夏侯惇とは三国時代の曹操軍の将軍である。字は元譲。
呂布との戦いの中で左眼に矢を受け失ったことから隻眼の将として知られている。
演義においてはその際に射られた左眼を「これは父母から貰った物である。どうして無駄にする事ができようか」と食した事で強烈な印象を残した。
上記のように武官としての印象が強い夏侯惇だが(そして演義や多くの創作物でその様に描かれるが)、史実では李確軍にフルボッコにされたりと戦闘関連では意外に冴えない所がある(むしろ、それは曹操の仕事だった)。
一方で軍費が足りない時には自分のポケットマネーから兵士の給料を出したり、宮殿の造営において駆り出された人夫たちと一緒に働いたりと、政治面ではその清廉な人柄によって曹操の名補佐役を務め上げ続けた。その功から最終的には大将軍の地位に任ぜられる。
曹操も臣下の礼を取らないでよい特別待遇に遇しようとしたが、夏侯惇はそれを固辞し君臣の節度を守り続けた。220年、曹操が亡くなったのを追うかのようにその直後に死去。
近年発見された彼の陵墓から見つかった副葬品は、彼の清廉さを示すかのようにただ剣一本のみであったという。
なお、彼のトレードマークともいえる“隻眼”であるが、片目を失ったことは本人には相当のコンプレックスであったようで、「盲夏侯」とあだ名される事を大変に嫌ったり、鏡を見るごとに地面に叩きつけていたという。
園田光慶の描いた漫画「三国志」に登場する夏侯惇は、最後の登場まで両眼で曹操に“経済の鬼”と評される人物になっている。