概要
1994年という格ゲー黄金期に稼働した2D格闘ゲーム。
細かく見ていくと独自の要素や光る部分はそれなりにあるものの、稼働当初は
あまり人気が伸びず、ひっそりと撤去されていったマイナー格ゲーの1本であった。
ゲームバランスもやや不安定な面が強く、プレイヤーどうしの対戦でも
キャラの組み合わせによっては大幅な有利不利があったりする。
しかし、この時代の格ゲーにありがちなCPUの超反応・鬼性能っぷりは群を抜いており、
今でもCPU戦を最後までクリアする事が超絶難しい格闘ゲームとして話題になる事がある。
具体的に言うと、かのゲーメストですら攻略記事で「気合」と完全に匙を投げており、
実際後半のボスキャラクター相手はパターン攻略やハメをやろうとしても敵が暴れると
一方的に殺されるということすらあり、完全に祈祷力勝負とすら言える。
メーカー側もこの事実を鑑み、「難易度EASYで稼働させてください」と告知を出したものの、
難易度設定がCPUアルゴリズムをきちんと制御できておらず、EASYでも後半のCPU難易度は異常である。
こうした超絶難易度とCPUの鬼っぷりから後にネット上で動画投稿や格ゲー配信等が
できるようになると、「カイザーナックルに挑戦」というチャレンジ企画等で知名度が上昇した。
なお、当時難易度調整を行った続編の企画があった。これに関しては後述する。
本作ならではのシステム
5段階の通常技
『ストリートファイターII』シリーズの影響が非常に大きいが、
本作では弱、中、強攻撃に加えて弱+中攻撃で「超攻撃」、中+強攻撃で「激攻撃」が繰り出せる
(超攻撃と激攻撃に関してはインストなどに記載が無く、半隠し要素のような扱い)。
クラッシュゲージ
サムライスピリッツの怒りゲージのようなもので、被ダメージで増加する。
MAXになった時に必殺技or最終奥義をヒットさせると稲妻のような演出が入り威力が大幅アップすると同時に、
背景オブジェクトが破壊されるという演出が入る。
ステージによっては背景オブジェクトの破壊に連動して特殊フィールドが出現し、
キャラクターごとに設定されている一部の技が強化される。
最終奥義
体力ゲージが点滅すると使えるようになる超必殺技。
この時代の格ゲーにありがちな、存在自体が隠し要素というような位置づけで
コマンドは複雑なものが多く、とっさに出しにくい場合が多い。
医者の診断
日本版のみの要素。決着ラウンドでどちらかがKOされた場合、医者が走ってきて
負けたキャラクターの負傷状況を診断し、その結果が表示されるというお遊び要素。
ルーレットのように表示されているが、ランダムというわけではなく
強~激攻撃や必殺技、最終奥義などを当てた回数が多いと診断が重傷になりやすいようである。
登場人物
調整版『断仇牙』および『カイザーナックル2』
上で述べたように、特に鬼のように強いCPUというゲームバランスの難があった本作だが、
当初は『カイザーナックルEX』というバージョンアップ版を出して調整する予定があった。
後にこの「EX」は『カイザーナックル 断仇牙』という名称になり、
実際に制作され一部の店舗でロケテストが行われた。
しかし、このロケテストでプレイヤーたちに見向きもされずインカムが全く伸びなかった事から
そのままお蔵入りとなり、正式稼働には至らなかった。
この際に使われた基盤が一部のタイトー直営店等で試験販売されており、
非公式ながら一応世に出る事となった。これらの基盤は中古基盤市場に
数こそ少ないながら出回っており、時たまゲームセンターに持ち込まれ稼働する事がある。
また、吸い出されたデータが非公式な多数タイトル入りの基盤などに収録されている場合があり、
そうした基盤を稼働させているゲームセンターではタイトルリストの中に入っていたりもする。
『断仇牙』ではCPUの全体的な弱体化に加え、ボスキャラのゴンザレスとアステカのプレイアブル化、
超攻撃と激攻撃の削除、ダッシュ・空中コンボ・ジャンプキャンセル・トレモ等が追加されている。
続編として『カイザーナックル2』の構想もあったものの、上記のように
売上が全く伸びなかった事やゲーム基盤の3D方面への舵切り等を受け、
結局は『カイザーナックル2』は制作されない事となった。
タイトーも3D格闘へと路線変更する事になり、翌年には『サイキックフォース』を
リリースし高評価を得たが、実は同作の一部のキャラクターは元々『カイザーナックル2』用に
考案されたものであり、作品を変えて世に出ていたりもする。
余談
- 主人公和也の声優は『超獣機神ダンクーガ』の主人公、藤原忍と同じ矢尾一樹なうえ、必殺技に「断仇牙」があるなど、元ネタと思われる。しかし、他にダンクーガを元ネタとした要素が本作にあるわけではない。
- BGMはYack.こと渡部恭久とばびーこと石川勝久が担当しており、良曲揃いだが1ループが非常に長く、普通にプレイしていると中々最後まで聴けなかったりする。
- マルコの声優として音羽一郎という名前がクレジットされているが、ZUNTATAの小倉久佳の別名義である。
- ボスCPUのめちゃくちゃな強さが話題になる事が多いが、それ以前のプレイアブルキャラの超反応っぷりも大概である。特にCPU梨花はボスキャラ級にアルゴリズムが凶悪なため、当時物の雑誌等ではCPUにリミッターがかかっている1戦目に選ぶように推奨されている。