概要
南アジアで話される言語。ムガル帝国の帝都であったデリー周辺の言葉であり、帝国の公用語であったペルシア語の影響を語彙・発音・文字など多くの面で受けている。「ウルドゥー」の名は「軍営」を意味し、この言語が「シャー・ジャハーナーバード(皇帝シャー・ジャハーンの都、現在のデリーのこと)の高貴なる軍営の言葉」と称されていたことに由来する。
現在のインドではデリーやハイデラバードの周辺などに住むイスラム教徒の間で広く用いられている。また本来の言語圏からは外れるもののパキスタンにおいては建国当初の指導者がデリーを拠点として活動していた事、多民族多言語国家であり在来の言語のどれかだけを公用語にするのは不公平という観点などから母語話者の少ないウルドゥー語が敢えて国語に指定されている。
ヒンディー語との関係
ヒンディー語とは音韻学上全くの同一言語であるが、文字の表記体系は異なり、アラビア語より借用したアラビア文字が使用される。また、不足する語彙を補う外来語については、ヒンディー語がサンスクリット語のものを多用するのに対し、アラビア語のものを多用する傾向がある。そのため、実用的な実践レベルの会話においては、両者の意思疎通は困難である。
パキスタンは元々インドやバングラデシュとは同一の国であり、近年それぞれ宗教対立と民族対立により分化した歴史がある。このため、学術的にはヒンディー語とまとめて同一言語とみなす場合もあり、その際には政治的正しさの観点から「ヒンドゥスターニー」という表現が用いられる。