害史上最悪クラスの震災となった。全壊率が60%を超えるなど被害は甚大だった。九頭竜川の堆積物により福井平野の地盤が弱いことと、福井市中心部は昭和20年の福井空襲で壊滅してから数年後、復興途上でバラック建築が多く、不安定な構造だったためにかなりの建物が倒壊している。1944年の昭和東南海地震(M7.9)の影響を受け、その震源域及び余震域から離れた地域で発生した誘発地震と考えられている。死者・行方不明者3,769人。
兵庫県南部地震
- 発生日と時刻 1995年1月17日午前5時46分頃
- 震央 兵庫県北淡町(北緯34度35分54秒、東経135度2分6秒)
- 規模 M7.3
- 最大震度 震度7:兵庫県神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市、北淡町、一宮町、津名町
大都市直下の地震で、気象庁の震度階級に震度7が導入されてから初めて最大震度7が記録された地震である。この地震をきっかけに震度階級が改正された。死者・行方不明者6,437人。
鳥取県西部地震
- 発生日と時刻 2000年10月6日午後1時30分頃
- 震央 鳥取県米子市 南方約20km(北緯35度16.4分、東経133度20.9分)
- 規模 M7.3
- 最大震度 震度6強:鳥取県日野町・境港市(震度7相当の可能性)
この地域は地震空白域とされる地域であった。M7を超す大地震でありながら、何人かは生き埋めとなったが救助され、死者が出なかった。しかし、境港市街の液状化を始め、日野町、米子市などで住宅の倒壊、損壊など物理的な被害は顕著であった。鉄道や高速道路などにも亀裂が入ったり、ホームが傾くなどの被害が出た。また、中国電力 7,402戸と四国電力1,874戸で停電した。
福岡県西方沖地震
- 発生日と時刻 2005年3月20日午前10時53分頃
- 震央 福岡県北西沖(北緯33度44.3分東経130度10.5分)
- 規模 Mj7.0,Mw6.7
- 最大震度 震度6弱:福岡県福岡市東区・中央区・西区・前原市、佐賀県三養基郡みやき町
福岡市西区の玄界島で住宅の半数が全壊する被害となったのをはじめ、同区能古島、西浦、宮浦、東区志賀島などの沿岸地区で大きな被害となった。福岡市および志摩町・前原市(現・糸島市)と周辺市町村を中心に被害が発生した。玄界島、能古島、糸島半島北端の西浦地区・宮浦地区、東区の志賀島など、沿岸の集落で住宅被害が目立った。死者は1人。
能登半島地震
石川県、富山県、新潟県で震度5弱以上の揺れを観測した。計測震度の最大地点は輪島市門前町で震度7(計測震度6.5以上)に近い計測震度6.4を観測した。また、20cmの津波も観測した。震源を中心に家屋倒壊・道路崩落や、電気・ガス・水道などのライフラインの寸断が発生し、震源地に近い沿岸部や富山県の氷見漁港などでも液状化現象が発生した。地震によってエレベーターが緊急停止し、エレベーター内に人が閉じ込められる事故も相次いで発生した。死者は1人。
平成28年熊本地震
- 発生日と時刻 2016年4月14日午後9時26分頃、4月16日午前1時25分頃
- 震央 どちらも熊本県熊本地方(北緯32度44.5分、東経130度48.5分)、(北緯32度45.2分、東経130度45.7分)
- 規模 Mj6.5(Mw6.2)とMj7.3(Mw7.0)
- 最大震度 (前震)震度7:熊本県益城町、(本震)震度7:熊本県益城町、西原村
日本国内の震度7の観測事例としては4例目であり、一連の地震活動において、現在の気象庁震度階級が制定されてから初めて震度7が2回観測された。耐震基準が2000年以降の建物も全壊したところがあった。熊本城や阿蘇神社などの文化財にも影響を及ぼし、自治体指定のものを含めると300件を超えた。大規模の土砂崩れや液状化現象なども発生した。合計死者258人。
南海トラフ震源域への影響
この地震の影響で東南海地震の震源域で微動地震が活発化した。約13日前には三重県南東沖を震源とするM6.5のプレート境界型地震が発生していた。
西日本の地震年表
地震発生年月日 | 地震名 | 備考欄 | 南海トラフ地震との間隔 |
1686年1月4日 | 安芸・伊予で地震 | 死者あり。 | |
---|---|---|---|
同年11月26日 | 遠江・三河地震 | 死者多数。宝永地震の前震とも考えられている。 | |
1700年4月15日 | 壱岐・対馬地震 | ||
1703年12月31日 | 豊後で地震 | 死者1人。ほぼ同刻に元禄地震が発生している。 | |
1705年5月24日 | 阿蘇山付近で地震 | 死者あり | |
1707年10月28日 | 宝永地震 | 南海トラフ巨大地震(同時連動)。死者最大で2万人と推定 | 前回の地震から約103年後 |
同年同月29日 | 宝永富士宮地震 | 死者4人。宝永地震の最大余震。 | |
同年11月21日 | 周防・長門で地震 | 死者3人。 | |
1708年2月13日 | 紀伊半島沖で地震 | 宝永地震の余震。 | |
1710年10月3日 | 因伯美地震 | 死者多数。 | |
1711年4月28日 | 伯耆・美作で地震 | 死者4人。 | |
1715年2月2日 | 大垣・名古屋・福井で地震 | ||
1718年8月22日 | 三河、伊那遠山谷で地震 | 死者50人。 | |
1723年12月29日 | 肥後・筑後で地震 | 死者2人。 | |
1729年8月1日 | 能登半島で地震 | 死者あり。 | |
1769年8月28日 | 豊後・日向・肥後で地震 | 死者あり。津波あり。 | |
1819年8月2日 | 文政近江地震 | 死者多数。 | |
1830年8月19日 | 京都地震 | 死者280人。 | |
1833年5月27日 | 美濃西部で地震 | 死者11人。 | |
1847年5月8日 | 善光寺地震 | 死者8000人超え。 | |
1854年7月9日 | 伊賀上野地震 | 死者約600人。安政の大地震の一つ。 | |
同年12月23日 | 安政東海地震 | 南海トラフ巨大地震(東海道沖)。安政の大地震の一つ。死者最大で3000人と推定 | 前回の地震から約147年後 |
同年12月24日 | 安政南海地震 | 南海トラフ巨大地震(南海道沖)。安政東海地震の32時間後に発生。安政の大地震の一つ。死者は数千人と推定 | |
同年12月26日 | 豊予海峡地震 | 安政南海地震の40時間後に発生。スラブ内地震。死者は安政南海地震と区別がつかないため不明。 | |
1855年3月18日 | 飛騨地震 | 少なくとも死者203人。 | |
1857年10月12日 | 伊予・安芸で地震(芸予地震) | 死者5人。 | |
1858年4月9日 | 飛越地震 | 死者数百人。 | |
1872年3月14日 | 浜田地震 | 死者552人。 | |
1889年7月28日 | 熊本地震 | 死者20人。 | |
1891年10月28日 | 濃尾地震 | 死者7,273人、負傷者17,175人。日本観測史上最大規模の直下型地震 | |
1892年12月9・11日 | 石川県・富山県で地震 | 死者2人。 | |
1899年3月7日 | 紀伊大和地震 | 死者7人。 | |
1905年6月2日 | 芸予地震 | 死者11人。 | |
1909年8月14日 | 姉川地震 | 死者41人。 | |
同年11月10日 | 宮崎県西部で地震 | ||
1916年11月26日 | 明石付近で地震 | 死者1人。 | |
1922年12月8日 | 島原地震 | 死・行方不明者不明。 | |
1925年5月23日 | 北但馬地震 | 死者428人。 | |
1927年3月7日 | 北丹後地震 | 死者2,925人。 | |
1936年2月21日 | 河内大和地震 | 死者9人。 | |
1943年9月10日 | 鳥取地震 | 死者1083人。4大地震の一つ。 | |
1944年12月7日 | 昭和東南海地震 | 南海トラフ巨大地震(三重県南東沖)。死・行方不明者1223人。4大地震の一つ。 | 前回の地震から約90年後 |
1945年1月13日 | 三河地震 | 死者428人。4大地震の一つ。 | |
1946年12月21日 | 昭和南海地震 | 南海トラフ巨大地震(和歌山県南方沖)。死・行方不明者1443人。4大地震の一つ。 | 前回の地震から約92年後 |
1948年4月18日 | 和歌山県南方沖で地震 | 昭和南海地震の余震。 | |
同年6月15日 | 紀伊水道で地震 | 死者2人。 | |
同年同月28日 | 福井地震 | 死・行方不明者3,769人。 | |
1968年2月21日 | えびの地震 | 死者3人。 | |
1969年9月9日 | 岐阜県中部地震 | 死者1人。 | |
1995年1月17日 | 阪神淡路大震災 | 最大震度7を観測。死者・行方不明者6,437人。 | |
1997年5月13日 | 鹿児島県北西部地震 | 最大震度6弱を観測。 | |
2000年10月6日 | 鳥取県西部地震 | 最大震度6強を観測(震度7相当を観測)。 | |
2001年10月6日 | 芸予地震 | 最大震度6弱を観測。死者2人。 | |
2005年3月20日 | 福岡県西方沖地震 | 最大震度6弱を観測。死者1人。 | |
2007年3月25日 | 能登半島地震 | 最大震度6強を観測。死者1人。 | |
2011年3月12日 | 長野県北部で地震 | 最大震度6強を観測。東北地方太平洋沖地震の誘発地震 | |
2013年4月13日 | 淡路島付近で地震 | 最大震度6弱を観測。 | |
2014年11月22日 | 長野県北部で地震 | 最大震度6弱を観測。 | |
2015年11月14日 | 薩摩半島西方沖で地震 | ||
2016年4月14日・16日 | 平成28年熊本地震(前震と本震) | どちらも最大震度7を観測。死者9人。死者258人(前震含めて)。 | |
同年10月22日 | 鳥取県中部で地震 | 最大震度6弱を観測。 | |
2018年6月18日 | 大阪府北部で地震 | 最大震度を6弱を観測。死者5人。 |
※はっきりと明らかになっていない地震も存在する。
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