概要
「ぼくの地球を守って」は、日渡早紀による漫画作品。1987年から1994年にかけて雑誌「花とゆめ」で連載された。通称:ぼく地球(ぼくたま)。
コミックスは全21巻。文庫版(全12巻)や愛蔵版(全10巻)も発行されている。
内容は輪廻転生する主人公たちの、前世の記憶をめぐる近未来SF漫画。
複雑な人間関係が丁寧に描かれており、当時は本格的に転生を扱った少女漫画が目新しかったこともあって、大変な人気作となった。
1993年から1995年にかけてプロダクションI.GによるOVAや、イメージソングを収めたCDなども制作されている。
同じ作者の『記憶鮮明シリーズ 東京編』シリーズと背景世界を共有しているが、話は直接繋がっていない。
「別冊花とゆめ」にて、2003年~2015年に続編(次世代編)の「ボクを包む月の光」が連載され、現在はその続編「ぼくは地球と歌う」が連載されている。
あらすじ
北海道から東京の高校に転入した坂口亜梨子(さかぐちありす)は、新しい生活になじめず、寂しい気持ちをつのらせていた。
そんなある日、同級生の小椋迅八(おぐらじんぱち)と錦織一成(にしきおりいっせい)から、2人が同じ夢を共有しているという話を聞く。夢の中での彼らは異星人であり、ほかの5人の仲間とともに、「Z-KK101」と呼ばれている月の基地で、地球を観察しながら暮らしている研究者なのだという。
この話をきいたことをきっかけに亜梨子は2人と仲良くなり、やがてクラスにもなじんでいく。
亜梨子は家族とともにマンションで暮らしており、隣の部屋には小林という家族が入居していた。小林家には輪(りん)という小学2年生のひとり息子がいて、顔を合わせるたびにイタズラをしかけてくるため、亜梨子の悩みの種となっていた。
あるとき亜梨子は、誤って輪を15階のベランダから転落させてしまう。輪は奇跡的に軽傷で済んだが、回復すると急に「亜梨子と婚約したい」とごねて周囲を困らせる。輪の母親から「子供のいう事だし、口約束だけでもいいかから」と頭を下げられ、負い目のある亜梨子は輪との婚約を了承する。
この事故を境に、輪は人知れず怪しい活動を開始する。
しばらくして亜梨子は、リアルな夢を見る。夢の中で亜梨子は、木蓮(モクレン)と呼ばれ、月にある建物から地球を見ていた。
迅八と一成から聞いた夢に共通点を見出した亜梨子は、2人にその話をし、夢に出てきた人物の似顔絵を描いて見せる。間違いなく同じ夢だという結論に達した3人は、他の仲間の夢を見ている人間も存在するのではないかと考える。
3人は、同じ夢を見ているという人物・土橋大介(どばしだいすけ)、国生桜(こくしょうさくら)、笠間春彦(かさまはるひこ)を探し出した。大介と桜は、迅八や一成よりも詳細に夢の内容を知っており、あの夢は前世の記憶だと言う。
主な登場人物
(詳細は各人物の頁を参照)
現世
坂口亜梨子(さかぐちありす)
前世の記憶を持つ女子高生。
2人姉弟の長女。動物や植物の感情が理解できるが、弟以外の家族からは「空想癖のある子」と思われている。合唱部に入部してから、音楽室の傍の木が異常生長するようになる。
CV:白鳥由里
小林輪(こばやしりん)
亜梨子の家の隣に住む小学2年生。
7階のベランダから転落したのち、怪しげな行動を取り始める。時折非常に大人びた発言をする。
CV:冬馬由美
小椋迅八(おぐらじんぱち)
前世の記憶を持つ高校生。転入してきた亜梨子と同じクラスになる。
単純明快、直情型で喧嘩っ早い性格。亜梨子に好意を抱く。
前世では超能力を持っていたが、現世ではほとんど使えない。
CV:森川智之
錦織一成(にしきおりいっせい)
前世では女性で、迅八の前世に長い間片思いをしていた。そのため現世でも迅八を意識してしまい思い悩む。妹の今日子は腐女子。
前世ではテレパシーを持つ超能力者で、現世でもその能力を引き継いでいる。
CV:置鮎龍太郎
国生桜(こくしょうさくら)
前世の記憶を持つ女子高生。前世では一成(の前世)と親友同士だった。
一成の相談に乗っているうちに惹かれていく。気が強くハッキリものを言う性格。
CV:松井菜桜子
土橋大介(とばしだいすけ)
前世の記憶を持つ高校生。
桜とは偶然同じ学校に通っており、あるきっかけからお互いが前世で知り合いだったことに気づく。
記憶を共有する一同が集まるようになってからはリーダー的存在になる。ある理由から、前世を詳しく思い出すことに抵抗を感じている。
CV:飛田展男
笠間春彦(かさまはるひこ)
前世の記憶を持つ高校生。心臓が悪く入退院を繰り返している。父親は東京タワー計画の関係者。
前世で犯した過ちのために輪から脅迫される。前世では超能力を持っており、現世でもその能力を引き継いでいる。
CV:山口勝平
田村一登(たむら かずと)
街中で具合を悪くした春彦を助け、それをきっかけに親しくなる。死んだ弟に似ている春彦を気にかけ、かわいがっている。料理が得意。
CV:小杉十郎太
薬師丸北斗(やくしまるほくと)
未来路は超能力の研究・開発を行う機関から何度もスカウトされているが、北斗はそのたびに母親とともに追い払っていた。
CV:堀川亮
薬師丸未来路(やくしまるみくろ)
北斗の義弟。高い能力を持つ超能力者だが、そのために実の両親に疎まれて薬師丸家に引き取られた。口数が少なく、超能力者であることにコンプレックスを持っている。
兄・北斗からの紹介で田村と知り合う。田村から春彦や超能力について相談を受け、主人公たちの前世の因縁に巻き込まれていく。
CV:関俊彦
坂口はじめ
亜梨子の弟。姉が「動物や植物の感情が理解できる」というのを信じている。
普段はぶっきらぼうだが、本心では姉のことを気にかけている。輪に不信感を持ち、亜梨子を心配する。
CV:佐々木望
前世
木蓮(モクレン)
亜梨子の前世。フルネームはコウ=ハス=セイ=テ=モク=レン。
生物学者で、1億人に1人しか生まれないといわれるキチェ・サージャリアンという特殊能力者。植物と感情を通わせ、歌声で植物を急成長させる。豊かなブロンドの髪に象牙色の肌、地球色の大きな瞳といったその美貌から、同僚の男性陣の間ではマドンナ的存在であった。
外面はしとやかな女性を演じているが、実際はどちらかというとお転婆で、好奇心が強く夢見がちである。少女時代から地球に強く惹かれており、「地球の大気になりたい」が口癖。紫苑と婚約していた。
CV:篠原恵美
紫苑(シオン)
天才的エンジニア。フルネームはザイ=テス=シ=オン。
戦災孤児で、孤児院に保護され育った。幼い頃、戦場に取り残され、「殺される」という恐怖から超能力(サーチェス・パワー)を発動させて人を殺してしまった経験がある。
頭の回転が速く学生時代も常にトップクラスの成績であったが、協調性に難があり、人付き合いは得意ではない。
漆黒の髪に浅黒い肌の美形で、女性からは非常にモテる。地球の漫画が大好き。紆余曲折を経て木蓮と結ばれ、婚約する。
玉蘭(ギョクラン)
迅八の前世。フルネームはオ=アンティ=シャ=ギョク=ラン。
考古学者の男性。超能力を持っているが、自身での制御が利かず、能力を抑える為のピアスを付けている。愛情ある裕福な家庭に育ち、品行方正で世話好きな優等生。紫苑の幼馴染。木蓮に片思いしている。
CV:森川智之
槐(エンジュ)
一成の前世。フルネームはト=フェコ=ロール=エン=ジュ。
古生物学者。内向的で優しい性格だが、芯の強い女性。テレパシー能力を持つ超能力者。
玉蘭が木蓮を思っていることを知りながらも、一途に愛している。繻子蘭とは親友同士。
CV:鷹森淑乃
繻子蘭(シュスラン)
桜の前世。フルネームはロキ=シ=アノール=シュス=ラン。
科学者。槐とは親友同士。男性不信の気があるが、本心では一途な恋愛をしている槐にあこがれている。勝気だが、実は打たれ弱い。
CV:松井菜桜子
秋海棠(シュウカイドウ)
超能力を持つ医学博士の男性。フルネームはレム=サイ=ネ=シウ=カイドウ。
おっとりした性格で、木蓮とは茶飲み友達。
月基地内に伝染病が蔓延し、玉蘭、繻子蘭、柊、槐が次々と死亡してゆく中、ワクチンを一人分だけ作り出すことに成功する。
CV:松本保典
柊(ヒイラギ)
大介の前世。フルネームはオク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ。
言語学者。月基地に派遣された調査隊のリーダー。責任感が強く、ややロマンチストで小心者。実は頭に小さなハゲが6箇所ある。
CV:飛田展男
OVA
1993年からOVAがリリースされる。全6話。
原作序盤の内容をほぼ忠実に構成、最終話はオリジナルの展開であり、伏線などは明かされず未完のまま終わっている。
NHK衛星第2の夏休みアニメ劇場などでテレビ放送もされた。2001年にはDVDが全4巻構成で発売。DVD最終巻は完結編とイメージミュージック映像が収録されている。
スタッフ
監督補佐 - 川崎逸朗(第2話以降)
キャラクターデザイン - 後藤隆幸
撮影監督 - 高橋明彦
編集 - 辺見俊夫、船見康恵
音楽 - 溝口肇
音響監督 - 浦上靖夫、小林克良
プロデューサー - 前田哲也、桜井裕子、石川光久
制作 - ProductionI.G
製作 - 白泉社、ビクターエンタテインメント、イング
主題歌
「時の記憶」
作詞 - 錦織貴子、ARION / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 歌 – SEIKA