「我々イエスタデイ・ワンスモアは、いよいよ悲願の第一歩を踏み出す。我々の時代……黄金の20世紀が蘇るのだ」
「諸君の、高度経済成長的頑張りを期待する」
概要
オトナ帝国の逆襲に登場する組織イエスタデイ・ワンスモアのリーダー。
20世紀博の中にある下町のアパートでチャコと同棲している。
汚い金と燃えないゴミばかりで溢れかえった21世紀を憂いており、日本をまだ人の心ががあったとされる20世紀に逆戻りさせようと企てる。
活躍
大阪万博を模した20世紀博をオープンし、大人達の懐古心を増幅させた上でテレビの電波と懐かしいニオイを使って洗脳。さらにトリガーとなるテレビ放送によって大人達を20世紀博へと連れ出す。
その後、残った子供達も二十世紀に馴染む様に洗脳する子供狩りを始め、この時にかすかべ防衛隊を率いて大人達の奪還を目指すしんのすけと初対決。
なお、その際に愛車がボーちゃんの運転ミスでフロントバンパーにキズをつけられたり、しんのすけの放尿の直撃を受けるなど散々な目に遭っている。
その後、過去の記憶に浸っていたひろしとみさえを、しんのすけがひろしの足の臭いで洗脳から解放した事で、野原一家に興味を持ち、アパートに一家を案内する。
そして、自身が用意した二十世紀のニオイの事と、20世紀博の中心にあるタワー頂上にそれを拡散する装置のボタンがあり、懐かしいニオイを日本全土に放つ事で二十一世紀から二十世紀に逆行させようとする計画を、テレビ放送を見せる形で説明。野原一家と未来をかけて戦うことになる。
「オレはこの紅茶を飲み終えたら、タワーに上り、あのボタンを押す。今度は足の臭いでも、元に戻れないだろう」
「お前たちが本気で21世紀を生きたいなら、行動しろ。未来を手に入れて見せろ!」
「……早く行け。グズグズしていると、またニオイが効いてくるぞ」
そう言って、野原一家を特に止めるでもなく先んじて送り出し、その背を見送る。
計画の妨害を許容するかのような態度に、チャコからは咎められるが、涼しい顔で受け流していた。
そして、後からチャコと共にタワーに上り、頂上にたどり着くが、限界を超えた全力疾走でしんのすけが追いついてくる。
しかし、しんのすけの、そして野原一家の未来を諦めない姿勢によって、大人達の懐古心が収まったことで計画は頓挫。
ケン「……ダメだ。見ろ、ニオイのレベルが……」
「町のみんなもあいつらを見て、21世紀を生きたくなったらしい」
チャコ「嘘……! 嘘でしょ!? 私たちの街が、私たちを裏切ったっていうの!?」
ケン「そういうことだ。みんな、今日までご苦労だった。外へ行っても、元気でな」
しんのすけに「お前の未来、返すぞ」と言い残し、チャコと共にタワーから飛び降りようとする。
だが、バンジージャンプと勘違いしたしんのすけに「ズルいゾ!」と止められ、さらにその声に驚いた、飛び降りようとした場所に巣を作っていたハトに襲われて失敗。
しんのすけ「ズルいゾー、二人だけでバンバンジージャンプしようなんてー。オラにもやらせろー!」
ケン「……いいや……もうやめた」
しんのすけ「どして? おマタヒューってなったの?」
ケン「あぁ……」
最後の最後で「また、家族に邪魔された」ケンだが、その表情は背負っていたものを降ろしたためか、清々しいものだった。
その後は、愛車・2000GTに乗ってチャコと共にどこかへ去って行った。
ボスキャラとしての能力
クレしん映画に登場するボスキャラの中では自己主張の強い方では無く、余り目立たないものの、クレしん映画の中でも屈指の組織力と経済力を持つ存在である。
上記の通り、20世紀博を建設したことやトヨタ2000GTを愛車にしており、これだけでも相当な規模の大富豪である。(ちなみに2000GTの当時の価格は約230万、当時の大卒の初任給が2万6000円である)
また、住んでいる場所に関しても、寝起きしている場所は場末こそアパートの四畳半あり、進んで協力している人間が多数居るとは言え、地下に町を丸ごと一つ作っており、さらにはそこを自分好みの夕焼けで統一している。
さらに今までの映画の敵と違い、直接的な戦闘ではなく、あくまでも匂いを通して大人たちの心に訴えかける事でしんのすけ達を追い詰めたと言う、珍しいタイプの敵である。
ケン自身も武装を施したり、特殊な能力があったりするわけでも無く、特殊な技術がある以外では、基本的にただの人である。
そして、組織の戦闘員や大人達は玩具で武装していた。
さらに、映画のボスとしては非常に潔く、計画がとん挫し、イエスタデイ・ワンスモアのメンバーたちが21世紀を望んだことについても全く咎めず「元気でな」と送り出している。
ケンが渇望した昭和とは何か?
作品中に登場した20世紀博が再現した20世紀は「昭和という時代における戦後~高度経済成長期以降の輝いていた部分を上澄みとして汲み取った風景」、悪くいうならば「昭和の負の歴史を無視し美化した作り物の20世紀」だったといえる。同時にリアルタイムに抱いた未来から目を背け新時代を否定するものだった。
評価
オトナ帝国を代表するキャラクターであると同時に、クレしん映画でも異質なボスキャラ。
「大人」になった人からすれば、彼の行動理念や思想には少なからず同意できる所が存在し、「子供」から見ても、何となく悪い人たちに見えない様な描写が多い点が、彼の異質さをよく表している。
野原一家に対しても明確な敵意や殺意が存在せず、むしろ彼らには自分の計画や、今までの事件の真相を話したり、自分を止める方法とそのチャンスを与えるなど、悪役と言うよりも、ライバルとか敵役とか言った描写が目立つところも、他のクレしん映画のボスキャラとは一線を画す所である。
また、ボスキャラとしては珍しい事に、彼とその連れ添いであるチャコとの過去が語られていないにも関わらず、ファンや視聴者から同情されるキャラクターであり、この部分は彼とチャコの複雑でミステリアスな人間性を表している部分である。
関連タグ
ともだち:二十世紀と言う過去に強く執着している。組織の戦闘員たちの装備がほぼ玩具。と言った繋がりがある。