概要
キクリヒメの名の語源は、“ククリ”、物事をくくることといわれるが、「水を潜る(水の神)」、「糸を紡ぐ(養蚕)」、「“高句麗”の訛ったもの」など諸説ある。
キクリヒメは北陸地方を中心に分布する白山神社の総本社「白山比咩神社」の祭神であり、白山比咩大神と同一視される神である。
豊かな水源である白山の女神であることからキクリヒメは五穀豊穣、子孫繁栄、そして良縁成就の神徳を持つとされ、その信仰は現代にまで続いている。
しかし、記紀神話におけるキクリヒメは「日本書紀」に一度登場するだけである。
それはイザナミに会う為に黄泉に下ったイザナギが、変わり果てた妻の姿を目にして驚き逃げ出した後、黄泉比良坂で両者が言い争う場面である。どこからか現れたキクリヒメがイザナギに何ごとかを語りかけると、イザナギはそれを褒めたたえて地上に帰って行ったという。
謎の多い場面ではあるが、相争う二神を調停したということからキクリヒメは良縁成就、『縁結びの神』とされるようになった。
また、生者と死者の間を取り持ったことや、山が古来から祖霊の鎮まる地であったことから、山や神に仕える巫女(イタコ)の神ともされる
なお、キクリヒメが白山比咩大神と同一視される理由は判然としない。
一応、白山開山の祖・泰澄上人が修行中に白馬に乗ったキクリヒメと会い、白山山頂で修業するように勧められたことから山に入り、その山頂で白山比咩大神の本地仏である十一面観音が示現したという故事がある。
しかし、白山は大陸から渡来した仏教と旧来の山岳信仰が早い段階で習合しているため、この逸話が両者を結び付ける理由とはなりえないのである。
女神転生シリーズのキクリヒメ
初出作品はFC「女神転生2」で、種族は“幻魔”。以後は“女神”や“地母神”族の悪魔としてシリーズを通して安定した登場率を誇りっている。
ゲームでは回復・補助スキルに秀でた物語中盤の攻略を支える仲魔として活躍する。なお、白山の女神である為か、氷結属性スキルを所持していることがあり、「真・女神転生Ⅲ」では日本書紀の記述になぞらえた専用会話スキル『乙女の仲裁』が実装されている。
「真・女神転生デビルサマナー」までは和装、特に赤い衣服に身を包んだ姿であったが、「真・女神転生Ⅲ」以降は、黒い肌、白い髪、勾玉を各所にあしらった巫女服が特徴的なデザインで登場している。