概要
屋根にあたる部分には布製やビニール製の幌を使うことが多いが、近年はFRPやアルミニウムなどの軽量な素材を使った自動開閉式のハードトップを使用するものもある。
これらはヴァリオルーフ、メタルトップオープンなどと呼ばれる。
「オープンカー」は和製英語であり、欧米では「ロードスター」、「コンバーチブル」、「カブリオレ」、「スパイダー」など、厳密な区別がある。
歴史
自動車の歴史は馬車からの発展であり、元々は屋根が無いか、折りたたみ式の幌を利用していた。19世紀の自動車黎明期はエンジンを座席の下に格納し、その上にラダーフレームを組んでいたため、その上にボディを据えると極端に全高が高く不安定になってしまう。当時はエンジン出力の余裕もなく、少しでも車体を軽くする必要もあった。
しかし自動車普及期に入るとFRレイアウトの採用が広がり(元祖はフランスのパナール)、車体前方にエンジンを格納するようになって全高が大きく下げられるようになった。それでも、初期の大衆車(T型フォードなど)はオープンタイプが標準グレードと位置付けられ、クローズドボディを持つものは高額な商品であった(高級車はオーナーの好みに応じてオーダーメイドのボディを架装した)。また金属製の屋根を持つ車を「ハードトップ」と呼んでいたことからも、屋根があるモデルの方が特殊であったことがうかがえる。エンジン出力が上がり、重い金属製の箱型ボディでも高速に走れるようになると、居住性に劣るオープンカーの需要は減少していった。
現代のオープンカー
第二次世界大戦後の自動車業界ではオープンカーは趣味性の高いクルマという位置づけになっている。現代の乗用車で採用されている、シャーシと車体が一体となったモノコックボディでは、オープンカーの方が補強が必要になる分、むしろ車体が重くなってしまう。
わずかに残った趣味的な車種も1980年代には絶滅寸前になっていたが、マツダのロードスターのヒットを受け、世界中のメーカーが追随。オープンカーの文化は今日も守られている。日本では軽自動車のオープンカーが妙に豊富で、この2シーター大恐慌の時代にコペンが現在も販売されている。
現代のオープンカーはクーペの亜種であることが多いが、フィアット500Cなどハッチバック派生車種や、クロスオーバーSUVタイプのオープンカーも発売されることがある。
かつてはジープに端を発するSUVにも幌モデルが多くラインアップされていたが、現在ではオープンモデルを用意しているオフロード車は少なくなった。
劇中車としてのオープンカー
古来より映画やアニメに登場する車にはオープンカーが多い。これはカッコ良さのためでもあるが、屋根があいていないと役者の顔が見えなくなってしまうからでもある。特に、撮影技術が未熟であった昔の映画ではよく見られた。日本車初のボンドカー(007シリーズ)であるトヨタ2000GTも、そうした事情から本来存在しないはずのオープンモデルが劇中に登場している。
レーシングカーとしてのオープンカー
レーシングカーにはオープンカーが多々見られる。
代表的なものはF1・インディカーに代表されるフォーミュラカー(オープンホイール)がそうである。草創期のF1では屋根を付けない車の方が軽さや重心の観点で有利とされ、これがフェンダーの無いむき出しのタイヤと合わせてフォーミュラカーというスタイルの伝統となっている。
しかし1970年代以降空力設計が勝敗のカギを握るようになると、コックピットや剥き出しのタイヤが空力を乱すため、むしろ速さ追求の面では不利な部分があることが分かった。加えてコックピットに外れたタイヤが直撃すれば即死するという重大なリスクもあるため、現代ではむしろデメリットのほうが目立つ。2010年代後半以降は特にドライバーに物体が直撃する死亡事故が相次いだため、"HALO"やエアロスクリーンのような頭部保護デバイスをつけるのが一般的になっている。ただし身体の出し入れが難しいフォーミュラカーの特性を考慮し、クラッシュした時に脱出しやすいようにするという理由から、きちんとした屋根はあくまでつけていない。
フォーミュラカーにおけるオープントップは「古くからのレーシングカーのアイコンであるフォーミュラカーというスタイルを守る」という意義が大きく、童夢の林みのる氏のように商業的にはともかく機能的には意味をなしているのか疑問を呈する者もいる。
プロトタイプレーシングカーでもオープントップのものが多数存在する。空力やドライバーの快適性などの面では不利となるが、屋根や窓ガラス、空調機器などを装着する必要がないため低コストかつ軽量に作れるのがメリットである。ル・マン24時間では規則上のバランスにより、時期によってクローズトップ有利・オープントップ有利がしばし入れ替わった。しかし安全性の観点から2017年以降は廃止されている。
現在はやKYOJOカップ(日本の女子限定レース)のようなアマチュア向けレースやヒルクライム競技を除き、プロトタイプはほぼクローズドタイプのみとなっている。
スーパー耐久のようないわゆる『箱車レース』にも市販オープンカーが参戦することがあるが、安全上の規則から、屋根を閉めた状態でロールケージを組んでいるため、オープン状態では走れない。
よくある誤解
- 風が当たりそう
フロントガラスが案外風から守ってくれるため、天候が穏やかなら走っていてもほぼ無風である。
時々風で髪が後ろに靡いているオープンカーのイラストもあるが、リアリティ見地から野暮なことを言えば正しくない。
- 冬は寒そう
シートヒーターが装備されているのが一般的であるため、これをONにしていれば案外寒くない。
- 夏は涼しそう
真夏のオープン走行は日差しを遮るものがなく、暑いというより苦行である。エアコンを全開にしても熱中症の危険がある上、夕立でずぶ濡れになるリスクも高いので(夜はともかく)昼間のドライブでルーフ全開はおすすめしない。
代表的な車種
普通自動車
206cc(プジョー)
バルケッタ(フィアット)
アルファスパイダー(アルファロメオ)
アバルト124スパイダー(アバルト)
など
軽自動車
コペン GR SPORT(ダイハツ/トヨタ)
など