概要
自家用車を所有しなければ、日常生活が極めて不便、または困難となる地域のことを指す。
日本ではいわゆる過疎地が主であるが、地方都市や大都市周辺の郊外地域でも普通に見られる。
米国
20世紀初頭、全米の大都市にはくまなく路面電車が開通し、大都市の近郊には「インターアーバン」と呼ばれる鉄道網が整備されていた。
しかし1920年代になると一般市民でも乗用車を購入・所有できるようになってモータリゼーションが到来。
さらに地方都市の中間層以上が落ち着いた自然や治安を求めて郊外へ移住するようになり、旅客鉄道の整備では間に合わないような都市開発が進んだ。
同時にモータリゼーションの到来は公共交通機関の衰退につながっており、1930年代から60年代には全米から路面電車やインターアーバンが廃止に追い込まれるケースが続出した。しかしながら自家用車を所有出来ない貧困層が決して少なくないこともあり、都市周辺では一定の路線バスが整備されていることが多い。
こうした郊外都市の拡大が全土で広がり、現在アメリカの旅客鉄道は古くからの大都市の中心街を除いては、日本や欧州諸国と比較すると広大な国土の割にはあまり発達していない。
その一方で長距離の都市間国道や無料の高速道路網が全土にほぼ満遍なく整備され、「自動車旅行」やモータースポーツという産業と文化が発展した。
その栄枯盛衰は「古き良きアメリカ」の文化として、ディズニー作品カーズの題材としても描かれている。
日本
日本では1960年代後半以降になると、本格的なモータリゼーションが到来、並行してこれまで劣悪だった道路網の整備が急速に進んだ。元々公共交通機関が貧弱だった地域では一気に車社会化が進行して、地方の小規模鉄道はもちろん、大都市でも慢性的な大渋滞によって邪魔者とみなされた路面電車の撤去が強力に進められた。
そして先進国の宿命として70年代には少子高齢化が始まった事、80年代以降に国鉄及びJRが赤字路線の廃止を進めた事なども相まって、地方部における車社会化が進んだ。
自家用車への依存は何も公共交通機関の乏しい地方都市に限った事だけでなく、大都市周辺の郊外などでも見られる。
特に近年は大都市やその郊外の地域でも、赤字や乗務員の確保などの問題から路線バスの減便や廃止が相次いでおり、結果として自家用車に頼らざるを得ないケースが増えているからである。
また、いわゆるニュータウンとして高度成長期以降に丘陵地や田畑を造成した地域のうち、諸事情で鉄道やバス路線があまり開通しなかった地域にも車社会が見られる。(新規の入居者が元々自家用車を所有しており、公共交通機関を使わずに通勤するケースも多い)
なおこのような地域ではロードサイド型の小売店やサービス店が比較的発展しており、近年はマイカーを持たない住民向けにコミュニティバスの路線が新設されるなどの傾向が見られる。
問題点
上記のように日本に於いては、元々公共交通機関が貧弱だった地域が一気に車社会化して、既存の交通機関が消滅してしまった「空白域」が極めて多いことが挙げられる。
こうなった地域では就学者の通学の困難化など、日常生活そのものまで支障するようになり、結果として(特に若年層の)人口流出と過疎化が止まらない悪循環に陥っている例が全国で見られる。
さらに高齢者が交通事故のリスクを感じつつも、自動車の運転を継続せざるを得ない状況であることも少なくない。