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佐々木哲平(タイパラ)の編集履歴

2020-09-19 08:20:48 バージョン

佐々木哲平(タイパラ)

ささきてっぺい

日本人の男性名。此処ではタイムパラドクスゴーストライターの主人公について記載する。

「俺はただ…!沢山の人に楽しんでもらいたくて描いてるだけだ!」


概要

タイムパラドクスゴーストライターの主人公で週刊少年ジャンプでの連載を目指す漫画家志望の24歳(第1話時点)。


20歳の時に週刊少年ジャンプで佳作を取ったものの、それ以降、画力はともかく無個性なストーリーとキャラクターから連載を勝ち取ることができず、ずっとくすぶっていた。そんなある日、落雷によってタイムマシンとなった電子レンジから出てきた未来の少年ジャンプを読み、それに掲載されていた新連載作品『ホワイトナイト』を盗作してしまう。


人物

凡人であり、他人に比べて特段何かが劣っているわけではないが、何かに優れているというわけではない人間。元々、小学生の頃に人気漫画を丸々模写したことがきっかけでクラスの人間からもてはやされたことが忘れられず、「みんなに楽しんでもらえる作品を作りたい」と言う思いから漫画家を目指し始める。


卒業後に上京し、日々の食費にも事欠くほどの極貧の中で、バイトと連載作家のアシスタントで食いつなぎながら、漫画を描き続けていた。しかし4年経っても未だにデビューできずにいた。なぜなら伝えたいことや造りたいことがあって漫画を描いているわけではない為、『オリジナリティの無い無個性的な漫画』しか描くことができず、自身のオリジナル作品としての作風の確立が行えなかったからである。


特に、四年間担当編集を続けた菊瀬編集から、「こんなものは俺でも描ける」とまで言われてしまい、いっそエログロ描写を主軸にしたマイナー漫画を描いてみれば、と提案されるものの、自身の信条からそのアドバイスを聞き入れることなく悶々としている中、落雷によってタイムマシンと化した電子レンジから出てきた十年後の少年ジャンプに連載されていた「ホワイトナイト」を盗作、佐々木哲平としての連載作品となる。


性格の項目に詳しいが、基本的に短所しかない人間。と言うよりも、短所が強すぎて全ての長所を潰してしまっている人間

最大にしてほぼ唯一の長所としては、熱意から来る努力と作業量だけは並の人よりも優れており、デビュー前は単独作業ながらも大ページのネームを持ち込み、一日で漫画を描き直すなど、その熱量は計り知れない。

しかしその一方で、その自分に対してかけられた他人からのアドバイスや忠告を都合良くスルーしてやりたくない努力は放棄する自分に甘い部分と、自分の価値観を最善としてそれ以外のものを受け付けない狭量さ。何よりも、悪事を働いてもその事実を認めない自己保身の強さから、その長所を活かす事ができていない。

挙げ句に盗作する事実からの自己正当化に心を砕いた結果として、心理的な視野が狭まり、アイノイツキの救済には大した行動には移れなかった。


劇中での主な行動

基本的に盗作をはじめとする犯罪行為と、それに対する自己正当化の為の独白を行っている。


劇中では、主に「ホワイトナイト」の作者として人気漫画家の地位と名声を得ており、世間的には「ホワイトナイト」の作者として知られるが、本来の作者は藍野伊月と言う高校を中退した女性であり、彼女をアシスタントとしつつ連載を続ける。八話以降は、未来において本来の作者であるアイノイツキが死亡した為、「ホワイトナイト」の続きを描く事に苦闘していくことになる。


第1話では二日続けての徹夜作業を行い、疲労困憊していた上に、失意のどん底にいたところに突如として電子レンジに落雷してできタイムマシンから送られてきた未来のジャンプの新連載であった「ホワイトナイト」を盗作して、少年ジャンプでの読み切り掲載を勝ち取る。


2話ではタイムマシンが現実のものであることに気づき、「ホワイトナイト」を盗作してしまったことを自覚するものの、その後は新しく担当編集となった宗岡の言葉に従う形で盗作を続行して、少年ジャンプでの漫画連載を勝ち取る。尚、宗岡編集自身は哲平の盗作行為については知らない為、第三者的には宗岡を騙して言質を取った形になる


3話では本来のホワイトナイトの作者であるアイノイツキに接触されるものの、彼女に真実を話すことも謝罪することもなく、アイノの勝手な勘違いによって「ホワイトナイト」を託され、漫画の連載を続行する。この際、物的証拠であるタイムマシンや未来からの少年ジャンプをアイノに見せることなく行い、何より、盗作に対する説明や謝罪をしなかった。


4話では連載版の「ホワイトナイト」の為にアシスタントを雇うことになり、その際にアイノイツキが高校を中退してまでアシスタントに来たため、彼女をそのままアシスタントとして雇い、「ホワイトナイト」の連載を継続する。それから7話まではアイノをアシスタントにしつつ、盗作による連載を続行する。


8話からは未来でアイノイツキが死亡した為、「ホワイトナイト」の続きが送られることはなくなったが、未来から少年ジャンプを送っていた謎の存在からの指令により、アイノイツキが連載を開始する新たな連載漫画であるANIMAに連載で勝利するように指示され、その為に奮闘していくことになる。


9話から11話までの間で、アイノイツキが死亡する未来を避けるために「ホワイトナイト」の連載を続行するが、ANIMAに三十連敗した末に、未来ロボットフューチャーくんにより時のはざまと呼ばれる空間に連れていかれる。


12話にて、本来の時間軸では就職したものの、その後も漫画の投稿自体は続けていて連載を獲得し、その作品がヒロインであるアイノイツキに影響を与えていたことが未来ロボットフューチャーくんにて明かされた。


13話にて、時の止まった世界の中で「ANIMA」を越える漫画を創るために、漫画を描き続けるもインプット不足を痛感。様々な漫画作品と図書館に通い詰め、勉強をする。そして12472日に渡って18作の長編漫画と、5回に渡るホワイトナイトの連載完結を行った。


最終的には無限の時間の中で大量の漫画作品を執筆し、これらの作品をアイノにネーム状態で手渡し、彼女から「全人類が面白いと思える漫画」「『ANIMA』を越える」と絶賛された。これに対して哲平は「誰からも愛される作品はない」「自分が楽しんで描けたならそれでいい」「たった一人の同類に届いたのならラッキー」と答える。10年後、哲平とアイノが漫画家を続けている姿が描かれ、そこで物語は幕を閉じた。結局、最後まで哲平は「ホワイトナイト」の盗作について、アイノに謝罪することはなかった。


倫理観

非常に悪い。


1話の時点での盗作に関しては、夢だと思い込んでいたこともあり擁護の声も多く、「ホワイトナイト」の本来の作者である藍野伊月が現れた際には、一応は彼女に真相を話し、「ホワイトナイト」の印税には手を付けておらず、借金によって生活しているという事実が明らかになった。しかし、その印税をアイノに全額渡したり、もしくはどこかの慈善団体に寄付したりしているという描写はされていない為、実質ただの貯金である。

この他にも、13話から14話までの間、無限の時間の中で漫画作品を執筆し続けるというチート行為を行った際には、漫画喫茶で大量の漫画を読み漁り、どこからともなく仕入れた漫画製作に必要な備品を手に入れており、其処に金銭を使用した描写が存在しなかった為、盗難や漫画喫茶の無銭使用を行っている様に描写されてしまった。


しかも、無自覚であった第一話とは違い、第二話以降は明確に盗作に手を出しており、それを『本来ならば存在した名作を消さないために、「代筆」として続きを描く』と、キメ顔で語り、『罪の十字架を背負う』とのたまいながら盗作の「ホワイトナイト」での初連載を自己正当化して悲劇のヒーローを気取るという、非常に悪質な人物。


そもそも、漫画家としての利益とは印税だけがすべてではなく、ブランド力も含まれる。

例えば、あの大ヒット漫画家が出した新作。と言っただけで、次回作もある程度は売れることが見込まれるし、大手企業とのタイアップによるキャラクターデザインやファッションアートの作成、佐々木哲平個人のイラスト画集の発売など、「ホワイトナイト」に絡まない仕事の獲得も大いにありうる。つまり、彼が『ホワイトナイト」を盗作した段階で、印税以上の恩恵を既に受けているのだ。


また、盗作によって得たものは、富以外のものはすべて自分のものと考えている節があり、盗作した「ホワイトナイト」に送られたファンレターに対して感動で涙をこらえており、「ホワイトナイト」制作の為にアシスタントを雇った際には、人気漫画家として地位・名声・栄誉を得たことを平然と受け入れ、アシスタントが読み切りの「ホワイトナイト」を称賛した際には、自分の盗作の罪が許されたかのように安堵すると言う、どこまでも自分に甘く都合の良い考えに浸っていた。


また、基本的にあらゆる行動に言い訳が付き纏い、○○だとしたら悪いからを常套句としており、盗作をしたり、盗作行為が理由で怒られる所から逃げたりする際にこの言い訳を使い、とにかく自分は悪くないと言うスタンスを絶対に崩さない。どうしても謝らなければいけない時には、無意識的にか都合の悪い事を隠しながら話すと言う、とても人間性の低い行動をとる。

本来の作者であるアイノイツキと初めて顔を合わせたときには、一応は彼女に真実を話すが、その際に子供の様に泣きじゃくりながら断片的な説明しか行わず、タイムマシンや未来の少年ジャンプを見せて事情を説明する。盗作の罪を自白して謝罪する。と言う、当然取るべき行動を回避している。

この姿を見た読者の一部からは、「でもでもだってと言っている幼稚園児と同レベル」と揶揄されている。また、これ以降は徹底的にタイムマシンや未来の少年ジャンプについては隠匿し、謝罪やそれに与する行為は頑なに行おうとはしなかった。


特に、アイノイツキに全ての真実を話すと言う点に関しては、真実を知ったらアイノイツキが傷つき、筆を折るかもしれないという、何一つ言い訳になっていない言い訳を常に繰り返し、その盗作の責任は、「世界に名作を残す義務」と言う名目でファンに転嫁すると言う性根の捻じ曲がった人間。

それ以上に、既にアイノイツキの未来を奪っているというとんでもない暴力を振るっている現状にも関わらずに、善人面をして盗作を続行し、それをアイノイツキに手伝わせると言う悪辣さを見せる。

本来、アイノイツキへの傷を浅くするなら一刻も早く過ちを終えることこそが正しく、正式に謝罪して『ホワイトナイト』を返してしまうことが正しい行動でありながら、「彼女への謝罪」を「自分のエゴ」と言い換え、むしろ彼女に謝罪することの方が悪いと言う、自分が罪から逃れる為だけの、身勝手で無茶苦茶な理屈で自分を正当化し、むしろ被害者面さえしている。

作品の盗作に関しても、自分に都合よく解釈して自分の手柄になるように行っており、とにかく自分の利益の為に他人を利用して踏みにじることに躊躇いが無い。

アイノイツキが死亡すると知った際にも、その事を伝えずに哲平個人で勝手に解決しようとしてしまい、結果としてアイノイツキの生命すらも哲平が握りしめており、彼女から貞操以外の全てを奪いさることになってしまった。


本人も自分が悪い事をしていると言う自覚や意識はあり、自分の影が現れた際には、自分の影に盗作を指摘されると言う、この手のよくある演出とは真逆の影に正論を諭されると言う事態が起こっている。


評価

一言で言えば、『独り善がりの激しい男』。


タイムパラドクスゴーストライターという作品の批判の九割はこの主人公に要約されていると言っても過言ではなく、盗作に擁護できる余地のあった第一話はともかくとして、第二話以降は最終話に至るまで全話に渡って読者から憎まれた、作中最大の嫌われ者である。

と言うか、全話を通して見れば分かるが、物語の黒幕であった未来ロボットフューチャーくんと並んで、物語における諸悪の根源であり、全ての元凶である。


読者からついた蔑称は数多く、主なものでは『パク平』『盗平』などがある。

本来、蔑称を公の場で使うことは推奨されないが、佐々木哲平の場合、苗字の佐々木も、名前の哲平も日本人には良くある為、同姓同名の人物に迷惑をかけないと言う意味で言うのなら、むしろ別名を使う方が良い部分がある。


  • 性格

端的に言えば自己保身と自己陶酔の権化。


罪や悪を自覚しながらも悪事は働くくせに、自己弁護が激しく、罰から逃れる際には他人を言い訳に使うと言う、自己保身の激しい人間。

自身の罪悪感に対しては、自己弁護によって自己肯定して、自己完結することで吹っ切るという、自己中心的な人物で、何よりも厄介なのが、自分自身の意思で悪事を働いておきながら、あたかもそれで罰を受けているかの様に振る舞い、自己陶酔に浸っている事。

また、無自覚ながらも強い承認欲求を拗らせており、行動の端々に悪い意味での『不純さ』を抱えている一種の真面目系クズタイプ(思考論理は似ているが、このタイプは最低限の良心か騒動を嫌ってか大それた行動は避ける)の人間で、ここまで『自己』と言う言葉が出てくることから分かる通り、とにかく自分本位な人間。


1.漫画家志望の青年としての性格

客観的に言って、漫画家にはなりたいが、漫画が好きとは思えない人間。そもそもの話、彼が漫画家を目指したきっかけ自体は語られているが、それは当時人気だった漫画を丸写しした結果、クラスの人気者になったという理由であり、その際に少年ジャンプに連載されていた何々と言う漫画を丸写ししたとは説明されておらず、その人気漫画がどこで連載されていたかは明示されていない。


つまり、この出来事がきっかけで純粋に漫画が好きになったり創作する喜びに目覚めたのならば、別に少年ジャンプに固執して漫画家を目指す必要はない。それでもあえて少年ジャンプで漫画連載を目指す理由を考えるならば、『少年ジャンプが日本で一番売れている漫画雑誌だから』以外に理由を見いだせず、単に少年ジャンプと言うブランドに固執しているとしか思えない。


上記の事実から、『漫画家になる』とは彼の目標ではなく、チヤホヤされるために普通の人より秀でていた特技だったから打ち込んだ可能性が高い。物語の始まりからして、漫画家にはなりたいが、漫画にして描きたいものが無いという表現者としての欠点を抱えながら、担当編集の菊瀬からのアドバイスに対して、それは自分の描きたいものではない。矛盾した反論を行っており、その際に菊瀬から指摘された「好きなものを描いてチヤホヤされたい(要約)」が哲平の人物評と動機と行動原理を端的に言い表している。


また、未来の少年ジャンプを読んだ際に、知らない漫画しか載っていない事に驚いてはいても、長年連載が続いていたはずのベテラン作家の漫画が終了していた事や、自分が好きな漫画が連載終了した事に驚いたり、新連載されたホワイトナイト以外には全く興味を示しておらず、この点が特に、「そもそも漫画家を目指しているのに、漫画が好きとは思えない」と読者から指摘されている。

(作中で登場する漫画は全て架空のものだが、現実に合わせて作品の世界観が構成されている事、何より彼の描く漫画のキャラクターのタッチが、有名作品のキャラクターのタッチに非常によく似ている事から、劇中には現実に即した漫画が連載されていると考えられる)


菊瀬編集からのアドバイスに対しても、哲平は雑誌掲載時には「マイナー路線」、単行本修正時には「そういうもの」と言って絶望した表情を浮かべたが、別に菊瀬編集が言ったのは、エログロ描写を主軸にした少年誌向きでない作品と言うだけで、青年誌ならばありふれた要素であり、要は少年漫画以外の土俵で面白い漫画を描けばよいという事でしかない。それをあたかも、自分の存在意義が否定されたかのように絶望する姿は、自分の価値観だけを最良のものとする自己中心的極まる姿として、多くの読者の怒りを買った。


そもそも、菊瀬編集は哲平の欠点の改善案として今まで描いてきたものと異なる分野への挑戦のキッカケを与えている訳であり、こう言った泡沫作家が尖った分野に挑戦したことで代表作を生み出し、その分野で名を知られる中堅クラスに化ける前例は少なくない。また、その経験を経て自分や作品の幅が広がる、上がった知名度で更なる挑戦の機会を得る事にもつながりやすい。あるいは、少年や一般には馴染みが薄くてもブームの火付けとなりメジャーな競技に跳ね上げた例も実在する。


そう言った前例を踏まえて言えば、ただ漠然と「皆んなが楽しむ漫画を描きたい」としか言わずに菊瀬編集のアドバイスを突っぱねる哲平は、漫画家としての真っ当な努力を拒絶して、「ドラゴンボールワンピースナルトと言った超人気漫画作品しか描きたくない」と言っているに等しい、まさに身の程知らずにもほどがある大馬鹿野郎なのである。


13話で時が止まった世界で、なんと他人の作品を視聴して学ぶ事に気付くと言う場面が追加され、菊瀬編集に駄目出しされた4年間は本当に好き勝手に自分流でしか描いてこなかったことも明らかになった。それはつまり、その4年間面白いものが見たいともヒット作は何が面白いと学ぶ姿勢も何もがなかったと言うことであり、読者が何故、漫画を読みたくなるのか。ということも考えていなかったのである。この事実から察するに、他人の作品を読まずにいた哲平は、自分以外の作品へのリスペクトを育まれなかったからこそ、盗作に手を出せたことになる。


もう一つ大きな問題点として、独り善がりであるが故に先を見通す先見性が低いことである。

シナリオを作るとは、こうすればああなるの積み重ねであり、何を行えばどんな結果になるか考えるクセがあれば、自分が如何に危険な行動に出ているかが分かるはずである。


盗作を肯定するわけではないが、そもそもの話、基本的に盗作は単発で行い、連続して行うものではない。その理由は言わずもがな、メリットに比較して、リスクが高いからである。

本作の場合、タイムマシンというイレギュラーな要素を加味しても、と言うよりもイレギュラーな要素があるからこそ、尚更にそのリスクとデメリットは大きい。


もしもこれが完結までジャンプや単行本をまとめて未来から送られた場合ならば話は変わるが、基本的に作品を面白くするアイデアや設定、先の展開は作者の頭の中にしかない。緻密なストーリーの場合は、無駄と思われた描写こそが後に重要な伏線となる作品は多いし、テコ入れや路線変更して人気を獲得した作品の場合も、その作者が今までの人生から自分が面白いと思った要素を注ぎ込んで漫画を制作している。あるいは現実の季節感に合わせた日常回や時事ネタ、読者の反応も加味して制作する作家もいるので、時期がズレて読者の満足度が満たせない可能性もある。現実に、オバマ氏が大統領選に当選した時期には、彼のそっくりさんやオマージュとも言うべきゲストキャラが様々な作品で登場していた。


つまり、面白い作品であればあるほど、本当の作者にしか作品を面白くする展開や要素を作れないと言う事であり、哲平の様に一話ずつの盗作を繰り返す長期連載作品など、いつか破綻する可能性が高い。何よりも、哲平が盗作に使用するタイムマシン自体、何故動いたのかもわからず、いつ動かなくなるかも分からないリスクの高すぎる盗作の手法である。


実際、哲平自身、最終回まで待たずに盗作を行った事で、中途で未来のジャンプを送られなくなり困り果てる事態に陥っている。罪悪感がなくとも、まともに先を考えられる人間なら、こんな盗作などリスクが大きくて手を出すはずがない。もっとも、単に金と名声を得るだけならば、適当に連載して印税など収入を得るだけ得て、連載できなくなれば適当な理由をつけて逃げれば良いので、話は別である。


しかし、漫画家によらず、純粋にクリエイターとして活動したい場合、むしろ、盗作については正直に謝罪して、このタイムマシンを題材に漫画を描いた方が、計り知れないメリットになる。

ホワイトナイトを消す消さない云々も、本来ならば未来のジャンプが送られてきた段階でどうにでもなる。何故なら、普通に考えれば手元にホワイトナイトを新連載する10年後のジャンプが残っている以上、10年後にはアイノイツキが必ずホワイトナイトを連載すると考えられるからである。(哲平の盗作により10年後の『新連載のホワイトナイト』が消えたなら、10年後のジャンプにそもそもその新連載が載るはずが無い。『新連載のホワイトナイト』が消えないと言う事は、哲平の行動は未来に影響を及ぼしておらず、盗作でゴタゴタしようがしまいが、10年後に必ずホワイトナイトが新連載される未来が訪れる。通常、タイムトラベルではこう言う考え方がまず最初に来る。世界線パラレルワールドは、この説明が矛盾した時の考え方)


これらの考察に関しては、哲平自身にSF的な知識が無いと描写されているが、知識が無くとも状況を整理して冷静に考えれば分かる話であるし、それでなくともネットで検索すれば簡単に分かる話である。(劇中で哲平がパソコンやスマホを使用している描写はないが、ルーター自体は設置されているのでネット環境自体は存在しており、所有している携帯電話はいわゆるガラケーだが、別に3G携帯であればネット通信自体はできる。仮にネットが出来ないとしても、それこそ図書館に行けば良い。そもそも、アニメや漫画を読んでいれば普通にこの手の話はゴロゴロしている)


結局のところ、彼の行いは「罪の意識も無ければ、先の計画もなく犯罪に手を染めた」と言う事であり、彼の行動こそがなによりも彼の漫画家として能力の低さを物語っている。


2.一人の人間としての性格

自己中心的であるという部分を除くと、精神的に打たれ弱くはないが、打たれることがとにかく嫌なタイプ。

外面は良く子供が困っていると助ける描写はあるものの、自分に非や落ち度があっても咎められたくないと考え、罪悪感はあるくせに他人の力を利用することにも、他人を踏みにじることにも躊躇いが無く、状況のせいにして自分の悪事を正当化する。


作中では、逆境の中でも悩みながらも当初の目的からブレる事なく行動している。と書くと如何にもたくましい主人公のように見えるが、逆境に関しては自分で自分を追い込んでいるのが大半で、苦悩や葛藤に関しては自分の罪悪感を誤魔化す為の自己弁護でしかなく、要は単なる悩むフリである。

実際には自分の利益の為に行動し続けており、打ちのめされているように見えて打たれ弱くはないが、たくましいと言うよりも図々しく厚かましい。

先の外面の良さに関しても、その行動と性格のせいで良心からの行動であるとは受け取られず、一部の読者からは「人の目があるところでは他人に親切にはしてるけど、路地裏の空き缶とかは拾わなさそう」と評されており、彼が人を助ける時は、その裏に打算がある様にしか見えない。


また、承認欲求と自己顕示欲が強く、「とにかく他人から認められたい」と言う欲望を拗らせ、燻ぶらせていることが物語の端々から伺え、最初の盗作でホワイトナイトが賞賛されたときには、「自分の漫画が面白い」と言われていることにではなく、自分自身が「やっと、日の目を見れる」という事に感動していた。


特にこの性質が強く出たのは、新しく担当編集となった宗岡との打ち合わせである。

本来、哲平はここで連載を断ろうしていたが、宗岡編集からの熱い後押しと大量のファンレターを読んだことで当初の決意を翻しており、帰宅後は未来の「ホワイトナイト」を読んで、特に何の葛藤も苦悩もなく盗作を決意している。


この場面を見た読者からは、「自分が悪いことをしている自覚はあるのに、宗岡の言葉や行動を言い訳にして、自分が綺麗なままで居ようとしている」と批判されており、実際、打ち合わせ以前での盗作は、タイムマシンと言う余りにも現実離れした事象と、何よりも第一回目の盗作という事もあり、「魔が差した」と言うことで多少弁護できる余地があったものの、打ち合わせ後の盗作は、まるでスポーツ選手が全力を出すかの様な爽やかさで気合を入れており、罪悪感のかけらも感じさせない表情をしている。


連載用に作品を盗作した直後に「ホワイトナイト」の本来の作者であるアイノイツキに出会った際には、罪悪感から彼女にタイムマシンについては話したものの、肝心の盗作について信じてもらえるように説明することもなく、謝罪も行わなずにその場を誤魔化すと、彼女の勘違いを正すことなく、アイノから受け取った「ホワイトナイト」を自分の作品として連載し続ける。


アイノイツキがアシスタントを受けた際には、そのまま彼女をアシスタントとして雇い、アイノに先生として尊敬される上に、彼女から「ホワイトナイト」のアイディアを聞き出そうとすると言う、アイノに対する途轍も無い尊厳破壊を行う。


そのくせ、読み切り版の「ホワイトナイト」に寄せられたファンレターや、アシスタントからの賞賛など、本来ならば自分に向けられたわけでもない賛辞は平然と受け取っており、とにかく『自分の利益』だけを死守する行動を取る。また、本当に他人に対する配慮が足りず、使う言葉の端々に他人を下に見ている言動が目立つ。


例として挙げれば、単行本に収録した際に修正されたが、菊瀬編集の提示したアドバイスを「マイナー路線を目指せと言うことですか」と問い返し、それに対して「僕が書きたいのはみんなが楽しめる漫画なんです」と言い返しており、あたかもマイナー路線の漫画で楽しむ人間がおかしいかの様に発言している。


「ホワイトナイト」を描き上げた際には菊瀬編集にアポも取っていないのに無視して連載会議に突入して菊瀬の信頼を失墜させるという行為に出た上に、何の落ち度もない菊瀬編集に謝罪させ、盗作が分かって以降も、菊瀬編集には謝罪はおろか会う事すらせずにいると言う、到底まともな感性を持った人間とは思えない行動を取っている。


ヒロインであるアイノイツキに対しても、彼女の目の前で原稿を破り、彼女のトラウマを刺激するような真似をした挙句に、彼女から「ホワイトナイト」のアイディアまでも聞き出そうとしていた。


この他にも、アイノイツキに最初に会った時にも、彼女の漫画を読んで「面白さは掲載されたものには及ばない」と感想をまとめたり、アイノが帰る際にも「雑魚キャラの様に立ち去った」と、自分が盗作した人間に対して、自分よりも格下であるかのような言葉を使っている。そもそも、この時点で見せられた漫画は10年後にブラッシュアップされるのだから、10年後の完成版に及ばないことのはごく当たり前のこと。暗に彼女の10年分の苦労を馬鹿にしているとしか思えない。


また、この他には恩人に対して感謝の心を持っていない様な描写も端々に目立つ。

具体的には、菊瀬編集に対する扱いと、彼の師匠に対する扱いがぞんざいと言う点である。

菊瀬編集の扱いに対しては言わずもがな、四年もの間哲平を見捨てなかった義理堅い相手に対して、平然と陥れておき、その後、何の罪もないのに謝罪までさせている。また、菊瀬編集の謝罪を思い出しているシーンで、彼は自分を支えてくれた人を思い出しながら、「犯罪に手を染めた自分を後悔」するのではなく、「自分には結局漫画の才能が無かったことに失望」しており、どこまでも自分本位な姿を見せている。


彼の師匠に関しては、元々、哲平は『ビタミンマン』と言う十年以上続く長期連載漫画を描いている漫画家の元で一時期アシスタントをしていた。と描写されていたが、十年後のジャンプを見てビタミンマンが連載されていないのを見ても特に何の感慨も持たずにおり、それ以降も十年後の師匠に対して特に興味を持った様子もない。

はっきり言って、十年以上続く連載漫画が連載終了しているという段階でかなり衝撃的な事実であるはずであり、ましてやそれが師匠の作品ともなれば、何かしらのアクションを起こしてもおかしくないはずであるのだが、劇中では師匠のキャラクターを語ることはあっても、師匠の未来を案じるような描写は一切ない。

仮にこれが師匠ならば大丈夫。と言う信頼の表れだったとしても、自分の師匠に対して連載を持ったことに対する連絡を行った様子もない辺りは、だいぶ不義理な人間であると言える。


いわゆる焼き肉回で、焼き肉を食べに行った際には、『盗作をしている』という事実から自分には肉を食べる資格はないとお通しのキャベツばかり食べていたが、本気でそう思っているのなら、アシスタントたちに焼き肉代だけ渡して自分は焼き肉に行かなければいい。そもそもとして、被害者に認識されてない自分への罰などただの自己満足でしかなく、謝らない言い訳でしかないのだが、そう言ったことには一切思い至らず、その後も言い訳を続ける辺りに彼の人間性が透けて見える。


3.主人公としての性格

控えめに言って自分本位の権化。より率直に言うのならば、吐き気を催す邪悪


いざと言う時の行動力はあるものの、行動そのものに関しては王道主人公であるが、本質的には身勝手で自分勝手な行動しか取っておらず、他人の為にはその行動力は発揮しない。むしろ、自分の気に入らない人間は見捨てると言う、「行動しない」行動力がある。


「25歳までに漫画家として大成する」という目標を持っているが、目安にすぎない年齢に固執しており、無自覚であった最初の盗作では、連載会議が始まっているジャンプ編集部に集英社の警備員を振り切ってまで突入した末に、菊瀬編集の面子を潰して漫画の読み切り掲載を勝ち取っており、その際に仮にも四年間世話になった菊瀬編集をに対して、一切のフォローなく見捨てると言う、恩を仇で返しておきながら平然とする主人公らしからぬ行動に出ている。


哲平が時間外に会議に飛び込んだ様に、少年漫画の『主人公』や『職人』には、常識に囚われないとして規則や横紙を破るのが常と言うタイプも少なくない。また、作品にこだわりを持って他者の意見に左右されず、作品の完成のためにはあらゆる犠牲を惜しまないキャラクターだって存在する。ちなみに、芥川龍之介の傑作小説『地獄変』はそう言う主人公を描いている。

その為、哲平の行動だけは、『職人』や『主人公』と言えなくもない。


ただし、彼らが肯定されているのは、現実であれフィクションであれ、『職人』の場合は実力や実績を出しているからであり、『主人公』の場合は、作品世界の中で規則の中に問題が存在しているか、規則では想定外の問題が発生しているからである。

哲平が批判されるのは、主に現実に存在する「週刊少年ジャンプ」の名前でこれを行っている点にある。

例えばこれが、「架空の出版社の人気漫画雑誌」の話で、「絶対に面白い漫画よりも、出版社の社長の息子が描いた漫画の方が優先的に連載される」と言う設定で、「自分の実力で超面白い漫画を描き上げたので、最後の手段で連載会議に直接持ち込む」と言う話の流れであれば、読者からも問題のある行動であるが、カタルシスの有る『王道主人公としての行動』として映っただろう。


だが、哲平の取った行動は、「25歳で漫画家に成れなければ夢を諦めるという自分のルール」から、「最初から期日の決まっている連載会議」に、どうしても間に合わせようと規則を破ったのであり、肝心の漫画はこの時点では自覚はないとはいえ、「未来の少年ジャンプからの盗作、つまりは他人の実力と実績」である。

そして、肝心の「少年ジャンプ」は読者から様々に言われる事はあれど、完全に実力主義で連載を勝ち取る漫画雑誌である以上、哲平が連載を勝ち取れなかったのは単純に実力の問題である。


つまり、「少年ジャンプの連載会議には何の問題もない」(それどころか真面目な編集の顔を潰し、むしろマイナス)し、哲平自身が今まで何の実績も出していない「元々が単なる漫画家志望の青年である上に、漫画の盗作を行っている」にもかかわらず、この行動に出たことが問題点なのである。


また、職人であれ主人公であれ、この手の人間は社会的に見て問題のある人物として扱われるまでがキャラクターとしてはセットになっているが、哲平の場合は無条件に持て囃されており、その点で言うと、むしろ本質的な職人像や主人公像からはかけ離れている。

どちらかと言うと、それら全ての善の方向性の職人や主人公の要素を満たしているのは、ヒロインであるアイノイツキの方である。

ただし、職人気質のキャラクターの中には、他者を踏み躙っても揺れない者だっている事から、『職人』キャラや『主人公』キャラの悪い部分のみをなぞって体現しているとも言える。


行動力に関してはそれなりに優れたものを持ち合わせているものの、基本的に考えなしで場当たり的な行動しか取らず、覚悟を決めてるかのような言動はするものの、結局は口先だけで終わることが多い。

特に、自分の為以外で動く事は無く、他人の為に動く時に限っては、ほぼ口だけで終わる。


例としては、アイノイツキの死亡を避ける為に、アイノイツキに勝たなければならないと言う指令が来た際には、そもそも勝利条件が、『誌上のアンケート結果』なのか、『単行本での売上』なのかも分からない状況で、特に理由もなくアンケート結果であると決め付けており、その上で、アンケートで負けた際には、一回くらい負けただけなら大丈夫と言い聞かせ、そのまま三十連敗する。


その後、アイノが過労死した際には、自身に予言を与えたフューチャーくんに対して怒りをぶつけるが、そもそも敗北した際にアイノに対して電話一本かけるだけで、それ以降、特にアイノを死から救う為の行動を起こしておらず、その後も、自分がフューチャーくんの指示を守らずにアイノに三十週間も負けた事を棚に上げており、彼の怒りは八つ当たり以外の何者でも無いと言う、非常に醜悪な行動となっている。


4.悪人としての性格

悪人としてみた場合、作品終盤の夜神月とほぼ同じレベル。そう言う意味では、主人公にふさわしいと言える。


本人は自覚していないが、表の顔と裏の顔の差が激しく、宗岡編集との打ち合わせでは如何にも深く悩んでいるかの様な素振りを見せながらも、帰宅した途端、あっさりと盗作と言う悪行に手を染めており、その際も悪行に手を染める悲壮感はなく、盗作後はむしろ「義務」だの「代筆」だの勝手な理屈で自分の行動を正当化している。


また、自分の悪事に対しては「自分の意思」で行っている事を徹底的に認めず、宗岡編集との打ち合わせでは、読み切り版「ホワイトナイト」に集まった大量のファンレターを読んだ際に、本来なら「アイノイツキの応援者」である「ファン」と言う不特定多数の見知らぬ他人に責任を転嫁した挙句、「罪の十字架を背負ったまま描くしかない」と、盗作と言う悪事をむしろ使命であるかの様に行っている。


また作品を奪われたアイノに対しても彼女の心情を考える前に、自己弁護や自己憐憫、自己愛を前面に出し、挙句に彼女に「ホワイトナイト」の制作を手伝わせた。

こうした一連の行為に、哲平は良心の呵責に苛まれる様子すら見せず、むしろ「君に謝れたらどんなにいいだろう」と、まるで悪事を行なっていながら、正義の為に自己犠牲を働いているかの様な心情を垣間見せた。


このように常に他人から何がしかを奪っているのだが、少しでも自分に逆境が訪れると泣き喚き、他人と同じ苦しみを味わっているだけで、まるで大災害が起きたように絶望した顔をするのも、哲平の特徴である。


例えば、未来の少年ジャンプが届かなくなった際には、「俺が話も考えなければいけないのか?!」と、連載作家であればごく当然の出来事に驚愕すると言う、読者を唖然とさせるセリフを放った。


そもそも「謝らない」ことを罰にする人もいるが、それは代わりに「相手や周囲に憎まれる」からである。

相手から憎まれ、恨まれ、怒りをぶつけられ、時には命を含めたあらゆるものを奪われる。そう言う苦しみを永続的に与えられるからこそ、「謝らない」事が罰になるのだが、哲平の場合は悪事の共犯に巻き込んだアシスタントや、盗作の被害者であるアイノイツキからすらも、慕われ、称賛されており、何よりも人気漫画家として、彼が望む全てのものを手に入れている。むしろ被害者に「謝らない」からこそ、最大限の利益を得ている。


その事に一切の自覚がないあたりが、彼が本当に救いようのない悪人である事を示している。


5.性格についてのまとめ

総評するならば、盗作に手を出す主人公と言う、明確な悪事に手を染めておきながら、まるでそれが自分の使命であるかのようにふるまう質の悪い犯罪者。


夜神月の様に主人公と悪役を兼ねて、自分の正義を信じながらも悪の道に落ちていくダークヒーローでもなく、ディオの様に悪事を悪事と割り切って開き直る悪役でもない。自分勝手な理屈で自分の罪をうやむやにして隠し通すという非常に自分本位な性格で、なぜ彼が少年ジャンプのヒーローなのかわからないほど。


佐々木哲平の最大の問題点とは、結局のところ自分自身の意思で悪事を働きながらも自分が悪いとは思っていない(思いたくない)部分にあり、そもそも、哲平の性格の悪い部分として、強烈なナルシストと言う部分がある。

作品当初に語られた、彼の言う夢である『みんなが楽しんでもらえる漫画を描きたいと言う夢』も、結局のところは『金やチヤホヤされるために漫画家になりたいと言う欲望』に過ぎないのだが、モノローグではそう言う自分の薄暗い感情をきれいな言葉に言い換えて美化している。


漫画を盗作した際にも、自分の実力以上の漫画を夢見た時には、「どこかで見たことがある作品ではないか?」と疑うよりも先に、「自分はいつもいつも漫画の事を考えているから、深層意識で神漫画を完成させた」と考えており、自分の実力を現実よりも過剰に評価している。尚、この時点で既に「ホワイトナイト」と言う作品が「アイノイツキ」と言う作者によって描かれている。と言うことは明確に描写されているため、自分が完成させた漫画だと主張する事は理屈として無理がある。


ちなみに、ビートルズポール・マッカートニーは、名曲であるイエスタデイを夢で聞き、「どこかで聞いたことがある曲だけど、どこで聞いたか思い出せない」と言う理由でその曲を作曲して、他のメンバーにイエスタデイがどこの曲か知らないか?と質問した所、全員が知らない曲だ。と答えたことで、作品を発表した。というエピソードがある。上記のビートルズのエピソードを参照すれば分かりやすいが、『夢で見た知らない作品=自分の作品』と安直に考えてしまえるところが、哲平の人間性をよく表している。


ナルシストであるという事自体は別に悪いことではないし、それは言い換えるなら『常に自分の信念を信じ抜くことのできる強さ』とも言い換えられる。実際、哲平が自分の夢を諦めずに努力する情熱も、この部分から生まれているのだが、それは『自分ばかりが正しくて、それを邪魔する全ての存在は悪』と言う思考につながりやすく、『悪いことをしても自分が悪いのではなく、 自分に悪いことをさせる周囲が悪い』と言う見苦しい開き直りを生んでしまう場合もある。実際、作中ではそう言う負の部分ばかりが描写されており、それが哲平のキャラクターに対する大量のアンチを生んでいる。


また、ナルシストではあるが、知識が少なく、それをカバーできるだけの機転の良さや咄嗟の閃きもない。それでいながら、長期的な展望もなく衝動的な行動しかしない彼の姿は、はっきり言って頭の悪いサイコパスとしか言えず、何事においても、悪い意味で深く考える事をしない。


或いは彼の最大の罪や悪事は、そう言った諸々の事柄を何も考えようとも、知ろうともしなかった事と言えるのかもしれない。


タイムトラベルについて多少なりとも知れば、すぐにアイノイツキに謝罪することの重大さにも気付けたろうし、盗作と言う悪事について深く知れば、自分の悪行に歯止めをかけられたかもしれないし、何よりも自分の邪悪さと醜悪さを知ることができれば、良くも悪くも自分の長所を活かす術を見つけられたかもしれない。


彼の心中を占める『自分は悪くない』と言う感情、それ自体は人間の誰しもが持っている感情であろうし、そう思ってしまう事自体は人間としてある意味で正しいのかもしれない。だがそれは、人間の持つ感情の中でも最も唾棄され、非難されるべきどす黒い悪の感情であり、誰もが憧れる少年漫画の主人公ならば、絶対に持ってはいけない感情であり、もし抱いたとしても、自ら向き合って克服し、その殻を破るべき内なる敵なのである。


作者が、哲平を本物のヒーローとしたかったのならば、まず最初に言い訳することもなくただ、哲平自身が真性の悪人であることを理解するべきであった。悪人は、罰を受けて反省して初めて真人間に戻れる。哲平に足りなかったのは、真人間に戻るだけの罰と、その苦しみだった。それが描かれなかった時点で、哲平にヒーローの資格はなかったのだ。


努力の才能

基本的に才能の無い凡人として描かれ、悪人としての側面が目立つ哲平だが、作中ではたびたび彼の持つ努力の才能が描写されている。本編の描写内では極貧の中でもバイトをしながら、漫画を描き続けていた(本編時間軸では藍野伊月連載作品「ANIMA」に次ぐ人気を得ており、作品乗っ取りとはいえ実力でアンケ2位を取っていたことから、漫画家としての才能もあったことが伺える)。


12話にて描かれた本来の時間軸では、哲平は就職後も漫画を書き続け、8年後にジャンプに読み切りを載せるほどに成長している。13話では、時の止まった世界の中で、様々な漫画作品と図書館で大量の資料を参考にしつつ、12472日(約34年)に渡って18作の長編漫画と、5回に渡るホワイトナイトの連載完結を行った。さらに、実際にはこれは腕時計の電池を使い切るまでのカウントであり、その後も描き続けて部屋いっぱいにネームが埋まる描写があるため、経過日数の詳細は不明だがネームの量から少なくとも数百年は経過していると推測される。


これらのことから、元々努力家としての才能はあったことが分かる(ただし最終話でアイノにみせたこれらの作品は全てネーム状態であった。完成原稿を持ってこれなかったか、ネーム段階で完成扱いしてしまったのか、完成原稿は別にあって、あえてネームを持ってきたのか。いずれにしても真相は不明である)。


ただし、努力の才能があることと、努力の方向性が正しいかどうかは別の問題である。


野球選手のダルビッシュ有投手は2010年に次のようにツイートをしている。

「練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ」

これは誤った方向に努力をしても、実は結ばないということを雄弁に語った言葉である。


さて、哲平の努力はどうだったであろうか?

計算すればわかるが、鉄平が過ごした時間は腕時計でカウントされた分だけでも年単位に直すとおよそ34年と言う時間であり、それだけの時間で18作品の長編を完成させた場合、1作にかけられる時間はおよそ2年。単行本の巻数にしておよそ13巻に渡る(13巻は、鬼滅の刃で言う鍛冶の里篇、ナルトで言うサスケVS我愛羅戦、ワンピースで言うリトルガーデン篇に当たると言えば、一作13巻がどれくらいの長さかと言うのが分かるだろう)。


まだ少年漫画が文化として発展途上の60年代から70年代にかけての漫画作品ならば多いほうだろうが、2020年代の漫画作品としてみると、週刊連載に換算して年数が3年未満の作品を『長編』と言うのには違和感が残る。ちなみに、月刊誌であればこれくらいの『長編』漫画は珍しくないが、その場合、10巻程度でも10年ほど連載に時間がかかるのも珍しくないため、製作の期間からしてその線はあり得ない。それでも、長編の定義は人による為、長さについては無視できるものの、問題はその内容がどういう物かである。


1.漫画の内容についての予想

一応、2000年代にもデスノートの様な連載年数の短い週刊連載の作品はあるが、デスノートの場合は『主人公とライバルの対決』のみに作品の主眼を置き、バトルに関してもアクションや異能力などの派手でページ数を取る要素は省き、情報戦と心理戦に特化した内容である為、連載年数が短くてもクオリティの高い内容となっている。


その為、哲平の描いた漫画作品がバトル物であるのならば、打ち切り漫画の様に急展開や伏線の投げっぱなしなどが無いと考えた場合は、デスノートの例をまねることになると思われ、『主人公はラスボスとしか戦わず、最初から最後まで同じ強さのまま、修行や仲間を作ることもせずに決着をつける』と言う、王道の少年漫画からは相当にセオリーを外した内容になると予想される。


この内容が面白いかどうかはストーリーの作り方次第になるであろうし、アイディアとして悪くはないのだろうが、王道の少年漫画を描きたがっていた漫画家が描いたのが、邪道の極みの様な漫画であったとしたら、些か失笑ものではある。


2.時間停止中に描いた漫画のジャンル

以上の要素からある程度、彼の描き上げた漫画のジャンルについても予想することができる。基本的に、13巻と言う巻数では王道の少年漫画は描き上げられないことは上記で説明された。この他にも、全ての作品がオリジナルであると言い切っていることから、シャーロック・ホームズや明智小五郎、その他の名作文学などのコミカライズは行っていないことも予想される。


要するに、邪道な少年漫画以外は、ラブコメやギャグマンガと言った、コメディや恋愛に主眼を置いた作品しか描いていなかったことになる。また、ミステリー、ホラー、SF、ファンタジーなども描いた可能性はあるが、巻数から逆算してほぼあり得ないと思われる。


一話完結作品

オリジナルで長編を書いた場合、ストーリーそのものがつながっている連続した物語ではなく、基本的にはドラえもんや斉木楠雄のΨ難の様な、大まかなストーリーの筋は存在するが、そこから独立した話を書き一話完結物を主に描き上げたことになる。

ミステリー作品

究極的には殺人さえ起こせば無限に話が続けられるため、13巻で納める為には宿敵と決着をつける。主人公が探偵役をやめる。などの話のストッパーを付けねば終われない。宿敵との対決は話が長くなる要素になるので省かれ、その為、主人公が探偵役をやめる形でなければ終われないことになる。そのパターンで終わる場合、無難なのは『探偵役が舞台となった町から去る』か、『探偵役がヒロインと結ばれて終わるか』の2パターンである。

前者のパターンでは話は急に終わり、後者のパターンではラブコメ要素も入る。つまり、ミステリー漫画を描いた場合、打ち切り漫画同然の終わり方でない限りは、ラブコメを描いていたことになる。

SF、ファンタジー作品

SF、ファンタジーのジャンルに関しては、描いていたことはまずありえない。理由は単純に、どのジャンルも長編にした場合は作中設定から話が長くなることが予想されるため、13巻で収まりきらないからである。

ホラー作品

ホラーに関しては、むしろ長々と設定を語るよりも、演出に特化して話自体は短くまとめた方が面白い作品になりやすい為、13巻も描けば逆につまらないものになる可能性がある。

他の様々な作品

スポーツもの、ギャンブルもの、大河ロマンもの、任侠もの等の、緻密な心理描写や、多彩な人物描写が求められる作品は長くなるために、この13巻と言う目安から推し量る事と纏めるのが難しく、職業ものに関しては閉鎖された空間にいるので実際にその職業についている人に取材が出来ず、本だけの知識となり偏りが生じる可能性がある、またエッセイ漫画に関しては状況的に無限に続けられるために除外される。また、時間停止中は食事をしていない為、グルメ漫画も描けない。

但し、スポーツものの中でも、格闘漫画に関しては一対一での対決が主なテーマになるため、13巻にまとめて描くことができるだろうと予想できる。同様に、水戸黄門や必殺シリーズの様な内容ならば、歴史漫画も描けると思われる。


まとめると、哲平が推定数百年以上も描き続けた長編漫画は、一話完結式の勧善懲悪ものの時代劇か、ラブコメか、ギャグか、格闘漫画、そして邪道な少年漫画のいずれかとなる可能性が高く、これらのローテーションを組んで描き上げたのだろうと考えられる。以上のことから、彼の描いた漫画はその殆どが相当に偏ったジャンルでしか描かれていないことが予想される。


上記の内容はあくまでも作中描写からの予測でしかない為、作者から「全て王道の少年漫画」と言われれば反論できないが、上記の予想が正しかった場合、哲平の数百年間の努力とは、自分の好きな、もしくは得意なジャンルの漫画しか描かなかったことになり、第一話の4年間と同じことを繰り返していることになる。


3.作品のクオリティアップについて

もう一つの問題として、これだけの数の作品を作るに際して、哲平以外の意見が一切ないというのも非常に大きな問題である。


作品を作るにあたって重視されるのは、広範な資料や知識もそうだが、それ以上に作品の展開が面白いかどうか。内容が人に伝わるものであるかどうか。そう言う第三者の意見が最も重要な要素となる。


そして、それらの意見だけは他人に聞かない限り、絶対に得られないものである以上、彼の面白さは独りよがりの面白さになっている可能性が非常に高い。要するに、哲平の行動は言ってしまえば『一人で部屋に閉じ籠もって創作活動をしている素人作家』と同じ事をしているのであり、本人からすれば面白い作品は書き上がっているのだろうが、それが一般的な感性からすれば面白い物であるかどうかは疑問に残る。


作品を作った目的が一応、『アイノイツキに伝えたいことがある』と言う目的で描かれている以上、別に作品が面白くなくても問題ないと言えばないのだが、彼の努力の主題が『面白い漫画を描くこと』に焦点が当てられているため、漫画の内容が面白くなければそもそも努力する意味自体が無くなる。


ちなみに、現実にはおぎぬまXと言うギャグ漫画家がいるが、おぎぬま氏の場合は、とにかく四コマ漫画を描き続けた結果、約30年間入選者の出なかったギャグマンガの最高難関である赤塚賞を獲得とした。と言う、実績がある。おぎぬま氏の行動自体は哲平と同じなのだが、彼の場合は起承転結のはっきりした四コマ漫画を描き続け、ネットや自発的なイベントを通じてとにかく作っては発表することを繰り返したことで、ストーリーの構成力とギャグセンスが向上しており、偉大な結果を残したという実績につながっている。


このことからもわかる通り、漫画のクオリティを上げるには『発表』と言う行為がどうしても必要になる。


4.哲平の持つ才能の本質

つまり、彼の持つ努力の才能の本質とは、『どれだけの数をこなしてもへこたれないタフさ』にあるのであって、『積極的に経験を積み他人の知識や新たな見聞を求める好奇心』ではない。


別にどちらが優れているというわけではないが、クリエイター、特に小説家や脚本家、そして漫画家と言ったストーリー性のある創作物を作るのに重要なのは後者の才能であり、前者の才能はどちらかと言えば、ルーチンワークでノルマをこなす製造業の流れ作業や、地道な聞き込みをこなす刑事、日々の反復練習が重要な格闘家や武道家に求められる資質である。


また、このルーチンワークに強いと言うのは、純粋な画力の向上と言う意味でも必要となる能力ではあるので、アニメーターやイラストレーターと言った『外部から頼まれて絵を描く』という仕事なら、絵描きとしても向いているともいえる。


いずれにしろ、努力家としては『どれだけの数であろうともこなすことができるという精神力』と言う才能は持っているものの、上記で指摘されたように、哲平は非常に自分本位な性格の持ち主であるがために、その才能を何一つ生かすことができずにおり、視野が狭く全ての努力を無駄にしてしまっている。


つまり、漫画家として彼の才能を総評するのなら、『独りよがりの考えが強すぎる所為で、才能を何一つ生かし切れていない人物』という事になる。


本来、彼は精神的にタフではあるが、聡明な人物でも、優れたアイディアを思い立つ人間でもない。それはつまり、彼の性格をコントロールし、助言できる人間がいて初めて開花する才能の持ち主であり、パートナーとなる別の誰かがいることで真価を発揮する人物ということである。


彼の様な人間が主人公の場合、『頭脳』となるべき人物がいなければ、そもそも話が始まらないのだ。特に、最初の担当編集である菊瀬編集は、具体的なアドバイスと悪いところを的確に指摘してくれる率直さを持ち、何よりも、良くも悪くも哲平の才能について知り尽くしていた唯一の人間である。


まさしく哲平にとっては彼の『頭脳』となりうるにふさわしい人物であり、彼の意見を真摯に受け止め素直に聞き入れていれば、盗作に頼らずにきちんと漫画の連載を勝ち取ることができたかもしれないし、そもそも四年間にも渡るネームの全ボツを食らう必要すらなかったかもしれないのだ。


実際、哲平が就職した時間軸の世界では、8年後に彼は独力で読みきり作品のジャンプ掲載を勝ち取っている。これは就職して社会人経験を積んだおかげで哲平が自身の独善的な性格をコントロールする術を身に着けたおかげと考えられる。こうした経験が、物語冒頭の菊瀬編集のアドバイスと指摘を素直に聞き入れ、漫画の制作に生かすことに繋がり、8年後の哲平の担当編集(菊瀬編集かあるいは他の編集かは不明)もまた、哲平の才能の悪い部分の補佐と、良い部分の支援を的確に行えたと考えられる。


結局、別の時間軸でも本編時間軸でも、最終的に哲平は、菊瀬編集が物語冒頭で言ったアドバイス通りの作品作りを行ってたのである。そこから考えると、作品の質はともかくとして、彼の殻を破るきっかけは、ずっと前から菊瀬編集に与えられていたのであった。惜しむらくは、本編終盤まで彼のそう言う長所が何一つ生かされることなく話が進んでおり、単なる悪人になり下がったことである。


最初から真面目に菊瀬編集と向き合っていれば、もしくはタイムマシンの事を菊瀬編集に相談していれば、あるいはきっと違う未来があったのかもしれないが、生来の自分本位の性格が災いして、そうはならなかった。事実として残ったのは、『盗作と言う犯罪に手を染め、それを他人に隠し続けたことで、その本来の才能と能力を潰してしまい、結果として多くの人間に嫌われる最悪のキャラクター』になった現実である。


ちなみに、哲平は無限の時間の中で、『アイノイツキに伝えたいことを伝える』為に漫画を描いたのだが、これは第一話で菊瀬編集の言った「君にしか伝えたいものはないの?」と言う言葉を実践してだけに過ぎない。

そして、彼はその無限の時間の中で漫画を描き続けた結論として、「全人類が面白い思う漫画なんて存在しない。たった一人の『同類』にだけでも届いた漫画であれば良い」と言う結論に到達したのだが、これは第一話で言った菊瀬編集の言っている「沢山の人って誰だよ。読者舐めるな」と言う言葉が正しいことを証明してしまう結論である為、少年漫画としては前代未聞の、悪役として描かれた人物の言ったことこそが正しく、主人公が間違っていたと言う結末になってしまった。


擁護材料

基本的に否定的な材料しか存在していない為、余り擁護できない人物ではあるが、それでも一つ一つの事柄には反論できる余地もあるので、記載する。なお、「未来のジャンプが送られてきたら私でも同じことをする」などという擁護をする人もいるが、これは正直哲平のみならずその発言をした人の人間性まで疑われかねない上、「だから何?」で一蹴できてしまうため擁護とは言い難い。


1.彼の行動の動機について

そもそも、彼の『漫画家になってちやほやされたい』という目標であるが、これ自体は別に何も否定される材料ではないし、ありていに言えば多くのクリエイターの原点が基本的にこれである。


例えば、有名な手塚治虫にしても、幼少期に絵を褒められていたことが漫画家を目指す原点になったし、漫画を丸写ししたことに関しても、小学生時代にそれができたことは単純にすごい事ではある。少年ジャンプで連載を勝ち取りたいという事に関しても、単純に日本一売れている漫画家になるための野心からの行動と考えれば、それなりに評価されるべきである。


実際、努力の方向性こそ間違っていると思えるものの、漫画家になるという熱量だけは作中の描写だけでも読者にはある程度伝わるし、何の衒いもなく、金や名声を手に入れて歴史に名前を残す漫画家になりたいと言う理由からそれだけの努力をしていると描写されれば、読者の好みは多少別れはするかもしれないが、素直に応援できる要素ではある。


また、描きたいものがなくとも漫画家にはなりたいという彼の主張も、本質的に言えばバクマンの主人公の二人がそうであり、無個性であるという彼の欠点も、言い換えるならばどんな漫画でも描くことができる才能とも言える。


よりわかりやすい例で言えば、女の子にモテたくてバンドを始めたミュージシャンは数多いし、それで結構大成した人たちも多くいる。そして、実際にそういう人たちでも素晴らしい音楽を生み出すことはできるという実例がある。それに倣えば、哲平の言う描きたいものが無くても漫画家にはなりたいと言う主張も、あながち間違いとは言い難い。


余談だが、少年ジャンプの漫画を応募するコーナーの先生方のコメントにおいて「有名人になりたい、そんな夢でも叶うのが漫画家です」と書かれている時もあったりする。


2.悪事について

彼が漫画を盗作したことに際しても、最初に盗作をしたその際の理由付けについては自己評価が高すぎるきらいがあるものの、タイムマシンによって未来の情報を知った。と考えるよりは現実的であるし、盗作以前の「夢を追い続けても才能が無い所為でなかなか芽が出ない」と言う状況も、良く言えば誰もが経験する挫折であり、ある程度は同情できる部分ではある。


この為、盗作の第一回目に関してだけは、「状況が余りにも現実離れしすぎていた為、盗作を盗作と認識できなかった」と、擁護・弁護できる余地ではある。(いわゆる、「未来のジャンプが送られたら同じことをする」と主人公を庇う人は、この部分だけを抜き出しての弁護論である為、全体的な批判に対する擁護とは言えない)


また、読者の間からも、「ここで開き直って漫画を盗作してくれれば、逆に素直に応援できた」と言われてもいる様に、自分がクズであることを自覚した上で、それでも自分の夢を叶える為に他人を踏み台すると言いきれれば、逆に悪のカリスマとしてそれなりに魅力的な人間に成れたともいえる。


また、揚げ足取りや屁理屈の領域になるが、「アイノイツキが菊瀬編集と組んで哲平に復讐するルート」なら読んでみたかったと言う声が読者から多数上がっていたことから、主人公ではなく敵役として見るならば、話を盛り上げていたとみることもできる。


案外、第7話で「哲平がアイノイツキの命を救う」展開に話を持って行ったのが、作品そのものにとどめを刺したのかもしれない。


3.メタ的な観点から

あるいは、タイムパラドクスゴーストライターのそもそものミスと言えるのは、『盗作』『時空を超えたイツキを救えと言うメッセージ』『未来の名作』と言う要素から『未来を変えるサスペンスで、盗作による変化が鍵』と言うプロットなのに主人公の擁護ばかり描写して、結局『盗作する』ギミックが話に組み込めておらず話の中でそれほど重要ではなかったため、話の主流が逸れてしまったことだ。


そもそも哲平は「盗作によって未来が変わった」と言っているが、作中の世界観的にはともかく、実際の描写で言えば「未来は何一つとして変わっていない」。

これは性格の項目でも書かれているので詳細は割愛するが、要は「アイノイツキ版のホワイトナイトが、どういう形であれこの世に存在する以上、何があろうとも未来の世界ではアイノイツキがホワイトナイトを連載する」。

その為、哲平の盗作は、はっきり言って「アイノイツキの連載にも、アイノイツキの死亡にも何も影響を与えてはいない」為、本質的にはストーリーが何一つとして進んでいないのだ。


此処からストーリーを勧める為には、「アイノイツキ版のホワイトナイトが消え、代わりにANIMAが連載される」「雑誌の広告から未来に起こることが事実だと理解する」等、未来の少年ジャンプが本当に未来から送られてきており、未来が変わってしまったという描写を明確に描く必要がある。

哲平の擁護を優先して描写するよりも、「未来では何が起きているのか」「なぜヒロインは死んでしまうのか」と言った謎を解明する方向に話を進め、本来のストーリーの縦軸『ヒロインの死の真相解明とその改変』に徹して、サスペンスのギミックや歯車として『盗作することによって生じる改変』をしっかりと描写していれば、『許せないけど話の上では存在意義はあった』として主人公は嫌われたままだが本編の評価までは地に落ちることはなかったとも思われる。


佐々木哲平の被害者たち

藍野伊月

佐々木が盗作した「ホワイトナイト」の本来の作者にして本作最大の被害者。佐々木同様、描きたいことがないという表現者としての欠点を持ちながらも、『他人が楽しいと思えるものを描く才能』は有り、10年後には「ホワイトナイト」を連載するはずだった。

しかし、佐々木がタイムマシンによって10年後のジャンプを手に入れ、盗作したことによって、本来彼女が連載するはずであった「ホワイトナイト」は彼の作品になってしまう。


菊瀬編集

佐々木の元担当編集。佐々木が佳作を取って以降は、4年間彼の担当編集としてネームを没にしてきた。佐々木が徹夜で盗作した「ホワイトナイト」を掲載会議に出されたことで佐々木の担当編集から外される。

言い方にとげがあるが、菊瀬編集の指摘は担当編集としてはごく当然の指摘であり、そもそも無個性で凡庸な漫画家志望の青年である佐々木に対して、4年の間は特に自分の好き嫌い等押しつけもせず描きたいものを描かせた上で、作品の問題点を一つ一つ丁寧に指摘し改善を催し、いよいよ後が無くなった主人公にニッチ需要に行くのもアリだと提案するという、担当編集として、4年間ともに漫画の製作に携わった人間として、非常に親身なアドバイスを行い、佐々木の今日の明日にまた持ち込みと言う自分勝手な都合にも時間を割いているにもかかわらず、佐々木によって恥をかかされた上に何の落ち度もないのに謝罪させられるという憂き目にあっている。


関連タグ

タイムパラドクスゴーストライター タイパク

自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪

サイコパス パクリ 凡人 犯罪者


主人公と共通の気質を持つキャラクター

半天狗鬼滅の刃

自己肯定と自己弁護の激しいキャラクター。作中の立ち位置は悪役。特に彼が登場する鬼滅の刃がタイパクと入れ替わる様に連載終了したこともあってか、『佐々木哲平の前世』と呼ばれることもある。逆に佐々木哲平を「現代の半天狗」とする投稿も見られる。余談だが、彼の上司でありラスボス格である鬼舞辻無惨が「私を倒したらタイパクが始まるぞ!それでもいいのか!?」と叫ぶコラ画像も作られた。

パワー(チェンソーマン)

自己中心的なキャラクター。作中の立ち位置は味方サイドだが、悪魔に人格を支配されている。彼女が車を盗む際のシーンが佐々木が盗作を決めたシーンと余りにも同調している為、彼女の盗難シーンで佐々木が盗作した際の本心を表現したコラ画像が製作された。

和泉十七夜(マギアレコード)

こちらも自己肯定と自己弁護の激しいキャラクター。作中の立ち位置は味方サイドかつ善人。しかし言動が(悪気は無いものの)いずれも相手から反感を買うものが多く、仲間から彼女の発言を指摘されても、屁理屈を述べて自分の間違いを一切認めようしない姿勢を持つ。

夢野カケラ(ギャグマンガ日和)

哲平と同じく漫画の中に出てくる漫画家のキャラクター。こちらも哲平と同じく人間性に問題があり、漫画の才能がなく、編集部の人間だけでなく読者にすら嫌われる人間性をしているという特徴がある。ただし、彼の場合はどれだけつまらない漫画であろうとも実力で連載を勝ち取れるだけの地力があり、また、つまらないと言われる漫画でも明確に作中で内容が描写され、最終回になってのその怒涛の伏線回収の手腕に関しては現実の読者から一定の評価を得ているという違いがある。

よしいうすと(クレヨンしんちゃん)

哲平と同じく漫画の中に出てくる漫画家のキャラクター。こちらも短気でスケベで大人げない性格で哲平と同じく人間性に問題、妻にも編集部にも馬鹿にされたり見下されたりファンであるマがありサオからも「人間性は最低」と言われてしまっているが彼の作品である「少年忍者吹雪丸」自体は人気があり売れっ子の漫画家である。

フェイスレス(からくりサーカス)

自分に都合の良いことは善だと本気で信じて悪逆の限りを尽くした男。目的のために長い時間を費やしても挫けない精神力と、綿密で狡猾ながら人生の転換(悪に踏み切る時)は場当たりとも言うべき点が共通するが、振り切っている分、ある意味で哲平を限りなくスケールアップさせた男。

ビフ・タネン(バック・トゥ・ザ・フューチャーPART 2)

シリーズを通しての悪役キャラクター。短気でスケベで大人げない人間性に問題がある性格であり、周囲に対し横暴を働いていた。PART 2において主人公のスキを突く形で主人公側所有のデロリアン(タイムマシン)で勝手に過去へタイムスリップし、ギャンブルスポーツのデータ本である『スポーツ年鑑』を過去のビフに渡してしまう。その結果として(本作の哲平と同じく)知り得た未来を使い利益を独占し、ついには財界人として米国全土を支配する立場まで上り詰めることになる。しかしながら歴史を元に戻そうと現れた主人公側に対し激しく抵抗するも敗北、アメリカを牛耳っていた世界線と同時に消滅した。

連ちゃんパパ

特定のキャラクターではなく大半の登場人物が佐々木哲平と同じ思考で悪事を行っている。また、外道を働く主人公に対して大きな制裁が無いままストーリーが終わる点も共通している。

似て非になるキャラクター

キング(ワンパンマン)

他人の地位と実績を意図せずして盗んでしまった者繋がり。ただし、キングの場合は本人が現れた際には洗いざらいすべての真実を話し、本人に説教されまくるという罰を受け、その上で本人と良好な関係になったという違いがある。

また佐々木の様に盗作における勝手な拘りで苦労しているのではなく、地位と名声に見合った命のリスクが降りかかり実績を奪ったことが実質的な罰となっていること、そしてその境遇にめげず本人なりの気骨やコミュスキルでリスクに果敢に立ち向かっていることが最大の違いである。

メタ的に言えば、キャラクター描写として一番佐々木哲平に近いキャラクターだが、主人公に次ぐほどの人気を得て読者から愛される良キャラクターであり、本来はこういうキャラクターを手本に作れば、主人公として人気が出たと思われる。

昴(昴)

曽田正人の漫画の主人公。内面に関して自己憐憫の権化やナルシストと評されとこともあり、ある意味で哲平と似たメンタリティを持つ。しかし、昴はその性質を自分の演技に昇華させ、糧とする表現の天才であり、見る者に感動や陶酔をもたらす点で異なる。

ミスター・サタン(ドラゴンボール)

主人公達の活躍があまりに現実離れしてたため、功績が自分の手に転がり込んでしまった格闘家。下心があったりときたまヘタレたりすることはあるものの、本質的には弱者や家族を守る気概を持ち合わせた人物。

魔人ブウ編ではレギュラー陣が力づくで倒そうとする中で状況の変化もあったとはいえ彼を諭し悪行をやめさせるという方針を取り、クライマックスでは全人類を説得して純粋ブウを倒すための元気玉を完成させたり力尽き現場で倒れていたベジータを危険を顧みずに担いで避難させるなど事態の打開に多大に貢献した。最初は身の程知らずと呆れはてていたZ戦士たちもブウへの説得を目の当たりにして以降は「自分達に力はかなわないが立派なチャンピオン」と評価を改めている。いわば力ではなく心が強い人。

岸辺露伴(ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない)

売れっ子の漫画家であり、週刊少年ジャンプに連載をもつキャラクター。かなり自己中心的で身勝手な性格と言う点と、タフな精神力と持つという点は共通しているが、漫画に対してただルーチンワークをこなす哲平と違い、「リアリティを追求する」為の好奇心と行動力が強いという点が違う。何よりも、「みんなに読んでもらうため」に作品を作り続けており、「金やちやほやされるためではない」。と言う点が最大の違い。そして、自分にも他人に対しても非常にストイックでかつ義理堅く、反省や学習の心得もある。

石墨超一郎(仮面ライダーゼロワン)

仮面ライダーゼロワン第5話のゲストキャラクター。表向きには長期連載作品を持つ人気漫画家であり、その作品に対する熱心なファンも多い。しかし、自分自身の手で漫画を描いていたのは過去の話。近年ではもっぱらアシスタントの多数のヒューマギア(作中世界の商用アンドロイド)を奴隷の如く酷使する状態で漫画を描かせており、事実上制作を丸投げし、利益のみ得る状態になってしまっていた。しかしこれには機械との共存に対して自分の仕事に対する自信の無さ、それに起因する割と深刻なスランプに陥っていたいう理由があり、(本作の哲平と違い)元々の良い性格は失われていなかったため、敵勢力の襲撃、及びそれに対する主人公側の活躍を目の当たりにし、それをきっかけとして元の情熱的な性格を取り戻す。その後は自ら使用ヒューマギアの数を最小限まで削減し、彼らとの良い共存関係を図りつつ再び自身の手で漫画を描き始めている。

霊幻新隆(モブサイコ100)

霊能力を持っていない為主人公がもっている超能力で依頼を解決することもあるものの、根本的に人を騙して自分だけ甘い汁を吸う(さらにはそんな倫理観のない言動を正当化する)性格ではなく、能力が使えないなりに体は張り主人公の悩みや依頼にも真摯に応対して責務を果たしている。イツキの人生を自分の利益の為だけに滅茶苦茶にしている哲平とは違いきちんと”師匠”としての役割を全うしている。

大木大樹(Dr.STONE)

長い時間の孤独をも耐え切れる強い精神力と、熱血的で馬鹿正直な性格と言う共通点を持つ人物。また、ルーチンワークに強いと言う共通点もある。他にも、ヒロインの為に行動する行動力を持つと言う点も共通。ただし、彼の場合、自分自身が考えることが得意な人間ではなく、自分の得意分野がルーチンワークにあり、難しいことを考えるのは他人に頼れば良い。と言う自分の分を弁えたところがあり、何よりも、早とちることはあっても、他人の話を素直に聞き、他人とのコミュニケーションをきちんと図ると言う能力が備わっているのが哲平との最大の違い。

ドラえもん(ドラえもん)

タイムマシンで未来に行って人気漫画の最新号を読み続けるあやうし!ライオン仮面と言う話がある。そこでドラえもんは、人気漫画のライオン仮面の最新号を読んだことで、次号のアイディアが出ない作者のフニャ子フニャ夫に頼まれて未来の漫画を読み続けてアイディアをフニャ夫に渡し、最終的にはフニャ夫に頼まれてライオン仮面の続きを描くと言う事態に陥っている。この話においてドラえもんは行動としては哲平と同じく未来の人気漫画を作者に代わって執筆しているが、盗作した末に勝手に漫画の続きを描くことを決めた哲平とは違い、本来の作者から正式に漫画の執筆を依頼されて引き受けていると言う点が最大の違い。

そしてタイムパラドックスとは名ばかりのタイパクとは違い、「結局この『ライオン仮面』は誰がいつ考えたストーリーなのか?」というパラドックスがちゃんと発生している。

野比のび太(ドラえもん)

ひみつ道具『未来図書券』を使って未来の漫画雑誌を取り寄せ、その中の特に面白かった新連載『時空パトロール7』を真似て漫画を描いたことがある。のび太はジャイアンとスネ夫を驚かせてやりたかっただけだが、その偽物漫画がジャイ子経由で出版社の手に渡ってしまい、雑誌で連載されることになってしまった。ドラえもんは続きをどうやって書く気だと詰め寄るが、のび太は「また未来の雑誌を取り寄せて真似ればいい」と哲平と同じことをやろうとする。しかし「本来の作者による第一話より先にのび太の偽物が世に出た=本来の作者が盗作したことになった」ため、それ以降未来の雑誌に『時空パトロール7』は掲載されなくなってしまった。

のび太は単に友達をびっくりさせたかっただけであり、出版社の人が来たときは慌てて事情を説明しようとしたが、相手が話を聞かずに帰ってしまった。そして前述の展開になったときには「(本来の作者に対して)悪いことしちゃった! どうしよう!?」と動揺している。子供なので言葉は軽く見えるが、「自分自身には漫画の才能が無く、他人のアイディアで作品を作っていたこと」や「続きを自分が考えなくてはならないこと」ではなく、「本来の作者にとんでもない迷惑をかけたこと」を後悔したのが哲平との明らかな違いである。そしてその後はドラえもんと共にタイムマシンで過去へ戻り、自分の描いた盗作原稿が世に出るのを阻止している。

なお、過去に戻ったのび太とドラえもんが盗作原稿をゴミ箱に捨てると、なんとそれを本来の作者が拾って読み、「アイディアが出なくて困っていたんだ! これを僕に描かせてくれ!」と頼みこんできて二人は困惑することになる。上記のドラえもんと同様、「漫画のストーリーは誰がいつ考えたのか」というタイムパラドックスが発生している。

他にものび太はひみつ道具で宝探しを行い、古代生物の化石を見つけたことがある。しかしドラえもんが調べた結果「この化石は22世紀の小学生が発見することになっていて、今掘り起こせばその子の発見を横取りすることになる」と判明したため、のび太は潔く諦めている。のび太は欠点も多いが、「他人を尊重する」「自己正当化ばかりせず、己の過ちを正せる」という点で哲平とは雲泥の相違がある。もちろん過ちを指摘して叱ってくれるドラえもんの存在も大きいが、哲平にも菊瀬がいたはずである。

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