学名の由来
属名は「羽のある暴君」を意味する。(「ユ」は中国語の「羽」である。「ティランヌス」はもっぱらティラノサウルス類であることを強調するために用いられる)
文献や研究者によってはユーティラヌス、ユウティラヌスと呼ばれることもある。
羽毛
目下記載されている3個体すべてから羽毛の痕跡が確認された。羽毛は下顎骨、中足骨と足根骨、尾椎から確認された。ほぼ全身を羽毛が覆っていた可能性が高い。羽毛は長さ15~20センチに達したが、びっしり生えそろい過ぎていて細かな構造は分かっていない。
原始的ではあるものの比較的大型のティラノサウルス類である本種から羽毛が発見されたことで、ティラノサウルスをはじめとする大型獣脚類が全身に羽毛をもっていた可能性が浮上した(従来、大型の獣脚類が全身に羽毛を生やすとオーバーヒートするのではないかと言われていた)。ただし、当時の遼寧省の年間平均気温は10℃ほどだったと推測されている(恐竜の生きていた時代としてはかなり寒い部類に入る)。ユティランヌスの羽毛は寒冷地に適応した結果である可能性も高く、もっぱら亜熱帯から温帯に生息していたティラノサウルスの全身に羽毛があったかは別の話である(ナヌークサウルスなど北極圏に生息していた種類は羽毛を持っていた可能性が高い)。
他の特徴
全長9メートル・推定体重1.4トンとアロサウルスと同じくらいの大きさである。前肢はやや短めで、発達した3本の爪をもつ。前上顎骨の歯がアルファベットのDの形をしている点など、まぎれもないティラノサウルス類である。鼻の上には表面にしわの多い一列のトサカがある(アロサウルスに近縁の「モノロフォサウルス」に似ている)。
暫定的な系統解析ではティラノサウルス上科の系統では原始的なプロケラトサウルス科に属していたものの、かなり進化した特徴を持っていたりもするようである。ティラノサウルス類にしては後肢が短めだったりもする。いかんせん詳細な記載が行われておらず、今後の研究が待たれる。
生態
熱河層群の生態系の頂点に位置していたと考えられている。同時期に棲息していたシノサウロプテリクス・ミクロラプトルなどの羽毛恐竜やプシッタコサウルス・イグアノドン類・ティタノサウルス類などの植物食恐竜を捕食していたと考えられている。
体格の異なる2体が同じ場所で発見された事から、群れで行動していた可能性が高い。