概要
ホンダが製造・販売を行っているスポーツカー。売価1000万円以上と日本車としてはきわめて高価であり、通常の生産ラインでの製作ではなく、ほとんど手作りで製作されていたことから非常にプレミアム性が高く「日本車で唯一のスーパーカー」と称された(初代のデビュー当初は月産250台程度、モデル末期には月産数台程度となっていた)。
初代は1990年から2005年まで製造されていた。2代目(現行)は2016年から製造されている。
名称は『New Sportscar X』の頭文字である。
初代モデルは量産車では世界初のアルミモノコックを採用しており、このクラスのクルマとしては軽量に仕上がっているのが特徴。
・・・といっても、標準モデルの車重は1,350㎏で、FD3S型RX-7(最終型MT:1,270kg)と比べると重い。FDは軽量なロータリーエンジンを積んでいるので、同列には扱えないが。ちなみにこの重量はCN9A型 ランサーエボリューションIV GSRと同等の重量である。
ただ軽いだけではなく、剛性も高いのが特徴。
試作車はテストドライバーに剛性不足を指摘され、ドイツのニュルブルクリンクで徹底的な走り込みをしてデータを取り、剛性を高くすることができた。
また、当時のスポーツカーは実用性が度外視されていたのに対し、NSXは実用性も考慮した設計になっており、この点においてもエポックメイキングな存在であった。スーパーカーにしては良好な運転席の視界と、車体設計の副産物であるゴルフバッグを収納可能な広いトランクなど、ドライバーにとってはありがたいスーパーカーとなっていた。
当時は「運転が楽なんてスーパーカーじゃない」というマゾッ気の強いマニアから非難されたものの、ドライバーの負担を軽くするという設計思想は世界中のメーカーに影響を与え、以降のスポーツカーは格段に居住性が上がっている。
マクラーレンのスーパーカー、F1はNSXの登場がなければ生まれなかったクルマとも言われており、設計の際に大いに参考にされている。
設計者のゴードン・マレーは、「F1を10点とするなら、NSXは7点。ポルシェやフェラーリは3~4点」と、NSXを高く評価している。
モデル
大きく分けて初期型のE-NA1型、中期型のGH-NA1/2型、後期型のLA-NA1/2型並びにABA-NA1/2型と分けられる。
E-NA1型(初期型)
1989年、東京モーターショーで発表された。この時は、名前が「NS-X」とハイフンが入っていた。
1990年、販売開始。当時はバブル景気真っただ中だったために予約が殺到し、
納車まで3年以上かかったとか。
1995年にはマイナーチェンジが行われ、電子制御スロットル化がされたほか、タルガトップの「タイプT」が追加された。
北米でもアキュラブランドから販売されたが、日本よりも厳しい排ガス規制をクリアするために、出力が少し下げられた。
タイプR
1992年、タイプRというモデルが登場。
一言でまとめるとスパルタンなモデルで、オーディオはもちろん、エアコンや遮音材まで省かれるという徹底的な軽量化がされ、標準車の1350kgから1230㎏と大幅なダイエットを果たした。
ニュルブルクリンク北コースでは、当時としてはかなり速い8分3秒を記録している。
3年間の限定販売だったうえに数も少ないので、程度のいいタイプRの中古車は高値で取引されている。
GH-NA#型(中期型)
1997年、マイナーチェンジされてE-NA1からGH-NA#という型式になった。
このマイナーチェンジで、MT車のエンジンは従来のC30A型エンジンは3.2リッターのC32B型へ進化、ミッションも6速となり、型式もGH-NA2となった。
また、スポーツ志向のタイプS、それをベースに軽量化を施したタイプS Zeroというグレードも登場した。
ちなみに、ATは従来通り3リッターエンジンだったため、型式はGH-NA1となっている。
1999年にマイナーチェンジ。このマイナーチェンジでは排気ガス規制をクリアするためにエンジンが低公害化された。
LA-NA#/ABA-NA#型(後期型)
2001年マイナーチェンジ。この時、初めてエクステリアを変更し、リトラクタブルライトから固定式のライトに変更され、空力面での洗練が図られた。それに伴い、型式名はLA-NA#となった。また、この型の生産後期にはABA-NA#に型式名の変更を受けている。
2002年にはスカイラインGT-Rやスープラ、RX-7といったライバルが排ガス規制の壁に阻まれて生産中止となったが、1999年にすでに規制をクリアしていたので生産中止にはならなかった。
・・・のだが、さすがに時が経つにつれてどんどん厳しくなる規制には対処できなかった。
結局はNSXも排ガス規制という壁に阻まれ、2005年に惜しまれつつ生産終了となった。
先述したが、中期型ですでに型式がNA2なので、この後期型のみがNA2という型式ではない。
というか、後期型でもATはC30Aエンジンのままなので型式がNA1なのである。
前期型と中期型の外観の差が皆無に近いのでそういう誤解を生んでいるのかもしれない。
タイプR
2002年に登場した、NSXのスパルタンモデル。実に7年ぶりの復活だ。
この2代目タイプRは、初代以上に進化している。
特にエアロダイナミクスに力を注いでおり、なんとノーマルの状態でフロントにダウンフォースを発生させてしまうほどだった。
初代タイプR同様にニュルブルクリンクのタイムアタックにも挑戦し、7分56秒というタイムを記録している。
2005年にはスーパーGTでのホモロゲーション取得用にtype R GTが5台のみ販売されたが、実際に販売されたのは1台のみの模様。
外見はエアロパーツが標準となっている他にルーフエアスクープが取り付けられているが、中身はノーマルとまったく一緒である。
こちらもベースとなったNSX同様2005年に生産終了となったが、偶然にも先代と同じく3年間のみの販売となった。
そしてこちらも中古車価格では超高額で取引されており、3000万円という値段がついた個体もある。
2台目NSX
2012年のデトロイトショーでコンセプトカーが発表された。これまで何度かNSX(またはその代わりのHSV)開発の話はあったが、リーマンショックなどで白紙撤回されていた。
新型NSXはフロントがモーター駆動のハイブリッド4WDを採用。エンジンはコスワースと共同開発した3.5LのV6DOHCツインターボエンジンを搭載しており、3基のモーターとの組み合わせで高い次元の加速を可能としている。ハイブリッドであるため燃費も比較的良好である。
アメリカのオハイオ工場で製造されており、2015年までには北米内で販売することを目指していたが、半年遅れて2016年春から販売されている。
日本では2016年8月末に発表された。2017年2月から販売される予定。なお、価格は消費税(8%)込みで2370万円。さらに、「NSXパフォーマンスディーラー」と名乗るごく一部のホンダカーズ(本田技研の自動車取扱店)でしか購入出来ない。しかも、山形県、滋賀県、高知県、宮崎県、沖縄県にはNSXパフォーマンスディーラーは設置されていない。
価格はホンダ車としては先代と比べても異常なまでに高額だが、同じハイブリッド・スーパーカーのポルシェ918やマクラーレンP1が1億弱であることを考慮すると(求める性能のレベルが違うとは言え)破格の値段とも言える。
ただしライトウェイトを身上としていた旧型に対して、四輪駆動+3モーターハイブリッドで重くなった新型を「こんなのNSXじゃない!」と罵声を浴びせる車ファンも少なくない。まぁそう言う人たちの9割9分は乗らないで批判しているだけでしょうけども。
モータースポーツでの活躍
デビュー当初はレースでの活躍は全く想定されていなかった。
・・・のだが、タイプRが出ると状況は一変。1993年にドイツのレースでレースデビューした。
そのレースで優勝したこともあるのだが、あまりにもローカルすぎて日本では話題にならなかったという・・・。
1994年から3年間、ル・マン24時間レースに参戦。
1995年にはGT2クラスでチーム国光のNSX GT2がクラス優勝を果たし、翌年にもクラス3位という成績を残している。
1996年からはJGTCに参戦。
2000年と2004年、2007年にはシリーズタイトルも獲得した。
ちなみに、2004年はGT300クラスでの話である。
2009年にHSV-010にその座を譲ったが、2014年からは新型のコンセプトモデルをベースとしたNSXがSUPER GTに復帰した。
2014年からはDTMの共通モノコックになったのだが、これはFRを想定しておらず、規則上もFRだけしか許されていなかった。しかしホンダが市販車同様MR、さらにはなんとハイブリッドまで積むことまで要求。ホンダに撤退されたら困るGTAはウェイトを他メーカーより多く積むことで特別に許可した。なおこのハイブリッドは自前では無くザイテックが開発したものである。
果たして新型NSXは他メーカーがウェイトを積む後半戦以外では全くと言って良いほど競争力を示せず、富士ではマシントラブルで5台全滅したり、岡山ではオープニングラップで3台が動かなくなるなど信頼性においても悲惨な状態が続いた。2017年は供給側の事情でハイブリッド無しのまま走らざるなど暗黒の年月が続いた。
しかし2018年には開発が間に合い、F1王者ジェンソン・バトンの加入もあってランキング上位を固めている。
2017年にはGT3仕様のNSXも登場し、IMSAのGTDクラスで2勝を挙げている。