概要
日産自動車の新たなブランディング戦略の一環として、2015年から用いられている。
キャッチコピー導入当初から2020年まで、"世界のYAZAWA"こと矢沢永吉がイメージキャラクターを務めた。彼がゴールデンタイムのTVやYouTubeのCMで「技術の日産が世界を面白くする」などの言葉を添えながら、「やっちゃえ日産」とつぶやく宣伝は一度は目にした人も多いはず。
2017年からは「ぶっちぎれ技術の日産」が「やっちゃえ日産」と併用されるようになった。
2020年9月からは矢沢に代わって木村拓哉がイメージキャラクターを務める。
評判と影響
発表当初はやや賛否両論であったものの、矢沢永吉の一般人受けの良さから概ね良好な反応であった。特に30~50代男性からの支持が厚く、2015年度の自動車業類商品別CM好感度ランキングでは堂々の第一位を獲得している。
しかしこのキャッチコピーを採用した途端、日産は悪夢に次々と襲われることになる。
- 2015年6月、ル・マン24時間レースにエントリーしたGT-R_LM_NISMOが、事前テストから引きずった数々の問題を解決しないまま本戦に出走した結果、3台全車が未完走扱い(うち2台はリタイア)という散々な成績に終わる。
- 2016年4月、軽自動車を共同開発・生産委託していた三菱自動車が燃費の測定における不正が発覚。つまり日産の軽自動車も不正な方法で測定されていたわけで、世間の矛先は三菱一辺倒であったにしても、日産の軽自動車の売上にも悪影響を及ぼした。これについては三菱が日産に補償金を支払い、ルノーと日産が三菱を傘下に収める形で決着を見た。
- 2017年9月、日産の完成車検査において無資格者が検査を行うという不正が30年間も行われ常態化していたことが発覚し、全国の工場の国内向け生産を停止。同様の不正がSUBARU、MAZDA、YAMAHA、SUZUKIなどの同業他社にもあったにも関わらず、同等の被害を受けたのはかつて傘下に収め、同じ期間に不正があったSUBARUくらいであった。さらに生産再開直後の国交省の抜き打ち検査で、またしても2工場で正しい検査方法が整っていないという不覚を取り、さらに傷口を広げてしまった。
- 2018年7月、排気ガス性能の検査について、数値が思わしくない場合は書き換えるなどの不正が発覚。
- 同年11月、CEO(最高経営責任者)兼会長のカルロス・ゴーンと代表取締役のグレッグ・ケリーが金融商品取引法で逮捕される。その後、彼らが会社の金をちょろまかすなどの不正が芋づる式に発覚している。
- 2019年9月、ゴーンの後を継いでCEO就任した西川廣人が、不正に報酬を多く受け取っていたとして調査。意図的に報酬を多く受け取るために指示をしていたことは立証されなかったものの、複数の幹部から猛反発に遭って辞任。
- 同年12月、保釈状態であったゴーン被告が楽器ケースに隠れて母国のレバノンへ不法出国。翌月には世界各国の報道陣の前で自身の潔白と日本の検察のやり方を堂々と糾弾した。
- やはり同年12月、関潤副COOが電撃辞任して日本電産へ引き抜かれる。西川の辞任を受けて月初に発足した「トロイカ体制(3頭体制)」はわずか3週間足らずで瓦解した。
- 2020年9月、コロナ禍での業績の大きな落ち込みにより、日本政策投資銀行から1300億円の政府保証付き融資を受ける。つまり日産が金策に窮した際は国民の税金から負債が補われることになった。資本上、日産はフランスの自動車会社ルノーを親会社に持つため「フランスに金を流すのか」と猛批判を浴びた他、コロナ禍による業績不振や倒産が全国で相次ぐ中で「なぜ日産だけにこの措置を適用したのか」とも批判された。
こうした不祥事が相次いでいることから、「やっちゃった日産」「やらかしちゃえ日産」などのモジりで皮肉を言う人はもはや珍しくない。
矢沢の後を継いだ木村拓哉についても、彼自身がSMAPの解散騒動でいいイメージを持たれていない上、もともとTOYOTAのCMキャラクターであったことから違和感の声が絶えない。
木村に交代後のCMでは、登場する名車が最新でもR32型スカイライン(1989年-1994年)であり、ルノーに買収される前後の車種が登場していない事も皮肉られる一因となっている。
このように現代の日産の凋落を印象づけるようなキャッチコピーであるが、日産はこれを頑として使い続ける意志を示している。
長年スポンサーを務める24時間テレビへ批判の声が年々高まる中、コロナ禍においてもスポンサーを続けた日産にも矛先が向き始めているが、同番組を好んで見る層たちからは印象が良いようで、この辺のギャップが日産がこのキャッチコピーを使い続ける理由なのだろうと推測される。