植物を細部まで正確に描いた絵のこと。植物細密画、ボタニカルアートともいう。
植物図鑑などで見られる。
「植物」タグと比べるとよりリアル絵で、植物だけを描いたイラストが多い傾向がある。
植物画(ボタニカルアート)と、植物をモチーフとする一般的な絵画との違いは、植物画は植物学・農学・薬学・地理学、あるいは園芸など植物に関わる学問・産業に資することが目的であった点である。カラー写真技術がまだなかった時代、植物知識は主に実物の標本に頼っていたが、標本は時間の経過で変色・褪色、委縮し生育時の状態そのまま保存することは難しかった。そのため、百科事典や植物図鑑に代表される学術文献の挿絵、あるいは園芸業者の販売カタログのように、植物の美しさとは別にその解剖的正確さが要求される場面において、植物が生きているときの状態を精密に描く植物画というジャンルの需要が生まれた。一般的絵画では画家の美意識に基づく取捨選択で植物体の一部を誇張または捨象するが、植物画では花から根までを正確にスケッチし、収録する文献の目的に基づいてその植物の特徴を損なわない範囲での誇張や捨象(例えば、葉と花が同じ時期には出ない植物を一つの挿絵で説明するため便宜的に葉と花の両方ある絵として描く、長大な根のすべてを描かずに根の先端から根元までの途中を省く、など)を施すにとどまる。日本では江戸時代初期から本草(薬になる動植物や鉱物)の研究が盛んになり、中国から本草綱目という薬草の手引書が導入されたが線画でありしかも想像図が多かったため江戸後期には旗本かつ本草学者である岩崎灌園(いわさきかんえん)が植物に関する解説や図を拡大し着色した日本最初の植物図鑑ともいうべき「本草図譜」を世に出し、ついで幕末に本草学者の飯沼慾斎が花や葉の特徴を丁寧に捉えた「草木図説」を世に出した。