キュアえみ〜る
きゅあえみーる
HUGっと!プリキュア第15話に登場した、愛崎えみるが変身するプリキュア…ではなく、プリキュアの恰好をしたえみるのコスプレ姿である。いわばプリキュア版のコレ。
なお表記は「えみーる」ではなく「えみ~る」である。
名乗りバンクに相当するシーンも挿入されており、キュアえみ~るのえを体全体で表すものになっている……のだが、ポーズが微妙すぎて「え」を表してることはぶっちゃけとてもわかりにくかったりする。この記事を見るまで気づかなかった人もいるのではなかろうか。
そのくせにこのポーズはバランスをとるのがとても難解で、すぐ転倒してしまうという欠点まである。
一発ネタかと思いきや第18話で再登場。
ステッキっぽいお手製武器を手に持ってラヴェニール学園に参上し、はな達がプリキュアである事を白昼堂々バラそうとしたが、ルールーに背後を取られて阻止されている(えみるは前話にあたる第17話終盤でプリキュアの正体を知ったため)。
また、ビューティーハリーショップ内でハムスター形態のハリーを"喋るネズミ"と言ったり(第9話の時点でえみるの目の前で呟くシーンがあったがえみるには聞こえていなかった)、美少女戦士や仮面ライダーシリーズのポーズを決めたりしていた。
上半身は白主体に黒帯が2本入った服で、袖の構造は通常服と同じだが、その袖の端にピンクのリボンが追加され、両手には白の手袋を着用している。
下半身はピンクのスカート+薄ピンクのモコモコスカートに黒色のスパッツを合わせており、ピンクと白を基調としたスニーカーを履いている。
その他、頭のツインテールのリボンが赤からピンクに変わっており、赤いカチューシャを装着、背中には大きな黄色リボン、手足の肘膝には専用の怪我防止プロテクターを装着し、額・お腹・肘には黄色とピンクの花がついている。花の意匠やピンク主体なコスチュームの雰囲気から、プリキュアの中でも接点が強いキュアエールを意識しているようだ。
ちなみにルールーの分析によると、この格好のえみるは「プリキュアの可能性87.56% けっこうプリキュア」らしい。
参考までに、普段のえみるの恰好だとプリキュアの可能性が0.01%と算出された。
基準が不明瞭です。
ただ、ルールーの分析では、えみるが発するアスパワワの量自体はプリキュアに匹敵していることが第15話を通じて常に示されており、「けっこうプリキュア」という分析は単なるギャグ演出ではなくそれが関係しているようだ。
えみるがプリキュアの真似事を始めたのは今まで何度か目撃したプリキュアに憧れてだが、格好だけ真似て悦に浸っているわけではなく、割と真剣に「みんなを守るヒーロー」になりたいという思いがある。
しかも彼女の考えているヒーロー像は「困っている人たちにおせっかいをする」という単純な人助け行為であり、結構堅実かつ現実的。悪人と戦いたい訳ではない。
つまりえみるはプリキュアの戦う姿に憧れているのではなく、その背景にある思いに憧れているのである。このことこそが87.56%のプリキュアの可能性を生み出しているとも言えるだろう。
では、残りの12.44%は何が足りないのかということになるが、プリキュアというものは一人ではなく仲間とともに戦う存在というのは歴代の先輩たちから学ぶべきことかもしれない。
えみる自身もそれをわかってはいるのか、第15話では意気投合(?)したルールーに「一緒にプリキュアになりましょう」と誘うも、ルールー本人は「お断りします」と拒否、「あなたは今日からキュアらりるれルールーなのです」と名付けるも、「お断りします」と拒否された。その後、「友達」としつこく称し、何度も「他人」と否定されてしまう。えみるはかなり本気であり、ルールーが正式にプリキュア陣営に加入した第18話にて改めて誘い、紆余曲折の末第19話で承諾された。
第20話にてえみるが本物のプリキュアになったことで今後キュアえみ~るは登場しない…かもしれない。
しかし東映アニメーション側の公式キャラクターページには、キュアえみ~るの設定画がバッチリ掲載されている。
第33話ではこの格好にこそならなかったが、若宮アンリの相談に乗る際久々にえみ~るの決めポーズを行い、エンドカードでも私服姿で決めポーズをしたえみるが登場した。
カオス回再び
キュアえみ~るが初登場した第15話は、予告映像の時点で
・プリキュアの恰好で挙動不審な動きをするえみる
・目をカッと見開いたり、驚きマークを出したりとこれまでのルールーでは考えられないギャグ描写
・ロッカーのごとくギターをかき鳴らすえみる
・変顔をしながら驚くはな・さあや・ほまれ
・くるくる回る社交ダンス(べニーズワルツ?)を決める、見るからにキャラの濃そうな貴族風のえみるの両親
・NT?空間でのえみるとルールーの対話?シーン
と、短い映像の中にもギャグ回を思わせる情報が詰め込まれていたが、実際に放映されたらそれどころでなくあらゆる場面が全部おかしいというツッコミ不在の脳溶けアニメと化していた。
1クール(=13放送回)の境目辺りに頭のおかしいカオス回が挿入されるのはプリキュアシリーズの裏伝統みたいなものでもあるのだが、今回はキャラや脚本が暴走していること以上に作画演出がフリーダムを極めていたことが特徴的で、別のアニメになったかのごとき様相だった。
しかし、ギャグ描写の中にもルールーとえみるの心の機微を上手く描写しており、ルールーとえみるの邂逅が今後の展開に大きく影響するターニングポイントとなりそうなことは明白で、単なるネタ回ではなく、限られた尺の中で膨大な要素を詰め込んだ非常に濃厚なエピソードとなっている。
(詳細は愛崎えみるとルールー(プリキュア)の項目にて)
ちなみにこの回はタナカリオンこと田中裕太演出回、さらに久々の成田良美による脚本である。
田中は今回の演出についてTwitterで回想している(参考リンク1、2)。
曰く、今回の演出は「低予算ギャグを目指して徹底的に省エネを」というのをテーマに掲げていた。そのため厳密に管理されることが多い東映アニメーションの作画枚数としてはほぼ規定内に納めることができたという。逆に言えばその分動かさないカットをうまく使って演出したといえる。
その一方で今回のMVPとして作画監督の大田和寛を挙げており、要所要所でキャラを動かし、さらにギャグ回特有の悪のりでさらに画面のテンションも上乗せするという点を評価している。大田はプリキュア以前は『ぱにぽにだっしゅ!』などシャフト系のギャグ系作品に関わっていたこともあり、その経験が発揮されたことになる。
一方シリーズディレクターの佐藤順一は、流石に絵コンテを見たときは振り切れすぎてて大丈夫かと思ったものの、「ギャグ回というのは不安になったら負けなので、突っ走るしかない」と語りつつ、そうした中でも人物描写をすべきところはしっかり抑えるという、田中の演出手腕を高く評価している(関連リンク)。
同日のニチアサにて
奇しくもこの第15話が放送された1時間後の快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャーで「子供がヒーローの真似をして事件を解決しようとする」という似たようなストーリー展開があった。
その話ではヒーローであるパトレン1号/朝加圭一郎が「それは自分(警察)の仕事だ」と諭しており、しかもただの大人の説教で終わらないように、圭一郎が子供の頃に同じようなことをしてとある地元の警察官に諭され、そしてその警察官が約束を守って体を張って危険な事件を解決してくれたことが自分が警察官になろうとしたきっかけだと、人物描写と絡めた丁寧な演出となっていた。
一方、こちらのキュアえみ〜るは終始一貫して肯定的に描かれている。
特筆すべきはクライマックスでオシマイダーに襲われそうになる少年を自らの身を呈して守ったことであり、作中ではそれを「危険なこと」と強調しているにもかかわらず、ヒーローであるキュアエールがその勇気を称えており、えみるの行為を危険だとたしなめる描写はまったくなかった。
年齢的な差があるとはいえ、ある意味で真逆の描写になってしまったが、公的機関に敵と戦う力があるかないかによる対応の対比とも言える。
しかしメタ的なことを言ってしまえば、玩具会社がスポンサーについている児童向けのヒーローもののアニメや特撮では「ヒーローの真似事で危ないことをしてはダメですよ」と注意喚起するメッセージを込める方が常識である。
これは、TVを見た子供がヒーローごっこをしてくれることは(玩具スポンサー的には)非常に結構なことだが、度が行きすぎて怪我をしたりされたりしたら(玩具スポンサー的にも)責任問題になるからだ。
作画演出でのギャグ描写が目立った今回のキュアえみ〜るだが、「ヒーローに憧れる子供がその真似事をして危険に飛び込む」というエピソードを肯定的に描いた成田の脚本も意外に挑戦的だと言えるだろう。
一方、えみるがギターを愛していることを批判する兄が作中では否定的に描かれており、「自分が格好良いと思ったことなら、他人の評価なんて気にせずに自由にやればいい」ということがメッセージとして込められてもいる。そしてキュアえみ〜るだって「自分が格好良いと思ったこと」なのだから、脚本上ではブレずに筋を通したかったのかもしれない。
ただ、えみるが少年を助けたあとに「自分がやったことはとても危険なことだ」と気づいた時に強く怯える描写がちゃんとあり、視聴者向けに危険を喚起することは最低限は行っている。