発見と命名
最初の化石はカナダ・アルバータ州エドモントン累層にて発見され、1917年に古生物学者ローレンス・ランベによってエドモントサウルス・レガリスと命名された。
現在までに模式種E.レガリスのほかにもう一種E.アネクテンスが命名されており、アラスカからも未記載の種が確認されている。
かつてトラコドン、アナトサウルス、アナトティタンとされてきた化石は、現在ではすべてE.アネクテンスのものと判明し、無効名となっている。
保存状態のよい化石が多数発見されており、貴重なミイラ化した化石も他の恐竜に比べて多数発見されている。特に2000年にアメリカ・ノースダコタ州で発見された「ダコタ」と呼ばれる標本は、それまで発見されてきたミイラ化石の中でも最も保存状態がよく、彼らの研究に大きく貢献した。
特徴
一般的な大きさは全長9メートル・体重3トンほどとカモノハシ竜としては平均的だが、E.アネクテンスは最大で12メートルに達したともされている。
「ダコタ」など保存状態のよいミイラ化石の発見により、他の恐竜に比べ多くの解剖学的特徴が判明している。軟組織の痕跡をCTスキャンで調べた結果、従来の推測よりも25%も筋肉が発達しており、背中にはイグアナなどと同様に角質の背びれがあった。また、体表の鱗のパターンから、生前は保護色に役立つ縞模様があったと推測されている。他にも足先に肉趾、ケラチン質の蹄も確認された。
それまでは多くの近縁種と同様にトサカは発達していなかったと考えられていたが、2013年にE.レガリスのミイラ化した化石から、現在の鶏のような肉質のトサカが確認され、トサカを持っていたことが判明した。だが、これがエドモントサウルス属全種にあったのか、雌雄両方に存在したかまでは今のところ判明していない。
他のカモノハシ竜と同様にその歯は「デンタルバッテリー構造」となっており、予備の歯を含めて最大60列(合計2000本)もの歯があった。
生態
棲息した時期は、E.レガリスはアルバートサウルスやパキリノサウルスなどと同じ時期、E.アネクテンスはティラノサウルスやトリケラトプスなどと同じ時期であった。
化石の体腔からは針葉樹の葉、種子、小枝が化石化して発見されており、それらを餌としていたようだ。証拠は見つかっていないが、当時出現していた初期の被子植物を食べていた可能性もある。
かつてアラスカの個体は渡りをしていたと考えられていたが、歯のストロンチウム同位体の研究や足跡化石の研究などから、現在では渡りをせずアラスカで越冬していたと考えられている。このことから、寒いアラスカの冬をやり過ごすため高代謝だった可能性が示唆されている。
健康な成体にはほとんど敵はいなかっと思われるが、たいした武器も持っていなかったので当時の多くの獣脚類の主食となっていた。アラスカで見つかった幼体の化石の多くにはトロオドンの歯型が残っており、E.アネクテンスの化石にはティラノサウルスの歯型や骨の一部が食い千切られた痕跡が確認された。これらの天敵に対抗するためか、発達した筋肉のおかげで走る速度は速く、時速40~50キロで走れたと推測されている。