「慈しみ合う心こそがヒトを家族たらしめるのです」
概要
CV;森川智之
3巻から登場。
作中世界における生ける伝説「白笛」の一人で、二つ名は「黎明卿」「新しきボンドルド」。
ふだんは深界五層「なきがらの海」にある「前線基地(イドフロント)」に居を構えて活動している。
仮面をかぶりパワードスーツを着こんだロボットのような姿をしており、素顔はおろか素肌すら見せない謎めいた人物。
彼の従える探窟隊「祈手(アンブラハンズ)」もまた全員が仮面とパワードスーツを身につけているものの、仮面のデザインは一人ひとりで大きく異なる為誰が誰なのかは容易に判別可。
また、プルシュカという名前の娘がいる。
人物像
アビスの全てを解き明かすべく、「前線基地(イドフロント)」にて研究に励む科学者。
劇中においては「大規模な虫害の未然防止」「それまで不可侵だったルートの開拓」「アビス深層での活動拠点の確保」「新薬の開発」そして「上昇負荷の克服手段を発見」などなど前代未聞の偉業をいくつも成し遂げており、人類のアビス攻略を一気に推し進めた正真正銘の偉人と言える。
彼自身その業績にあぐらをかくような性格ではなく、むしろ物腰のやわらかい子ども好きな博愛主義者。
現在までに登場した「白笛」の中では最も温厚な人物である。
……上記の内容に間違いはないのだが、その本性は常人の価値観が通じないエイリアンのような人物。
誰に対しても温厚に接しこそするものの、ボンドルドに対して激しい恐怖を抱くナナチに何の気なしに「かわいいですね」「是非また私のところに来てください」と語りかける、実験の過程で被験者が苦痛を味わって死ぬことを逃げられない状況になってから明言する、そして後述の凄惨極まりない人体実験を日常的に行っているなど、その行動はどう見ても常軌を逸している。
決して人の感情や倫理観に対して理解が無い訳ではないのだが、彼の場合は好奇心が抑えきれずにそれを分かった上で無視してしまう人物と言えよう。
そんなボンドルドを狂人たらしめる最大の点は、「未来」以外の全てに対して無頓着であること。
研究のためなら法律や倫理観はもちろん、関わる他人の事情を顧みず、時には人(自他問わず)の命さえ平気で使い潰し、それでいて研究成果以外のすべてに執着しない。
もちろん名誉欲や金銭欲、支配欲らしきものも一切ない。
事実、作中ではレグたちの手で何度も研究や資産を損なわれた挙句殺されかかっているにもかかわらず、3人に対して怒るどころか大喜びで3人の知略を讃えるあたりにその異常性が垣間見える。
彼が唯一焦ったのは、レグの「火葬砲」にナナチが巻き込まれかかった時だけである。
上で挙げた偉業にしたって、
- 「新薬の開発」→その新薬は違法な薬物実験の末に生み出されたもの
- 「それまで不可侵だったルートの開拓」&「アビス深層での活動拠点の確保」→進路上にある動植物を丸ごと焼き払って強引に開拓
- 「大規模な虫害の未然防止」→貴重な水源に毒薬を流し周辺生物ごと害虫を根絶やしにする
という荒っぽいやり方であり、オースの人々からは敬遠されているのが実情である。
その最たるものが彼の発明品「カートリッジ」。
これは装備するとアビスの上昇負荷の影響を受けなくなるという便利アイテムなのだが、その実態は人間の子供から脳と脊髄と最低限の臓器以外の全てを削ぎ落として生きたまま箱詰めし、その子供が上昇負荷を肩代わりして死ぬ事で装着者は上昇負荷を受けなくなるという人道を完全無視した代物。
厄介なことに、ボンドルドはこうした悪行を「より良い発明のため」「自身の知的好奇心を満たすため」に行っており、そこに悪意や害意は一切ない。
人間性を破壊する過酷な人体実験を課した相手にさえ、謝罪や悔恨ではなく「(実験に協力してくれて)ありがとう」「君のおかげです」とストレートに感謝を表するのがその証拠と言えよう。
もちろん実験に際して当人に説明してないし許可など取っていない。
その狂いっぷりは多くの者に認知されており、同じ白笛のオーゼンは「筋金入りのろくでなし」、白笛マニアのハボルグは「得体の知れない何かが仮面被ってヒトの真似事をしている」と評し、かつて彼の元にいたナナチからは「ゲス外道」と罵倒されている。
また、ある国からは罪状不明のまま指名手配されているなど、扱われ方は間違いなく危険人物のそれである。
一方リコはそうした彼の人柄、所業について、「許せない」としつつも「ロマンは分かるのよ」と理解、共感を示しており、ボンドルド自身もそのリコを「思ったよりもこちら側」と評している。
人の道を大きく踏み外したパーソナリティの持ち主ではあるが、同時に彼の裏表のない愛情深さもまた本物である。
実際、愛娘のプルシュカからは「パパ」と慕われていたり、実験に協力させるためとはいえ多数の孤児を引き取って世話をしていたり(ボンドルドが孤児たちひとりひとりの名前・性格・将来の夢を覚えているあたり、彼らにも愛情を注いで育てていた可能性が高い)、部下である「祈手」を多数率いているなど、前述の異常性とはあまりに乖離した面も併せ持っている。
もっとも、それはそれとして甲斐甲斐しく育てた子供達はもちろん実験台として順次使い潰していくわけだが。
劇中での活躍
存在自体は他の白笛共々1巻の時点で語られていたが、本格的にその動向が描かれたのは3巻でのナナチの回想から。
作中ではナナチを始めとした孤児達を五層の「前線基地」に連れ込み、人体実験用のサンプルとして使い潰していた。(なお、アビス五層からの帰還時にかかる上昇負荷は子供の体力では耐え切れずに死んでしまう程危険なものだが、それを指摘されると「あれらは人間としての運用はしておりませんので」と平然と返していた)
この人体実験でナナチとミーティの二人が「成れ果て」にされ、ミーティの方は実質的に殺されてしまっている。
また、リコ、レグ、ナナチの三人が「前線基地」にたどり着く前から、何らかの手段で三人を監視していたと思われる。
4巻で本格的に登場。娘のプルシュカと共に三人を出迎えて宿泊用の部屋を貸し出すが、三人が寝た隙にレグを誘拐、好奇心から部下の「祈手」を使って彼の右腕を切り落としてしまう。
再会直後から胡散臭いとは思われていたが、この件でナナチに完全に愛想を尽かされ、三人は「前線基地」を離脱。ボンドルド打倒に乗り出す。
出て行った三人を数人の「祈手」達と共に探しに行くが、そこでリコのけしかけた凶暴な原生生物カッショウガシラと遭遇。連れてきていた「祈手」を全員殺されてしまう。
ボンドルド自身は所持していた遺物で原生生物の対処をしたが、事前に対策を考えていたリコ、レグ、ナナチの連係プレーに反撃する間も与えられないまま追い込まれていく。
あまりの勢いにさしものボンドルドも狼狽えた……かと思いきや、当のボンドルドは三人の連係攻撃に感激のあまり震えており、「素晴らしい」とひたすらに褒めちぎっていた。
その後レグによって無理やり六層と五層間を移動させられ、六層の上昇負荷「死あるいは人間性の喪失」が決定打となり、ついにボンドルドは息絶える。
下半身をつぶされ、呼吸も途切れ、まともに喋ることすら困難な状態になってなお「素晴らしい」「素晴らしい」と三人を称賛し続けたボンドルドだったが……。
余談
彼の白笛は祈る手の様な形をしているがよく見ると両手が同じ形をしており、まるで恋人繋ぎの様な形をしている。また使用する際は口につけて吹くのではなく、白笛を両手で祈る様に包み込み、振動させる事で鳴らすようだ。
底のない非道ぶりを見せるボンドルドだが、彼がナナチら孤児たちを連れてきたためにナナチは憧れていたアビスでの冒険、そしてかけがえのない仲間を手にしており、ナナチにとっては憎い仇敵であると同時に夢を叶えさせてくれた恩人でもある。また(ボンドルド視点から見て)ボンドルドには大切に扱われてもいたため、ナナチからは複雑な思いを抱かれている。
作中でトップクラスに度し難い行動をとっている彼だが、「倫理や規則より好奇心を優先する」と表現すれば、リコにも似たような側面があるといえる。実際リコはボンドルドの所業を非難しながらも、冒険心には強い理解を示していた。
ちなみに行動食4号を作ったのも彼のようだ。
劇場版アニメのレイティングがR15+に上がった理由が大体ボンドルドのせいとネタにされている。これは作者も言及している。 ・・・もう一度このキャラクターがでる作品の作者を見てみよう。
また、同時期の常軌を逸した精神の持ち主である敵役として鬼舞辻無惨と比べられることも多かったり、常識を踏み外したかのようなぐう畜発想的な発言に「頭ボンドルドか」などという煽りが生み出されるなど名実ともに2010年代末〜2020年代初頭における「破綻した精神の敵キャラ」代表の一角となりつつある。
関連イラスト
関連タグ
メイドインアビス 白笛 祈手 プルシュカ ナナチ ミーティ マッドサイエンティスト サイコパス 吐き気を催す邪悪 自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪
アミバ(北斗の拳) - 人体実験を行う悪役としては共通している。
この先ネタバレ注意!
しばらくして、息絶えたボンドルドの元にプルシュカと一人の「祈手」が現れる。
父の骸を前に泣き崩れるプルシュカ。
一方、その「祈手」はボンドルドの遺体から仮面を取り外し、自身の被っていた仮面を脱ぎ捨ててボンドルドの仮面を被る。すると……。
「どこにも行ったりなんかしません。あなたの愛があれば、私は不滅です」
その「祈手」がボンドルドを名乗り、プルシュカを抱きしめたのである。
そして、激昂するレグに向けて言った。
「探窟隊『祈手』は全て私ですよ」
実のところ、劇中に登場したボンドルドは厳密に言えば本物ではなかった。
作中で「ボンドルド」を名乗って活動していたのは、特級遺物「精神隷属機(ゾアホリック)」の力によって彼の意識を別の人間に上書きしたボンドルドの複製品。彼が部下として従える「祈手(アンブラハンズ)」は全員がこの複製品であり、たとえ「ボンドルド」として活動している個体が何らかの形で死亡しても、彼の意識を共有する「祈手」の誰かがボンドルドの仮面とその意識を移せば、その「祈手」が新たなボンドルドとなり復活できる、という仕組みなのである。
つまり、ボンドルドとは祈手たちによって演じられる共有人格、あるいは群体生命体とも呼ぶべき存在なのである。
彼と部下である「祈手」達がそれぞれ異なったデザインの仮面を付けていたのは、誰が「現在のボンドルド」なのかを識別するシンボルとするため。
この「祈手」達にもそれぞれ個々の人格・個性があり、愛嬌ある性格をした者から無口な者、果てはガチガチに遺物で武装した者まで存在する。
また、「祈手」はどこかから調達してきた人間に「精神隷属機」でボンドルドの人格を上書きして生み出されるようだが、上書きに失敗して廃人同然となった者もいる。作中では「『祈手』になれなかったヒトたち」と呼ばれ、単純労働に従事していた。
ちなみにオリジナルの彼はどうなったかというと、彼自らの手で白笛へと加工され、死亡している。
祈手ボンドルドが首から下げていた白笛、あれこそが意識のコピー元となったオリジナルのボンドルドである。
決着
身体を入れ替えて復活したあと、ボンドルドはレグ達を先ほどとは打って変わって圧倒。彼らを難なく退けた後、プルシュカをつれて「前線基地」へと引き返した。
その後、リコ、レグ、ナナチの潜入工作によって基地を半壊、および停電状態にされ、不死性のカギとなる特級遺物「精神隷属機(ゾアホリック)」を発見されたところで再びレグと対峙。
「カートリッジ」と武装をフル搭載した万全の状態で挑み、途中ナナチと同じように「祝福」の力を獲得しながらリコ達三人を迎え撃つが、リコが隙を突いてレグの切り落とされた右腕から放った「火葬砲」によって下半身を丸ごと消滅させられて敗北。
ボンドルド自身はまたも身体を替えて復活するが、レグが目覚める2時間の間に色々と交渉を行ったようで、リコ達を捕らえるような事はしなかった。また「精神隷属機」の破壊もされなかったようだ。
そのあとはリコ達に手出しすることもなく、プルシュカが変化した白笛を持ち第6階層へと赴く三人にエールを送りつつ見送った。
さらに余談
ナナチは戦闘捕縛に使える祈手はもういないと言っていたが実際の所いたらしい
では何故襲って来なかったのかと言うとナナチ達と戦えた事に満足したからだそうだ。凄まじいポジティブ思考である。
「闇すらも及ばぬ深淵にその身を捧げ挑む者たちに
アビスは全てを与えるといいます
生きて死ぬ
呪いと祝福のその全てを
旅路の果てに何を選び取り終わるのか
それを決められるのは 挑むものだけです」