概要
毛利蘭の父であり、彼女と居候の江戸川コナンの保護者として、3人暮らしをしている。
「眠りの小五郎」の異名で広く知られる名探偵であるが、世間でのイメージは殆どコナンによる替え玉推理の賜物であり、当の本人はデクノボウもいいところの迷探偵である場合が多く、作中ではギャグキャラとしての役割が多い。
コナンの口癖として定着している『バーロー』は、元々は彼が発したものである。
人物
オールバックの髪型とチョビ髭が特徴。スタイルはなかなか良く、生活のだらしなさに反して中年太りなどもしていない。
基本的には善人だが、おだてや欲望に弱いお調子者であり、ナルシストな一面も。
強く貫いている所以外は主義思想がぶれやすく、臆病な面や勇敢な面、無責任な面や責任感の強い面などが複雑に混合している、ある意味最も人間臭いキャラクターであるともいえる。
器が小さく、上下関係を意識しがちな傾向があり、機嫌が悪くなると自分より立場の弱い相手に声を荒げるなどして八つ当たりする悪癖がある。
自分と立場が同じもしくは上の物には間違いを犯したら素直に謝れるが、子どもなどの自分より立場が下と見た者には間違いを犯しても、なかなか素直に謝ろうとしない。
その一方、危機に陥った子供達が助けられる状況であれば迷わず身を挺したり、卑劣な悪人に対して怒りを抱き普段以上の行動力をみせる等、確かな良識も持ち合わせている。
家族にも憮然とした態度で接しているが、心の奥底では強い愛情に満ちており、妻や娘が危機に陥った時には大いに取り乱す。
自分の手の届く範囲で危地に陥った際には的確な判断を下す場面もあるのだが、他人任せにせざるを得なくなった際には特に動揺が酷くなる。
酒・タバコ・ギャンブルという、ダメ親父の三大要素を兼ね備えた嗜好を持っており、依頼がない時はもっぱら事務所で酒を飲んだりタバコを吸ったりしながら競馬中継を見たり競馬新聞を読んだりしている。
その執着はかなり強く、服部平次の母・静華が正体を隠して依頼の電話をかけてきた時には、競馬中継に集中するため依頼を断ろうとしたほど。
また美しい女性にも目がなく、よく鼻の下を伸ばしている。中でもアイドル・沖野ヨーコの大ファンで、ファンクラブに加入し限定販売のフィギュアまで買うなど、完全にオタクの域に達している。尚、ヨーコ本人とは彼女の元彼が自殺した事件を機に、テレビ出演などで度々交流がある。
OVAでは蘭に内緒で会員限定のヨーコのボイス付き目覚まし時計を購入したため、怒った蘭に「タバコ禁止、お酒は一日一本」を命じられたことも。
また、極度の高所恐怖症で、ヘリコプターやロープウェイ、モノレールなどの外の景色が見える乗り物に乗ると、滝のように汗をかきその場から動けなくなる。
ただしこれはアニメオリジナルの設定で、原作の小五郎もそうなのかは一切描写されていない為定かではない(原作者・青山剛昌氏は「高所恐怖症(について)はわからない」と答えている)。
探偵としての能力
大抵のエピソードでは見事なまでのヘボ探偵であり、後述するように地のスペック自体は優秀であるものの、生来の短絡的でお調子な性格が災いし、普段は全く活かせていないのが現状。
基本的にずさんでトンチンカンなことしか言わず、コナンに眠らされるまではその場にいる容疑者や警察の面々を唖然とさせるような迷推理を乱発し、特に探偵役に乏しいシリーズ前半では人としてどうかと思うような行動・言動をする事も少なくなかった(ただし他のキャラと同様、それがある意味真相だったり、推理のヒントとなったりすることもある)。
コナンの指摘を子どもの言っていることと思いつつもおかしいことはおかしいと考える有能な刑事とは違って、考えもせず強引な意見で無理矢理納得しようとする場合が多い。
自分が眠らされて推理役の替え玉にされていることには全く気づいておらず、推理したはずなのに記憶が無いことには疑問も何度か抱いたが、結局「非常事態になると隠れた推理力が発揮され、それでエネルギーを使い果たしてしまうので記憶が消える」と勝手に思い込んでいる。
しかしながら、この欠点は性格面に由来するものであり、本人の中で見栄を張る気が完全に消え失せた時は、本当に名探偵と言っても良い抜群の力を発揮する。
主にそうなるのは親類縁者や同級生などの身内が関わる、自身にとっても他人事ではない事件であり、彼らの無実を証明するべく慎重かつ必死に証拠を集め、(途中でコナンにある程度誘導される場合もあるとはいえ)必ず自力で真相にたどり着いている。
時にはコナンの力を借りずに事件を解決するどころか、人生経験の差によって彼よりも正確に真相を掴むことさえある。その事からも本人さえ真剣なら、それなりに推理力は高いことが示唆されている。
とりわけ妻の英理に対しては些細な変化も見逃さず、彼女の仕草や行動から的確に心理状態まで見抜いている。そのため英理絡みで常人離れした小五郎の凄さを見るたびにコナンも「その鋭さがいつもあればな…」と溜息をつくことが少なくない。
特に劇場版第9作『水平線上の陰謀』では、コナンも「名推理だったぜ」と感心するほどの推理力を披露した(ちなみに、小五郎役の神谷明氏は「劇場版でも小五郎が事件を解決する話が見たい」と前々から思っていたということから、今作を一番のお気に入りだと語っている)。
他にも『小五郎の同窓会殺人事件』や『自動車爆破事故の真相』(アニメオリジナル)など、小五郎の活躍を拝むことができるエピソードはいくつか存在するので必見である。
浮気や素行等のあまり推理力が必要ない調査依頼は大抵無難にこなすので、その意味の能力では職業的に問題はない。
元刑事の経験ゆえに、遺体の死因や死亡推定時刻を自力で割り出す(大概は鑑識結果とほぼ一致している)、現場保存や犯人の逃走・工作防止のためにその場の人間全員を即座に制止するなど、的確かつ迅速な判断を下す場面も多く、現場確保の基本的な業務遂行に関しては問題なくこなせる(序盤は逆に現場を荒らすような行動が目立っていたが)。
普段は油断だらけで活かされる事は無いが、実は柔道の達人であり、空手家である蘭の武道の才能は彼から受け継いでいると言っても過言ではない。
学生時代から打ち込んできただけあってその実力は非常に高く、全国優勝した同級生が「練習では一度も小五郎に勝てなかった」と語る程である。しかし、上手くやろうと意識する程悪化する本人の性から、公式の大会では一度も勝てていなかった模様。
一本背負いを得意としており、大柄な相手でも難なく投げ飛ばす。これによって犯人を確保したことも多い。武装した凶悪犯相手にも怯まず立ち向かう勇気や、そのために必要な強さ、相手の隙を逃さずに突撃を敢行する決断力の確かさも大きな強みであり、犯人にとっては大きな脅威と言える。
コナンが犯人の武器に何かをぶつけ、怯んだ一瞬の隙を突いて小五郎が突撃すると言うコンビネーションも幾度もか見せている。
射撃の腕前も警視庁内で一、二を争うものであった事が、劇場版『14番目の標的』で判明。
実際刑事時代には、人質に取られた英理を救うため、敢えて彼女の脚を撃って犯人と一緒に走れなくなる程度の傷を負わせ、犯人が解放する様に仕向ける(犯人を撃つと逆上した犯人によって人質が殺される可能性があるが、人質が怪我をして足手まといになれば解放して逃走を図るとの考え)といった高度な技術を披露している。
しかし、本人はこの件に強い罪悪感を抱いており、以降は『14番目の標的』で似たような状況になった際に白鳥警部に銃を寄越すように要求した時を除き(なお、当時の話を概要だけを聞いて『銃の腕に自信を持っていた彼が誤って犯人では無く英理を誤射したもの』と認識していた白鳥警部は要求を拒否している)、銃の類を使おうとはしていない。
コナンはある事件を境に「犯人を死なせる様な探偵は犯罪者と変わらない」という信念を抱くようになったが、小五郎はそれに加えて「何があろうが人殺しに同情などしてはいけない」という信念を抱いており、
『わからねーな… どんな理由があろうと、殺人者の気持ちなんてわかりたくねーよ…』
と、被害者に落ち度があったりやむを得ない事情があったりしても、犯人を絶対悪と決め付けて非難するという態度を取り、たとえ身内であろうが殺人罪のフォローだけは許さない態度を貫いている。
経歴
以降は順調にキャリアを積み、捜査一課火災犯係や強行犯係の刑事にまで上り詰めた。この頃、現在も捜査協力などで関係のある目暮十三や松本清長などの警視庁の面々と出会っている。
当時の上司である目暮によれば、その短絡的な推理で多くの事件を迷宮入りにしてしまったとか。
そして10年前、署内での発砲事件の責任を取り警察を辞め、私立探偵に転向した(この設定は後述の別居の原因も含め、劇場版第2作『14番目の標的』で判明)。
探偵になってしばらくは、ペット探しや不倫調査などの小さい依頼を粛々と行う普通の探偵であった。
尤もTVシリーズ第471話で語られているように、コナンが来る前にも殺人事件を解決しているので、凶悪犯罪にも対応できる探偵として一定の信頼は得ていた模様。
また小五郎の実家はかなり裕福な様で、事務所が入っているビルは彼が親から譲ってもらったもの。テナント料が入ってくるため、探偵業が不景気だった時期も生活には困らなかったらしい。
コナンが現れ、麻酔針で眠らされて推理を披露するようになると、たちまち「眠りの小五郎」として有名に。『テレビ局殺人事件』にて推理ショーが全国放送されてからは日本中に名前と顔が知れ渡り、現在は名を名乗れば「え、あの有名な?」「あの数々の難事件を解決した…」などの台詞が返ってくるほどの有名人となっている(このため資産家や大財閥のパーティーなどに招待されることも多い)。
またバラエティ番組などのTV出演の依頼も時折来るため、以前に比べれば収入はそれなりにある……と思いきや、基本的に酒代やギャンブルにつぎ込んでしまう傾向があるため、未だに自家用車も持っていない。
一度、手違いで黒の組織に命を狙われたことがあるが、コナンと赤井秀一によって事なきを得ている。しかし、小五郎を完全なシロと判断していないジンからは多少なりとも目を付けられてしまっているため、ますます組織絡みのエピソードに関わりづらい立場となっている。
対人関係
- 毛利蘭
一人娘。妻・英理との別居開始以来、食事から家計のやり繰りに至るまで蘭に頼り切っている状態。
普段は憮然とした態度で接することが多いが、父親としての愛情は強く、事件が起きた際も蘭に危険が及ばぬよう配慮している。また、蘭と新一の仲については快く思っていない様子。
劇場版では蘭が窮地に立たされることも多いため、心配した小五郎が絶叫したり号泣したりする場面も多い。
- 江戸川コナン
現場をうろつく彼に拳骨を食らわせて追い出すなど、邪険に扱っているイメージが強いが、実際は「子供に犯罪現場なんて見せるもんじゃない」という至極まっとうな理由による行動である。
コナンが怪我をした際は起きるまで看病したり、彼に「もう少しで死ぬ」無茶を強いた(ことにされている)新一に憤慨したり、風邪を引いた際は食事を作ってあげたりと、不器用ながら優しさを見せており、何だかんだで保護者としての情はちゃんとある模様。
初期の頃には一度彼の正体を怪しんだことがある(新一だという考えに至ったことは一度もないが)。
『赤鬼村火祭殺人事件』ではコナンの顔を間近で見た際「お前の顔どこかで見たことあるぞ」と発言したり(原作のみ)、さりげない助言をするコナンに「俺の推理はコイツに操作されてるんじゃ……」と考えたこともあるが、直後のコナンが偶々見せた幼稚な仕草を見て「考え過ぎだな」と思い直している。
現在もコナンが並の子供じゃない事は薄々ながら分かりつつ、普段は「無駄に色々なことを知っている生意気な子供」という程度の認識で接している。
- 妃英理
別居中の妻。上述の10年前の英理の人質事件(ちなみに蘭はこの出来事を思い出した際、負傷が原因で英理が小五郎の元を去ったと思い込んでいた)の後、英理が感謝の思いで夕食を作った際、小五郎が「こんなモン作るくらいならさっさと寝てろ!」と言ったのが別居のきっかけ。
小五郎は怪我をしているのに無理して料理を作ってくれた英理を気遣って言ったのであり、英理もそれは理解していたが、あまりにも言い方が悪かったのである。
別居してからは、顔を合わせれば互いに色々嫌みを言い合い喧嘩ばかりしている。ただ、単に照れて素直になれないだけであって、本気で嫌い合っているわけではない模様。
その証拠に、別居から10年経つにもかかわらず一向に離婚する気はない。また、小五郎が英理のためのプレゼントを用意していることもしばしばある。
他にも、結婚記念日を忘れずに正装して待っていたり、OVA第2弾のEDで互いに照れながらもカラオケでデュエットしたり、『14番目の標的』で英理が重体に陥ったと聞くや大慌てで病院に駆けつけ「妻は無事なのか!?」と医者に取りすがったり、英理が浜辺で指輪をなくしたことを分かり、
密かに探してあげたりするなど、何やかんやで気にかけている様子。また高校時代の悪友である伴場によれば英理に言い寄る男がいたらガン飛ばしていたとのこと。