「テメェを殺す男の名前だァ」
概要
炭治郎と同じくして藤襲山における最終選抜をくぐり抜け、鬼殺隊へと入隊した五人の同期隊士の一人。
実兄に最高位剣士“風柱”である不死川実弥を持つが、自身は“岩柱”悲鳴嶼行冥に付き従っている。
人物
※彼の人物像は「上弦の肆」(半天狗)討伐前後で大きく変化する。
「上弦の肆」(半天狗)討伐前
初登場は鬼殺隊の最終選抜試験の時。
炭治郎の他にも試験を生き残った四人のうちの一人であり、終了後に案内役の童子に乱暴を働いていた(この時炭治郎が止めに入り、玄弥の左腕を折った)。
※ちなみに「乱暴」の内容が原作とアニメで異なっており、原作が童子を「殴っていた」のに対してアニメでは「髪の毛を引っ張る」に変更されている。
彼はとある目的から隊士としての昇進を急いでおり、しかしながら鬼殺隊士としての才能を全く持たない事から、当時はあらゆる行動に“焦り”が滲んでいた。
このため本来の性格は影に隠れ、暴力的で粗野な面だけが表層に昇っており、上記の乱暴な行動や『能力』の項目で解説する「鬼を喰う」という行動に繋がっている(元々鬼を喰い始めた理由も、剣士としての才能がないため精神的に追い詰められて鬼を食べてしまったから。その時に自身の特異体質に気付いた)。
炭治郎が上弦の陸との死闘により、一時的に専用の日輪刀を失った事で刀鍛冶の里を訪れた際に、図らずも本格的な再会を果たす。
(当然ながら)玄弥は上述の左腕の因縁を覚えていたため、炭治郎の顔を見て開口一番「死ね!」と怒鳴り、手早く裸になって温泉に入ってきた炭治郎に敵意をあらわにしたままその場を去ったが、炭治郎には全く応えず、自分の部屋に来て命をかけて三日三晩刀を研ぐ鋼鐵塚を心配し訪ねるべきかと相談してくる。
「友達みたいな顔して喋ってんじゃねーよ!!」と怒鳴るも「えっ 俺たち友達じゃないの?」と心底意外そうな顔で驚く炭治郎にはっきり違うと否定し左腕を折られた事を言及するも「あれは女の子を殴った玄弥が全面的に悪いし仕方ないよ」とあっさり返され、今度は温泉で前歯が抜けていなかったかと聞かれ見間違いだと言うも抜けた歯を落とし物だから返そうと思って取っていた炭治郎に歯を差し出され、気色悪がって足蹴にして追い出した。
しかしその夜半、里を強襲してきた上弦の十二鬼月・半天狗によって追い詰められた炭治郎、禰豆子と共闘。
炭治郎が駆け付けた時には鬼化してほぼ理性が無くなっており、獣のようによだれを垂らしながら「手柄」を求めて自身が頚を斬ることに固執する。
しかし、手柄よりも悪鬼討伐を優先する炭治郎の(自覚のない)前向きさ、そして窮地に陥った自分に対する炭治郎の発破により、一丸となって半天狗を追い詰め討伐に貢献した。
「上弦の肆」(半天狗)討伐後
討伐後はその焦りから解放されたためか、それまでの粗暴さはなりを潜め年頃の不器用な少年らしい性格に戻っている。
※焦りが無くなった理由として、半天狗を討伐したことで「柱」に昇格するために必要な条件のうちの一つを達成したため、いくらか気持ちに余裕が生まれたからと思われる。
(柱になるためには、実力の他にも『「十二鬼月」を1体と他の鬼達を50体討伐する』という条件を達成する必要があるため。)
炭治郎に対しても親しげに話しかけ時には笑顔を見せるなど友情を感じており、風柱との「柱稽古」の際に稽古主である兄・実弥と諍いになった時の言葉には深く感謝をした。
(ちなみに、師匠である悲鳴嶼から柱稽古の前に兄と接触しないことを忠告されていたにも関わらず玄弥が破ったため、この一件の後は師匠に叱られてしばらく謹慎をくらっていた)
他にも、岩柱の「柱稽古」では炭治郎に悲鳴嶼が反復動作を用いて身体能力を底上げしていることを教えて、炭治郎がぶち当たっている壁を乗り越えるきっかけを作ったりもしている。
ただ、炭治郎以外の同期である善逸や伊之助との相性はあまり良いとは言えない様で、実弥との諍いでは善逸が実弥を悪く言った際に「兄貴を侮辱するな」と善逸をぶん殴り(善逸からすればとばっちり)、呼吸が使えないことを躊躇なく馬鹿にする伊之助とは真正面から殴り合う、完全な水と油である。
その後は、無限城決戦時の炭治郎や他の人達の回想シーンから同期や蝶屋敷の面々などと上手く打ち解けていたことが判明している。
兄との確執の行方(ここから先、単行本未収録のネタバレ注意)
上弦の壱との戦いにおいて、鬼化した状態で物陰からの暗殺を狙うも十二鬼月最強の鬼には通じず、左腕を切り落とされた上で胴体を真っ二つにされる。
その際に兄である実弥が助けに入り、今までの自身に対する拒絶の裏に隠された本心を聞くことになる(本心の内容は不死川実弥の項目を参照)。
自身と一緒に戦っていた無一郎、後から合流した実弥と悲鳴嶼の協力もあり4人で力を合わせて黒死牟には辛くも勝てたものの、追い詰められた黒死牟に頭から真っ二つにされ、その際の出血により鬼化の再生能力も殆ど消えてしまったことと、黒死牟の身体で出来た刀を食べたことで血鬼術を取得するレベルの今まで以上の変化と負荷に耐え切れず、鬼の消滅時と同じように自身の身体が崩れかける。
弟の惨状を見て泣き叫びながらも「兄ちゃんがなんとかしてやる」と言う実弥に、兄である実弥に迷惑ばかりかけて申し訳なく思っていたこと、実弥が自分を守ろうとしてくれていたように自分も実弥を守りたかったこと、辛い思いを沢山した実弥には幸せになって欲しい、自分の兄はこの世で一番優しい人だからと、これまでの思いの丈を伝えた。
実弥もそれに答える形で「迷惑なんかひとつもかけてない」「頼む神様 弟を連れていかないでくれ」と心情を吐露し、自分も唯一の家族であり弟である彼を大切に想っていることをようやく伝えられたが、その時には玄弥の身体はもう殆ど崩れ去っており…
「あり・・・が・・・とう・・・兄・・・ちゃん・・・」
と言い残した直後に肉体が完全に消滅し、その場には玄弥の名を呼ぶ実弥の慟哭が響き渡った。
こうして玄弥は、炭治郎の同期で初の戦死者となってしまったのだった。
その後、亡くなっているため当然出番がなかったが、第200話にて2コマだけ登場。
危うく生死の境を彷徨っていた兄の実弥が、遠目に「天国で弟達の面倒を見ている玄弥」を確認している。
性格
基本的に無口で粗野な面を持ち、また時々癇癪を起こしてキーキー状態になる(主に修業でストレスがたまった時)のが玉に瑕だが、『本質』は人が好く、七人兄弟(兄妹)の次男らしく年下の少年少女に気遣いのできる優しい性格である。
また結構常識人であり、変人だらけの周りに引くこともしばしば(例:刀鍛冶の里で炭治郎が自身の抜けた歯を持ってきた時など)。
初心で女性に対する免疫が無く、巨乳美人は言うに及ばず、年下であっても可愛い女子が相手だと、まともに喋ることすら出来なくなる。
思春期に突入してからは女の子全般に緊張するようになったらしく、乱暴を働いた童子にも15巻のおまけで謝っていた(童子は「いいえ」と軽く返している)。
これらの特徴から、総じて(いかつい見た目に反して)周りの環境や自身が置かれている状況によって影響を受けやすい、「繊細な性格」の可能性が高い。
容姿
鋭い目付き、鼻面を横一文字に走る大きな傷跡が特徴。
彼の外見的な特徴の一つである頭の側面を刈り上げた猛々しい髪形は、頭頂部以外がきつい天然パーマであるため、剃らないと珍妙な髪型になってしまうという理由からセットしている模様。
※実際、単行本13巻にて彼の兄弟(兄妹)6人のうち他にも同じような髪型をした弟が一人いるため、遺伝だと思われる。
更に同期の中では最も早く成長期が来たためか、入隊から数ヵ月後には炭治郎より頭一つ高い体躯となった。
能力
身体能力
鍛え抜かれ、選び抜かれた鬼殺隊士の身体能力は常人の比ではなく、特に“柱”でも最強のフィジカルを有する悲鳴嶼に教えを請うている玄弥は、「単純な身体能力」ならば上位の部類に入る。
しかし玄弥はこの身体能力にブーストをかける“全集中の呼吸法”が使えないという絶大なディスアドバンテージを抱えてしまっている。
これによって、鬼の頚を狩るために必須となる『型(剣技)』が使用できないばかりか、睡眠中ですら呼吸法で身体を強化している上位階級の隊士と比較すると、総合的には結局“並よりは上”の隊士程度でしかない。
咬合力/消化・吸収力
不死川玄弥は人間としては特異個体(ミュータント)である。その希少性は、竈門禰豆子に勝るとも劣らない。
炭治郎の嗅覚、善逸の聴覚、伊之助の触覚、そしてカナヲの視覚にあたかも対応するかのように“異能”と言えるほどの消化器官を有しており、鬼を喰らう事で一時的に鬼の能力(怪力・不死性・超再生)を得られる。
これらの能力は、喰らった鬼が強ければ強いほど高まる(しかしながらオリジナルの鬼よりは数段落ちる上、日輪刀以外の手段でも頚を落とされれば死に至る)ため、唯一「力ずくで鬼を滅する」鬼殺隊士であるとも言える。
当然ながら、この消化吸収による変異は玄弥にも相当の負担をかけており、鬼化中は理性や判断力が下がる諸刃の剣でもある。
加えて健康状態の確認のため、定期的な蝶屋敷での健康診断が欠かせない。ただし鬼喰いをしていることについてしのぶからは嫌な顔をされ会う度説教をされるとの事(炭治郎はあくまで玄弥の体を心配してのことと諭している)。
入隊してから僅か数ヶ月の間に身長が20cmも伸びていたのは、鬼を喰った事が関係しているのではないかとファンの間で考察がされている。
ここから先、単行本未収録のネタバレ注意
黒死牟との戦闘時に彼の口から戦国時代頃には玄弥と同じく鬼化して戦う剣士が居たことが語られ、その剣士は胴体を真っ二つにされた時には死亡したという事から、玄弥の持つ鬼化能力は鬼化能力者の中でも一際強いと言う事が判明した。
実弥、悲鳴嶼、無一郎の3人がかりでも黒死牟にまともな傷ひとつ負わせられない絶望的とも言える状況に、戦力になれない己の弱さを嘆くが、その最中柱稽古の際に炭治郎から言われた「一番弱い人が一番可能性を持っている」という、吉原での戦いにおいて自身が弱者であったが故に妓夫太郎に警戒されず、そのお陰で勝利出来た実績に基づく助言を思い出す。
炭治郎からの言葉を胸に、覚悟を決めて黒死牟の折られた刀の先端を捕食。すると今までの鬼化とは違い、両目が黒死牟と同じものに変わり、更に額に黒死牟のそれと同じ痣が浮かび上がるという
変化が起きた上に、下記の血鬼術まで取得した。
〇〇〇(単行本未収録のネタバレ注意)
血鬼術 『木』
正式な術式名は不明。黒死牟の刀を喰らう事で更に鬼に近づいて“しまった”玄弥が、引き換えに手にした異能。
頂上決戦へと撃ち込む乾坤一擲の弾に込められた術式は、ただひたすら『鬼を封じる』事のみに特化している。
着弾した箇所から太い木の根を生やし、相手のあらゆる行動を阻害する(その性質上――或いは玄弥が考え抜いた最善手――から、殺傷能力は低いと推察される)。加えて放たれた弾丸は、たとえ防がれたとしても標的に当たるまで追い続ける追尾機能が備わっており、文字通りの『必中』を誇る。
更にこの弾丸から生やされた木は、拘束した対象の血液を吸収して成長するという特性を持ち、これにより対象が鬼である場合は、血鬼術の媒介となる血液を奪い血鬼術を使用不能にする事が可能となる(拘束された状態で技を放ってきた黒死牟に対抗するために、土壇場で新たに付加された特性だと思われる)。
総括すると、物理的に対象を拘束するだけでなく能力にも制限をかけられる非常に合理的な技であると同時に、禰豆子の爆血と同様に対鬼用に特化している矛盾した性質を持つ技とも言える。
外観上は、かつて玄弥が相対した半天狗の血鬼術に似るため、“最も厄介だった”経験に基づいて術式を組み上げた可能性が考えられる。
術式の展開に伴い愛用の南蛮銃(後述)も、黒死牟の刀と同様に無数の目玉が纏わり付く異形の形状へと変形しており、性能も単発式だったのがショットガンの如く弾丸をばら撒く形式に変異している。
……『木』は。
神道において――更に旧くから――“神”が宿る御神体として祀られてきた。また風水においても柊(花言葉:守護)、南天(花言葉:幸福)が鬼門封じと為る。
或いはヒノカミとは異なるアプローチで“必然”として辿り着いた、『鬼滅の刃』なのかも知れない。
装備
鬼殺隊士として、日輪刀と隊服を支給されている。
また、伝令及びお目付として担当の鎹烏(かすがいがらす)をあてがわれていると思われるが、未登場。
日輪刀
太陽に一番近く、一年中陽の射すという陽光山で採れる猩々緋砂鉄から打たれた刀であり、不死身の鬼を“殺す”事ができる唯一の武器。詳細は個別記事を参照。
本来ならば刃が持ち主にあわせた色に変わるが、玄弥は“全集中の呼吸”に対する素養が全く無いためたたら鉄の色のままとなっている。
玄弥自身もサブウェポンにしかならないと理解しており、通常の日輪刀に比べると刃渡りが短い。
大口径南蛮銃
剣技が使えない玄弥が、メインウェポンとして使用する特別な銃。
的に当てるのが上手なため銃を使用する方が得意とのこと。
外観はダブルバレルのソードオフ・ショットガンに似るが、散弾ではなく超大口径の弾頭を撃ち出すため、鋼鉄の強度を誇る十二鬼月にも(ある程度)通用する。
更に弾頭は猩々緋砂鉄から製造しているようで、これで鬼の頚を吹き飛ばせば“殺す”事も可能。弱い鬼なら銃だけで勝てる。
なお、もしも常人がこれ程の口径の弾丸を射撃すれば、両腕で構えていたとしても反動によって身体ごと吹き飛ぶのは間違いない(最悪、両腕を骨折する)。
この銃もおそらく刀匠の里で作られたものと思われるが、玄弥との「馴れ初め」や製作者の素性は語られていない。
隊服
背に“滅”の字が描かれた、黒い詰襟。
特別な繊維でできており、通気性はよいが濡れ難く、燃え難い。雑魚鬼の爪や牙ではこの隊服を裂く事すらできないほど頑丈。
玄弥はこの上に紫と黒の袖のない着物を着用している。また、他の隊員と違い袴と草履ではなく洋袴と靴を着用している模様。
キメツ学園
実弥共々18巻でキメツ学園における設定が明かされた。炭治郎達と同様に学年は1年生で、組はかぼす組。射撃部のエースだが、髪型が校則違反という事で一度丸坊主にしたら弾が的に当たらなくなったため(恐らく頭髪で風を読んでいるとの事)、以降は特別許可が下りている。
数学が苦手なため数学教師の兄にいつも怒られているらしく、部活の大会で賞状を貰った時は「こんなもんより数学を勉強しろ」と言われ、その場で賞状を破られるという災難に遭った。この時玄弥は何もできずプルプルしているだけであり、それまで体の大きさと顔の怖さで同級生から怖がられていたが、その様子を見た他の生徒から同情されて友達が増えたらしい。
上記を見る限り、本編とはまた違った意味で兄弟仲はギスギスしている模様。
余談
名前公開
早くから顔見せしていた彼だが、実は下の名前が判明したのは人気投票のページだったりする。
その後名字が判明し、実弥の弟だと明らかになった。
なおその人気投票では6票しか取れなかった(刀鍛冶の里編までは名無しのモブにも等しい扱いであったため、仕方のないことかもしれないが)。
小説「片羽の蝶」
公式小説第二弾「片羽の蝶」では、刀鍛冶の里の後日談が掲載されており、更に本誌では判明しなかった新たな彼の過去についても書かれている。
また、第129話「痣の者になるためには」の扉絵に至る経緯もこの話で判明するので、気になる方は読んでみてもいいかもしれない。