概要
自家用車を所有しなければ、日常生活が極めて不便、または困難となる地域のことを指す。
日本ではいわゆる過疎地をはじめ、地方都市や大都市周辺の郊外地域で見られる。このような地域では高齢者は交通事故のリスクを感じつつも、自動車の運転を継続せざるを得ない。
アメリカ合衆国
20世紀初頭、全米の大都市にはくまなく路面電車が敷設され、大都市の近郊には「インターアーバン」と呼ばれる鉄道網が整備されていたが、1920年代、GMや石油関連企業が出資したナショナル・シティ・ラインズ社が全米各地のインターアーバンや路面電車の会社を買収し、これらの路線は次々と廃止されていった(アメリカ路面電車スキャンダル)。
結果として、1970年代までには米国の旅客鉄道は近郊交通機関、および都市間交通機関としてほとんど機能していない状態になり、全米の多くの都市の中心市街地は荒廃。「アメリカで車なしで過ごせるのはニューヨークかサンフランシスコぐらい」と言われる状態になった。車社会を維持しようとするビッグスリーの政治力は今なお強く、高速鉄道の敷設が頓挫している一因となっている。
日本
日本では1960年代後半以降、本格的なモータリゼーションが到来、並行してこれまで劣悪だった道路網の整備が急速に進んだ。元々公共交通機関が貧弱だった地域では一気に車社会化が進行して、ローカル線は大打撃を受ける。また、国鉄も長らく汽車ダイヤと呼ばれる長距離列車用のダイヤ設定をしており、近距離移動には注力していなかった。さらに大都市でも慢性的な大渋滞によって自動車交通の邪魔者とみなされた路面電車の撤去が強力に進められた。
1980年代には国鉄及びJRが赤字路線の廃止を進め、公共交通機関が無い「交通空白域」が全国至る所に発生した。さらには1990年代には地方都市郊外にショッピングモール、ロードサイド店舗が増殖しファスト風土化が進み、商業エリアが分散した。
このような地域では通院や買い物、通学の困難化など、日常生活そのものまで支障をきたすようになり、結果として若者はもとより高齢者まで難民となる事態になっている。
公共交通は営利目的であり支援の対象でないという思想が長らく強く、多くの公共交通路線が使いにくいまま放置された。コミュニティバスが本格化するのは2000年代のことである。公共交通に見切りをつけた学生は自転車や送り迎えに転向し、結果的に暴走自転車や送り迎え渋滞が増えることにもつながっている。
また、こうした地域の学生は、親にロードサイドまで送ってもらわなければ何事もできないという非文化的な生活を余儀なくされる。
自家用車への依存は何も公共交通機関の乏しい田舎や地方都市に限った事ではなく、三大都市やその周辺の郊外などでも見られる。 近年は三大都市やその郊外の地域でも、赤字や乗務員の確保などの問題から路線バスの減便や廃止が相次いでおり、結果として「電車と(不便になった)バスを乗り継ぐより、自家用車で直接目的地に向かう方が早くて便利」な状況になってしまうケースが増えているからである。
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