CV:大塚周夫(OVA)/小山力也(2015年TVシリーズ)
概要
“とら”は、藤田和日郎原作の少年漫画『うしおととら』に登場する妖怪であり、もう一人の主人公。虎に似た金色の毛並を持った巨躯の大妖怪。
主人公蒼月潮の自宅である寺・芙玄院の蔵の地下で、獣の槍によって500年もの間封じられていた強大な力を持つ妖怪。潮によって獣の槍の封印から解放され、その潮を喰らうために取り憑いた。
齢2000歳を超える大妖であり、かつては近隣一帯から恐れられていたほど凶暴な存在だった。
長く生きているだけあって妖怪や様々な術、さらには人間社会を含む世相や歴史等に関する深い知識を持ち、純粋な好奇心のほかに探究心や知識欲も強い。
かつては「雷獣」「わいら」など色々な名前で呼ばれていた。日本の妖怪たちの間では「長飛丸」で知られている。これは山の一つ二つを一瞬で飛び越えるほどの速度で飛べるところからきている。ただし、潮が「とら」と名づけて以来、長飛丸と呼ばれると「長飛丸と呼ぶんじゃねぇ」と口癖のように言っている。
- 見た目は、ぶっちゃけると鬣があるので虎よりはライオンっぽいが、なぜ「とら」なのかについても、実は深い所以がある。
その実力や800年前の白面の者との戦で見せた勇猛な戦いぶりから妖怪の中でも一目置かれる存在で、その名を聞いただけで震え上がる妖怪も多い。
また、その知名度を悪用して跋扈する妖怪もいる。俗に歴史上の偉人と呼ばれる人々とも(関係の善し悪しは除き)知り合いであり、彼らの生涯に影響を与えてきたこともある。だが、年若い妖怪からは知られておらず、出会ったばかりのかがりには腕を切り落とされているほか、一角にはジジイ呼ばわりされている。
実際キャリアの割に精神年齢が子どもっぽいところがあり、潮と本気で喧嘩を楽しんだり、心理や行動パターンは、そこらの不良少年とさほど変わらない。一角戦では何もせずに見物を決めていたが、ジジイと言われた事に激怒して一角にスピード勝負を持ち掛けている。
- しかし、妖怪としてのとらは、孤独だが自分の好きに生きていることで、「得られなかった人生」をやり直していると言えなくもなく、言葉遣いふくむ彼の幼児性は、全ての始まりから追ってみると意外と辻褄が合うだけでなく、けっこう切ない由縁と想いがあるのかもしれない。
喰う喰う詐欺で有名(拝借表現)。獣の槍から解放された後、たびたび人間を喰おうとはするが現代の人間が身にまとう香水や装飾品が不快で喰えずにいた。
そんな中、井上真由子からもらったハンバーガー(特にてりやきバーガー)を食べて好物になる。その他にも人間が食べる様々な食物を普通に食べているので慢性的な空腹ではないようだ。
他に海で鮫を食べたり敵対した妖怪に噛みつき攻撃の果てに食べたり、原作ではアイスキャンディーを食べてたり潮からじゃがバターやカレーパンを横取りしたり、他人から焼き鳥を横取りして食べたり、OVA版ではギョーザを食べている場面もあり、小説版では校庭の隅で芋虫をつまみ食いしていたことが判明し、相当な雑食である。また、鏢とのやり取りで酒の飲み方は知っている模様。
当初は潮を喰うチャンスを狙い、潮はとらが人を喰わないように見張るという奇妙な関係だったが、さまざまな妖怪との戦いを経ていくうちに互いに絆を深めていき、やがて東西の長達から「2体で1体の妖」「2体で最強」と称えられるほど、一心同体の闘いぶりをみせるようになる。
普段は喧嘩ばかりの二人であるが、潮と深く関わっていくにつれ、喰えるチャンスがあるにもかかわらず何故か潮を喰うのを躊躇したり、他の妖怪に喰わせない為に守るという矛盾的な行動を取ることが多くなる。とらの「喰ってやる」という言葉の裏には「他の者に害されないように自分の口の中に隠しておく」というニュアンスが含まれているらしく、潮以外にも真由子に対して使っており、真由子に対してはより保護の意味合いが強い。
結局、潮も真由子も「喰って」しまわなかったが、その過程において様々なものを潮たちから「喰って」おり、当初のただ凶暴な性格から変化していった。そして最期には「もう喰ったさ。ハラァいっぱいだ。」と述べていた。
物語の終盤で明らかになるが、とらと白面の者と獣の槍との間にはとら自身も知らない大きな秘密がある。また、なぜ「字伏」と呼ばれる謎の妖族が一世一代一雄なのか、その理由と出次にも深く関わっている。
ちなみに、初期のデザインでは瞳があった。
能力
物語中で「雷と炎の化生」と呼ばれたこともあり、その二つ名の通り火炎を吐き、凄まじい破壊力を持つ雷を自在に操る事が出来る。
その他にも圧倒的な速度で地を駆け空を飛ぶ、暴風や旋風を起こす、真空波の刃を飛ばす、雷雲を自在に操りまた其れを纏い超スピードで飛ぶ、召喚した雷雲からほぼ無尽蔵に雷撃を発射する、妖気の衝撃波を出す、姿を消す、壁を通り抜ける(材質がガラスや鉄などの場合は不可)、鬼太郎に迫る多彩さで髪や体毛を武器にする(触手としてだけでなく、硬質化させて攻防に転用したり、毛に妖気を込めて敵に追尾発射して爆破する事も可能(衾戦で見た人間のミサイルをマネしたのかもしれない)、自分から切り離した毛の塊に術をかけて任意の人物のダミーを作り出す(本物の行動や言動の完全再現は無理だが怪しまれない程度の行動はさせられる)、気配や感情を察知する、体型を変える(首だけ伸ばして噛みつくなど数多の戦法がある)、変化する、透明になる、隠遁する、等の多種多彩な能力を持つ。
- なお、雷撃と焔とでは、雷雲を起こせる(=周囲にエネルギー源が豊富に存在する)ためか、電撃の方が得意らしく多用しており、破壊力的に見ても 雷撃(条件によって威力の変動あり)≧妖気の衝撃波>火炎と思わしい。その気になれば、火焔と雷撃を融合させる事が可能らしい。
異能の術を抜きにした純粋な身体能力でも、高速で胴体着陸するジャンボジェット機を壊れてしまった着陸用車輪代わりとして機体の速度と重量に負けないよう走りながら支え(流石に機体が静止するころには全力疾走で抉れた滑走路に腰まで沈んで疲労困憊になっていたが)、無事に軟着陸させるだけのパワーとタフネス、堅牢さ、脚力を併せ持ち、至近距離から拳銃で4発撃たれても全ての弾を己の髪で難なく掴み取れるなど身体能力や反応性も非常に高く、たとえ神レベルの存在に体を真っ二つにされても死なず手足をバラバラにされてもそれらの手足を操って攻撃できるなど不死性もかなり高く、その打たれ強さ・厄介さは尋常ではない。
また、こんな見た目ながら飛行速度は凄まじく、飛行能力をデフォルトに近い形で有する妖怪の界隈でも高レベル(「長飛丸」の異名の由来)。直に走る事にも長け、例え昨今のスピード自慢の妖怪も舌を巻く。
上記の通り、長命で知も深く、妖怪の弱点や対妖怪の術などの知識やシュムナや衾の様に有効な対策がない場合は逃走も辞さない高度な戦略性も持っている。また、髪の毛にはセンサーのような探知機能も付いている。
これらの能力は他の字伏にも共通しており、大妖怪の名に相応しい力を持つ。また、獣の槍(ギリョウ)や白面と特に「炎」に関して共通する部分もある。
以上、ゲゲゲの鬼太郎に似た能力も多いが、とらの其れらは(作風の違いも相まって)より ×グロく ○ 威圧感がある。
ネタバレ
転生前は、白面の者に血肉を与えた古代インド・マガダ国の英雄であり呪われし男。悲劇の生い立ちを持つ憎悪の塊であり(邪妖の影響下にあった事も大きい)、白面とは様々な意味でリンクしている。結果、白面から解放された後の方が、より大きな悲しみと憎しみを内包していながらも落ち着きと成熟性を得ているのが見てとれる。
そして彼こそ、獣の槍の最初の使用者すなわち原初の字伏でもある。故に、他の字伏とは(とくに非石化状態での不死性をはじめ)一線を画す様々な特性を備えている。ただし、それ以外の戦闘力とくに攻撃力や破壊力、防御力等に関しては、とらは決して最上位ではない。(たとえ比較対象から紅煉を除いたとしても) 場面によっては寧ろ後代の字伏たちと同等または後代の面々の方が上と思しき感もなくはない。更には、これまた場面によって変動があるが、他の字伏たちよりも小柄で鳥足度が小さく哺乳類の印象が強い。つまり、よりもふもふしているのである。また、顔面の模様(寅柄)には、彼の流した血(魂)の涙の筋の影響が見て取れる。また、断片的にだが転生前の記憶がフラッシュバックすることがあるようである。
- 潮ととらの両者は、獣の槍の誕生と存在そのものに非常に深い因縁を持ち、最後から2番目の槍の使用者ととらの出逢いを含める全ての歴史の流れを考慮すると、最終的に獣の槍が潮を選び、その側にとらがいるのは、他の槍の使用候補者が文句を付ける余地など微塵もないほど相応しい運命的な縁があったのである。
実はとらは、うしおや、その父にして住職たる紫暮が暮らす芙玄院の祖であり、凶悪妖怪として名高かったとらを槍で岩に縫いとめ封印した獣の槍の使い手・草太郎とも、その封印直前のある事件で共闘しており、そこから500年後にその寺の子であるうしおと背中を預けあって戦う相棒となったことを鑑みると、「とらが獣の槍使いと肩を並べて戦う」という因縁(なお、上記の共闘の直後、とらを封印することとなった戦いの後、草太郎はとらに「いつかおまえにも、背中を護る者が現れるやもなァ」とこぼしている)は相当に強いものだと考えさせられる。
- 余談だが、永らく「字伏=とら一体のみ」と妖怪ふくむ多くの面々に考えられてきたが、大陸に伝わる字伏の伝承にはとら以外の個体のものも含まれている。
白面に寄生された時点で不死性に縛られてしまい、人智を超えた存在としての道を歩む宿命を生まれながらに決定付けられてしまったのである。「齡2000年の大妖」とされるが、獣の槍に辿り着くまでに少なくとも800年もさ迷っていたため、白面との因縁は3000年をくだらなく、下手したら東・西国の長らよりも年長の可能性がある。なお、人間時代の後期には、対妖怪のために後世のゴーストバスターもびっくりな全身魔改造を施してしまっていた。
- 上記の肉体の魔改造の経緯と方法にも、実は非常に、非常に運命的な縁がある。
皮肉な事だが、彼は人外に化生して人間を忌む様になってからの方が、人間であった時よりも人間らしいのである。
ちなみに、ファンの考察では、『インドの人喰い獅子が狐に導かれて日本に来て悪魔祓いの神となった』という伝承があり、それが玉藻前や獅子舞(「口に入れて守る」)みたいな印象を持たせるため、これらがモチーフの一つになったのでは?というものもある。
関連イラスト
関連タグ
虚実妖怪百物語 - クロスオーバーの一環として、多数の有名なキャラクターたちと共演している。
九喇嘛(NARUTO) - とらと白面の者に影響を受けたと思われる
ガッシュ・ベル-藤田氏の元アシスタントである雷句誠氏の作品『金色のガッシュ!!』の主人公。雷撃を操る人外、相棒が男子中学生という共通点を持っている。
巴御前 - 彼女も封印前のとらと、ある事件(うしおととら外伝「雷の舞」より)で出会って、彼の言葉に強い影響を受けている