レカン(狼は眠らない)
れかん
「迷宮に潜りたい」
「強い獣ほど臆病なんだ。臆病でない獣は長生きできない」
「…少しは剛剣になったかな」
概要
本作の主人公。年齢は27→30歳。冒険者。
パラクド迷宮攻略中に<黒穴>を発見し、相棒のボウドと飛び込み異世界へと渡る。
ボウドと別れてしまうが、道中で魔獣に襲われたザイドモール家のルビアナフェルを救出。屋敷に一年滞在し言語を学んだ後、迷宮を求めて旅立つ。
ヴォーカの町で薬師シーラを師事し、魔法薬と魔法を学び新たな力を得る。そしてエダを冒険者稼業兼魔法の弟子として受け入れ、共に絆を育んでいく。
出会った仲間達と冒険者パーティー<虹の石>を結成。迷宮に挑み、踏破しながら国中に名を轟かせる。
迷宮を<慈母>とする迷宮信仰者。神の存在は信じるが神殿は嫌い。
鋭く尖った刃物のような人物で、シーラの教えにより剛剣になるべく自問自答しながら自身を磨いていく。
元の世界での通り名は<片目狼>。
異世界では<黒衣の魔王><壁男><蝙蝠魔人><骸骨魔王>等など迷宮を攻略する度に増えている。
元の世界の身分は王子。
人物と能力
人物
冷静沈着な性格で疑り深いが根は高潔。
パーソナルスペースが狭く関心のない人間には冷めた態度をとるが、心を開いた相手は大事にする。
師であるシーラには敬慕を、エダは弟子以上に大切に想っている。焚火には拘りがあり、話すと雄弁になる。冒険者生活が体に染みついているので家での生活力は皆無である。
朴念仁でデリカシーがない。不愛想強面であるが子供には人気者で孤児院から常に依頼がある(本人は子供が苦手)。シーラ曰く「天職」。
寡黙に見えるものの意外と酒場で盛り上がって大笑いしたり、酔った勢いで大失態を犯した事もある。
序盤では感情任せに攻撃的な言動が見られたが、シーラの教えで徐々に成長し、包容力と風格を身に着けるようになる。
戦闘力、調薬技術、魔法や知識面など多彩な才能に恵まれているものの、元来人付き合いを苦手としている為か謀略などに疎い。
容姿
出自は孤児。身分は王族。ナルーム国の国王に気に入られて養子に入り、基本的な作法は備わっている。(おそらくは王族名はあると思われる)
能力
メインウェポンは剣。サブウェポンは短剣や杖など様々。
元の世界から得た創造系<突風>、空間系<収納>特殊系<付与><吸収>と探知系<魔力感知><生命感知><立体知覚>魔法を持ち、千歩以内であれば把握が可能。
更にシーラから多くの魔法を伝授され、金ポーションにでは<刺突><自己治癒>のスキルを得た。
魔力量は導師級。無詠唱。創造系、光熱系、知覚系、空間系魔法を多用し、他にも上級<鑑定>もこなす。精神系以外は適正を持つ。
魔法も武器でも近接、遠隔、回復魔法をこなす万能型。精神系の耐性はないが恩寵品で弱点を補っている。
シーラ直伝の調薬技術を継承し、その腕は兄弟子スカラベルを超える。剣術や体術は自己流で、先輩冒険者の技術を見様見真似で会得したもの。
<虹の石>のリーダーを勤め、スキルの応用と経験で抜群の指揮能力を持つ。
容姿
黒髪黒眼。体格は体躯雄大。狼を思わせる野性的な風貌を持つ非常に精悍な男。
ある魔物との戦で怪我を負ってからは隻眼で傷が残っている。コミック版では長髪を三つ編みで結い、耳や歯が尖っている。ちなみに毛深い。
服装は漆黒の外套で身を包み、同色の防具や衣服を身にまとっている。その恰好から「黒い剣士」「蝙蝠」「魔王」と呼ばれている。
序盤では常に狷介な凶相で渾身の微笑みは子供に泣かれたり一般人に怯えられたりしていたが、二年後は優しさに満ちた相貌に変化している(ただしエダ限定)。
装備
武器 | ラスクの剣・アゴストの剣(竜滅剣)・ハルトの短剣・杖・彗星斬り・聖銀剣・etc |
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防具 | 貴王熊の外套・千々岩蜘蛛のベスト・ウォルカンの盾・小火竜の鎧・女王蜘蛛の鎧 |
装飾品 | ザナの守護石・インテュアドロの首飾り・不死王の指輪・闇鬼の呪符・白魔の足環 |
恋愛
典型的な朴念仁で作中ではかなりモテているのに全く自覚がない。
その鈍さはアリオスが「暴力」と断言する程で元の世界では一時期共にしていた女性がいたが、レカンの迷宮中毒に嫌気がさしたのか失踪している。作中の描写では今まで恋した経験がないらしい。
しかしエダと過ごす内に不可思議な感情が生まれていき、彼女にのみ優しい微笑みを向けるようになる。そして、ただでさえ危ない人物が滅茶苦茶な危険人物と化した。つまりは…。
詳しくは下記参照。
エダ
初対面は決して好印象ではなく「使えん女」「足手まとい」など酷評で、むしろ疎んじて避けていた。しかしシーラの勧めで接していくに心境が変化。
一途に信頼し甘えてくるエダにレカンは不快ではなくなっていた。冒険者としての素質を持つ彼女を仲間として認め、冒険者稼業と魔法の師匠として導く事に決めた。
こうしてレカンはエダを弟子として接し、ときに集中できない程に身を案じ、活躍すれば上機嫌になるなど、大切に思うようになる。そして、自分では気づかぬ内に優しい微笑みを向けるようになった。
…しかし、生まれて初めて守る者ができたレカンはエダを大事に思うばかりに保護欲が暴走するようになる。
エダを攫われたときは激怒してガチ装備で夜襲を決行。エダさえ無事に戻ればいいと獰猛に笑い、犯人未特定にも関わらず貴族のゴンクール邸を躊躇なく襲撃。皆殺しを前提に暴れて主犯を殺害した。
レカンにとって自分からエダを奪う敵=殺害対象であり、「人(俺)のもの(エダ)」なのである。
しかも邸でなかったら他を当たり襲撃を繰り返し、それでもいなかったら家で彼女の帰りを普通に待とうとしていた。この後先考えない暴虐っぷりはエダさえ愕然とした程。
神殿でもエダを狙う神官達(シーラの厳重注意がなければ確実に仕留めていた)をどう料理(拷問)してやろうかと考えたりと、彼女への想いの深さが伺える。というか、エダが関わると殺意が湧く思考回路がおかしい。
シーラの勧めで近場で借家を借りたときはレカンの生活力の無さからエダに完全に尻に敷かれた形となり、レカンは家に帰ってエダの手料理で酒を飲みたいと思うなど、夫婦同然の生活を送っていた。
ちなみに近所の人達は二人を夫婦と勘違いし、レカンは「甲斐性なしのろくでなし」と囁かれていた。
一時期別れの際、レカンはエダの告白は受け止められずに別れたが再会したエダが少女から女性に成長していく姿を見て驚愕する。
迷宮でも私生活でも公私ともに頼れる女性として再認識し、ついに「いつかエダと二人で潜るのもいいな」と思うまでになる。
そしてレカンはエダを子供として見るのをやめ、改めて意識していくようになった。
エダの頼みでノーマとの婚約を受け入れ、次にエダの身を守るべく自ら婚約を申し出た。
その後、エダの花嫁修業を応援したり二人きりの時間を楽しむなど仲は順調に進んでいる。
弟子・婚約時期も含め、束縛はしないがレカンはエダの安全の為ならば周囲への牽制や配慮を徹底させており、過保護である。
迷宮でもレカンはエダの無事な姿を確認して安堵したり、エダが喜ぶなら高額な恩寵品をいくらでも渡しても惜しくはない思うなど他の女性達より露骨な貢ぎっぷりを見せている。
ちなみにエダはレカンに愛の告白をした唯一の女性である。
レカンとの年齢差は14歳。
余談であるが、婚約時の年齢は30歳と16歳だったりする。
ノーマ
お互いに悪感情を抱くことなく、深い信頼関係を築き上げる。
常に戦いを求めるレカンにとって人を救う人生を送るノーマは正反対の存在であり、人柄も含めて好感を抱いている。
レカンが信頼する数少ない人間の一人であり、大切な存在であることに違いはない。
しかしレカンはノーマの好意に無自覚で、むしろ知識面で頼りになる親友のように思っている。
ノーマとの婚約を受け入れたのは形式上の結婚と考えており、あくまで望まぬ結婚を避けたい彼女を助ける為に行った手段に過ぎず、それが策略だと気づいていない。
故に「婚約(エダとするから)は解消でいいんだな」「どうでもいい」と発言し、エダの頼みもあって婚約決闘に含まれた真意も始終関心がなかった。
これはノーマがレカンに恋情を伝えず方便で婚約をこじつけたもので、結果的に彼を繋ぎとめるべくエダも婚約者にするよう進言している。
ただし、ノーマはエダを大事にするレカンが好きなのであって、あくまで二人の帰る場所となりたいと願っているのでレカンを束縛する気は最初からない。しかし、やはりエダとの差は確かに感じ取っているので内面は複雑。レカンとの年齢の差は2歳。
セレス・ラインザッツ
序盤ではレカンはセレスを都合のいい案内役としてしか見做さなかった。
セレスもまた己の目的を達する為に<虹の石>に依頼したので、お互いに利害一致の関係であった。
しかし圧倒的な戦闘能力を持つレカンの強さに感動したセレスは迷宮での戦いを学び、そして攫われたときに救ってくれた彼の包容さに惹かれていく。
初めて自分より強い男性に出会ったセレスは瞬く間に恋に落ち、別れた後は〈ヴィシュルシャプタの風〉の歌詞にレカンへの想いを重ねて切なく歌い上げた。
次に再会したとき、レカンはノーマの婚約者として現れる。婚約決闘でレカンが負傷したときは泣き叫び、勝利には涙していたので未だ恋心を捨てきれていない事が伺える。
ノーマには祝福の言葉を贈ったものの、彼女と似た魂と断言されているので本音は不明。しかも続けてエダの婚約も決まり、花嫁修業を手伝うセレスの心中やいかに…。
レカンにとってセレスはかつて迷宮を共にした仲間の一人であり、やはりセレスの好意に気づいていない。レカンとの年齢差は8歳。
イライザ・ノーツ
迷宮統括事務員としてレカンにパルシモ魔法騎士の疑いをかけ、対峙する。
レカンが<彗星斬り>を獲得した事を密告で知り、問い詰めるが鑑定の規約違反だと気づいたレカンが鑑定士に告げたことでイライザは大目玉を食らう事になる。
イライザ本人は全く状況を理解できず、レカンは幾度も説明を繰り返して別れることとなる。
やがてイライザはゾルタンを介してレカンが気になるようになり、熱心に宿屋に通い会話を望むようになる。当のレカンは思い違いをしており、アリユスや他の人々のみイライザの想いを察するように。そしてレカンがツボルト迷宮の下層主を単身で破ったと知ると感涙し、<彗星斬り>をノーツ家に売買した事で「自分の為に」と思い込みが暴走し、レカンは適当に返答してしまう。
後にイライザはレカンとノーマの婚約には衝撃を受けたが、未だ自分自身の気持ちがわかっていない模様。つまりはお互いに気づいていない。年齢差は不明。
スシャーナ・ウルバン
呪いで伏せていたところを、チェイニーが手に入れた神薬で事なきを得る。
実はその神薬はレカンとエダの護衛でヴォーカから輸送されたもので、チェイニーの話を聞いたスシャーナはレカンを白馬の王子と感じ、夢想する。
念願叶って対面を果たすとレカンに一目惚れ、父に彼との通い婚を希望する。
しかしノーマの指摘を受けたレカンは領主一家の思惑を知り、全くその気がないのでエダ達を連れて回避した。年齢差は不明。