痴漢は犯罪です。
曖昧さ回避
現在では1の意味は死語になりつつあり、仮に2に類する犯罪を女性が行ったとしても「痴女」ではなく「痴漢」と呼ばれる。
痴漢について
公共の場所における猥褻行為。刑法や自治体の迷惑防止条例で罰せられる犯罪行為である。
特に電車やバスの車内で男性が女性の身体を触る行為を指して言われる。ラッシュ時など特に混雑した車内が狙われやすく、駅間の運転時間が比較的長い区間はその巣窟と化していた(こことか)。「女性専用車両」が導入された理由の一つともなった。
日本は強姦などの性犯罪が比較的少ない国と言われるが痴漢に関しては非常に多く(後述)、日本に特有の犯罪とする見解もあるが、実際には海外でも存在する犯罪である。
欧米では犯罪と認識されていなかった時期が長く、近年まであまり報告されていなかったが実際には「公共空間での性的嫌がらせ」と呼ばれる形で19世紀ころから存在していたことが明らかになっている(Franceの痴漢事情)。平安時代の絵巻物『伴大納言絵詞』には火事場の群衆の中、女性の背後で不審な動きをする男の姿が描かれている(ウィキペディア日本語版「痴漢」の「犯行の手口」の節)。19世紀や平安時代、というのはあくまで史料上参照できるという事であって、性的な犯罪(強姦や覗き)そのものが神話にも登場する程に古代から存在することを考えれば、古代や中世であろうと、群衆が集まり、揉みくちゃになるような状況や、第三者の目が届かない状況において、相当数の痴漢犯罪が発生していた事は想像に難くない。
犯行時に勃起していない者が多く、犯行後に駅などで自慰する者が少ない、またゲーム感覚の者も多いことから動機において性欲以外の要素も強い犯罪と考えることもできる(性に関する犯罪である以上、性犯罪には変わりない)
2000年代ころからアメリカ、イギリス、フランスなどでも多くの女性が痴漢被害を受けている(いた)ことが明らかにされつつある。ニューヨークの地下鉄では痴漢が常態化しており、しかも増加傾向にあるという。ロンドンでも若い女性の4割以上が、公共の場で「痴漢行為」にあった経験を持つとの統計結果が発表されている。エジプトでは映画『678』のような告発作品もある(アジアを知るーエジプト映画『678』から)。インドでも少年3人による姉妹への痴漢行為、そして抵抗する二人へのさらなる暴行のニュース等が報道されている。南米ペルーでも著名な女優マガリー・ソリエルが痴漢被害を告発した際に、各所から同様な体験談が寄せられている(ペルー:有名女優がバスで痴漢に。その波紋とは?)。
規範や道徳に逸脱する者は、あるいは自己欺瞞によりそうとすら認識しない者は、あらゆる社会におり、やりやすい条件が揃えばどんな場所でも犯罪は発生してしまう。自己欺瞞の例として仕事のご褒美として痴漢すると手帳に正の字を書いて数えていた犯人、妻帯者の痴漢常習者が妻子が性被害に遭ったら相手の男を殺しに行く、と発言した例がある(「男が痴漢になる理由」なぜ女性も知っておくべきなのか。満員電車でくり返される性暴力)。ここで詳細は記述しないが、痴漢は被害者に欝やトラウマの症状ももたらす犯罪である。痴漢だけでなく訴え出た後の対応によっても苦しめられる(6年間痴漢に遭い続けた女性が、今語る理由)。
痴漢には法的な定義はないが、痴漢の現行犯は迷惑防止条例違反または刑法の強制わいせつ罪で逮捕される。なお性行為にまで及んだ場合には、強姦罪(準強姦罪)が成立する。
上記のように男性が若い女性、少女の身体を触る行為を指して言われることが多いが、少年や中高年の女性が痴漢の被害を受けることもある。被害者が男性であったり、加害者が女性であっても痴漢である。
加害者に課せられる社会的制裁も重く、職場を懲戒解雇されてしまうことが一般的。何度も逮捕されているような悪質なケースでは実刑判決を食らう場合もある。それにもかかわらず痴漢をやめられない常習者も多く、(留置所や刑務所に入っていた期間を除くと)ほとんど毎日、不特定多数の女性を触っていたという加害者もいる。つまり、ごく少数の男性が非常に多数の女性に対して加害を繰り返していることになる。近年は痴漢加害者のこのような特徴を性依存症と捉えて、治療的アプローチが試みられている(10年間で500人を治療してわかった「痴漢」を取り巻く問題)。
警察側の対応
千葉県警察公式サイトでは女性にむけて痴漢になるべく遭わないようにするマニュアルが掲載されている。被害に遭った場合の相談窓口も紹介されている(女性の安全対策)。
被害者たちによる体験談が公開されている。これにより捜査や対応のケースを知ることができる(例:痴漢を捕まえた被害女性の投稿に反響 「これは苦痛」「心身の負担が大きい」の声、微物検査(繊維鑑定)は証拠にはならないらしい、痴漢被害とその顛末)。
把握されている発生件数
平成23年に発表された警視庁の報告書(電車内の痴漢防止に係る研究会の報告書について)によると、平成17年度から平成21年度までで毎年約3800件~約4700件の痴漢事件が全国で発生している。
これはあくまで届出があったものの数であり、報告書でも言われているように被害者が申告できなかったために表に出なかった事件もあると予想される。
犯罪の性質上、大半が公共交通機関で発生している。その数が多い都会のほうが痴漢の被害を受けた経験がある女性が多いと考えられる。村落でも少な公共交通機関の中や第三者の目がない場所での犯行は可能である事に変わりは無い。千葉県警察のサイトでは自宅マンションのエレベーターでも気をつけるように注意喚起がされている(女性の安全対策)。実際、田舎にあたる地域にも「痴漢注意」の看板は立っている。もしこの記事を見た人で被害に遭った事の無い人がいても、その人の家族・親戚や友人・知人に痴漢被害経験者がいることは十分に考えられる。
冤罪による問題
1990年末より痴漢の取締りが厳しく強化される事になったが、逆にその分、痴漢の冤罪事件も大幅に増加してしまうという現象も認められている(痴漢冤罪も参照)。中には、痴漢被害者の立場を利用する形で、多額の賠償金支払いを強要する"被害申告常習者”のケースも判明しているという。
「痴漢事件では、いったん起訴されれば疑いを晴らすのはほぼ不可能」という認識は広く知られており、たとえ疑いが晴れても、いったん失われた社会的信頼を取り戻すのは困難である。こうして、痴漢の疑いを掛けられてしまった人間が無理な逃亡を図る事件が多発しており、線路上へ飛び込んで、そのまま電車に跳ねられて死亡してしまう事さえある。なお、痴漢容疑者が線路上に逃亡を図った場合は鉄道営業法違反及び威力業務妨害容疑としてさらに重い罪に問われる(痴漢疑われたら「逃げろ」は正解? 「線路逃走男」で議論再燃)。
このため、警察も痴漢事件に関しては慎重になり、被害者に現場の様子を再演させるなど、トラウマをほじくりだすような捜査をせざるを得なくなり、二次被害(セカンドレイプ、セカンドハラスメント)を拡大させてしまっている(警視庁作成「痴漢捜査マニュアル」その全容)。
微物検査、微物鑑定
痴漢の捜査において「微物検査、微物鑑定」が存在する。被疑者の手に被害者の服や下着の繊維がついているかを調べる、というもの。TBSのサイトでの、刑事とのやりとり記録によると「被害状況の再現」と関わっており、「被害者の証言がブレたり、触った腕などを視認していなければ」実施されると記されている(【緊急取材】痴漢疑われた男性死亡~刑事に聞く、痴漢捜査の裏側)。なお、このインタビューでの警察官は「やっていないのに疑われた場合、やっていないことが立証されたら損害賠償を求めて提訴する」とインタビュアーに告げている。これは詐欺目的の悪意などでは全く無い、純粋な誤認でもそうする、という事になり、結果として告発を抑止してしまう論理である。
2020年3月現在、微物検査、微物鑑定については警察関係機関の公式サイト等で詳細に解説されていないようである。
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チカン(表記ゆれ)